1982年7月から外科感染症分離菌に関する多施設共同研究を行ってきたが,ここでは2011年度(2011年4月~2012年3月)の成績を中心にまとめた。
1年間で調査対象となった症例は259例であり,このうちの204例(78.8%)から754株の細菌と31株の真菌が分離された。一次感染から523株,術野感染から231株の細菌が分離された。一次感染では,嫌気性グラム陰性菌の分離頻度が高く,次いで好気性グラム陰性菌であり,術野感染では,好気性グラム陽性菌の分離頻度が高く,次いで嫌気性グラム陰性菌であった。好気性グラム陽性菌については,一次感染においてEnterococcus faecalisやEnterococcus faeciumなどのEnterococcus spp. の分離頻度が最も高く,次いでStreptococcus anginosusなどのStreptococcus spp., Staphylococcus aureusなどのStaphylococcus spp.であった。術野感染からは,E. faecalisなどのEnterococcus spp. の分離頻度が最も高く,次いでS. aureusなどのStaphylococcus spp.であった。好気性グラム陰性菌では,一次感染からEscherichia coliの分離頻度が最も高く,次いでKlebsiella pneumoniae, Pseudomonas aeruginosa, Enterobacter cloacaeなどであり,術野感染からはE. coliの分離頻度が最も高く,次いでP. aeruginosa, K. pneumoniae, E. cloacaeの分離頻度が高かった。嫌気性グラム陽性菌では,一次感染からEggerthella lenta, Parvimonas micra, Collinsella aerofaciens, Lactobacillus acidophilus, Finegoldia magna,術野感染からはE. lenta, P. micra, L. acidophilusの分離頻度が高かった。嫌気性グラム陰性菌では,一次感染からは,Bacteroides fragilisの分離頻度が最も高く,次いでBilophila wadsworthia, Bacteroides thetaiotaomicron, Bacteroides uniformis, Bacteroides vulgatusであり,術野感染からはB. fragilisの分離頻度が最も高く,次いでBacteroides caccae, B. thetaiotaomicron, Bacteroides ovatus, B. wadsworthiaであった。バンコマイシン耐性のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)やEnterococcus spp.及び多剤耐性緑膿菌(MDRP)は認められなかった。
近年,市中感染の原因菌においてcefotaxime(CTX)に耐性を示すCTX-M型Extended-spectrum β-lactamase(ESBL)産生菌の増加が問題となっている。ESBL確認試験の実施が困難な場合には,代替方法としてCTX耐性大腸菌の検出状況を感染対策に生かすこともある。今回私たちは,院内の微生物検査室を持たない市中病院におけるCTX耐性大腸菌の分離頻度および血液培養にてESBL大腸菌が検出された症例の臨床的背景を検討した。対象は2009年1月から2013年11月までに各種臨床検体から検出された大腸菌の中でCTXに耐性を示す菌とした。抗菌薬の使用状況に関しては,第3世代セファロスポリン系注射用抗菌薬のAntimicrobial use density(AUD)の年次推移を検討した。また,ESBL産生大腸菌の血流感染症における臨床的検討を行った。その結果,CTX耐性大腸菌の分離頻度は入院および外来において2009年は5.4%, 3.9%であったが,2013年にはそれぞれ32.8%, 17.8%と著明に増加した。また,第3世代セファロスポリン系抗菌薬のAUDも20.6から28.9と増加した。さらにESBL産生大腸菌(n=8)による血流感染症と非ESBL産生大腸菌(n=32)による血液感染症を比較検討した結果,男性,寝たきり,尿道カテーテルの使用,中心静脈カテーテルの使用,慢性腎不全が,ESBL産生大腸菌で多く認められた。
肺非結核性抗酸菌症は内科的治療に難渋する疾患である。現在の標準的治療には限界があり,新規薬剤の応用が必要になると考えられる。フルオロキノロン系抗菌薬は候補の一つと考えられる。肺非結核性抗酸菌症に対するsitafloxacin(STFX)の有用性を検討した。まずMICを測定した。フルオロキノロン系抗菌薬の中でもSTFX,moxifloxacin(MFLX),gatifloxacin(GFLX)のMICが低く,gerenoxacin(GRNX),tosufloxacin(TFLX)などはMICが高い傾向であった。これらの結果をもとに,STFXを用いて,肺Mycobacterium avium-intracellulare complex(MAC)MAC症2症例に対して治療を行った。症状,画像とも改善が得られた。有害事象は軽微であった。STFXはMACに対して優れた抗菌活性を有する薬剤と考えられ,肺MAC症に対する有望な薬剤と考えられた。