腸内には500種類以上100~1000兆の腸内菌が棲みつき腸内フローラ(細菌叢)を形成する。近年,16SリボソームRNA遺伝子解析法およびメタゲノム解析法の開発により,腸内フローラ研究が飛躍的に進歩した。Clostridium difficile感染症,炎症性腸疾患,過敏性腸症候群,大腸癌,肝疾患(肝硬変,非アルコール性脂肪性肝炎,肝癌),肥満,2型糖尿病,動脈硬化症,多発性硬化症など極めて多数の内科疾患と腸内フローラとの関連性についての新たな知見が報告されている。両者の関連性のみならず,疾病発症に腸内フローラがどのような役割を果たしているかの研究が今後期待される。
Mycobacterium mucogenicumによる敗血症性肺塞栓症の6歳男児例を経験した。患児は1年前にB前駆細胞性急性リンパ性白血病と診断され以降化学療法中であった。6コース目の化学療法中に発熱を来し,血液培養が陽性となった。グラム染色で菌体が確認されず,チール・ネルゼン染色で菌体が確認された。質量分析計を用い迅速同定を行ったところMycobacterium phocaicumの可能性が高いと判定された。また,胸部CTを施行したところ肺に多発する小結節影を認め,迅速発育抗酸菌による敗血症性肺塞栓症と診断した。迅速発育抗酸菌が分離されてから早期に中心静脈カテーテル抜去と多剤抗菌薬投与を行い,速やかに症状改善に至った。迅速発育抗酸菌は最終的に遺伝子解析によりM. mucogenicumと同定された。M. mucogenicumは迅速発育抗酸菌の1種であり,水や土壌などから検出される環境細菌である。日和見感染の原因となり,肺や皮下に膿瘍を形成することがあるがその頻度は稀である。血液培養陽性であるにもかかわらずグラム染色で菌体が確認されない場合には,迅速発育抗酸菌の可能性も考慮し対応することの重要性が示唆された。