RSウイルス(human respiratory syncytial virus)は呼吸器感染症の代表的な原因ウイルスのひとつであり,冬季に流行する風邪症候群から,気管支炎,細気管支炎,肺炎に進行することがある。特に低体重出生児,心肺系に基礎疾患のある乳幼児での重症化が問題となる。また,生涯にわたって再感染を繰り返し,高齢者を中心としてCOPDや気管支喘息の憎悪との関連も指摘されている。クラリスロマイシンをはじめとするマクロライド系抗菌薬は抗菌作用の他に多彩な免疫調節作用が報告されており,呼吸器系疾患を中心として臨床的な有用性も示されている。本稿ではRSウイルス感染症に焦点をあててマクロライドの作用に関する知見を概説する。
下気道の原因微生物データに基づき2004年11月に,世界に先駆けて「小児呼吸器感染症診療ガイドライン」(日本小児呼吸器疾患学会/日本小児感染症学会)が発行された。本ガイドラインの2011年版では最新情報に基づき更新され,肺炎においては重症度分類が大きく変更された結果,外来治療の対象となる軽症に分類される小児肺炎が大幅に増加することになった。このように外来における治療の幅が広がった背景には,テビペネムピボキシルおよびトスフロキサシントシル酸塩水和物の2つの新規経口抗菌薬が,小児感染症の治療の場で使用が可能となったことがある。
レセプトデータの解析結果によると,両剤の発売後,年を追うごとに肺炎による入院率の下が認められ,両剤により外来治療の幅が広がったことが示唆された。
本稿では,テビペネムピボキシル,トスフロキサシントシル酸塩水和物発売後の肺炎治療の影響について解説する。
本研究では,薬剤耐性緑膿菌(multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa: MDRP)に対する抗菌薬のin vitro併用効果を検討した。広島大学病院において臨床検体から分離された緑膿菌でMDRPの基準に該当した株,すなわち抗菌薬のminimum inhibitory concentration(MIC)がmeropenem≧16𝜇g/mL, ciprofloxacin≧4𝜇g/mL, amikacin≧32𝜇g/mLのすべてを満たした40株を対象とした。
次の8通りの抗菌薬組合せについて,独自のチェッカーボードプレートを作成し,それぞれの併用効果について検討した:colistin(CL)+arbekacin(ABK), CL+aztreonam(AZT), CL+rifampicin(RFP), RFP+ABK, RFP+AZT, ABK+AZT, piperacillin(PIPC)+ABK, PIPC+AZT。算出したfractional inhibitory concentration indexにより併用効果(相乗作用,相加作用,不関,拮抗作用)を判定した。最も大きな併用効果が認められたのは,i)CL+RFP(相乗作用:80.0%,相加作用:17.5%),ii)RFP+ABK(相乗作用:7.5%,相加作用:70.0%),iii)RFP+AZT(相乗作用:5.0%,相加作用:77.5%)であった。これらの組合せにおける各抗菌薬の算術平均MIC値はそれぞれ,i)CL(単剤:1.38𝜇g/mL,併用:0.26𝜇g/mL),RFP(単剤:19.85𝜇g/mL,併用:1.85𝜇g/mL),ii)RFP(単剤:19.85𝜇g/mL,併用:7.53𝜇g/mL),ABK(単剤:8.87𝜇g/mL,併用:2.79𝜇g/mL),iii)RFP(単剤:19.85𝜇g/mL,併用:10.15𝜇g/mL),AZT(単剤:28.3𝜇g/mL,併用:6.65𝜇g/mL),と有意に低下した。対象40株のうち,メタロ-𝛽-ラクタマーゼ産生は20株,アミノグリコシド6’-N-アセチル基転移酵素検出は37株にそれぞれ認められたが,これらの耐性因子がi~iii)の併用効果に及ぼす有意な影響は認められなかった。
以上の結果より,MDRPに対しては,RFPにCL, ABKまたはAZTを併用投与することの有用性がin vitroにおいて示された。ただし今後も,他の組合せについてin vitro併用効果データを集積し比較検討することが重要と考えられた。
経口キノロン系薬であるsitafloxacin(STFX,グレースビット®錠50 mg・細粒10%)は,2011年8月に1回100mg1日1回投与が新たな用法・用量として承認され,2011年12月から2013年5月にかけて本用法・用量における使用成績調査を実施した。全国226施設の医療機関から1,186例の調査票を収集し,安全性は1,089例,有効性は1,069例で検討した。
副作用発現率は2.11%(23/1,089例)であり,重篤な副作用は認められなかった。主な副作用は下痢1.10%(12/1,089例)であり,12例中10例が本剤投与開始から4日以内に発現し,転帰は不明の1例を除き,いずれも回復または軽快した。
本剤と併用注意となっているフェニル酢酸系またはプロピオン酸系非ステロイド性抗炎症薬は17.6%(192/1,089例)で併用されていたが,併用例で中枢神経系副作用は認められなかった。
有効率は全体で96.4%(1,030/1,069例)であり,感染症領域別には,呼吸器感染症97.0%(387/399例),尿路感染症96.7%(353/365例),婦人科領域感染症94.7%(36/38例),耳鼻科領域感染症92.3%(132/143例),歯科・口腔外科領域感染症98.4%(122/124例)で,いずれも90%以上であった。
菌消失率は全体で94.4%(185/196株)であり,グラム陽性菌95.4%(62/65株),グラム陰性菌92.2%(94/102株),偏性嫌気性菌100.0%(11/11株),非定型菌100.0%(18/18株)であった。
以上,STFX 1回100 mg 1日1回投与は,その安全性に大きな問題点は認められず,呼吸器,尿路,婦人科,耳鼻科,歯科・口腔外科の各領域感染症に対して90%以上の有効率を示したことから,使用実態下においても有用な投与方法であることが確認された。
アジスロマイシン(azithromycin; AZM)は15員環マクロライド系抗菌薬で,グラム陽性菌,グラム陰性菌に加え,非定型病原体に対しても幅広い抗菌スペクトルを有する薬剤である。これまでに,軽症から中等症市中肺炎(community-acquired pneumonia; CAP)に対するAZM注射薬の有効性や安全性を前方視的に検討した報告はない。今回,A-DROPにおける軽症もしくは中等症のCAPを対象として,AZM注射薬の有効性および安全性について検討した。CAP症例に対してAZM注射薬500 mgを1日1回連日投与し,投与後の臨床症状,検査所見,胸部X線写真の所見などを総合的に評価し,AZM投与終了時の臨床効果を判定した。64例が登録され,有効性解析は61例,安全性解析は62例について評価した。有効性が解析可能であった61例のAZMの有効率は88.5%であり,A-DROPによる重症度別の有効率は,軽症85.2%,中等症91.2%であった。また,日本呼吸器学会の成人市中肺炎ガイドラインにおける細菌性肺炎と非定型肺炎の鑑別に基づいた評価では,非定型肺炎疑い群では91.7%(12例中11例)と高い有効率を得た。また,AZMと因果関係が否定できない有害事象は19例20件(肝機能障害15例,下痢4例,点滴部位の血管痛1例)で認められたが,いずれも軽度であり,投与終了後には軽快し,AZMの投与を中止した症例はなかった。
AZM注射薬は,軽症および中等症の市中肺炎に対して有効な薬剤と考えられ,入院管理を必要とするようなCAP症例では有用な治療選択肢となり得ると考えられた。
慢性肺アスペルギルス症は治療に難渋し,長期間の抗真菌薬投与が必要となる。ところが,外来診療ではVoriconazole(VRCZ)とItraconazole(ITCZ)の2つのアゾール系抗真菌薬しか選択肢がないのが現状である。Liposomal amphotericin B(L-AMB)は比較的長い半減期を持っており,外来診療での治療が行える可能性が示唆される。今回我々は,慢性肺アスペルギルス症3症例に対して,L-AMBを2.5mg/㎏/日,週2回1か月間投与という,外来でのL-AMB間歇投与による慢性肺アスペルギルス症の治療を試みたので報告する。L-AMB間歇投与により,3例中2例は症状の改善と,画像上は若干の改善のみであるが,空洞壁の縮小が認められた。有害事象は倦怠感1例,経過中発熱1例であった。1か月の投与後,無加療にて経過を見たが,いずれの症例でも増悪を認めなかった。外来L-AMB間歇投与療法は肺アスペルギルス症治療のオプションとして使用できることが示唆された。