The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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バーチャルイシュー
73 巻, 4 号
選択された号の論文の3件中1~3を表示しています
総説
  • 酒井 純
    2020 年73 巻4 号 p. 93-102
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    臨床現場において血流感染症の判定には,血液培養ボトルによる菌の培養は必要不可欠な検査である。一方で,血液培養ボトル陽性から菌種同定までにはタイムラグがあり,迅速診断が必要な血流感染症の症例では懸念が残る。とりわけ,発熱性好中球減少症の例では,血液培養が陰性であることも多い上,タイムラグにより予後不良になりやすい。近年,新しい次世代シーケンサーとして,ノート型PCにUSBポートで接続が可能なナノポア型シーケンサーMinIONTMが開発された。今回,発熱性好中球減少症の起因菌診断に,今後MinIONシーケンスが有用か検証した。

    方法は,血液培養ボトルからゲノムDNAを抽出・調整した後,ゲノムDNAにバーコードを付加した。バーコード付加後のDNA溶液を,PCに接続しているMinIONTMフローセルに滴下した。PC内のMinKNOWを起動させ,フローセルに添加した溶液中のDNA情報を記号化した。記号化されたデータを,Epi2MEにて解析し,既存データから最も相同性の高い菌種を同定結果とし,既存の菌種同定法の結果と比較した。

    また,同時にESBL関連遺伝子が検出可能かも検証した。結果,グラム陰性菌は,MALDI-TOF MS, 16S rRNAシーケンスの結果と100%一致となった。一方で,グラム陽性菌は60%程度の一致率であり,とりわけStaphylococcus aureus, Staphylococcus capraeの一致率が低かった。ESBL関連遺伝子は2検体で検出され,Disk法による判定と一致した。

    MInIONシークエンスは,通常煩雑かつ時間経過がかかる次世代型シーケンサーをポータブル化し,その解析・菌種同定まで短時間かつ簡易的な手技で可能にした技術である。本研究では,血液培養ボトル陽性となった時点から,6時間程度で菌名同定まで判定可能であり,グラム陰性菌単菌種に関しては感度100%と良好な結果を示したことから,MALDI-TOF MSや16S rRNAシーケンスと比較して,グラム陰性菌の血流感染症診断の新たな診断技術として可能性が見出された。一方,グラム陽性菌では同様の手法での感度は低く,DNA抽出方法に関して改善の余地も残した。今後,上記問題点を解決し,発熱性好中球減少症に対するMinIONシーケンスの可能性に関して検証を続ける。

原著
  • 小山 貴彦, 山口 康信, 黄 錦鴻, 坂倉 和明
    2020 年73 巻4 号 p. 103-113
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    ゾシンは,2015年6月に発熱性好中球減少症を適応症として追加承認され,2015年8月から2018年7月までの期間で本剤の使用実態下での小児の発熱性好中球減少症における安全性と有効性の検討を目的とした特定使用成績調査を実施した。全国48施設において142例が登録され,安全性は136例,有効性は117例について検討した。

    副作用は136例中23例(30件)に認められ,副作用発現率は16.9%(23/136例)であった。すべての副作用は非重篤であり,2例以上発現した副作用は,下痢が20例,肝機能異常が3例であった。使用上の注意から予測できない副作用として低ナトリウム血症,肛門びらんが各1例認められた。また,転帰不明の下痢の1例を除き,いずれも回復又は軽快した。

    本調査の副作用発現状況は,本剤の発熱性好中球減少症の適応症追加承認前に実施した臨床試験における小児患者の結果,及び既承認適応症の小児患者を対象に実施した2つの特定使用成績調査の結果と比較して,大きな違いは認められなかった。

    有効性評価症例117例における有効率は88.0%であり,臨床試験及びこれまで実施した特定使用成績調査の結果とほぼ同様であった。

    本調査で得られた結果から,小児の発熱性好中球減少症に対する安全性及び有効性について臨床上大きな問題は認められず,本剤は,今後も各種の感染症診療ガイドラインにおいて推奨されているエンピリック治療薬として有用であることが確認された。

  • 宮嶋 友希, 上野 亨敏, 川筋 仁史, 河合 暦美, 福井 康貴, 酒巻 一平, 大西 由美, 野村 伸彦, 水永 真吾, 山本 善裕
    2020 年73 巻4 号 p. 115-129
    発行日: 2020/12/25
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    Piperacillin(PIPC)の高用量における有用性を検討するため,2018年~2019年に富山大学附属病院で分離された12菌種の薬剤感受性を測定し,モンテカルロシミュレーション(MCS)法を用いて,各菌種に対するPIPCの各用法用量におけるターゲット値の達成確率を算出した。

    12菌種のうち,Methicillin-susceptible Staphylococcus aureus(MSSA), Streptococcus pneumoniae, Enterococcus faecalis, Klebsiella pneumoniae, Enterobacter cloacae, Moraxella catarrhalis及びPseudomonas aeruginosaのPIPCに対する感受性は,2016年又は2018年の全国サーベイランス結果と概ね同程度であった。一方,Escherichia coli及びSerratia marcescensのPIPCに対する感受性は,全国サーベイランス結果より良好であった。

    各菌種の薬剤感受性データを基に,MCS法を用いて解析を行ったところ,PIPCは1日2回投与の2g×2回/日及び4g×2回/日より,2g×4回/日,4g×3回/日及び4g×4回/日の用法用量が,各菌種に対する増殖抑制作用及び最大殺菌作用の観点から優れた治療効果を期待できると考えられた。

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