1929年のFL尼MMINGによるPenicillinの発見, 1940年の動物における連鎖球菌感染症に対するPenicillinによる治療実験の成功は, 今日の抗生物質療法の黎明といつても差しつかえないものと思われる。
それ以後, 今日までに化学療法剤, 主として抗生物質が人類に与えた恩恵は, 薬剤耐性, 治療剤そのもののもつ副作用, また, 感染症起因菌の年次的変遷の問題1) などを含みながらも, 計り知れないものがある。事実, 産婦人科領域においても, 重篤な産褥熱, 附属器炎や骨盤腹膜炎などが激減したことはいうまでもない。
感染症の治療にあたつては, 化学療法を第1義的におこなうことについては, 論をまたないところであるが, 分離株の化学療法剤に対する感受性の有無ならびにその程度について, 検索した結果に基づいて, 適切な薬剤の選択・投与がなされることが肝要であり, それらの動向を常に熟知していることも, 臨床上必要なことであると考える。さらに, また, それらの化学療法剤を投与したばあい, 生体内における体液内, 組織内濃度の経時的な量的分布についての知識も, もつておくことも必要である。
われわれは, この点にかんして, 成熟雌家兎に2種類の抗生物質, DibekacinとAmpicillinを投与して, 血清中濃度, 子宮, 卵巣, 卵管などの雌家兎内性器内濃度を測定し, さらに尿中回収率についても検討を加えた。
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