The Japanese Journal of Antibiotics
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29 巻, 10 号
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  • 横田 好子, 河野 洋子, 若井 芳美, 上村 利明, 西田 実
    1976 年 29 巻 10 号 p. 859-867
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗生物質の有効性についての基礎評価において, 実験的感染に対する治療効果の判定が重要な手段であることは, 多言を要しない。この実験のための感染モデルとして, 今日まで種々の感染系が利用されてきた。たとえば, マウスの全身感染1~3), モルモット, ラットの皮内感染4~6), マウスの気道感染7), ウサギの角膜感染8, 9), ラット, ウサギおよびイヌにおける尿路感染10~13) などが用いられてきた。われわれもさきに, 抗生物質のin vivo評価のためにラットのPouch内感染系について報告した14, 15)。しかし, 多くのばあい,感染実験系としてマウスの全身感染が用いられているのは, 方法が簡易で, 効果判定が容易であるため, 多数の検体を同時に比較評価することができるなどの利点によるものである。
    一方, 種々の抗生物質のPharmacokinoticsにおける挙動は一様でなく, たとえばCephalosporin誘導体についてのわれわれの知見では, 7位または3位側鎖のMinor changeによってすら大きく変動することをみとめている16, 17)。さらに, 特定の抗生物質のPharmacokineticsが動物種によつて大きく変化することも, 珍らしい現象ではない18, 19)。したがつて特定の動物を用いる単一の実験系だけで, たとえばマウスの全身感染系だけで抗生物質のin vivo評価を断定することは危険である。他方, 臨床における感染菌種の多様性, 感染症の複雑性などをモデル感染系で再現し, そのような条件における抗生物質の治療効果を検討する必要があると思われる。このような目的のための予備検討として, 尿路感染症の起因菌として最も出現頻度の高いE. coliを中心とし, 他のグラム陰性菌とをラットの腎に混合接種して, 実験的な尿路混合感染系の確立のための条件検討をおこなつた。また, 実験系における治療効果とin vitro抗菌活性との相関性を検討したので, その結果を報告する。
  • 宮本 浩吉, 関口 哲夫, 山下 巧, 森 道広, 伊沢 晶子, 海老原 和雄, 吉岡 修, 松田 明
    1976 年 29 巻 10 号 p. 868-882
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ブレオマイシンは, 従来から主として扁平上皮癌の治療に用いられ, その抗腫瘍効果は高く評価されている。また近年, 投与法と表裏一体となった新剤型が当研究所を含めて各所で工夫されるようになつて来た。我々は, 新剤型の油性ブレオマイシン注射液 (以下, 油性BLMと略) の毒性研究を種々の角度かち検討している。
    本報では, このうち, ビーグル犬を用いた亜急性毒性試験についで報告する。
  • 坪崎 正寿, 関口 哲夫, 伊藤 公一, 熊谷 睦美, 山下 巧, 吉岡 修, 松田 明
    1976 年 29 巻 10 号 p. 883-893
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ブレオマイシンをゴマ油中に分散懸濁した新製剤の油性ブレオマイシン (以下油性BLMと略す) の安全性評価の一環として, 局所投与時の注射部位の毒性を検討したので報告する。
  • 田中 建志, 山賀 哲男, 一町田 裕子, 吉岡 修, 松田 明
    1976 年 29 巻 10 号 p. 894-899,901
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ブレオマイシンは従来から急性毒性が低く, 正常組織に対する影響が少ないために筋注のできる制癌剤として知られている。
    最近では, 製剤学的な特徴を最大限に発揮させるような投与法が新らたに闘発されつっある。われわれは, このうち硫酸ブレオマイシン油性注射液 (以下油性BLMと略す) に着目し, そのDioavailabilityの特徴が局注での局所組織内滞留性, および筋注での血中濃度, リンパ管内濃度の持続性の可能性を考慮し, 臨床応用に際してその安全性を保証するため動物による急性毒性試験を実施した。実験はマウスとラヅトの皮下投与における急性毒性(LD50), 筋肉内投与および腹腔内投与における急性毒性についてそれぞれ検討した。
  • 宮本 慎一, 熊本 悦明, 阿部 厚三, 清水 光博, 郷路 勉
    1976 年 29 巻 10 号 p. 902-905
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    急性淋菌性尿道炎の治療には, 従来からAqueous procaine penicillin G (APPG) が多くもちいられ, 今後とも選択すべき治療薬剤と考えられる。しかし, Penicillin hypersensitivityの問題に加えて, 近年Neisseria gonorrhoeaeのPonicillin耐性, Totracycline耐性が増加しているという報告や1), Penicillin治療の有効性が低下しているという報告2) がみられる。
    Spectinomycinは,Streptomyces Spectabitisから分離されたAminocyclitol antibioticであり, 通常Dihydrochloride pentahydratoの形で投与される。Fig.1に示す構造式をもつ水溶性の白色結晶物質である。
    DUNCAN8) によるとN. gonorrhoeae 80株に対するSpoctinomycinのMIC分布は, 5μg/ml 2株, 7.5μg/ml 24株, 10μg/ml 31株, 15 μg/ml Fig. 1. Spectinomycin 23株となつている。また, 大槻4)によると, N.gonorrhoeae 37株に対するMIC分布は, 3.13μg/ml 4株, 6.25μg/ml 22株, 12.5μg/ml 11株となっている。
    Spectinomycin 2g筋注後の血中濃度は, 投与1時間後に約100μg/mlのピークがあり, 投与8時間またはそれ以上にわたつて35μg/ml以上の血中濃度が得られると報告されており5),N. gonorrhocaeにはかなり有効な薬剤と考えられる。諸外国での臨床報告も, それを裏付けるような成績である。そこでわれわれも, 男子淋菌性尿道炎患者に対して, このSpectinomycinの1回投与による治療を試み, 優れた成績を得たので報告する。
  • 水間 圭祐, 片庭 義雄, 赤坂 哲治郎, 佐野 忠雄
    1976 年 29 巻 10 号 p. 906-908
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1943年, 淋疾の治療にペニシリンが使用されて以来, 今日までペニシリンが淋疾治療の第1次選択薬剤であつた。しかし, 近年, ペニシリンに対する淋菌の感受性の低い菌の出現が次第に報告されるようになつた。ことにいペニシリンに対する低感受性の淋菌はいストレプトマイシン, テトラサイクリンに対しても, 比較的感受性が低いことが報ぜられている。一方, ペニシリン系薬剤に対するアレルギーのおそれのある患者に対しては, 効力の高い別の抗生物質の使用が望まれている。
    Spectinomycinは, 1961年, MASON, DIETZ, SMITHらによつてStrcptomyces spcctabilisから産生される広域抗菌性物質として発見されたものである。Spectinomycinは, LAIDとTHAYER(1962), WILLCOX (1963) らによつて初めて淋疾治療に用いられい好成績をあげたことが発表された。今回われわれも合併症のない急性淋疾にこのpectinomycin dihydrochlorideを使用する機会を得たのでその成績を発表する。
  • 小野田 洋一
    1976 年 29 巻 10 号 p. 909-913
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Spectinomycin (Trobicin)は, 白色結晶状のアミハサイクリトール系抗生物質で,Streptomyces spectabilisが生産する下記構造をもつたものである。
    製剤としては2gおよび4g包装の注射薬があり, これにベンジルアルコール0.9%w/vを含む滅菌水が添付されていて, 2gのものはこれの3.2mlで, 4gのものは6.2mlで溶解して懸濁液をつくる。懸濁液は, 2gのもので約5ml, 4gのものは約10mlとなるので, 注射薬は啓筋内に深く注射し, 4gのときには半量ずつ左右の啓筋内に分けて注射する。
    Spectinomycinの淋菌に対するMICは, 7.5~20μg/mlである。1回にこれの2gおよび4gの注射をおこなったばあいに, 人体内でSpectinomycinは少なくとも8時間, 淋菌に対するMIC以上の血中濃度を持続している性質をもつている。これは, 急性淋病に対して有効な治療薬となりうる可能性をもつていることが考えられる。
    今回, 急性淋病に対する治験をおこなう機会をもつたので, この経過と結果について以下のべることにする。
  • 小野田 洋一
    1976 年 29 巻 10 号 p. 914-916
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    長い間, 女性の淋病を治療するときには男性の2倍量の抗生物質剤を使用したほうがよい, という思想が米国にあつた。Spoctinomycinによる治療も, 男性は2g 1回注射で90%以上の治癒率をしめすにもかかわらず, 女性にははじめから4gを使用する方法がとられていた。これに対する根拠は明自でなく, ただ過去の習慣にしたがつたものと思われる。
    今回, 女性の急性淋病に対して男性と同量の2g 1回筋注法をおこなう機会を得たので, その15例についてその成績をのべる。
  • 三田 俊彦, 末光 浩, 藤井 昭男, 杉本 正行, 石神 襄次, 林 法信, 原 信二
    1976 年 29 巻 10 号 p. 917-920
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1961年, 米国アップジョン社で開発された新アミノサイクリトール抗生物質であるSpectinomycin (Dihydrochloride pentahydrate, Fig. 1)は,Streptomyces spectabilis NRRL2792の培養炉液から発見された。すでに米国1) および国内2~7) での基礎的検討の結果, ラット, マウス, 犬等に対する毒性も少なく, 細菌学的には特に淋菌の感受性が大部分7.5~20μg/mlに分布しており, 吸収, 排泄面でも29筋注で血中濃度100μg/mlに達し, 48時間以内に尿中に排泄されること等が明らかにされている。我国でも本剤の硫酸塩については, すでに1965年, 第12回日本化学療法学会東日本支部総会, ならびに第13回日本化学療法学会中日本支部総会においてシンポジウムとして検討されている。
    淋疾に対する本剤の使用は, すでに古く1962年WILLCOX8), LAIRD9) 等の報告に始まり, 多くの報告があるが, 今回私達は, 本剤の塩酸塩を男子急性淋菌性尿道炎に使用し, その臨床効果を検討したので報告する。
  • 原 三信, 原 孝彦, 南里 和成, 山口 秋人
    1976 年 29 巻 10 号 p. 921-927
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Spectinomycinは, Actinospectacinともよばれ, 米国Upjohn社によつて開発された広域性抗生剤で, 広範囲のグラム陽性菌およびグラム陰性菌に対して抗菌作用をもつている。本剤は, 注射用であり, 動物実験によつて毒性が非常に低いことが証明され, またきわめて高い血中濃度が得られ, かつ尿中排泄量が多いことが特色とされでいる。
    淋疾に対する治療薬は, Penicillin系抗生剤を基本とすることは現在でも変りはないが, 使用量の増加や無効例の報告もあり, Penicillin以外の抗生剤, たとえばTetracycline, Chloramphenicol, アミノ配糖薬剤などを使用するばあいも少くない。今回, 日本Upjohn株式会社から提供を受けた注射用Spectinomycinは, すでに米国において多くの急性淋疾に対して2~4g1回注射療法がおこなわれ, 優れた臨床効果が発表されている。我々は, Spectinomycin研究会に参加する機会を得たので, 男子急性淋疾患者に対する本剤の臨床効果を検討し, その成績を報告する。
  • SpectinomycinのOne shot療法について
    大井 好忠, 川畠 尚志, 岡元 健一郎, 福崎 三彦, 永田 耕一, 片平 可也, 富山 哲郎
    1976 年 29 巻 10 号 p. 928-932
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    男子淋菌性尿道炎は, いうまでもなく性病の1つでゐり,Neisseria gonorrhoeaeの感染である。性病は忌むべきものであり, 根絶されるべき疾患ではあるが, その患者数は減少していない。一方, 化学療法という立場からは, 症状が顕著で, 起炎菌が単一な本症は, 化学療法剤の効果判定にはきわあて都合がよい1)。
    しかし, 本症にたいしてPonicillinが初期に示したような画期的な治療効果は得難くなり, Ponicillinにたいする本菌の感受性の低下が指摘されるとともに2), Penicillinによるアナフイラキシー・ショックのために, 第1線病院において, 本症にたいしてPenicillinが使用される機会が著るしく減じている。それにつれて, 他の抗菌薬剤が使用される機会が多くなつている。
    欧米では, 本症にたいしてPenicillin3), Tetracycline系薬剤4) の1回投与療法が試みられている。最近, われわれも男子の急性淋菌性尿道炎にたいしてSpectinomycin 2g 1回筋注療法を試みたので, その成績について報告する。
    Spectinomycinは, 1961年米国アップジョン社のMASONらによつてStreptomyces spectabilis NRRL 2792の培養炉液から発見されたアミノサイクリトール抗生物質であり, Fig.1のような構造式をもつ。
  • 松田 静治, 丹野 幹彦, 柏倉 高
    1976 年 29 巻 10 号 p. 933-935,937
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    第2次大戦後急激な増加をみた急性淋疾は, その後は社会秩序の回復, 抗生物質の出現によつて, 発生数の減少を来たしたが, 近年になつて国際交流の高まり, ペニシリン (PC) 耐性菌の出現などの要因も加わつてか, 再び淋疾の増加が指摘されるに至った。女子における淋疾は, 淋菌性子宮頸管炎のばあい, 定型的な症状 (多量の黄色膿性帯下) を急性症でも見逃されるおそれがあること, 慢性症の頸管帯下も他の帯下との区別がつけ難いこと, したがつて無症候性の淋疾が感染源として今後はびこる可能性が充分予測される現状である。一方, 治療面からみて女子淋疾の第1選択薬剤であるPCにおいても, 淋菌に対する感受性の低下が既に報告されているほか, 過敏反応に対する配慮も現実に重要となつて来た。加えて, 女子は男子にくらべ淋疾の治療は一般に困難で, PCの治療量も男子より大量を必要とするが, 初回治療後来院しないもの, 治療中途の中断例が割こ多く, この点治療効果の把握が十分でない. このため近年, 抗生物質の大量投与による初期の衝撃療法であるOne shot療法 (1発療法) が本症の治療上注目されて来た。たとえば, 水性Procaine PC-Gの1回大量(480万単位, これ)こProbenecid 1.0gを併用するばあいもある) 筋注による治療成績の向上がすでに指摘されているほか, 米国ではさらにSpectinomycin (Trobicin) のOne shot療法も盛んに試みられている。
    われわれは今回, 女子の急性淋疾にSpectinomycinを使用する機会を得たので, 以下に臨床成績の概要を報告する。
    Spectinomycinは, 1961年に米国アップジョン社でStreptomyces spectabilisの培養炉液から得られたアミノサイクリトール抗生物質で, 毒性が低く, 殺菌作用をもち,Neisseria gonorrhoeaにはMIC 6.25μg/mlを中心に感受性の分布を示し, 血中濃度, 尿中排泄ともかなりよい結果が報告されている。今回の実験は, 本剤の筋注剤の臨床応用である。
  • 野木村 昭平, 斎藤 晃, 平田 俊文, 水野 恵交
    1976 年 29 巻 10 号 p. 939-942
    発行日: 1976/10/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    広域性ペニシリン剤は, 近年, 外科領域においても広く用いられている。
    今回, 英国ビーチャム社研究所で開発された新らしい合成ペニシリンAmoxicillin (以下, AMPCと略) は, Ampicillin (以下ABPCと略) と類似の構造をもつており, その抗菌力, 抗菌スペクトラムは, ほぼABPCと同じである。しかもAMPCは, 経口投与によって, 吸収が良好で, ABPCの半量で同じ血中濃度が得られるといわれる。
    外科的感染症は, 大別すると, 治療上, 軟部組織感染症で代表される外科的手術操作が必要なものと, 手術操作に伴なつて発生する術後感染症に分けられる。
    今回, 協和醸酵工業KKから, AMPC (販売名: パセトシン) の提供を受け, 外科領域における軟部組織の感染症に使用し, 以下の成績を得たので報告する。
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