Kujimycin AおよびBは,
Streptomyces spinichromogenes var.
kujimyceticusの培養炉液から著者等1, 2) によつて分離されたグラム陽性菌, 結核菌に有効な中性マクロライド群に分類される抗生物質である。Kujimycin Bは, その後の検討の結果, Lankamycin3) と同定され, Kujimycin AはDeacethyl-lankamycinの新抗生物質であることがみとめられた4)。これまで塩基性マクロライドの実験感染症における治療効果, および臓器内, 体液内分布については, Erythromycth (EM) 5~8), Leucomycin (LM) 7, 9~14), Oleandomycin (OLM) 7, 15~20), Spiramycin (SPM) 21~24), Josamycin (JM) 25, 26) 等について詳細に報告されているが, 中性マクロライドに関しては, ほとんど見当らない。これは, 中性マクロライドに属する抗生物質が, 塩基性マクロライドにくらべ,
in vitro活性がいくぶん低いために, 治療薬として検討されていないためと考えられるが, 中性マクロライドと塩基性マクロライドの物理化学的性状の相違 (たとえば構成糖の違い, 各種pHにおける活性の変化, 溶解性等) によつて,
in vivoにおける効果が,
in vitroの活性に並行しないことも考えられる。また, 高平等27) の報告によれば, SPMのdi-およびmonoacyl体では, 感染治療実験での効果, 血中濃度とその持続性, 臓器内濃度において, SPMと異なる点もみとめられているので, Acetyl基1個だけが異なるKujimycin AとBの間においても,
in vivoでの両物質の受ける活性化, または不活性化を含めた動態が異なり, そのために体内における治療効果が著るしく変ることも考えられる。また, 同じ菌による感染症においても, 感染部位によつて薬物のLocalizationが異なるために, 治療の難易がありうることは当然である。
以上の観点から, 中性マクロライドと塩基性マクロライドを比較検討することは, 興味あることと考えて, 著者等はKujimycin AとBについて, 黄色ブドウ球菌の腹腔内感染, および皮下感染マウスに対する治療効果を塩基性マクロライド抗生物質と比較検討した。また, 溶血性レンサ球菌による皮下感染については, その強いHyaluronidase活性のためか, これまでに報告された例をみないが, 著者等はこの実験系の作成に成功したので, この系における治療効果についても検討した。さらにKujimycins A, Bの臓器内分布, 肝臓による不活性化についても検討した。
抄録全体を表示