感染症にみられる種々の変化は, 化学療法の進歩はもとより, 医療の多様化と向上に負うところが大きい。セファロスポリン系抗生物質の出現による化学療法の進歩は, 実際の感染症治療に大きい効果を上げてきた。 しかし, 近年, 難治感染症の増加に伴ない, 化学療法にも新らたな強化と転換の必要性が生じている。 さて, β-Lactamase産生菌の増加に伴なうセファロスポリン系抗生物質耐性化傾向は, セファロスポリン系抗生物質において, 大きな問題となっている。
1972年, 米国Eli Lilly社で開発されたCefamandole (CMDと略す) は, 注射用Cephalosporin系抗生物質である。 本剤は最初, Sodium塩として合成されたが, 不安定なため, 安定したCefamandole nafateとして開発され, すでに海外においてはその臨床検討によつて, すぐれた効果が確認されている。 しかし, Cefamandole nafateは加水分解によつてCMDと蟻酸に分解し, 蟻酸の安全性に問題があるため, 本邦ではさらに塩野義研究所において, 製造改良がおこなわれ, 安定したNa塩の製造に成功した。 グラム陽性および陰性菌, とくにIndole陽性
Proteus, Enterobacterに優れた抗菌力を示す。 また, 従来のセファロスポリン系薬剤では抗菌力が弱いとされた
Haemophilus influenzaeにも抗菌力の強いことが明らかにされている。 さらに, 本剤はβ-Lactamaseに対して安定性をもち, 生体内では代謝されることなく, 排泄も速やかである。 一般毒性もきわめて弱く, 従来のセファロスポリン系薬剤と同程度, またはそれ以下といわれる。 すでに本邦においても, 成人における本剤の評価がおこなわれたが1), その有用性と安全性の確認のもとで, 小児科領域における検討が多施設合同で研究開始された。 その成績は, 第26回日本化学療法学会西日本支部総会で報告された2)。
今回著者らも, この研究に参加, 本剤の基礎的ならびに臨床的検討をおこなったので, その成績について述べる。
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