Ampicillin (Pentrex‘Banyu’) は, 6-Aminopeniciilanic acidから誘導された新合成ペニシリンで, 化学名を6 [D (-)-α-Aminophenylacetamido] penicillanic acidという。本剤の最大の特長は, 広範なグラム陽性菌および陰性菌に強い抗菌力をもつ, いわゆるBroad spectrum peniciliinである点である。従来のペニシリン適応症に含まれるグラム陽性球菌, グラム陽性桿菌, グラム陰性球菌による感染症ばかりでなく, グラム陰性桿菌, たとえばインフルエンザ菌, 肺炎桿菌, 赤痢菌, 大腸菌, 変形菌, サルモネラ菌による感染症に有効であると報告されている。
われわれは, 子宮癌広汎手術後に合併した腎盂炎に対して, Ampicillin (Pentrex parenteral) の点滴静注療法をおこない, 次の成績を得たので報告する。
Sodium ampicillinは, 右記の構造式をもつ白色の結晶性粉末で, よく水に溶け, 酸に対しても安定である。
本剤は, Peniciiiin Gがグラム陰性桿菌にほとんど奏効しないという弱点を打破し, グラム陽性菌だけでなく陰性菌に対してもすぐれた抗菌力を示している。グラム陰性桿菌に対する活性は, TetracyclineおよびChloramphenicolと同程度またはそれ以上で, それらと交叉耐性を示さないため耐性が問題とされている現在, Tetracycline, Chloramphenicol以上に臨床効果が期待されている。
筋注による血中濃度は, 30分~1時間で最高値を示し, 同量の経口投与にくらべ短時間でより高い血中濃度が得られ, 各臓器にもよく移行し, 尿中, 胆汁中にも高濃度に排泄されるのが特長であるが, われわれは点滴静注を試みた。
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