2010年から2014年の4年間に近畿地区の427医療機関から当社に提出された臨床検体より分離した10,797株のgroup B Streptococcus(GBS; Streptococcus agalactiae)について,ペニシリンに感受性が低下した株(PRGBS: Group B streptococci with reduced penicillin susceptibility)の分離頻度を調査した。その結果,506株のPRGBSが検出された。PRGBSの分離頻度は,材料別に呼吸器系材料5.8%(500/8,590),血液培養2.4%(6/250),GBSスクリーニングを目的とした膣分泌物材料0%(0/1,957)であった。さらに,125株のPRGBSおよび307株のペニシリン感性GBS(PSGBS)をランダムに抽出し,薬剤感受性率および莢膜抗原血清型別の調査を行った。薬剤感受性率では,PRGBSではvancomycinおよびmeropenem以外は低率であったのに対し,PSGBSではPRGBSと比較して全薬剤とも高率であった。材料別の莢膜抗原血清型と検出頻度の関係は,血液培養由来86株のうち,PRGBS 6株の内訳はIII型が50.0%と最も多く,次いでIa型33.3%,Ib型16.7%,一方PSGBS 80株の内訳は,Ib型が40.5%と最も多く,次いでIII型19.0%,Ia型およびVI型が13.9%であった。呼吸器系材料由来株のうち,PRGBS 119株の内訳はIII型が53.7%と最も多く,次いでIb型25.6%,Ia型13.2%,一方PSGBS 96株の内訳はVI型が34.7%と最も多く,次いでIII型29.5%,Ib型24.2%であった。GBSスクリーニングを目的とした膣分泌物材料では,PSGBS 131株の内訳はIb型が24.4%と最も多く,次いでIII型22.9%,Ia型22.1%,II型13.7%であった。今回の検討で,GBSスクリーニングを目的とした培養法からはPRGBSは検出されなかったが,医療関連感染対策や母子感染対策の観点から,今後の動向の監視が必要と考えられる。
2016年~2017年に呼吸器感染症患者より分離されたStreptococcus pneumoniae に対するgarenoxacin(GRNX),levofloxacin(LVFX)及びlascufloxacin(LSFX)の抗菌活性を測定し,モンテカルロシミュレーションを用いて,Pharmacokinetics-Pharmacodynamics(PK–PD)による有効性及び耐性菌出現に関する評価を行った。また,耐性菌の出現を阻止する濃度であるmutant prevention concentration(MPC)を測定した。
S. pneumoniae 28株に対する各種経口キノロン薬の90%最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration: MIC90)は,GRNXが0.0625 μg/mLで最も低く,次いで,LSFXの0.125 μg/mL,LVFXの1 μg/mLであった。
モンテカルロシミュレーションにより,MIC値に対する常用投与量におけるfreedrug area under the curve(fAUC,f:非蛋白結合率)の比が,有効性のターゲット値である30が得られる確率を算出した。達成確率は,GRNXで100%,LSFXで79.6%,LVFXで62.8%であり,GRNXが最も高かった。耐性菌出現抑制の指標の一つと考えられているfCmax/MIC=5を達成する確率を算出したところ,GRNX, LVFX及びLSFXで,それぞれ100%, 60.4%及び0.31%であった。
S. pneumoniae に対するMPC90 は,GRNXで0.25 μg/mL,LSFXで2 μg/mL,LVFXで4 μg/mLであり,GRNXが最も低い値を示した。MIC90とMPC90の間の濃度域であるmutant selection window(MSW)は,GRNXで0.19 μg/mL,LSFXで1.9 μg/mL,LVFXで3.0 μg/mLであり,GRNXが最も狭かった。
今回のPK–PD理論を用いた解析結果より,S. pneumoniaeに対する有効性及び耐性菌出現の可能性が経口キノロン薬間で異なり,GRNXが最も有用であることが示唆された。