2014年に全国の15医療施設において種々の臨床材料から分離された好気性グラム陽性菌30菌属種867株および嫌気性菌21菌属種185株について各種抗菌薬のMICを微量液体希釈法又は寒天平板希釈法で測定し,抗菌活性を比較検討した。
Staphylococcus aureusのmethicillin耐性株分離率は49.0%, Staphylococcus epidermidisのmethicillin耐性株分離率は76.3%を示した。S. aureus のmethicillin耐性株分離率は,過去10年間(2004年–2014年)で約10%低下した。S. aureus のmethicillin耐性株に対するvancomycinのMIC90値は1μg/mL, MIC range上限値は2μg/mLであり,vancomycin非感性株は検出されなかった。また,daptomycin及びlinezolid非感性株も検出されなかった。
Streptococcus pneumoniaeにおいて,penicillin感性株及びpenicillin耐性株の割合はそれぞれ48.5%及び12.1%であった。β-ラクタム系抗菌薬標的の遺伝子変異に基づいたgenotypeの分類では,penicillin感性,penicillin耐性は各々8.1%, 40.4%であった。
Enterococcus faecalisとEnterococcus faeciumに対するlinezolidのMIC90値はいずれの菌種においても2μg/mLであり,感性率はそれぞれ100%, 98.6%を示した。これらの菌種におけるvancomycinのMIC90値はそれぞれ2μg/mL, 1μg/mLであり,感性率はいずれにおいても100%を示した。
近年,日本を含めた東・東南アジアを中心として,高粘稠性のKlebsiella pneumoniae(hvKP)が臨床上問題となっている。本菌の高病原性には,莢膜多糖合成遺伝子であるregulator of mucoid phenotype A(rmpA)等の働きによる莢膜多糖の過剰産生が関与している。今までhvKPの高病原性のメカニズムに関する研究は数多くされてきているが,抗病原性療法に焦点をあてた研究はない。我々は,hvKPの高粘稠性を抑制することができる薬剤を既存の抗菌薬の中から探索した。結果,リファンピシン(RFP)に強い粘稠性抑制作用があることを発見した。またRFPは莢膜の厚さを減少させ,さらにrmpAを中心とした莢膜関連遺伝子の転写を抑制することが判明した。以上のことから,リファンピシンが本菌による難治性感染症に対する治療薬として役立つ可能性があることが示唆された。
2002年に日本抗生物質学術協議会(現 公益財団法人 日本感染症医薬品協会)・ファイザー感染症研究助成(海外留学助成)を受け,米国University of Minnesotaに留学した。初年度は助成で,2年目は現地でgrantを受けて,計2年間留学することができた。2004年に帰国して約15年が経過した。この留学は,臨床・研究・教育に対する考え方に大きな変化をもたらした。助成を受けて留学することの意義や,研究のあり方について述べる。