The Japanese Journal of Antibiotics
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29 巻, 12 号
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  • 第1報GentamicinとSulbenicillinおよびCephacetrileのばあい
    荒谷 春恵, 中塚 正行
    1976 年 29 巻 12 号 p. 1019-1034
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗生物質療法の発展は, 感染症の変貌をきたし, 難治性感染症としての, Gram陰性桿菌による感染症もその1つである。
    Aminoglycoside系抗生物質や, 合成Penicillin系抗生物質のいくつかが, その治療薬として注目されており, さらに, それら抗生物質の併用作用は,in vitro2~5, 8~24, 28, 30, 31, 34, 87, 40~47) での抗菌作用, 実験的感染症における治療効果3, 17, 26, 27, 33, 43) ならびに臨床応用などが報告6, 18, 23, 25, 31, 36, 39, 40, 41, 47) されている。
    ところで, 抗生物質の併用作用について, 石山16) やJAWETZ17) らによって, 抗菌作用は併用する抗生物質の種類によつて, 協力, 平均および拮抗作用がみられ, また, 濃度によってそれらの作用は変貌し, さらに, 臨床効果ではさらに多面性となり, 一方, 抗菌像の拡大や副作用の軽減などが指摘されている。
    他方, 併用時の生体内動態7, 10, 31, 38, 44) や不活性化されることは, 2, 3先人によつて報告7, 20, 88, 34, 35, 48, 44) されている。抗生物質併用のさいの力価測定は, 生物学的測定法として, 耐性菌などによるものが, その大部分1, 29) であり, 一部, 放射活性によるものもある。私どもは, 抗生物質併用時の生物学的材料を, Aminoglycoside系抗生物質が塩基性で, 合成Penicillinなどが酸性である点から考え, 濾紙電気泳動法によって分別したものについて, その生物学的活性を中心に検討した。
    つぎに, 近時難治性抗生物質については, その臨床応用に静脈内持続注入が, しばしばおこなわれている。そこで, 生体内動態を検討するにあたつて, 抗生物質はすべて, 静脈注射とし, 生物学的半減期を中心にうかがうこととした。In vitroで千渉作用 (主として不活性化) をさけるために, 併用する抗生物質は, 10分間隔で投与した。
    なお, 静脈注射としたもう1つの理由は, 吸収などの因子を除くためである。
  • 李 雨元, 三浦 純一, 四谷 敏朗, 高山 宏夫, 石井 淳一
    1976 年 29 巻 12 号 p. 1035-1041
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Gentamicin (GM) の筋注後における体液中移行濃度 (膵液中移行, 腹腔内移行, 胆汁中移行) を測定する目的から, 雑種成犬を用いて実験をおこない, 以下の結果を得た。
    (1) GM4mg/kg 1回筋注後1~1.5時間で膵液中最高移行濃度を示し, その値は血中最高移行濃度の51.3%であつた。
    (2) GM1回筋注後30分~1時間に胆汁中最高移行濃度を示し, その値は血中最高移行濃度の約50%であつた。
    (3) GM1回筋注後腹腔内に良好の移行をみとめた。
    (4) 尿中には周知のとおり高率の排泄をみとめた。
    外科領域における感染症のしめる重要性は, 現在にいたるまでの種々の抗生物質の開発による画期的な治療法の確立にもかかわらず, 臨床上の重要性はいささかも減じていない。グラム陽性菌が原因菌の感染症, 特に耐性Staphylococcus aureusは, 耐性ブドウ球菌用PCの出現によつて, これによる重症難治の感染症の治療臨床上解決される症例が比較的多くなつてきた。一方, 最近の外科感染症の原因菌は, グラム陽性菌からグラム陰性菌 (GNB) に変りつつあるのが一般的傾向である。このうち特に緑膿菌感染症は, 数年来多発の傾向になり, 表在性感染症だけでなく, 深部感染症, 特に敗血症のような重篤な症例の起炎菌となつてきており, 臨床的意義は大きい。
    従来, 緑膿菌感染症に対しては, 投与効果を期待しうる抗生物質としてPolymyxin B (PL-B), Colistin (CL) 等であつたが, Carbenicillin(CB-PC)の大量投与とともに, 難治性である緑膿菌感染症を比較的低濃度で阻止しうるのはGentamicin (GM) をはじめ同系列に入るDKB(Dibekacin, Dideoxykanamycin B), Tobramycin, BB-K8 (Amikacin) 等のアミノ配糖体の抗生物質であろう。
    膵臓外科疾患においては, 比較的重症例が多く, また膵痩形成等の問題によつて長期化学療法剤の投与が必要と思われる。したがつて緑膿菌感染症についても, 考慮をおこたつてはならない。著者らは, 体液移行面から各種抗生物質の膵液中移行の観察を雑種成犬を用いて測定してきたが, 今回Gentamicinの現在まで比較的報告の少い膵液中移行, 腹腔貯留液移行とあわせ, 胆汁中, 尿中排泄濃度を測定し, 知見を得たので報告するとともに, 当教室で外科入院患者にGentamicinを使用した症例の臨床結果について報告する。
  • 落合 宏, 寺尾 通徳, 宮村 定男
    1976 年 29 巻 12 号 p. 1042-1047
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    AmoxicillinおよびFlucloxacillinの両剤は,Beecham Research Laboratoriesにおいて開発された半合成Penicillinである。構造上, AmoxicillinはAmpicillinに, FlucloxacillinはCloxacillinに類似したものである。両剤に関する抗菌力や耐性菌の産生するβ-Lactamaseに対する態度については, 基礎的, 臨床的見地から, すでに多くの報告があるが1, 2), 今回両剤の細菌学的検討,特にFlucioxacillinがCloxacillin同様β-LactamaseのCompetitive inhibitorである点に注目し, 両剤の協力作用に関する基礎的検討をおこなったので報告する。
  • 原田 喜男, 花房 友行
    1976 年 29 巻 12 号 p. 1048-1051
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sodium cephalothin (以下, CETと略す) の腹腔内投与の安全性に関しては, 既報1) において, 通常, 腹腔内投与に用いられている他の抗生物質との比較による基礎実験の成績を報告し, CETは他剤にくらべて局所刺激性の少ない薬剤であること, またその臨床使用における投与濃度は, 10%程度の溶液であれば安全と考えられ, さらに5%程度の溶液として用いるならば, 浸透圧の点からも生理的であると考えられることを明らかにした。
    今回の実験は, CETの腹腔内投与が適応される実際の臨床状態を考慮し,さらに苛酷な条件下での腹膜および腹腔内臓器に対するCETの刺激性, 特に臨床使用上問題となる腹膜癒着について動物を用いて詳しく検討した。
    既報のCETの刺激性試験1) においては, CET溶液の投与の際に開腹操作を加えず, ツベルクリン針による腹腔内注入をおこなつた。その理由は, 開腹操作そのものによる影響を除外して真のCETの作用をみるためと, 閉腹縫合後の突発的な注入薬液の漏出を防止するためであつた。しかし, 臨床におけるCETの腹腔内投与は手術時に用いられることが多く2~6), 腹膜および腹腔内臓器は長時間開放されており, また血液あるいは消化管内容物や細菌などで汚染された状態にある。このような条件を考慮した結果, まず実験1として, 開腹放置後の腹膜に対するCET溶液の刺激性について検討し, さらに, 実験2として開腹放置に加えて, 刺激性の強いヨードチンキの摩擦塗布によつて, 軽度の腹膜癒着を惹起させた状態でのCET溶液の刺激性について検討した。
  • 石神 襄次, 三田 俊彦, 谷風 三郎, 藤井 昭男, 黒田 守, 広岡 九兵衛, 黒田 清輝, 日根野 卓, 福田 泰久, 末光 浩, 富 ...
    1976 年 29 巻 12 号 p. 1052-1069
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephacetrile(以下CECと略す)は, Fig.1に示すような構造式をもち, 1965年スイスCiba-Geigy社で開発された半合成セファロスポリン系抗生物質である。その試験管内抗菌力は, Cephaiothin (CET) と類似しているが,in vivoにこおける感染治療実験では, 大部分の細菌に対してCETよりすぐれており1), 吸収・排泄・体内動態は, Cefazolin (CEZ) とCETの中間に位置すると報告されている2)。また, CECは, R因子を有するE. coliおよびCitrobacter, Enterobacterに対して, 既存のセファロスポリン系薬剤よりすぐれた抗菌力をもち, これら菌株が産生するβ-Lactamaseに対してCET, CER, CEZよりもすぐれた抵抗性を示すと報告されている3, 4, 5)。
    我々は, 本剤の諸特性が臨床面にどのように反映されるかを検討する目的で, グラム陰性桿菌感染症に対して一般に使用されているCEZを対照薬とし, 起炎菌としてβ-Lactamase産生菌が比較的多く分離される複雑性尿路感染症を対象に2群比較・二重盲検法による検討をおこなつたので報告する。
  • Cefazolinを対照とする二重盲検比較試験
    松本 慶蔵, 野口 行雄, 宇塚 良夫, 加藤 康道, 斉藤 玲, 桜庭 喬匠, 松井 克彦, 中山 一朗, 富沢 磨須美, 矢嶋 戟, 小 ...
    1976 年 29 巻 12 号 p. 1070-1092
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephacetrile (以下CECと略す)は, スイスCiba-Geigy社で合成された半合成Cephalosporin系抗生物質で, 下記の化学構造をもつ。
    CECは, 既存のCephalosporin系抗生物質と同様, 広範囲の抗菌力をもち, その作用は殺菌的である。かつ, その毒性は少なく, 特に腎毒性は極めて軽微と報告されている1, 2)。
    著者らは, さきに, 臨床材料から分離した起炎性の明確な肺炎球菌26株を用いた基礎的研究で, CECのこれら菌株に対する最小発育阻止濃度(以下MIC)がすべて1.56μg/ml以下で, 半数の13株に対しては0.05μg/ml以下であり, その分布はCefazolin(以下CEZ)のMIC分布とほぼ等しいこと, また, CECのラットにおける臓器移行の検討では, 腎に次いで肺によく移行すること, さらに非盲検臨床検討において呼吸器感染症に対する治療成績がすぐれていることを明らかにして報告した3, 4)。
    今回我々は, この研究を一歩進め, 本剤CECの細菌性肺炎および肺化膿症に対する臨床上の有用性, すなわち臨床効果と副作用をCEZと比較して評価するために, 二重盲検法による比較試験をおこなつたので, その成績を報告する。CEZは, 細菌性肺炎などの呼吸器感染症に繁用されており, 上記の我々の研究結果からも, CECを臨床的に評価するさいの対照薬として適切なものと考えた。
    本研究は, 表記20施設の共同研究としておこない, コントローラーは, 東邦大学・桑原章吾教授と, コントローラー委員会委員・帝京大学・清水直容教授とに依頼し, 両剤およびその包装の識別不能性と含量の確認, 無作為わりつけとわりつけ表の保管および開封, 開封前後のデータの管理, 集計・解析など, 試験全体としての公平性の吟味を委嘱した。
  • 関根 理, 薄田 芳丸, 青木 信樹, 若林 伸人
    1976 年 29 巻 12 号 p. 1093-1097
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我々はさきに静注用塩酸Doxycycline (PT-122M) に関する臨床使用成績を発表し, 投与後高v・血中濃度が持続し, 臨床効果にすぐれ, 重篤な副作用をみなかつたことなどを報告した1)。
    今回は, 台糖ファイザー社が開発した点滴用Doxycycline (以下DOTC) の使用成績を報告する。
  • 小池 健一
    1976 年 29 巻 12 号 p. 1098-1105
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    担子菌Schizophyllum commune(スエヒロタケ) は, マツタケ目シメジ科に属する末広形をした木材腐朽菌であるが, その菌糸体培養液中に産生される粘質多糖Schizophyllan (以下SPGと略) は, β-1, 3グルコシド結合の直鎖グルコース残墓3個に対し1個の割合で, 1分子のグルコースがβ-1, 6結合を介して分岐したものを構成単位とする単純グルカンである。スエヒロタケの培養条件に関しては小松ら1)が, SPGの調製法および物理化学的性質については菊本ら2, 3)が詳細に報告している。
    SPGの生物活性については, はじめ数種の実験的同種皮下移植腫瘍に対して宿主媒介抗腫瘍作用を示すことが小松ら4) によつて見いだされた。その後, 種々の基礎実験5~10) がおこなわれ, 正常マウスにSPGを投与することによつて, Carbonclearance能の亢進5), 腹腔浸出細胞の食菌能とLysosome水解酵素活性の増加5, 6), および諸種の急性細菌感染症に対する感染防御能の非特異的増強5)がみとめられた。またSPG投与によつて腫瘍が完全退縮したマウスでは, 腫瘍細胞抗原の存在下で顕著なマクロラァージ遊走阻止能の上昇がみられ, 同種皮下移植腫瘍に対する細胞免疫の成立にSPGが好影響を与えることが示唆された7)。さらに, 慢性感染症であるマウスの実験的結核症に対しても, 延命効果が著明であることが明らかとなつた8, 10, 11)。また最近, 溶血プラクテストを用いて, ヒツジ赤血球を抗原として投与したさいのマウスの免疫グロブリン産生系に対する作用が検討され, SPG投与によつて抗ヒツジ赤血球19M抗体および抗ヒツジ赤血球IgG抗体の両方の産生が促進されること (アジュバント作用) が報告12)され, SPGは多彩な生物活性を有することが明らかにされつつある。
    現在臨床上注目されている緑膿菌による実験的感染症に対して, マウスをSPGで前処置することによつて感染防御効果がみとめられることは, すでに報告5)したが, 今回著者は, さらにマウスの緑膿菌感染症に対して, SPGと抗生物質 (主としてGontamicin) とを併用したばあいの感染防御効果, および臓器内生菌数の消長について検討した。またSPG前処置マウスの腹腔マクロラァージを組織培養し, これに緑膿菌を食菌させたのち, マクロラァージ内の緑膿菌の消長を追跡することによつて感染防御機構の解明を試み, 知見をえたのでここに報告する。
  • 真下 啓明, 深谷 一太
    1976 年 29 巻 12 号 p. 1106-1110
    発行日: 1976/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephaloridine (CER) は, グラム陽性球菌類にすぐれた抗菌作用をもち, 筋注時の疹痛が少なく, 筋注用にふさわしいセファロスポリン剤としてひろく使用されているが, もちろん, 静注も可能であり, 最近の筋注時の局所筋肉障害による後遺症発生例の報告の相次ぐことの影響もあつて, 静注されるばあいが増加しつつある。
    私共は, さきにCephalotin (CET-Lilly) について, 注入速度を管理しつつ, できるだけ等速で点滴静注をおこなつたさいの血中濃度の推移を健康成人篤志家について観察した成績1)および全国各施設での実際例の集計2)を発表した。注入速度が動揺しやすいことを経験し, また測定した血中濃度値から薬動力学的解析をおこない, 一般的な濃度をあらわす式を導き, 投与量・投与時間を知れば点滴開始後一定時間から終了時まで維持されるプラトーを示す血中濃度値を予測することができることを報告した。
    CERについて点滴時の血中濃度の推移を観察した成績は, 松本ら3), KIRBY4) らの報告をみる程度であるため, このたび健康成人男子について, CERの点滴静注を注入速度を管理しつつ施行し, 血中濃度測定をおこない, 解析をおこなつたので, その成績を報告する。
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