15員環マクロライド系経口抗菌薬であるAzithromycin(AZM)の成人用経口懸濁液徐放性製剤(単回投与製剤)は,ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)などの市中耐性菌にも効果が期待できる経口抗菌薬として既に臨床応用されている1)。
全国1,469名の医師の協力を得て,2009年6月から2010年1月までにAZM単回投与製剤が処方された急性呼吸器感染症患者にアンケートを配布し,臨床症状の改善度および服薬性について満足度調査を行った。
アンケートに回答した2,387名の患者の男女比は4対6で女性が多く,10歳代から80歳以上まで幅広い年齢層に処方されており,対象疾患は急性気管支炎が37%と最も多く,次いで急性咽頭炎の33%であった。臨床症状別の解析では熱や痛みに対する改善度が比較的良好で,1回飲みきり型という用法については,90%以上の患者がその利便性の高さを評価していた。AZM単回投与製剤に対する患者満足度を解析した結果では,疾患別では肺炎,年齢別では60歳以上の高齢者で高い傾向にあった。また,一般的な経口抗菌薬の服薬遵守率は約60%と低く,臨床効果,安全性に不安を持つ患者も少なくないことから医師,薬剤師による十分な服薬指導が重要になると思われる。
A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)感染症では,リウマチ熱や急性糸球体腎炎が続発することが知られており,適切な抗菌薬投与により早期に溶連菌の除去が必要とされている。溶連菌感染症の治療薬としては,ペニシリン系抗菌薬の10日間投与が推奨されているが,セフェム系抗菌薬も用いられるようになってきており,小児呼吸器感染症診療ガイドライン2007において,推奨薬の一つにCefditoren pivoxil(CDTR-PI)が挙げられている。そこで,CDTR-PIの溶連菌感染症に対する使用実態下における適正使用情報を収集するため本特定使用成績調査を実施した。本調査では147医療機関から790例の調査票を収集し,安全性解析対象症例734例,有効性解析対象症例718例について安全性及び有効性の検討を行った。
副作用は11例11件に認め,副作用発現率は1.50%(11例/734例)であった。件数の多かった副作用は下痢及び血尿各3件であった。使用上の注意から予測できない未知の副作用は尿中血陽性1件,血尿3件であったが,投与後の尿検査が陽性であった以外に問題となるような臨床症状は認められなかった。発現した副作用は,患者の来院がなく転帰が不明の3例を除き,いずれも回復または軽快していた。なお,本調査において重篤な副作用は認められなかった。
臨床効果は,咽頭・喉頭炎に対する有効率98.5%(457例/464例),扁桃炎に対する有効率98.4%(250例/254例)であった。患者背景別での有効率は,いずれの群においても95%以上の高い有効率を示した。また,溶連菌の除菌率は,咽頭・喉頭炎94.6%(194例/205例),扁桃炎92.4%(110例/119例)であった。
以上より,溶連菌による小児咽頭・喉頭炎,扁桃炎患者に対し,CDTR-PIは優れた安全性と有効性を示し,有用な薬剤であることが再確認された。
2007年1月~6月に全国の医療機関において耳鼻咽喉科領域感染症患者から分離されたStreptococcus pneumoniae 78株(PSSP 45株,PISP 26株およびPRSP 7株)に対するgarenoxacin(GRNX),levofloxacin(LVFX)およびmoxifloxacin(MFLX)のminimum inhibitory concentration(MIC)およびmutant prevention concentration(MPC)を比較検討した。
対象の78株に対するGRNXのMIC90 およびMPC90 は各々0.06および0.12𝜇g/mLであり,LVFXおよびMFLXと比較して最も低い値を示した。また,GRNXのMPC/MIC比は1~4に分布し,77株(99%)は2以下であり,LVFXおよびMFLXのMPC/MICに比較して最も低い値であった。
メシル酸パズフロキサシン(Pazufloxacin mesilate, PZFX)について,当院でPZFX投与後血中濃度解析を行った患者群8例と臨床第I相試験(phase I群)6例の各AUCおよび当院で呼吸器材料より分離された各菌種に対するPZFXのMICを用いて,Monte Carlo simulation (MCS)によりAUC/MICの指標の達成率を測定し,比較検討した。
PZFXのAUCは500mg1日1回投与時の血中濃度をもとに算出した。またPZFX 500mg1日2回投与を想定し,各AUCを2倍したものを用いた。AUC/MICの有効性の指標はStreptococcus pneumoniaeはAUC/MIC ≥30,その他の菌種(Pseudomonas aeruginosa,Haemophilus influenzae,Klebsiella pneumoniae)はAUC/MIC ≥125とし,指標を満たす確率を算出した。その結果,患者群とphase I群でAUCを比較すると,患者群の方が約3倍(67.9/21.9)高値であった。またAUC/MICの指標の達成率は,各菌種とも患者群のAUC 2倍量において最も高い達成率を示し,高い順に,H. influenzae(98%),K. pneumoniae(89%),S. pneumoniae(66%),P. aeruginosa(41%)であった。これに対しphase I群のAUC 2倍量では,高い順にH. influenzae(91%),K. pneumoniae(81%),P. aeruginosa(5%)およびS. pneumoniae(0%)であり,特にS. pneumoniaeとP. aeruginosaで患者群より達成率が低い結果となった。これは,患者群の方が高いAUCを示したことによるものであり,phase I群のデータを用いてMCS法で行うと,PZFXの有効性が低く見積もられることが示唆された。このため臨床的なPZFXのAUC/MICを正しく評価するには患者群のPKデータを用いる必要があり,PZFXのAUCが大きくなるため,MICの高い菌種においても有効性が得られると考えられる。