The Japanese Journal of Antibiotics
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26 巻, 3 号
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  • Cephalosporin-C系, 特にCefazolin, Cephaloridine, Cephalothinを中心として
    深田 守克
    1973 年 26 巻 3 号 p. 197-214
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    周産期の感染症に対する化学療法については, いくつかの重要な問題点がある。感染症起因菌, その薬剤感受性および耐性, 母体側投与薬剤の胎児および母乳への移行, 諸機能の未熟な新生児に対する化学療法剤の適正使用量の決定等については, なお検討すべき点が多い。この時期に応用できる化学療法剤のもつべき特徴としては, スペクトルが広域であり, 作用が殺菌的であること, 注射可能で速効性があり, 副作用が少ないこと等が望ましいことはいうまでもない。この条件に合う抗生物質としての, Cephalosporin C系のCefazolin (CEZ), Cephaloridine (CER) およびCephalothin (CET) について検討を加え, 以下の成績を得た。
    1. 周産期感染症の起因菌について過去5年間の検索では, 検出頻度からみると, Staphylococcus aureusおよびGram-negative bacilliの両者が主で (計67.5%), それぞれ25.3%および42.2%をしめる。
    2. 上記菌の感受性分布は, Staphylococcusに対してCER, CET, CEZともに0.39mcg/ml, E. coliではCEZが1.56mcg/ml, CER, CETは3.125~12.5mcg/ml, ProteusではCEZ6.25mcg/ml, CER, CET6.25~50mcg/ml, KlebsiellaはCEZ 1.56mcg/ml, CER, CET0.78~12.5mcg/mlであつた。
    3. 母体側投与のさいの経胎盤的胎児移行は, 各剤ともに良好で, CER, CEZでは1回500mg, CETは1回1gの筋注, 静注および点滴静注によつて主な感染起因菌の最小発育阻止濃度 (MIC) に達する胎児血中濃度が得られ, この用量の投与によつて子宮内感染予防および治療が可能であることが示された。
    4. 母体投与後の母乳移行は, CER, CET, CEZともにきわめて少量にすぎず, 母乳から新生児への移行は, さらに微量であつた。
    5. 新生児に投与した本剤の吸収は速く, CER, CET, CEZともに筋注後1時間で血中濃度はピークに達し, 12時間後にはきわめて低値となる。1回10~30mg/kg筋注で主な感染起因菌のMICを上廻る血中濃度のピーク値が得られる。
    6. 新生児に対してCER, CET, CEZを各1回10~25mg/kg12時間々隔で5日間連続筋注し, 血中の蓄積をみとめなかつた。
    7. 新生児における尿中排泄率は, CER5 2.9~72.5%, CET42.2~68.4%, CEZ41.4~53.9%で, その排泄パターンは血中濃度の消長と一致するが, 成人にくらべややおくれる。
    8. 上記の成績から, 新生児における適正使用法として, CERおよびCEZでは, 1回量10~25mg/kgで1日2~3回投与, CETでは1回量20~30mg/kgで1日2~3回筋注投与が合理的と考えられる。
    9. 分娩時に母体に投与された抗生物質は, その新生児に対して臨床像の推移は特別の影響をおよぼさなかつた。
    10. 本剤投与は, 新生児の腎機能に対して悪影響をおよぼさなかつた。
  • 小栗 豊子, 設楽 政次, 小酒井 望
    1973 年 26 巻 3 号 p. 215-220
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    かつて溶血連鎖球菌 (以下, 溶連菌と略) は, 黄色ブドウ球菌とならび, 化膿性疾患の原因菌として重要視されていたが, 化学療法剤の出現以来, 本菌種による化膿性疾患は激減したといわれている。溶連菌はPenicillin (PC) 剤をはじめ, 種々の化学療法剤に感性であるが, 本菌種による感染症の化学療法は必らずしも容易ではなく, 再燃または再感染例がみとめられており1),病巣から完全に菌を消失させるのは困難のようである。その上, 溶連菌感染症の病像は, その主なものを挙げても扁桃炎, 狸紅熱, リウマチ熱, 急性腎炎等, 複雑かつ多様であり, 特に学校や家族内での流行による集団発生は, 疫学の分野に大きな問題を提起している。
    私どもは, 最近約1年間に当検査室において, 各種臨床材料から分離した溶連菌を群別し, このうちA群溶連菌については, 型別をおこない, それぞれの検出頻度を検討した。また, 最近の学童の集団検診からの分離株も含めてA群, B群, C群, G群溶連菌の常用抗生物質に対する感受性を測定し, 4群間の感受性の相異を検討した。
  • 第1報マウスならびにラットに対する急性毒性
    小枝 武美, 小滝 益三, 久松 充, 佐々木 斉, 横田 正幸, 内田 信吾
    1973 年 26 巻 3 号 p. 221-227
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ICR-JCL系マウス, およびWistar系ラットを用いDKBの急性毒性について検討した。
    1) マウス, ラットとも, 他のアミノ配糖体抗生物質投与のばあいと近似した一般状態を示した。
    2) LD50値は, マウスのばあい, iv投与で雄72.3mg/kg, 雌62.6mg/kg, ip投与で雄604.7mg/kg, 雌430.9mg/kg, im投与で雄430.9mg/kg, 雌396.2mg/kg, sc投与で雄528.2mg/kg, 雌521.3mg/kg, po投与で雄, 雌とも6,950mg/kg以上, ラットのばあい, iv投与で雄177.2mg/kg, 雌140.4mg/kg, ip投与で雄799.3mg/kg, 雌1,014.7mg/kg, im投与で雄559.5mg/kg, 雌576.9mg/kg, sc投与で雄1,668.0mg/kg, 雌1,376.1mg/kg, po投与で雄,雌とも6,950mg/kg以上であつた。
    3) マウス, ラットとも,各投与経路において腎の尿細管上皮細胞における軽度の障害をみたが, その他の諸臓器に影響はみとめられなかつた。
  • ラットおよび家兎に対する亜急性毒性
    小枝 武美, 小滝 益三, 久松 充, 佐々木 斉, 横田 正幸, 新里 鉄太郎, 内田 信吾
    1973 年 26 巻 3 号 p. 228-246
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    DKBをWistar系ラットおよび白色家兎に1日1回, 35日間 (日曜日は休薬), 筋肉内投与して, その亜急性毒性を検討し, 次の結果を得た。
    I. ラット
    1) 雄, 雌とも200mg/kg以下の投与群では死亡例はなく, 400mg/kg投与群の雄で8例, 雌で4例が死亡した。
    2) 一般状態に関しては, 雄15mg/kgおよび雌50mg/kg以下の投与群で著変はなかつたが, 雄25mg/kg以上, 雌100mg/kg以上の投与群で自発運動の減退, 呼吸数減少, 失調性歩行をみとめた。これら症状の発現強度および例数は, 投与量に比例し, 常に回復までに1~5時間を要した。
    3) 雄15,50mg/kgおよび雌200mg/kg以下の投与群では, 平均体重は対照群とほぼ同等, または, 上まわつたが, 雄25,100,200mg/kg投与群, 雌400mg/kg投与群では, 対照群を下まわる傾向を示した。
    4) 平均摂餌量に関しては, 雄100mg/kg以下, 雌200mg/kg以下の投与群では, 対照群とほぼ同等, または上まわつたが, 雄200~400mg/kg, 雌400mg/kg投与群では, 対照群を下まわつた。
    5) 血液像および血清, 尿試験では血清中のBUNの増加, 尿のpHの低下とOPの低下, Gluの陽転, RBC, Hct, Hb値の減少などが認められ, 腎機能への影響がみられたが, 特に重篤な症状とは考えられなかつた。
    6) 病理組織学的には, 100mg/kg以上の投与群に腎障害がみとめられ, 肝では長期間投与による軽微な影響が推察された。
    II. 家兎
    1) DKBの各投与群で, 死亡例はなかつた。
    2) 各投与群とも, 一般状態に著明な変化はみとめられなかつた。
    3) 平均体重, および摂餌量に関しては各投与群とも対照群とほぼ同様に推移した。
    4) 血液像および血清, 尿試験では, 2, 3の項目に軽微な変動をみとめたが, 肝および腎機能の特異的障害を示すほどのものはない。
    5) 病理組織学的には, 40mg/kgの高投与群において, 腎および肝の軽微な変化がみとめられた。
  • ラットおよび犬に対する慢性毒性
    小枝 武美, 小滝 益三, 久松 充, 佐々木 斉, 横田 正幸, 新里 鉄太郎, 内田 信吾
    1973 年 26 巻 3 号 p. 247-261
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Wistar系ラットおよびBeagle犬にDKBを1日1回, ラットは1群10匹で182日間, Beagle犬は1群2頭で91日間 (いずれも日曜日は休薬) にわたつて筋肉内投与し, その慢性毒性を検討した。
    (1) ラット
    1) ラットの雄の200mg/kg投与群では全例, 雌100mg/kg投与群では1例, 150mg/kg投与群では6例が死亡した。
    2) 雄, 雌とも投与後, 薬剤投与に相関して自発運動が減退, 呼吸数が減少, 歩行は失調性となり, 匍匐した。雄の200mg/kg投与群では, 165日目以降, 発現例数の減少, 持続時間の短縮をみとめ, 雌の高投与群では泡沫状水様液の吐出, 投与部位の硬結, 脱毛をみとめた。
    3) 平均体重は, 雄200mg/kg, 雌50および150mg/kg投与群では, 対照群を下まわつた。摂餌量は雄の200mg/kg投与群では57日目以降, 対照群を下まわる傾向を示した。
    4) 血液, 尿試験において, BUN, K, Hct, RBC, Hgb, GPTなどの変動から肝, 腎機能にたいする影響および貧血傾向が, うかがわれた。
    5) 病理組織学的には, 50mg/kg以上の投与群に明らかな腎障害がみられ, 高投与群の肝に長期間投与による軽微な影響がみとめられた。
    (2) 犬
    1) 25mg/kg投与群で39日目に1例, 50mg/kg投与群で22および24日目に各1例 (計2例) が, それぞれ死亡した。これらの動物は, 軽度の自発運動の減退と, 黄色水様液の吐出, 歩行困難を示し, 致死した。
    2) 平均体重は, 25mg/kgおよび50mg/kg投与群の死亡例が死亡時において, 投与前より1.5~4.5kg減少したほかは, 対照群と大差なく推移した。
    3) 摂餌量については, 25mg/kgおよび50mg/kg投与群の死亡例が断続的に減退し, ついで2~4日間全廃した以外は, 対照群と有意差はなかつた。
    4) 血液, 尿試験でのGOT, GPT, TP, Chol, Glu, BUN, UAなどの変動から肝, 腎機能に対する影響が推察された。
    5) 病理組織学的には, 腎障害が投与量と相関して漸増的に観察され, 肝についても軽度の影響がみられたが, その他の臓器に著変はなかつた。
  • 成人における薬動力学的検討
    市川 篤二, 中野 巌, 広川 勲, 岡田 清己, 安部 政弘, 梅村 甲子郎
    1973 年 26 巻 3 号 p. 262-266
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    7名の成人患者にDKBを筋肉内投与し, 血清中濃度と尿中排泄率を測定し, 薬動力学的解析をおこない, 次の知見を得た。
    1) 血清中濃度を変動させるもつとも大きな要因は, 投与部位から血中への薬物拡散であつた。
    2) 分布容積や, 血中からの薬物消失定数は, 腎機能正常者では投与中一定していた。
    3) 腎機能障害患者には, 薬動力学定数が投与中変動するものがあつた。
    4) 生物学的半減期は1.8~4時間程度で1日1~2回投与では体内残留のおそれは少ないものと思われた。
    5) 数日~十数日にやたる薬剤の投与期間中排尿の全量を正確に捕促計量することは困難で, したがつて尿中排泄の薬動力学的解析はおこなわなかつた。
  • 小林 裕, 赤石 強司, 西尾 利一, 小林 陽之助, 相原 雅典
    1973 年 26 巻 3 号 p. 267-276
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Josamycin (JM) は, 高知県長岡郡本山で採取された土壌から分離したStreptomyces narbonensis var. josamyceticusによつて産生される国産のマクロライド系抗生物質である1~8) 。その試験管内抗菌力は, マクロライド系抗生剤中では, Erythromycin (EM) には劣るが, Leucomycin (LM) に類似しているといわれる3, 9, 10)。われわれ11) は, 病巣由来の黄色ブドウ球菌について, 最小発育阻止濃度 (MIC) のPeakは, EM O.4, JM 1.6mcg/mlであつたが, 臨床効果から見て, その差はほとんど問題にならないと考えられることを報告し, 中沢ら12) は, マウスのブドウ球菌感染症に対して, JMはEMに近い効果を示し, 肺炎球菌感染症ではむしろすぐれていたと述べている。マクロライド系抗生剤相互間の交叉耐性については, いずれも3, 9~12) その存在をみとめているが, 三橋9) は, ブドウ球菌中に, EMにはMICが高く, JMには低い1群の菌 (C群菌) 13) をみとめ, JMは, LMと同様に耐性を誘導しないと述べており, これはJMの利点の1つであろう。なお, マイコプラズマに対しては, 他のマクロライド系抗生剤と同様に, 抗菌力がある3)。
    内科的細菌感染症に対するJMの有効性については, 多くの報告があり14~16, 18~25), 小児科領域においては, 藤井ら26) は, 27例のうち17例 (63.0%) に有効で, LMに匹敵すると述べ, 市橋ら27) は11例のうち10例に有効, 中沢ら28) は57例に投与し, 治効率約87%と報告し, われわれのブドウ球菌感染症15例では11例に有効であつた11)。
    マクロライド系抗生剤の小児科領域における価値は高いが, EMは吸収が悪く, しかも消化器障害が強い。EMの誘導体であるPropionateやEstolateは, 吸収はよいが, 時に肝障害をみることは周知のことで, 一長一短がある。したがつて, 以上の成績から, JMに期待が持たれるのであるが, 従来は錠剤のため幼児以下の年令ではほとんど使用できなかつた。
    今回, JMの誘導体で, 顆粒状でシロップ剤として使用できるJM-propionate (JM-prop.) が開発され, JMにくらべて吸収は遅く, Peakは低いが, むしろ血中濃度の持続は長く, 実験的感染症にはJMと同様に有効であることが報告され, その安全性もみとめられた30~34, 59) ので, われわれも小児急性上気道感染症に試用し, その効果を検討した。
  • 小松 信彦, 南雲 昇, 大久保 幸枝, 小池 健一
    1973 年 26 巻 3 号 p. 277-283
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Schizophyllan (以下, SPGと略) は, 担子菌の1種Schizophyllum commune (スエヒロタケ) の菌糸体培養液中に産生される粘質多糖で, β-1, 3結合を主鎖とし, β-1, 6結合の側鎖をもつ単純グルカンである1, 2)。はじめ, このものは数種の実験的皮下移植腫瘍に対して1~5mg/kgという少量の投与で治療効果のあることが見いだされた3) ので, 種々の基礎実験をおこなつたところ, SPGの効果は, 腫瘍細胞に対する直接作用によるものではなく, 非特異的な宿主防御機構増強作用によるものであることが明らかとなつてきた3~6)。そして, SPGは細菌や真菌に対しても,in vitroでは直接の抗菌作用をもつていないけれども,in vivoの実験では諸種の病原菌に対する感染防御効果を発揮することを見いだしたので, 報告する次第である。本報告では, SPGがマウスの網内系機能と食菌能に及ぼす影響および各種病原細菌による急性の実験的感染症に対する感染防御効果について述べる。
  • 青河 寛次, 皆川 正雄, 山路 邦彦, 杉山 陽子
    1973 年 26 巻 3 号 p. 284-289
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Broad-spectrum penicillinとして, Aminobenzyl penicillin (Ampicillin) が臨床に登場して以来, すでに10年近い歳月を経過したが, 今日, 本剤は全くRoutineに投与される主要抗生物質としての地位を確立したといえる。
    そこで, われわれはAmpicillinの臨床評価を改めて考える目的で, 最近における臨床分離菌の耐性分布の概況を観察し, 東洋醸造研究所で新しく開発したAmpicillin Sol1) の体内濃度および臨床成績を検討したので, 報告する。
  • 熊沢 浄一, 中牟田 誠一, 百瀬 俊郎
    1973 年 26 巻 3 号 p. 290-293
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗菌スペクトルが球菌系に限定されていたPenicillin剤の新誘導体として, グラム陰性桿菌系にまで抗菌活性を示すAmpicillin (AB-PC) が開発されて, すでにかなりの年月を経た。
    AB-PCが尿路感染症を含め, 各種感染症に有効であることは, すでに広くみとめられており, 最近わが国における使用頻度は, きわめて高くなつている。
    今回, 東洋醸造株式会社で, AB-PCの筋注用懸濁剤 (HI-63) が開発され, われわれもその提供を受けたので, 各種の尿路感染症に使用してみた。本剤についての一応の価値判断を下しえたと思うので, ここに報告する。
  • 右馬 文彦, 呉 京修, 岡本 緩子, 大久保 滉
    1973 年 26 巻 3 号 p. 294-296
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 諸種の半合成ペニシリンの開発がさかんとなり, しかも球菌類ばかりでなくグラム陰性桿菌にも有効な製剤が広く使用されるにいたった。なかでも, Ampicillin (AB-PC) の需要は, 甚だ大きいようである。しかし, 従来の注射用AB-PCは, 水溶性ナトリウム塩剤で, 水溶液中での安定性が悪く, しかも尿中への排泄が早く, 血中持続時間も比較的短いという欠点がある。しかし最近, 東洋藤造が開発したHI-63Iは, AE-PCのTrihydrateを用時懸濁させて用いる製剤である。
    今回, 私共は従来のAB-PCとHI-63Iを用いて血中濃度, 尿中排泄, ラットにおける臓器内濃度および家兎の胆汁中への排泄などを比較検討したので報告する。
    測定方法は, 枯草菌PCI-219株を検定菌とする帯培養法で, 標準液としては, AB-PC-Naのヒト血清稀釈とpH7.2の燐酸緩衝液稀釈の両者を作製し, 血中濃度測定には血清稀釈標準液を用い, 尿中および胆汁中の回収率の測定には20倍稀釈 (燐酸緩衝液) 後, 緩衝液稀釈標準液を標準として測定した。
    臓器内濃度の測定は, 従来われわれが用いている方法によつた (大久保ら1))。
  • 石神 襄次, 高橋 靖昌
    1973 年 26 巻 3 号 p. 297-300
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    アミノベンジルペニシリン (以下AB-PC) は, いわゆる広域抗生物質として, グラム陰性菌にも強い抗菌力を示し, 尿路感染症の治療にも, 汎く一般に応用されていることは周知の事実である。しかし, 本剤は, 注射, 内服のいずれを問わず, 体内への吸収, 排泄がきわめて速やかで, この点は比較的はやく血中, 尿中濃度をたかめるいみでは利点であるが, その体液内有効濃度を維持するためには頻回投与をくりかえさねばならない欠点がある。とくに, 筋注において, 1日4回以上の注射が要求されることは, 患者, 医師ともに治療実施上少なくない困難を伴なう。今回, 東洋醸造薬品部によつて開発されたHI-63は, AB-PCの懸濁剤であり, 1回の投与で比較的長時間血中有効濃度が維持されることが, 各種基礎実験において証明されている。
    われわれは今回, 本剤による複雑尿路感染症治療をおこない, AB-PC剤投与時の経験と比較検討する機会をえたので, ここに報告する。
  • 大塚 正道, 鉄谷 佳代子
    1973 年 26 巻 3 号 p. 301-305
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Tetracycline (TC) 系抗生物質の体液内濃度測定については, 金沢らを始め多くの研究者によつて, 微生物学的定量に検定菌としてBacillus subtilis PCI219を使用した報告がされている。金沢ら1) は, B. subtilis PCI 219を使用したディスク法によつてDoxycyclineは0.03mcg/mlまで測定可能であると報告している。永野ら2) は, B. subtilis PCI 219株を使用した比濁法, カップ法によつてTriple-tetracyclineを0.24mcg/mlまで測定しており, 河盛ら3) はB. subtilis PCI 219を使用した重層法によつてPyrrolidinomethyl tetracyclineを0.12mcg/mlまで測定している報告がある。一方, 日本抗生物質医薬品基準 (日抗基) には, TCの力価試験菌としてSarcina lutea ATCC 9341が用いられている。今回, われわれは, このS. luteaを用いてその微量定量法に可能な条件を検討するとともに, これを応用してウサギ, ラットの血中, 尿中および臓器内濃度を測定したので, ここに報告する。
  • 梅沢 浜夫
    1973 年 26 巻 3 号 p. 306-310
    発行日: 1973/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗生物質が細菌感染症の治療に使用されるようになつて以来, 多種類の抗生物質に対して同時に耐性を示すいわゆる多剤耐性菌が次々に出現して来た。1965年に岡本および鈴木11が多剤耐性因子をもつた大腸菌がクロラムフェニコールをアセチル化することによつて不活化してしまうという耐性機構を明らかにして以来, 他の抗生物質に対する耐性機構についても研究が続けられて来ている2)。カナマイシンに対する耐性の機構については, 6-アミノ-6-デオキシグルコース部分のC-3'位に存在する水酸基が耐性菌の生産するリン酸化酵素によつてリン酸化を受け不活化されるという機構が主であることが明らかにされた8) 。リン酸基という容積の大きい, しかも電荷をもつた置換基がC-3'位に存在することによつて, カナマイシンの活性部位 (C-3'の水酸基自体もその中に含まれる可能性があるが) の機能が妨げられ, リボゾームへの結合の親和力が弱められるものと考えられた。この不活化の機構に対処するため, 梅沢らは, C-3'位に水酸基のない, 換言すれば不活化酵素の攻撃部位をもたない誘導体の開発を試み, 3'-デオキシカナマイシンを得4), さらに3', 4'-ダイデオキシカナマイシンB (DKB) を得た5)。また, KOCHおよびRHOADESは, Streptomyces tenebrariusの醸酵炉液から3'-デオキシカナマイシンB (tobramycin) を分離した6) 。これらは, いずれもカナマイシン耐性菌および緑膿菌等に有効であり4, 5, 7), この事実は, カナマイシンのC-3'位またはC-4'位の水酸基がカナマイシンの活性に何の役割も果していない不要な構造部分である可能性を示唆している。この推定を確かめるために, われわれはDKBの種々の生化学的活性をカナマイシンB (KMB) と比較してみた。その結果, DKBの抗菌スペクトラムはKMBのそれに類似している5) にもかかわらず, 生化学的諸効果には差異がみとめられたので報告する。
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