The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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バーチャルイシュー
72 巻, 1 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
総説
  • 西村 吉雄
    2019 年72 巻1 号 p. 1-13
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    糖質の環内酸素が窒素原子に置換したイミノ糖質は,これまでグライコミメティクス(糖模倣体)として注目されてきている。著者らは,従来のイミノ糖質とは異なる糖質のアノメリック炭素を窒素原子に置換した Gem-diamine 1-N-iminosugarを新規グライコミメティクスとして提唱した。グライコノラクトンをキラル源とする汎用性に富む立体選択的全合成法および微生物代謝産物Siastatin Bからの半合成法を開拓し種々多様な1-N-イミノ糖を創製した。1-N-イミノ糖のプロトン化されたカチオンが糖水解酵素反応遷移状態のオキソカルベニュムイオンのグリコピラノシルカチオンをmimic(模擬)し,強力で特異的な糖水解および糖転移酵素阻害活性を示した。近年,1-N-イミノ糖は癌転移,インフルエンザ感染,炎症性疾患など複合糖質の糖代謝が関与する様々な病態の解明のツールや治療薬のリード化合物の新しいソースとして認識されてきている。本稿では,Gem-diamine 1-N-iminosugarの合成,生物・薬理活性,創薬の可能性について近年の進展について概説する。

  • 井本 正哉
    2019 年72 巻1 号 p. 15-23
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    高齢化に伴いわが国でも罹患率が急上昇している去勢抵抗性前立腺がんの治療薬シードのスクリーニングから放線菌が生産する新規化合物アンタルライドを発見した。アンタルライドは第2世代のアンドロゲン受容体(AR)アンタゴニストであるエンザルタミド耐性ARに対してもアンタゴニスト活性を示し,耐性を克服できる可能性を示唆した。一方,Bcl-2/Bcl-xLが過剰発現することでアポトーシスに耐性となったがんに対する制がん剤シードとして,放線菌培養液からインセドニンを発見した。インセドニンは脂肪酸合成に関わる酵素を阻害することで,アポトーシス耐性を克服する作用があることを明らかにした。また,がんと密接に関係があると考えられているオートファジーの制御物質を微生物培養液から探索し,キサントフモールを単離した。さらにキサントフモールがValosin-containing protein阻害を介してオートファジーを阻害していることを明らかにした。一方,ヒトがんでその変異が観察されているβカテニンを標的とした制がん剤シードの探索を行い,メタシクロプロジギオシン(mcPG)やノナクチンなどに目的の活性を見出した。このことから,ミトコンドリアを標的とすることがβカテニン突然変異を有するがん細胞にとって潜在的な化学療法戦略であることを示唆している。

  • 飯島 則文
    2019 年72 巻1 号 p. 25-30
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    我々の体は,病原体が生体内に侵入した際に速やかに反応し,多様な機能を持つ細胞群を活性化することにより生体を防御する免疫システムを備えている。様々な重篤な疾患を引き起こす病原体から生体を長期間防御するために重要な役割を果たす免疫記憶とは,投与された抗原もしくは,感染した病原体由来の抗原に抗原提示細胞を含む免疫担当細胞が反応し,抗原特異的なB細胞およびT細胞の分化を誘導し,末梢組織を含む様々な臓器で抗原特異的な二次反応を増強することである。このような免疫反応は,血中を循環するメモリーT細胞,メモリーB細胞および抗体が全身性に作用すると考えられていた。近年,皮膚組織や粘膜組織を含む末梢組織には,我々の予想を遥かに超える数のメモリーT細胞が長期間局在していることが明らかとなっており,その役割が注目されている。

    単純ヘルペスウィルス2型(HSV-2)は,主に生殖粘膜組織の上皮細胞に感染後,末梢神経を上行し,後根神経節へ移行することが知られている。これまで試験された全てのワクチン候補薬は,ワクチン投与後,被験者血液中にワクチン抗原に対する細胞性免疫および液性免疫が誘導されるにもかかわらず,HSV-2感染を防御するワクチン効果が認められていない。以上の結果から,HSV-2に対する新たな治療方法を確立するためには,HSV-2に対する生体防御機構の更なる理解が必要であると考えられる。

    本稿では,メモリーT細胞を中心とした組織特異的免疫応答の重要性について,最新の知見を紹介します。

  • 作田 庄平
    2019 年72 巻1 号 p. 31-40
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    アロサミジン,アフラスタチンAはともに放線菌の代謝産物である。アロサミジンは,はじめてのキチナーゼの阻害物質として発見され,キチンを生体成分として持つ生物に対する作用だけでなく,キチンを持たない生物に対しても生物活性を示し,哺乳類に対しては抗喘息活性を有することが見出された。また,放線菌に対してアロサミジンは,キチナーゼ生産促進作用を持ち,土壌環境におけるキチン代謝や菌叢を調節するシグナル物質として機能することが示唆された。アフラスタチンAは,カビ毒であるアフラトキシンの生産阻害物質の探索研究によって最初に見出された化合物であり,ユニークな構造を有する。アフラスタチンAおよび類縁化合物であるブラストサイジンAの全絶対立体配置が決定され,それらはタンパク質合成阻害作用を持ち,プロテインフォスファターゼを阻害することが示された。アフラスタチンの発見は,微生物や植物由来の他のアフラトキシン生産阻害物質に関する研究へと発展した。

  • 供田 洋
    2019 年72 巻1 号 p. 41-53
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    微生物は多様な構造を有する化合物を生産する能力を有している。投げ縄ペプチド(lasso peptide)は,細菌のリボソームで生合成された約20残基のアミノ酸からなるポリペプチドで,N末端アミノ酸のアミノ基が7から9残基目に存在するAspあるいはGluの側鎖カルボン酸とイソペプチド結合して環状マクロラクタムリングを形成し,このリングをC末端側のペプチド鎖テールが通り抜け,投げ縄あるいは結び目のような立体構造を示す化合物群である。投げ縄ペプチドはこのような特殊な3次元構造と多様な生物活性を有することから,この10年間でその研究が大きく進展した。本総説では,その構造,活性,生合成について解説する。

原著
  • 八木澤 守正, Patrick J. Foster, 黒川 達夫
    2019 年72 巻1 号 p. 55-79
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    我が国における抗生物質医薬品は,端緒となったペニシリンが微生物の生産する天然物の混合物であったことにより,ワクチンなどと同様に生物学的製剤と見なされ,保健衛生上で特別な注意を要する医薬品として,個別の“基準品目”として取り扱われることとされた。1947年5月に制定された「ペニシリン基準」などの各種抗生物質医薬品に係る個別の基準は,1952年3月に制定された「抗菌性物質製剤基準」において統合された後に,「日本薬局方(「日局」)」の改正事項との整合や国際的な科学水準への適合などの目的により,1969年8月に「日本抗生物質医薬品基準(「日抗基」)」として近代的な基準書へと発展した。

    我が国においては,「日抗基」に基づく品質管理と国家検定が,劣悪な品質の抗生物質医薬品や偽薬の流通を妨げてきており,高品質の抗生物質医薬品が製造され臨床に供給されることにより,致死的な感染症や悪性腫瘍が制御され,ひいては国民の健康が維持されてきた。日本人の平均寿命が1947年から2000年の53年間に男性が約28歳,女性が約31歳の延長が認められた要因の一つとして,高品質の抗生物質医薬品による致死的な疾患に対する治療への貢献を挙げることが出来る。

    医薬品の品質規格及び試験法は,薬事法第41条に基づく「日局」において主要な規定がなされており,同法第42条に基づく「日抗基」は「日局」の改正に合わせて1982年,1990年及び1998年の3回にわたり大幅な見直しが行われてきたが,「日局」に先駆けて新しい試験法の採用も行われてきた。その一方で,1998年の「日抗基」大改正における収載原薬のうちの63%までが化学合成工程を経て製造される物質となっており,保健衛生上で特別な注意を要する医薬品として取り扱う蓋然性が無くなっていた。1999年3月には,「日抗基」収載医薬品を「日局」へ移行するという行政的な判断がなされ,2000年より移行に向けての作業が開始されたことに伴い,「日抗基」の最後の大改正が行われた。本報においては,「日抗基」の制定に至る経緯と特徴及び4回にわたる大改正の内容を調査・解析し,我が国における抗生物質医薬品の品質管理の経緯を薬史学的に詳述した。なお,本報では「日局」への統合に向けての準備作業までの著述に留め,統合作業の詳細については続報において著述することとする。

症例報告
  • Marie Mitani, Miyuki Morozumi, Masahiro Bamba, Makoto Anzo, Kimiko Ubu ...
    2019 年72 巻1 号 p. 81-87
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    Group B Streptococcus (GBS, or Streptococcus agalactiae) is among the most common causes of severe bacterial infections in early infancy. Combination therapy with ampicillin (AMP) plus gentamicin (GM) is recommended for such GBS infections, although this therapeutic approach has been based on relatively old in vitro and in vivo studies. Recently, a synergistic effect from this combination was found to involve ribosomal binding by GM allowed to enter bacterial cells by cell wall damaged from AMP. Here we report a 2-month-old boy with meningitis caused by GBS, against which AMP plus GM proved clinically effective. GBS isolated from his cerebrospinal fluid and blood belonged to capsular type III and sequence type 17, and possessed hypervirulent GBS adhesin (HvgA); GBS isolated from maternal vaginal samples was the same type. In vitro determinations of time-kill kinetics forthe patient’s isolate showed enhancement of bactericidal activity by combining AMPwith a small amount of GM. This case report provides clinical and laboratory evidence supporting effectiveness of combination therapy of AMP plus GM for severe GBS infection in early infancy.

  • Hirotoshi Kikuchi, Kurumi Asako, Hajime Kono, Miwa Asahara, Takashi Ta ...
    2019 年72 巻1 号 p. 89-95
    発行日: 2019/03/25
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    Mycobacterium heckeshornense is rarely isolated from a clinical sample. We report a case of a patient with polymyositis in whom a deep abscess formed in the gluteus maximus muscle and in which M. heckeshornense was identified by DNA sequencing. Combination therapy of levofloxacin and clarithromycin for 2 years improved inflammatory findings and 5 years have passed without recurrence of the gluteal abscess. Identification of the bacterial strain in nontuberculous mycobacterium (NTM) infection is important to determine the treatment plan and accumulation of data on drug sensitivity is required to establish a therapeutic strategy for rare pathogen such as M. heckeshornense.

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