マクロライド系抗菌薬は,非定型肺炎に対しては単剤で有効である。しかし,最近では,マクロライド系抗菌薬をβ-ラクタム系薬と併用することで,重症市中肺炎や原因菌不明の市中肺炎に対しても効果があることなどが示されている。そのメカニズムとしては,クラリスロマイシンをはじめとするマクロライド系抗菌薬が有する細菌の病原因子の産生抑制作用や宿主の免疫調節作用が明らかにされている。
1982年7月から外科感染症分離菌に関する多施設共同研究を行ってきたが,ここでは2009年度(2009年4月~2010年3月)の成績を中心にまとめた。1年間で調査対象となった症例は220例であり,このうちの174例(79.1%)から642株の細菌と16株の真菌が分離された。一次感染症から411株,術野感染から244株の細菌が分離された。一次感染症では,嫌気性グラム陰性菌の分離頻度が高く,次いで好気性グラム陰性菌であり,術野感染では,好気性グラム陽性菌の分離頻度が高く,次いで嫌気性グラム陰性菌であった。好気性グラム陽性菌については,一次感染症においてEnterococcus faecalis やEnterococcus aviumなどのEnterococcus spp.の分離頻度が最も高く,次いでStreptococcus anginosusなどのStreptococcus spp., Staphylococcus aureusなどのStaphylococcus spp.であった。術野感染からは,Enterococcus spp.の分離頻度が最も高く,次いでStaphylococcus spp.であった。好気性グラム陰性菌では,一次感染症からEscherichia coliの分離頻度が最も高く,次いでKlebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Pseudomonas aeruginosaなどであり,術野感染からはE. coli, P. aeruginosa, E. cloacaeの分離頻度が高かった。嫌気性グラム陽性菌では,一次感染症からEggerthella lenta, Parvimonas micra, Streptococcus constellatus, Finegoldia magna,術野感染からはE. lenta, P. micraの分離頻度が高かった。嫌気性グラム陰性菌では,一次感染症からは,Bilophila wadsworthiaの分離頻度が最も高く,次いでBacteroides fragilis, Bacteroides ovatus, Bacteroides thetaiotaomicronであり,術野感染からはB. fragilisの分離頻度が最も高く,次いでB. ovatus, B. wadsworthia, B. thetaiotaomicronであった。バンコマイシン耐性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やEnterococcus spp.および多剤耐性緑膿菌は認められなかった。
2009年12月から2010年11月までの1年間に,経口のb -lactam薬を通常量で3日間以上内服しても症状の改善が認められず,胸部X線で肺炎像を認め,CRPが3.0 mg/dl以上を示した30名の肺炎の小児において,tebipenem pivoxilを4 mg/kg/回,1日2回,3日間投与し,臨床効果を評価した。患者の年齢は生後8か月から5歳であった。血清CRPは3.05 mg/dlから12.9 mg/dlの範囲であった。30例中28例の上咽頭スワブまたは喀痰培養からStreptococcus pneumoniaeおよびHaemophilus influenzaeのどちらか,もしくは両方を検出した。28例のうち,S. pneumoniaeが耐性であったのは7例,H. influenzaeが耐性であったのは9例,両方とも耐性菌であったのは3例であった。すべての患者で,投与開始後48時間以内に解熱を認め,投与開始後3~5日目で咳嗽・喘鳴は著しく減少し,有効と判定された。副作用として,下痢・軟便を4例(13.3%)に認めた。
2007年5月から2009年4月までに,小児科開業医を受診した急性A群b溶血性レンサ球菌(GAS)性咽頭・扁桃炎小児を対象に,cefditoren pivoxil(CDTR-PI)の9mg/kg/日,5日間投与と,amoxicillin(AMPC)の30~40 mg/kg/日,10日間投与における臨床効果,細菌学的効果,口腔内常在菌叢への影響および副作用を比較検討した。
有効性評価の対象となったCDTR-PI群49例およびAMPC群48例における臨床効果はそれぞれ100%および97.9%,細菌学的効果はいずれも100%であり,CDTR-PIのAMPCに対する非劣性が検証された。治療前後における口腔内常在菌叢の変動は,CDTR-PI群では菌量の増減が認められなかったのに対し,AMPC群では有意な減少が認められた。副作用に関しては両群ともに重篤なものは認めなかった。
分離されたGAS 112株のemm遺伝子型別では,現在本邦で流行している4型および12型(いずれも28.6%)の頻度が高く,薬剤感受性(MIC90)では,CDTRとpenicillin Gが0.008 μg/mL,AMPCが0.016μg/mL,levofloxacinが2 μg/mL,clarithromycinが>64μg/mL,azithromycinが>64 μg/mLであり,マクロライド系薬に対する耐性率が高かった。
小児急性GAS性咽頭・扁桃炎に対するCDTR-PIの5日間投与はAMPCの10日間投与と比較して,臨床効果および細菌学的効果とも同等であり,またCDTR-PIの5日間投与は口腔内常在菌叢に影響を与えにくいことが示された。
発熱性好中球減少症(FN)は,発症後直ちに適切な抗菌剤による経験的治療が必要である。われわれは,電子カルテ(富士通EGMAIN-GX)にFN用電子パス(1st line:Meropenem単剤,2nd line:Meropenem+Vancomycin)を登録した。FN発症後1st lineを適用し,72時間以内に解熱が得られない場合に2nd lineへ変更する規定とした。対象はFNを発症した血液がん患者14例,平均年齢は60歳,総FNイベント数は28件であった。FN発症時の好中球数は,平均値が42(0~300)/μL,中央値は0/μLであった。有効率はそれぞれ1st line 57%,2nd line 93%であった。重篤な有害事象は認められなかった。Meropenemの抗菌力に加え,予め電子パスで経験的治療を規定し迅速な治療開始を可能にしたことが,優れた結果の理由であると考えられた。