細菌性髄膜炎の治療の基本は, 早期診断による早期の適切な抗生物質の選択と適切な血清中および髄液中濃度の保持によるものと考えられるが, 起因菌の決定前に抗生物質の使用を開始しなければならないばあいが多い。初期治療薬として, MATHIES, WEHRLEら1) は, Ampicillin (ABPC) 単独療法を, McCRAKEN2), MuRRAYら3) はABPC+アミノ配糖体 (Gentamicin) 大量療法を推奨している。しかし, ABPCとこれらアミノ配糖体系抗生物質の併用が, 相互間の不備を補うためのものであり, 現在ではABPCまたはKanamycin (KM), Gentamicin (GM) 耐性大腸菌が増加しつつあり, KM耐性ブドウ球菌も増加の傾向がある。さらに, ABPC耐性のインフルエンザ菌が増加し, ABPC耐性インフルエンザ菌性髄膜炎の報告4-6) もある。また, ABPCによつて奏功し得ないばあいにChloramphenicol (CP) を使用したばあいも以前は多かつたが, KINMoNTHら7)は, CP耐性インフルエンザ菌性髄膜炎の報告をしている。小林ら8) は, 新生児期の化膿性髄膜炎において, 大腸菌, ブドウ球菌の耐性株のほとんどないセファロスポリンC系薬剤をABPCのかわりに用いるべきだと述べ, なかでもCefazolin (CEZ) を選ぶべきだと報告している。著者らも, 乳児期以降に増加している
Escherichia coli, Haemophilus influenzae および,
Streptococcus pneumoniaeによる髄膜炎において, 第5群のCEPs系抗生物質であるCefotaxime (CTX) あるいはCefoperazone (CPZ) を使用し, 有効な成績を得5, 9) ている。
近年, β-Lactamase産生菌の存在がしられるようになり, 臨床上無視し得ないものとなつているが, 従来のCEPs系抗生物質の利点をもちながら, β-Lactamaseに対して安定な薬剤の開発が進み, 数々の新合成CEPs系薬剤が登場している。Cefuroxime (CXM) も, 同群の1つであり, 化膿性髄膜炎の原因菌である
Neisseria meningitidis, H.influenzaeおよび
S.pneumoniae等に非常に優れた抗菌力を示している10)。また, 化膿性髄膜炎についての臨床報告および髄液濃度は, 岩井ら11), KUZEMKOら12) により, すでになされており, 新生児期での髄液移行に関しても, RENLuNDら13), WILKINSONら14) の報告がある。
今回, われわれは, 小児期化膿性髄膜炎に対しCXMを使用する機会を得, 4例の小児に対して使用し, 有効な成績を得たのでその結果を報告する。
抄録全体を表示