小児科領域における感染症は, 抗生物質が開発され, その占める地位がいささ塗低下したとはいえ, 日常堕床上きわめて大きいことは, 現在なお変りはない。1929年FLEMING1)によるPenicillinの発見, 1945年毒性が少なく安定度の高いPenicillinGの完成によりその後の抗生物質の長足の進歩は周知の事実である。さらに, Penicillinの主核である6-Aminopenicillanic acidの構造醐らかになつて2)以来, その側纏興よつ嘆菌, 薬理作用に新らしい局面が開かれ, 多くの半合成Penicillinが作られ, 経口投与可能なPenicillin V, Penicillinase産生ブドウ球菌に抗菌力のあるMPI-PC (Oxacillin), MCI-PC (Cloxacillin) など, さらにグラム陰性桿菌にも抗菌力のある広範囲抗生物質として従来の壁を打破つたABPC (Ampicillin), CBPC (Carbenicillin) などが出現し, その応用範囲は一段と広くなつた3)。
Oxacillinは, beta-Lactamaso resistant penicillin群の中では, 経口でも注射でも投与でき,
in vitroではPenicillin抵抗性黄色ブドウ球菌に対しては, Methicillinより有効であるといわれている4)。また, 広範囲PenicillinとしてのAmpicillinは, グラム陽性球菌以外にもインフルエンザ桿菌, 大腸菌, 変形菌, 赤痢菌, サルモネラ菌などに対しても有効である。
Broadcillin (注射用ブロードシリン万有) はAmpicillin-NaおよびOxacillin.Naを1: 1に配合した注射薬で, それぞれの秀れた作用をあらわすとともに, 協力作用が期待され, 特に原因菌が不明のばあい緊急治療を必要としながら菌検索が困難なばあい, またはグラム陽性菌や耐性ブドウ球菌, グラム陰性菌の混合感染が考えられるばあいには, 確実な臨床効果を期待される。
我々は今回, 種々の気道感染症に対して注射用ブロードシリンの静脈内投与をおこない, みとむべき効果をえたのでその概要を報告する。
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