小児の肺炎,中耳炎に適応を有する国内初の小児用ニューキノロン系抗菌薬であるトスフロキサシントシル酸塩水和物細粒剤(商品名:オゼックス®細粒小児用15%)が,2010年1月12日に発売された。耐性菌の増加から治療に難渋する小児感染症に対する有用性が期待されているが,2010年8月現在において関連する診療ガイドライン最新版への記載はない。そこで,本座談会では開発の背景となった耐性菌の現状および臨床試験時の成績を再確認し,議論を通じて小児感染症治療における同剤の位置づけを探ることにした。
易感染性の宿主においては,多くの場合,感染症が重症かつ難治化することが知られている。なかでも,糖尿病患者は,最も感染しやすい宿主に分類され,救急医療の現場では,外傷がきっかけとなって感染症が重症化することが少なくない。本座談会では,糖尿病患者における易感染性の要素を踏まえて,抗微生物薬の選択,血糖コントロールなど,具体的な対処法について,感染症のエキスパートにディスカッションいただいた。
2009年1月~12月に全国の医療機関において採取された各種感染症患者由来検体より分離した好気性菌および嫌気性菌1,620株を試験菌として,キノロン系抗菌薬(Sitafloxacin(STFX),Levofloxacin(LVFX),Moxifloxacin(MFLX),Garenoxacin(GRNX))およびセフェム系抗菌薬,マクロライド系抗菌薬,ケトライド系抗菌薬の各種経口抗菌薬のMICを,Clinical and Laboratory Standards Instituteに準拠した微量液体希釈法により測定した。
Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA)に対するSTFXのMIC90は0.06𝜇g/mLとGRNXと同等であり,MFLXの1/2,LVFXの1/8であった。Streptococcus pneumoniaeに対してSTFXは,Penicillin Gに対する感受性に関わらず0.06𝜇g/mL以下ですべての株の発育を阻止し,そのMIC90 はGRNXと同等から1/2,MFLXの1/2~1/4,LVFXの1/16~1/32であった。Streptococcus pyogenesに対するSTFXのMIC90は0.06𝜇g/mLであり,GRNXの1/2,MFLXの1/4,LVFXの1/32であった。Enterococcus faecalisに対するSTFXのMIC90は0.25𝜇g/mLであり,GRNXおよびMFLXの1/2,LVFXの1/8であった。腸内細菌科の菌種に対するSTFXのMIC90は,Escherichia coliでは2𝜇g/mL,他の菌種では0.03~1𝜇g/mLであり,何れの菌種に対しても測定したキノロン系抗菌薬の中で最も低値を示した。また,Pseudomonas aeruginosaの尿路由来株に対するSTFXのMIC90は8𝜇g/mLであり,GRNX,MFLXおよびLVFXの1/16であった。一方,P. aeruginosaの呼吸器由来株に対するSTFXのMIC90は2𝜇g/mLで,GRNX,MFLXおよびLVFXの1/16~1/32であった。Haemophilus influenzaeに対してSTFXは0.004𝜇g/mL以下ですべての株の発育を阻止し,そのMIC90はGRNXの1/2~1/4,MFLXの1/8,LVFXの1/4であった。Moraxella catarrhalisに対するSTFXのMIC90は0.008𝜇g/mLで,GRNXの1/2,MFLXおよびLVFXの1/8であった。その他,各種偏性嫌気性菌に対してもSTFXのMIC90は0.015~0.12𝜇g/mLと今回測定した薬剤の中で最も低値を示した。
2009年臨床分離株に対するSTFXの抗菌活性を他のキノロン系抗菌薬と比較した結果,グラム陽性菌には同等あるいはそれ以上,グラム陰性菌および偏性嫌気性菌には最も高い抗菌活性を有していた。
日本国内の16医療施設において,2006年に種々の臨床材料から分離された好気性グラム陽性球菌(26菌種,1022株)および嫌気性菌(23菌種,184株)について,微量液体希釈法または寒天平板希釈法で注射用抗菌薬の抗菌活性を調べた。Staphylococcus aureusの53.0%が,methicillin耐性S. aureus(MRSA),Staphylococcus epidermidisの65.8%が,methicillin耐性S. epidermidis(MRSE)であり,いずれも高い頻度を維持していた。MRSAおよびMRSEに対して良好な抗菌活性を示したのは,vancomycin(VCM)とquinupristin/dalfopristin(QPR/DPR)で,MIC90 は2𝜇g/mL以下であった。Streptococcus pneumoniaeをpenicillin結合蛋白の変異に基づいて分類したpenicillin低感受性S. pneumoniae(gPISP)とpenicillin耐性S. pneumoniae(gPRSP)を合わせた割合は87.6%であった。gPISP,gPRSPに対してセフェム系抗菌薬のceftriaxone,cefpiromeとcefepime,全てのカルバペネム系抗菌薬,VCM,teicoplanin(TEIC),linezolid(LZD)とQPR/DPRが1𝜇g/mL以下のMIC90 を示した。Enterococcus faecalisとEnterococcus faeciumの全ての株に対するVCMとTEICのMICは,いずれも2𝜇g/mL以下であり,低感受性や耐性株は見られず,優れた抗菌活性を示した。一方,LZDは,E. faecalisおよびE. faeciumにおいて低感受性を示す株が各々10.9%,3.5%存在した。また,QPR/DPRでは,E. faeciumにおいて低感受性または耐性を示す株が24.4%存在した。嫌気性菌のClostridium difficileに対し,VCMは優れた抗菌活性を維持しており,MICは全て1𝜇g/mL以下であった。Peptococcus科,Bacteroides属やPrevotella属に対して,カルバペネム系抗菌薬は良好な抗菌活性を有していたが,B. fragilisにおいて耐性株が散見されており,今後さらに注意する必要があると考えられた。
2006年に全国16施設において種々の臨床材料から分離された好気性グラム陰性菌19菌属種,1280株に対する各種抗菌薬のMICを主に微量液体希釈法で測定し,抗菌力の比較検討を行った。Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytoca, Proteusmirabilis, Proteus vulgarisにおけるextended spectrum 𝛽-lactamase (ESBL)産生株と考えられる株の分離頻度は,それぞれ3.7%,2.4%,3.2%,18.8%,0.0%であった。特に,P. mirabilisのESBL産生株の分離頻度が18.8%と2004年の分離頻度(16.7%)を維持しており,他の菌種に比較して極端に高かった。Haemophilus influenzaeにおける𝛽-lactamase産生株は1.2%のみであり,PCR法によるペニシリン結合蛋白質3の変異から判定した𝛽-lactamase-negative ampicillin耐性株の分離頻度は62.8%と2004年の57.7%よりさらに上昇していた。Pseudomonas aeruginosaに対する各抗菌薬の抗菌力は2004年に比較してほとんど変わっていなかったが,doripenem, ciprofloxacin, tobramycinの3抗菌薬のみが,MIC90で4µg/mLと比較的良好な抗菌力を示した。抗P. aeruginosa薬9剤に対する感受性解析の結果,6剤以上に耐性の株の分離率は5.7%であり,2004年の8.7%に比較して増加は認められず,むしろ数値的には減少していた。P. aeruginosa以外のブドウ糖非醗酵グラム陰性菌においては,ほとんどの抗菌薬の抗菌力は2004年分離株の感受性測定結果に比較して大きな変化は起こっていなかった。