一般に, 胆道感染症は胆嚢および胆管の細菌感染であり, そのうちでも胆石症をもつものが一番多いとされ, 成因について種々の説があげられている。ANDREWS1) は, 胆汁酸等の化学物質の刺激によっておこるいわゆるChemical cholecystitis説, また真下2) も, 胆道感染症のばあいには遊離型胆汁酸の増加がみとめられ, なかでもDesoxycholic acid, Lithocholic acidは起炎性が強いとのべており, 胆汁酸を中心として炎症惹起の要因が考えられるが, 胆汁酸以外にも胆汁中のコレステロール重視説3), 食餌アレルギーまたは大腸菌等による細菌アレルギー説4, 5, 6), 膵液の逆流説等7)があるが, 胆道疾患においては胆汁中に細菌を証明することが多いことは周知の事実である。とくに胆道感染症のばあい, 諸家の報告のように, グラム陰性桿菌が圧倒的に多く, なかでも
Escherichia coli, Klebsiellaが多く検出されている。1960年以後, 臨床外科における感染症の起炎菌としてグラム陰性桿菌が増大し, これはSeptic shockの起炎菌とされ, 死に至らせることが多いことは周知のとおりである。
感染症の化学療法の原則は, 起炎菌を正確に把握し, その菌の感受性が高い薬剤を十分に使用することであり, とりわけ胆道感染症のばあい, 胆汁中の薬剤濃度を高めることがきわめて重要である。
われわれは, 胆道疾患142例に術中胆汁培養, さらにまた感受性検査をおこない, うち27例について, 広範囲の抗菌スペクトルをもち, 特に
E. coli, Klebsiella等に強い抗菌力をもつCephalosporin系薬剤であるSodiumcephalothin (以下CETと略す) を用い, CETの血中濃度, 胆汁への薬剤移行性を検討し, 同時に, 総ピリルビン値, GOT, GPT, アルカリフォスファターゼ等の検査成績との関連性について検討したので, 多少の文献的考察を加え報告する。
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