Cefotaxime (以下, CTX) は, ドイツ, ヘキスト社とフランス, ルセル・ユクラフ社で共同開発された新しい注射用セファロスポリン剤である。
本剤は広域の抗菌スペクトラムを有し, 特に, 抗菌力において著しい特徴を有する。すなわち, 緑膿菌を含むグラム陰性桿菌に対し, 従来のCephem系抗生物質の数十倍から数百倍の抗菌力を有し, MIC値が甚だ低い。また, β-Lactamaseに対しても安定で, 他剤耐性菌に対して強い抗菌力を有するなどの点である。
本剤は開発以来, ドイツ, フランスおよびアメリカをはじめ多くの国々で検討がなされその価値が認められている。本邦では, 1979年, 第27回日本化学療法学会総会新薬シンポジウムにおいて本剤の評価成績が報告され1), その有用性が認められた。産婦人科領域においても全国31施設において有効性と安全性を基礎, 臨床の面から検討され, 有用性が認められ, われわれもこれを報告した2)。
近年, 産科領域では周産期医学が重要視され, 胎児, 新生児を中心として, 妊娠末期の母体, 新生児期の諸問題についてひろく研究が行われているが, この時期の感染症, 化学療法についても重要視され, 研究が盛んに行われている3, 5)。
周産期において選択すべき抗生物質としては, 広域スペクトラムで抗菌力が強いこと, 注射可能で吸収が速く, 臓器集中性がよいこと, 副作用が少ないことなどの諸条件を満すことが望.しいと考えられる。また, 問題点としては, 原因菌の変遷, 薬剤感受性の変化, 薬剤の胎児移行, 新生児における吸収, 排泄, 適正投与量, 新生児におよぼす影響などの点があげられる。
以上のことから考察すると, CTXは上記の条件に合致するものと考えられ, 周産期化学療法研究会において取り上げられ, Cefotaxime周産期感染症研究会が組織され, 研究が行われた。われわれも上記の観点から, 研究会に参加し以下の知見を得たので報告する。
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