ペニシリン,ストレプトマイシンあるいはエバーメクチン等をはじめとする微生物の生産する天然化合物は医薬,動物薬,農薬等の分野で大きな社会貢献を果たしてきた。これらの生産微生物である放線菌や糸状菌は,その培養液に多様な二次代謝産物を生産することで知られており,これまでに様々な生物活性物質を求めて探索研究がなされてきた。
北里大学 大村創薬グループではこれまでに類縁体を含めて約500の新規化合物を発見してきた。これら生産菌株と探索研究の過程で既知物質と同定された物質の生産菌も含めて北里微生物資源ライブラリーと称し長期保存法により保存してきた。
これら保存菌株の復元培養液と新鮮分離株の培養液から,生産化合物の物理化学的性質,すなわちLC/UVやLC/MSなどを解析し,データベースと照合し,新規と予測された物質の単離精製を進めた。本アプローチをPhysicochemical screeningと称し2011年から現在までに類縁体も含めて35の化合物を発見した。その後,学内外との共同研究により何らかの生物活性を見出している。
ストレプトマイシンの生産菌として凍結乾燥法によって43年間保存されてきたStreptomyces griseus OS-3601株の培養液から,微生物由来では極めて珍しいイミニウムを含む化合物イミニマイシンAを発見した。また,西表島で採取したキンギンソウの根から分離した希少放線菌Polymorphospora rubra K07-0510の培養液から1分子のトレハロースに2分子のアンジェリカ酸が結合したトレハンジェリンを発見した。本化合物は,細胞保護作用やコラーゲン促進活性等が見出され応用研究に発展している。
我々の結果は,微生物の多様な二次代謝産物生産能力を生かしきれていないことを示している。
集中治療室(Intensive Care Unit, ICU)入室患者はしばしば病院内感染(Hospital acquired infection, HAI)を併発する。当院ではICUにおいて鼻腔培養による積極的監視培養(Active surveillance culture, ASC)を開始している。本研究では,当院ICUに入室した全患者を対象として,感染症の有無にかかわらず入室時に鼻腔粘液の培養によるASCを実施した。翌週以降も引き続きICUに在室した場合は,退室するまで定期的に週1回ASCを実施した。ICU入室時と翌週以降の鼻腔培養から分離された菌を比較したところ,HAIの原因になりうる腸内細菌科細菌やブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌などのグラム陰性桿菌やカンジダ属などの酵母用真菌が翌週以降のASCからより多く分離された。一方,緊急入院によるICUへの直接入室群と他病棟からの転棟群を比較したが,分離菌の割合に有意な変化は認められなかった。ICU入室患者のほとんどは抗菌薬を投与されている点を考慮すると,ICU長期滞在に伴って抗菌薬の使用がICU入室患者の鼻腔の細菌叢に影響を与えていることが示唆された。ASCによって患者の鼻腔の保菌状況や細菌叢の変化を把握することは,適切かつ迅速な感染症診療や感染対策に有用であると考えられた。