周産期医学には, 胎児・新生児を中心として, 数多くの問題が含まれており, 従来それぞれ別個の立場から研究がおこなわれていたが, 1970年SALING1) の提唱以来,これを総合的に把握し, 研究することがおこなわれるようになり, 現在に至つている。周産期における感染症は, 抗生物質の普及した今日も, 依然として重要な問題であり, 母体においては分娩産褥という特殊な環境, 胎児・新生児においては諸機能の未熟なことから, 化学療法剤の適正使用量やその影響など, 特別の考慮が払われなければならない。この時期における化学療法剤としては, 広域スペクトルであること, 作用が殺菌的であること, 注射による投与が可能で速効性であること, 副作用の少いことが望ましい。
この条件をみたすものとして, いくつかの抗生物質があげられるが, これらの物質については, 広汎な研究がなされているにもかかわらず, 周産期における化学療法の観点から研究した報告は少い。日本化学療法学会の母児化学療法研究委員会は数年来, 前記の立場からいくつかの抗生物質について研究をおこない, 結果を報告して来たが, 私も班員として研究をおこない, 報告した。
今回, 私は本研究の一環として, 合成広域ペニシリンであるAmpicillinおよびCarbenicillinについて, 周産期における化学療法の立場から研究をおこない, 結果を得たので報告する。
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