悪性腫瘍と感染症は分離しがたい関係にある。悪性腫瘍の診断時でさえも既に感染症の鑑別が必要なことはしばしば経験し,その後の抗腫瘍療法においてはいかに感染症をコントロールしながら治療を行うかが予後を考える上で重要視される。本稿では,肺癌患者における感染症,特に発熱性好中球減少症を中心に概説する。
百日咳はかつて乳幼児を中心に夏季に流行する疾患であったが,近年では成人においても増加傾向にあり,2010年時点では半数以上を成人が占めている。成人患者では咳嗽が長期にわたって持続するが,症状が典型的ではないために診断が見逃されやすく,感染源となって周囲へ感染を拡大してしまうこともあるため,アウトブレイク発生につながることもある。百日咳の治療は,マクロライド系抗菌薬の中で小児に適応を持っているエリスロマイシン(EM),クラリスロマイシン(CAM)が中心となる。
2010年10月から2011年12月までに,旭川厚生病院小児科でtosufloxacin(TFLX)を3日以上投与した,生後6か月から14歳までのMycoplasma pneumoniae による肺炎83名について後方視的に検討した。TFLXの投与量は12mg/kg/日(最大360mg/日)とした。TFLXを投与した83名中78名で,症状の改善を認め,有効率は94.0%であった。5名は3~6日間TFLXを投与しても改善なく,minocyclineに変更して治癒した。83名中46名は初期治療にTFLXを使用し,37名はclarithromycin(CAM),azithromycin(AZM)が無効な患者に投与した。初期治療例では46名中41名(89.1%),CAM,AZMが無効であった37名中37名(100%)に有効であった。副作用として軽症の下痢を3名に認めたが,関節症状や痙攣は認めなかった。
本サーベイランスは1992年以降継続的に実施しており,今回は2010年に日本国内72施設の臨床材料から分離された19菌種12,866菌株の抗菌薬感受性試験を,フルオロキノロン系薬(FQs)を中心とした30薬剤を対象に実施した。呼吸器感染症主要原因菌種のStreptococcus pyogenes,Streptococcus pneumoniae,Moraxella catarrhalis,Haemophilus influenzae はFQsに対し高い感受性を保持していた。一方,マクロライド系薬に対する耐性化の進行がS. pneumoniae,S. pyogenes で顕著であった。H. influenzae においては,β-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性H. influenzae の分離率の経年的な上昇が示された(2002年:25.8%,2004年:40.0%,2007年:50.1%,2010年:57.9%)。腸内細菌科はFQsに対し高い感性率を示したが,Escherichia coliにおいては中間耐性を含めた耐性株の分離頻度はlevofloxacin(LVFX)で29.3%であり,経年的な上昇が示された。しかし,2007年から2010年にかけてはLVFX耐性率に鈍化傾向が認められ(2000年8.2%,2002年11.8%,2004年18.8%,2007年26.2%,2010年29.3%),その要因としては,2009年にLVFX 500 mg製剤の1日1回投与法が認可されたことが関係しているかもしれない。同じ腸内細菌科のKlebsiella pneumoniae に関しては,FQs耐性率は低く,E. coli と異なる成績であった。メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)のFQs感性率はsitafloxacinに対して51.6%,その他のFQsに対しておおよそ10%と低かったが,メチシリン感性S. aureus においては88.5~99.1%の高い感性率を示した。メチシリン耐性コアグラーゼ陰性staphylococciにおけるFQs耐性率は,メチシリン感性コアグラーゼ陰性staphylococciよりも高かったが,MRSAに比べ低値であった。尿路感染症由来Pseudomonas aeruginosa 株におけるFQs耐性率は15.4~21.3%であり,呼吸器感染症由来株の6.1~12.3%に比べ高く,過去のサーベイランスと同様の傾向であったものの,経年的な耐性率の減少が示された。多剤耐性P. aeruginosa 株の分離頻度は,尿路感染症由来で2.3%,呼吸器感染症由来で0.3%であり,2007年から低下していた。Acinetobacter spp.はFQsに対し高い感性率を示した。現在問題になっているAcinetobacter baumannii のimipenem耐性株は2.4%(13株)認められた。Neisseria gonorrhoeae ではFQsに対する耐性率は81.3~82.5%と高い値が示された。Ceftriaxone(CTRX)に対する感性率は2007年まで100%を保持していたが,今回の調査で前回までにはみられなかったCTRX耐性株が認められた。以上,今回の感受性調査の成績から,臨床での使用が17年以上経過したFQsに対し,メチシリン耐性staphylococci,Enterococcus faecium,尿路感染症由来P. aeruginosa,N. gonorrhoeae,E. coli は耐性率約20%以上(19.5~89.2%)と高かったが,過去の成績と同様の傾向であった。E. coli については耐性化が進んでいるものの70%以上の感性率を保持していた。その他の菌種では,80%以上の感性率が保持されていた。
抗菌薬を使用する上で,血中濃度を指標とすることは一般的である。皮膚・軟部組織感染症において,抗菌薬の組織移行性を評価する上で,滲出液中濃度は,より正確な指標となると考えられる。しかし,アルベカシン硫酸塩(ABK)の滲出液中への移行性の検討は行われていない。
そこで,4名の皮膚・軟部組織感染症患者(平均年齢74.3歳;54~85歳)(症例1~4)に対して,200 mgのABKを1日1回5分または60分かけて点滴静脈内投与し,ABK投与開始60分後の血中濃度(C60)と滲出液中濃度を測定した。症例1に対して5分で静脈内投与した時のC60は32.15 ȝg/mL,24時間あたりの平均滲出液中濃度は14.84 ȝg/mLであった。C60に対する24時間あたりの平均滲出液中濃度の比は0.46であった。また,症例2~4に対して60分で静脈内投与した時のC60はそれぞれ14.10, 11.48及び8.26 ȝg/mLであった。症例2の24時間あたりの平均滲出液中濃度は7.80 ȝg/mL,症例3と症例4における8時間(ABK投与開始後16~24時間)あたりの平均滲出液中濃度は0.72, 2.23 ȝg/mLであった。C60に対する滲出液中濃度の比はそれぞれ0.55, 0.06及び0.27となった。
ABKの滲出液中濃度は最高血中濃度を高めることで有意な上昇を示した。