グラム陰性桿菌は, 生体環境における常在菌としても, また病原細菌としても, 主要な位置を占めるが, 一方, その薬剤耐性獲得も著るしく, 臨床上, 重大な問題となつている。グラム陰性桿菌感染のうち, 最も頻度の高いのは大腸菌であり, 耐性大腸菌感染は, われわれが日常経験するところである。
Nalidixic acidは, 大腸菌に対して優れた臨床意義を示す化学療法剤であるが, 本剤の臨床応用が現段階でどのような価値と限界をもつか, どうかを知るには, 薬剤耐性との関連を熟知する必要がある。
しかし, 細菌の耐性分布の年次推移を知るには, 菌株の分離や感受性測定など, できるだけ均一な実験条件が要請される。私は, この点を考慮した上で, 1961年から毎年, 臨床分離した大腸菌の耐性分布を追求しており, その成績は昭和42年4月, 名古屋市における曰本医学会総会シンポジウム講演の一部として発表した。
そこで, Nalidixic acidを中心に大腸菌の耐性分布の現況を, 以下のように究明した。
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