爪白癬の主たる治療法である経口療法に利用可能な抗真菌薬は,これまでアゾール系のイトラコナゾール(ITCZ)およびアリルアミン系のテルビナフィン塩酸塩(TBF)の2薬剤に限られていた。いずれの薬剤もかなり良好な治療効果を示すものの,生物学的利用能,相互作用,副作用などの点で有用性に限界があった。この状況を背景に,幅広い抗真菌スペクトル(白癬菌を含む)と強力なin vitro抗真菌活性をもつ新規アゾール系抗真菌薬ラブコナゾール(RVCZ)の水溶性プロドラッグであるホスラブコナゾールL-リシンエタノール付加物(F-RVCZ)の経口剤が国内で開発され,昨年わが国の規制当局より爪白癬の治療への適応が承認された。本薬の長所は,高い完全治癒率に加えて,2つの既存競合薬ITCZおよびTBFのいずれをも凌ぐすぐれた生物学的利用能,薬物動態,および安全性プロフィールにある。F-RVCZの使用経験はITCZやTBFにくらべてまだ少ないものの,経口爪白癬治療薬として高い有用性をもち,既存薬の治療に反応しなかった患者や耐えられなかった患者における代替薬としてのみならず,多くの患者における一次療法の第1選択薬となる可能性も期待される。この視点に立って,今後の臨床研究を通してF-RVCZの爪白癬治療における役割をより明確にすることが重要である。
ゾシン®静注用は,2012年9月に腹膜炎,腹腔内膿瘍,胆嚢炎,胆管炎を適応症として追加承認され,2012年12月から2016年3月までの期間で本剤の使用実態下での小児の腹腔内感染症における安全性と有効性の検討を目的とした特定使用成績調査を実施した。全国32施設において148例が登録され,安全性は148例,有効性は142例について検討した。
副作用は148例中12例(14件)に認められ,発現率は8.1%であった。副作用の内訳は,下痢が6件,肝機能異常及び発疹が2件,眼瞼浮腫,肝障害,発熱,白血球数減少がそれぞれ1件で,このうち肝障害1件が重篤であった。すべての事象は既知の副作用であり,新たな副作用は認められなかった。また,いずれの副作用も回復又は軽快した。
本剤の初回承認時の適応症である敗血症,肺炎,腎盂腎炎,複雑性膀胱炎の小児患者を対象に実施した特定使用成績調査と比較して副作用発現率の上昇や新たに発現した副作用は認められなかった。しかし,本調査においても下痢,肝機能異常,肝障害及び発疹が主な副作用として認められ,小児において本剤の注意すべき副作用であることが再確認された。
有効性評価症例142例における有効率は90.1%であった。疾患別有効率は,腹膜炎で94.0%,腹腔内膿瘍で85.7%,胆管炎で82.4%であった。
本調査における安全性及び有効性の結果は,本剤の初回承認時に敗血症,肺炎,腎盂腎炎及び複雑性膀胱炎の小児患者を対象に実施した特定使用成績調査における結果と同様の傾向であった。本調査で得られた結果から,小児の腹腔内感染症に対する安全性及び有効性について臨床上大きな問題は認められず,本剤は,今後も各種の感染症診療ガイドラインにおいて推奨されているエンピリック治療薬として有用であると考えられた。
2014年に全国の15医療施設において種々の臨床材料から分離された好気性グラム陰性菌18菌属種,1,220株の各種抗菌薬感受性測定および一部の耐性因子の遺伝子検出を行い,経年変化も含めた疫学動向を調査した。
セファロスポリン系に対する薬剤感受性からextended spectrum β-lactamase(ESBL)産生株と判定された菌株の割合は,Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Klebsiella oxytoca, Proteus mirabilis の各菌種においてそれぞれ22.4%, 6.3%, 5.8%, 12.2%であった。ESBL産生E. coliの分離率はこの10年で増加してきたが,2014年は前回調査の2012年と同程度であった。ESBL産生K. pneumoniaeの分離率はE. coliと比べて低値であるが,2006年の2.4%から緩やかに増加している。検出されたESBL産生E. coli の遺伝子型としてはCTX-M typeが主流であり(34株中33株,97.1%),CTX-M typeの33株中26株はCTX-M-9グループであった。また,これまでのサーベイランスでは検出されていなかったSHV-12型ESBL産生E. coli が1株検出された。ESBL産生E. coliにおけるlevofloxacin耐性株の割合は82.4%であった。
2014年臨床分離ブドウ糖非醗酵グラム陰性菌において,抗菌薬感受性は2012年分離株の感受性測定結果から大きく変化していなかった。Multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa の分離率は1.0%, multidrug-resistant Acinetobacter は分離されず,これまでの調査同様,低い水準を維持していた。
埼玉医科大学病院における2008年から2016年までの8年間におけるバンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin resistant enterococci: VRE)の入院時スクリーニング検査によって保菌が確認された患者の臨床的検討を行った。対象患者は25,779人で,VREの保菌が認められた患者は53人であり,陽性率は0.20%であった。陽性患者は男性が33人,女性が20人で,年齢は0歳から95歳(中央値は68歳)であった。検出されたVREはEnterococcus faecium が47株(88.7%),Enterococcus faecaclis が6株(11.3%)であり,耐性遺伝子はE. faeciumではvanA遺伝子が38株(80%),vanB遺伝子が9株(20%)であり,E. faecalisの6株はすべてvanA遺伝子を保有していた。基礎疾患は悪性腫瘍が14人で全陽性患者の26%であった。それに続いて腎不全が13人で24%,肺炎が4人で7.5%に認められた。
本邦の「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016–2020」に緑膿菌のカルバペネム耐性率の数値目標が設定された。これを達成するためには,耐性菌出現リスクのある抗菌薬の適正使用に加えて,既に存在するカルバペネム耐性緑膿菌を減少させる取り組みが求められる。今回,本耐性菌に対する,カルバペネム系薬以外の抗緑膿菌活性を有する注射用抗菌薬の併用時の有効性を,2012年に分離された緑膿菌286株の薬剤感受性データを用いて検討した。
CLSI M100-S28の解釈基準に基づき判定すると,緑膿菌286株中,Imipenem又はMeropenemに対し,intermediate又はresistantを示すカルバペネム耐性緑膿菌は84株であった。84株の感性率は,Piperacillin(PIPC),Tazobactam/Piperacillin(TAZ/PIPC),Ceftazidime(CAZ)及びCefepime(CFPM)に対しては58.3~70.2%, Ciprofloxacin(CPFX)及びLevofloxacin(LVFX)に対しては67.9%及び64.3%であった。Gentamicin(GM)及びAmikacin(AMK)に対しては88.1%及び92.9%であり,高い感性率を示した。
β-ラクタム系薬であるPIPC, TAZ/PIPC, CAZ, CFPMと,各々CPFX, LVFX, GM, AMKとの2剤併用時に,少なくとも一方の抗菌薬にsusceptibleを示す株の割合を感受性カバー率として算出した。その結果,カルバペネム耐性緑膿菌に対する感受性カバー率は,β-ラクタム系薬とCPFX又はLVFXとの併用では64.3~86.9%, β-ラクタム系薬とGM又はAMKとの併用では88.1~96.4%であった。
以上,カルバペネム耐性緑膿菌に対し,カルバペネム系薬以外の抗緑膿菌活性を有するβ-ラクタム系薬と,各々ニューキノロン系薬又はアミノグリコシド系薬との併用による感受性カバー率の拡大が確認された。これら抗菌薬の併用治療の推進により,カルバペネム耐性率の低減につながることが期待される。