The Japanese Journal of Antibiotics
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27 巻, 6 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • I. Neocarzinostatin水溶液の安定性
    河野 通治, 羽田 いそ子, 小山 康夫, 菊地 幹雄
    1974 年 27 巻 6 号 p. 707-714
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Neocarzinostatin (以下NCSと略す) は, 1957年石田らによって報告されたStreptomyces carzinostaticusvar. F-41の生産する抗癌性抗生物質1)で, 18種109個のアミノ酸から構成され, 分子量10,700, pH3.26に等電点をもっ酸性単純蛋白質である2).
    NCSは, マウスおよびラットの腹水腫瘍に広い抗癌スペクトルを示し3), 特にマウスのリンパ性白血病L1210に優れた抗腫瘍効果を示す4). また, 化学療法係数の大きい点も特徴である. 一方, NCSの作用機作は, 癌細胞のDNA合成阻害と細胞分裂阻害作用であることが明らかにされている5).
    NCSは, 白色の吸湿性の粉末として得られているが, 常温では不安定である6). 本物質の安定性についての詳細な報告はまだ見当らない. 著者らは, NCSの基礎的な化学的および生物学的研究, さらには臨床上の使用にさいして, NCSの失活についてその詳細を知つておくことに重大な意義をみとめ, NCSの失活因子の解明, 安定保存の条件に関する一連の研究をおこなってきた.
    これまでの著者らの予備実験によれば, NCSは粉末の状態よりも水溶液で著るしく安定性を増す. このことは, 水がNCSの分子構造を安定に保持するうえで重要な役割を果していることを示唆している. ここでは, NCS水溶液の失活・に関係あると思われる温度, pHおよび光とNCSの活性との関連について検討するとともに, これらの実験結果の反応速度論的解析も同時におこなった.
  • II. Neocarzinostatin注射液の安定性
    河野 通治, 石井 二三夫, 羽田 いそ子, 小山 康夫, 菊地 幹雄
    1974 年 27 巻 6 号 p. 715-724
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Neocarzinostatin (以下NCSと略す) 水溶液は, 前報1)の基礎的研究によって, 熱に対する失活は見掛上1次反応にしたがうことが明らかになった. また, ARRHENIUSの式の成立する加温範囲 (45°-55℃) の失活速度定数から, 活性が10%低下する期間を推定したさい, 4℃および10℃におけるNCSの水溶液の有効保存期間は, それぞれ32カ月および13.6カ月となった。この計算上の推定有効期間を確かめるため, 製造ロット番号の異なる6ロットの精製NCS粉末を用い, 濃度3mg, 2mg, 1.3mgおよび1mg力価/mlの水溶液を1-2mlのアンプル製剤 (注射液) とし, 各温度に保存したさいの長期安定性試験をおこなった。この実験では, 0.015M酢酸緩衝液の代りに等張溶液にするため, 生理食塩液にNCSを溶解して安定試験を試みた。次いで, 制癌活性と抗菌活性の経時変化および室温付近における低濃度(400mcg力価/ml)のNCSのpHによる影響などについて検討するとともに, 臨床上NCS注射液の希釈液に使用されると考えられる無機塩, アミノ酸, 糖を含む補液およびその他の薬剤の存在下でのNCSの安定性について実験した。
  • TATSUNORI SHIMIZU
    1974 年 27 巻 6 号 p. 725-729
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Basic and clinical studies on the combination of antibiotics and anti-inflammatory agents have been reported by many research laboratories1). The author investigated the effect of tiaramide, a new basic anti-inflammatory agent, on serum and exudate levels of cefazolin in animals receiving a combination of tiaramide and cefazolin. The results are reported here.
  • ミンサイクリソ穎粒の臨床的経験
    平海 光夫, 谷 順, 岡本 芳廊, 多田 和郎
    1974 年 27 巻 6 号 p. 730-734
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児の尿路感染症は, 発熱, 膿尿等の急性期獄だけが臨じ, 力面廊よって順論な鶴を辿って治癒るものばかりではなく1-3), 反覆再発をくりかえすばあいも多い. その結果として, 腎機能障害, 無症候性蛋白尿, 徴少血尿が持続したり, 他の腎疾患に続発して原疾患の増悪, 遷延化因子となるぱあいも多い4-7). したがつて, 急性期における治療は, 尿路感染症の予後に大きな影響をあたえる.
    このため, 尿路麟症 (たとえ, 湘菌尿だ肋不顕性の症廉も) の治鰍は, 遭切に, かっ確実におこ飯うことが必要であるが, 急性期症状が加療によって短期間に軽快することもあつて, 小児尿路感染症の治療ほ不十分なばあいが多い. 再発例の中には, 無症候性細菌尿だけの症例も多くみ. られ, なんら治療を受けないままに, 無症状のうちに再発, 自然軽快をくりかえし, ついに糸球体障害を招来する症例さえみられ, 小児腎疾唐の管理上, 軽視できない疾患である.
    当教室においては, このような事実をふまえて, 尿路感染症の患者には系続的な治療のもとに管理をおこなつているので, その一端を報告する.
  • 秋吉 正豊, 佐藤 喜一, 庄司 侃, 菅広 敬, 田島 たよ子, 小枝 武美, 小滝 益三, 横田 正幸
    1974 年 27 巻 6 号 p. 735-745
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    The present studies were performed to evaluate the transplacental ototoxic effect of 3', 4-dideoxykanamycin B (DKB), kanamycin (KM) and gentamicin (GM) on the inner ears in the intrauterine guinea pig embryos.
    Intramuscular administration of the individual antibiotics to the pregnant guinea pigs of the Hartley strain started on the first day of the pregnancy. DKB was given at the doses of 100 mg/kg for 58-60 days or 75 mg/kg for 58-59 days, KM at the doses of 300 mg/kg for 58-60 days or 200 mg/kg for 53-61 days and GM at the doses of 100 mg/kg for 28 days or 40 mg/kg for 57-59 days, respectively.
    The concentration of DKB and KM in the placenta, amniotic fluid and the liver and kidney of the intrauterine guinea pig embryos was measured by bioassay and it was revealed that these antibiotics can pass from the maternal guinea pigs to the intrauterine embryos.
    Histopathologic examination of the new-born guinea pigs at the one month after birth disclosed that the most frequent damage of the inner ear in the new born guinea pigs was the loss of the outer hair cells confined to the organ of CORTI at the basal end of the first turn of the cochlea (40%). Relatively localized hypoplasia of the spiral ganglion in the upper part of the 4. turn associated with the mild displasia of the regional organ of CORTI occurred in 11% in the new born guinea pigs delivered from the maternal ones received DKB 75 mg/kg. The disappearance of the organ of CORTI relatively localized at the 3. turn of the cochlea was found in one guinea pig delivered from the maternal one received DKB 100 mg/kg. There was no remarkable pathologic change in the vestibular organs in the new-born guinea pigs.
  • 第1報急性毒性, 亜急性毒性
    倉本 昌明, 石村 泰子, 森本 順子, 大久保 孝明, 李 雄毅
    1974 年 27 巻 6 号 p. 746-765
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
  • IN VITRO ANTIBACTERIAL ACTIVITIES OF LVDM AGAINST CLINICAL ISOLATES OF MYCOBACTERIUM TUBERCULOSIS
    TATSUNORI SHIMIZU
    1974 年 27 巻 6 号 p. 766-774
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Lividomycin (hereinafter abbreviated as LVDM) is a new aminoglycoside antibiotic which was produced by Streptomyces lividus isolated from soil in Nagoya by Tokyo Research Laboratories of Kowa Co., Ltd.1.2) The chemical structure has been determined by ODA et al.3, 4) It is reported that LVDM has a wide range of antibacterial spectra against Gram-positive and negative bacteria, and also shows antituberculous activity8).
  • 戸田 百年
    1974 年 27 巻 6 号 p. 775-778
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    リビドマイシン (以下LVDMと略す) は, 興和株式会社東京研究所において, 名古屋市の土壌から分離されたStreptomyces lividus n. sp. ATCC21178によって産生されるアミノ配糖体系抗生物質で, カナマイシン (以下KMと略す) と同様に, グラム陰性菌, グラム陽性菌および結核菌に対して広い抗菌力を示し, 緑膿菌にも抗菌力を呈する.
    LVDMは, すでに泌尿器科領域における一般感染症に対して多数の報告をみることができるが, 今回は特に淋疾に対するLVDMの臨床効果を検討し, 同時に, その分離株の感受性を測定する機会を得たので, この結果について報告する.
  • 松浦 龍二, 山口 国行, 増田 正孝, 牛島 賢一, 野田 尚一, 皆川 正美, 鎌田 重之, 楢崎 敬明
    1974 年 27 巻 6 号 p. 779-786
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    手術に伴なう予防的抗生剤の使用にあたって, どのような使用法が優れているかという問題や, その警告などについて, 数多くの報告がみられるが, まだ完全に解明されたわけではない1-5). 実際には, 抗生物質の併用によって, 長時間の困難な手術が成功するようになったが, 無菌手術時における術後創感染の起炎菌検出率の調査によると, 局所投与の始まった1963年頃から著名な感染率の低下をみるが, 局所投与がおこなわれていない機関では, その低下は緩徐であり, まだ0%にはなっていない6). これは, 術中の組織の挫滅などによる異常状態の時期に侵入した感染細菌は, 侵入後3時間を過ぎると, その毒素産出も多くなり, 侵入局所に生化学的損傷を与えることになる. したがって, 侵入細菌抑制の目的には, 感染発生後3時間以内に化学療法剤の投与が必要になるであろうと, そして動物実験によって術後感染予防の目的で化学療法をしようとするばあいには, 最少限度5日間は侵入細菌の増殖を完全に阻止する必要があろうと石井は述べている7, 8). また加藤は, 術後に化学療法剤を投与する方法は, 一般に期待するほど有効ではないとして, 術前および術中の投与法をおこない, 創の化膿率を8.3%から1.1%まで減少させたと報告している9).
    消化器外科の手術にさいしては, 自己の細菌叢由来による汚染の機会が多く, その予防のための抗生剤は広域性の薬剤が選ばれることが多い. そして, その選択にあたっては, 同様の投与効果が期待できるならば, 薬剤の副作用が重要な選択基準になることは論をまたない. Sodium cephalothin (商品名, ケブリン, 以下CETと略す) は, 腎毒性が低いことが報告され10, 11), 私共も好んで術中の腹腔内投与や術後の全身投与などに使用しているが, 腹腔内投与時の人体内における血中移行の実態などについては, どのようになっているのであろうか. 腹腔内に投与された抗生物質は腹膜を介して血中に移行すると思われており, すでにKanamycin (KM), Streptomycin (SM), Aminodeoxy kanamycin (Kanendomycin Meiji)(KDM) については, 大島の報告がみられるが12), CETの術中腹腔内投与時の血中移行に関しては, まだ報告をみない. 私共は, 腹腔内に注入されたCETの血中移行 (経時的推移) やその意義について検討し, 術後感染予防の目的で使用されたCETの臨床効果などについていささかの知見を得たので報告する.
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