The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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35 巻, 7 号
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  • 磯野 美登利, 川島 健, 山田 規恵, 青木 誠, 小林 とよ子, 沢 赫代, 渡辺 邦友, 上野 一恵
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1667-1672
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephamycin 系抗生剤としてはCefmetazole, Cefoxitin, Cefotetan が開発され, Oxacephem 剤としてLatamoxef が登場してきた。これらの抗生剤はBacteroides fragilis の産生するβ-Lactamase に対して極めて安定なことが特徴である1, 2, 3)。Cefmetazole はB. fragilis を含めて殆どの嫌気性菌に対して極めて優れた抗菌力を示すが, B. fragilis の β-Lactamase に対する安定性については未だ十分には検討されていない。
    そこで本報ではB.fragilis の産生するβ-Lactamase に対する安定性と実験的感染マウスに対する治療効果について検討したので報告する。
  • 豊永 義清, 黒須 義宇, 杉田 守正, 熊谷 公明, 堀 誠, 保科 定頼, 黒坂 公生, 西山 博高, 篠原 紀子, 高橋 孝行, 出口 ...
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1673-1685
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Staphylococcus aureus は小児科領域において, 肺炎, 膿胸, 敗血症, 化膿性髄膜炎, 腸炎, 食中毒およびブドウ球菌性皮膚熱傷様症候群などの感染症の原因菌として, 非常に重要視されている。Cloxacillin (MCIPC), Oxacillin (MPIPC), Cephaloridine (CER), Cefazolin (CEZ), Gentamicin (GM) 等の薬剤が, 本菌の感染症に臨床的に使用されはじめた頃は耐性株がほとんど認められなかつたが, 1973年から1974年の分離株では約5%にCephalosporin (CEP) 耐性株が出現1) している。その後, β-Lactam系のPenicillin (PC) 系, CEP系の薬剤消費量が増加するにつれ, この傾向は増幅されつつある2) のも事実である。
    猿渡ら3) は1979年に106cells/mlの菌液を用いてCEZ耐性株 (50μg/ml以上のMICの株) が3.8%に認められたことを報告しているが, その他, 小栗ら4) のDisk法でCEZ耐性株が1978年には10.8%, 1979年には11.3%出現しているとの報告もある。
    Cefmetazole (CMZ) は, 7α 位にMethoxy基をもつCephamycin系の薬剤であり, どのβ-Lactamaseに対しても安定性の高い薬剤といわれている。われわれは臨床分離S.aureusを用いて, CEP系薬剤を中心にいくつかの薬剤に対するMICを測定し, また, ファージ型ならびにβ-Lactamase活性を調べ, その相関について検討したので報告する。
  • 森岡 正信, 桜田 恵右, 樋口 晶文, 川村 憲一, 武蔵 学, 佐々木 修, 藤本 望, 岡部 実裕, 今村 雅寛, 竹森 信男, 田中 ...
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1686-1689
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    血病や悪性リンパ腫, 再生不良性貧血などの血液疾患においては, 免疫能の低下や好中球・単球の量的, 質的異常を背景とした易感染状態があり1, 2), さらに各種の抗腫瘍剤やステロイド剤の使用はそれらの宿主条件を悪化させ, 重症感染症の合併頻度を一層高める。急性白血病についてみても, 感染症の死因に占める割合はここ数年出血にかわつて主因を占めているのが現状である3, 4)。また感染症の特徴としてグラム陰性菌や真菌が起炎菌の主体を占め, その発症も日和見感染が多く, 遷延化, 難治化傾向が強く, 日常診療上苦慮することが多い3, 4, 5, 6)。一方それらの感染症に対する抗生物質の開発も目ざましいものがあり, 新たな抗生物質が種々臨床応用されるに至つている。今回, われわれはCephamycin系抗生物質であるCekmetazole (CMZ) をそれら血液疾患に合併した重症感染症に対して投与する機会を得たので, その臨床効果について報告する。
  • 小長 英二, 折田 洋二郎, 河村 武徳, 万波 徹也, 折田 薫三, 間野 清志, 片岡 和男, 木村 秀幸, 清水 準也, 上林 恒男, ...
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1690-1698
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    術後に発生する感染症の予防と効果的な治療は手術成績の向上につながる。近年有効にして副作用の少ない化学療法剤がつぎつぎと開発されているが, しかし一方耐性菌の発生, また起炎菌の変化という現象も認められ, 術後感染症の発生率は変らず, なかでも創感染は最も高い発生率である。従つて適切な術後感染予防抗生剤の選択, 投与法などの確立が待たれる。これらの観点にたつて, 最近の創感染の実態の把握, すなわち起炎菌の状態, 感染予防剤として投与された抗生剤との関係などを検討した。一方Cephamycin系薬剤であるCefmetazole (CMZ) はβ-Lactam環にMethoxy基をもち, β-Lactamase抵抗性が強力なため従来のCephalosporin系薬剤にくらべ広い抗菌スペクトルをもち, グラム陰性桿菌Escherichia coli, Klebsiella, Indole陽性変形菌や, 嫌気性菌Bacteroidesfragilisなどにも抗菌力を持つとされている。本剤の感染症治療剤としての有効性と安全性を検討したので, 基礎的な検討に加え報告する。
  • 國島 葵, 藪内 正彦, 増田 稔, 今澄 貴公男, 浜野 弘明
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1699-1700
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephamycin C (CM-C) 1, 2, 3) は現在ではCephamycin系抗生物質としてCefmetazole, Cefoxitinが商品化, 販売されている, これらの出発原料として重要な抗生物質である。しかしCM-Cは水溶性で, 安定性がよくないため単離精製して純度の高いCM-Cを得ることは非常に困難であつた。一方Cephalosporin CあるいはCephamycin A, Bにおいてはマクロポーラス非イオン吸着樹脂に吸脱着させて精製する方法が知られている4, 5)。CM-Cは吸着樹脂に吸着されないが, この樹脂を用いたクロマトグラフィーを利用することによつて高純度のCM-Cを得ることができた。
  • 張 南薫, 福永 完吾, 国井 勝昭, 出口 浩一
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1701-1707
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    婦人の内性器感染症では, 腟内, 頸管下部の細菌が上行性に感染して発症することが多いとされているが, この部位には嫌気性菌が多数常在しており, 内性器感染症では, 嫌気性菌の検出頻度が高いことが知られている。最近は, 技術の進歩に伴い, 嫌気性菌の検出頻度がより高くなつて来ていることが報じられている。特に, 流産, 人工妊娠中絶手術後, 子宮全摘出術後, 産褥, 悪性腫瘍などでは, 局所の出血, Hypoxia, 壊死など環境の変化が嫌気性菌の増殖に有利となり, 嫌気性菌による術後感染症もしばしば認められている。
    Tinidazole (TDZ) は本邦では抗トリコモナス剤として広く普及しているが, 嫌気性菌に対しても強い抗菌力を有しており, 報告によれば, 多くの嫌気性菌に対し, 0.2~3.13μg/ml前後で発育を阻止することが報じられている3, 5)。
    われわれは, この嫌気性菌に対して抗菌力を有するTDZを婦人科手術後に投与して, その前後の腟内容中の嫌気性菌の消長を検索し, 検出菌のTDZに対するMIC値を測定した。また, TDZ投与後の血中濃度, 腟分泌物中への移行濃度を測定し, 本剤投与によつて婦人科手術後の嫌気性菌感染症の予防が可能か否かを検討し, 結果を得たので以下報告する
  • A MECHANISM OF SYNERGISM, CEPHALORIDINE WITH GENTAMICIN ON CEPHALORIDINE RESISTANT GRAM NEGATIVE BACILLI
    HIROMI HAYASHI, OTOHIKO KUMII, TAKASHI KOMATSU, HAJIME NISHIYA
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1708-1715
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Twelve strains out of 75 Gram negative rods, which were isolated at the clinical laboratory in the hospital, were highly resistant to cephaloridine (CER) and relatively sensitive to gentamicin (GM).Nine strains out of the 12 strains revealed synergistic effect when small doses of GM were used together with CER.A mechanism of synergistic effect on Enterobacter cloacae, 1 strain of the 9 strains, was studied through change of P-lactamase activities.The levels of viable cell count decreased when small doses of GM were added compared with the ones obtained without the addition of GM.
    Similarly the levels of protein concentration and β-lactamase activities in the sonicated component of sediment decreased, so did the level of β-lactamase activities per cell.
    On the contrary, however, the 3-lactamase activities in the supernatant fluid showed no difference irrespective of the existence of GM. Based upon the above mentioned findings, it is suggested that synergistic effect of CER and GM might be due to inhibition of protein synthesis as well as due to subsequent inhibition of β-lactamase synthesis. This is compared with the author's previous study, 1) in which the mechanism of synergistic effect of CER and chloramphenicol (CP) was partly due to inhibition of protein synthesis, but mostly due to inhibition of β-lactamase synthesis.
  • 竹内 栄二, 阿部 稔雄, 清水 健, 村瀬 允也, 田中 稔, 野垣 英逸, 堀田 明男, 矢野 洋, 弥政 洋太郎
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1716-1721
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    開心手術に細菌感染を合併した場合には, 細菌性心内膜炎に移行する頻度も高く, 特に人工弁, 人工血管, 合成繊維の布等が, 心内修復に使用されている場合にはParavalvular leakage, Low cardiac output syndrome (LOS), Cardiac failure 等の合併症の原因となり, さらに全身状態を悪化させ, その治療は非常に困難となる。これらに対し予防に優るものはなく, その1つとして, 抗生物質の予防的投与が大きな意味を持つ。一般外科手術に比べて比較的長い手術時間, 体外循環や複雑な手術操作, 人工弁その他の異物の心内使用などを考慮する時, 予防的抗生物質の投与方法についても, 種々な基礎的知識, それを活用する工夫が必要である。
    一方, 最近は内科的治療困難な感染性心内膜炎が, しばしば外科治療の対象となつてきた。感染性心内膜炎は, 内科的に感染を治癒させ, 心内膜とくに弁膜あるいは大血管内膜などの後遺症に外科治療をするのが原剛であるが, 内科的に治癒できない症例, あるいは感染活動期に感染による弁膜疾患などによる心不全が進行的に重篤となる場合に外科治療の適応となる。この場合にも抗生物質の適切な選択使用が重要と考えられる。今回心臓手術に際し予防的に抗生物質 (Sulbenicillin) を投与した場合, どの程度の心筋内濃度が得られるか, 臨床例13例に検討を加えた。
  • 金沢 裕, 倉又 利夫, 松本 清幸
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1722-1729
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephradineは米国Squibb社において開発されたCephalosporin系の半合成抗生物質でCephalexinと構造上極めて類似している物質であることからCephalexinと同様に経口吸収性が良好であり, 体内で大部分が変化を受けることなく尿中へ排泄され, その率は高率といわれている1剣8)。また抗菌作用の面ではCephalexinと殆ど差異が認められないと報告4, 5) されている。今回われわれは, 臨床検査としてのディスク法による感受性測定法を検討したので報告する。
    Cephradineのように新しく出現した薬剤の臨床的な感受性, 耐性に相当する最小発育阻止濃度 (MIC) 値の基準は全く不明で, 暫定的には推定される体液中有効濃度との関連から一応の基準が論ぜられたとしても最終的には多くの起炎菌について得たMIC値と, 薬剤投与による臨床効果との集計の上に将来定められるぺきものであり, したがつて現時点においては適当に規定された実験条件でのMIC値を推定することが臨床的感受性検査の目的と考えられる。この目的に沿うように, すでに金沢6~9) により設定されたMIC値の推定を目的とするSingle-disc法による各種化学療法剤の感受性測定法についてたびたび報告して来たが, Cephradineについても本法が適用されるかどうかを検討した。
  • 金沢 裕, 倉又 利夫, 松本 清幸
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1730-1736
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotaximeはセファロスポリンの誘導体でドイツ, ヘキスト社およびフランス, ルセル・ユクラフ社で共同開発された新しい注射用半合成セファロスポリン剤である。本剤1~4) はグラム陽性菌, 陰性菌に幅広いスペクトルを有し, 特にグラム陽性菌では化膿性連鎖球菌, 肺炎球菌に強い抗菌活性を示し, グラム陰性菌では従来のセファロスポリン剤のスペクトルに加えてHaemophilus inluenzae, Indole陽性Proteusまでスペクトルが拡大され, 広範囲セファロスポリン剤としては初めて一部の緑膿菌に対しても抗菌力を示し, またBacteroides, Peptostreptococcus等の嫌気性菌に対しても抗菌力を示す物質であるとされている。
    今回われわれは, 臨床検査としてのディスク法による感受性測定法を検討したので報告する。
    Cefotaximeのように新しく出現した薬剤の臨床的な感受性, 耐性に相当する最小発育阻止濃度 (MIC) 値の基準は全く不明で, 暫定的には推定される体液中有効濃度との関連から一応の基準が論ぜられたとしても最終的には多くの起炎菌について得たMIC値と, 薬剤投与による臨床効果との集計の上に将来定められるぺきものであり, したがつて現時点においては適当に規定された実験条件でのMIC値を推定することが臨床的感受性検査の目的と考えられる。この目的に沿うようにわれわれは5-8), 単一ディスク (Single-disc) を用いるMIC測定を含めた化学療法剤の感受性測定法についてたびたび報告した。今回はCefotaximeについても本法が適用されるかどうかを検討した。
  • 柱 新太郎, 小池 依子, 藤井 良知
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1737-1748
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotaxime (以下CTXと略す) は藤井の分類による第5群に属する新しい半合成Cephalosporin系抗生物質で, 今までにない広い抗菌スペクトラムと強い抗菌力を有し, β-Lactamaseに対して極めて安定である。腎毒性, 一般毒性も低く小児科領域では, その有用性と安全性がすでに確認されているが, 今回, 我々は新生児にCTXを使用し, 基礎的並びに臨床的検討を行つた。
  • 南里 清一郎, 秋田 博伸, 城崎 慶治, 岩田 敏, 岩崎 由紀夫, 東條 雅宏, 堀田 昌宏, 山下 直哉, 砂川 慶介, 老川 忠雄, ...
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1749-1760
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    症が増加の傾向にある。そしてその対策として, 抗菌力の強化, 耐性菌に対する抵抗性の増強, 抗菌スペクトルの.拡大を目指した抗生剤が更に開発され, 慈染症に対する治療は進歩をとげている。Cefotaxime (CTX) は, ドイツヘキスト社とフランスルセル・ユクラフ社で共同開発された新しい注射用Cephalosporin剤 (CEPs) である。本剤は, グラム陰性桿菌に対し従来のCEPs系薬剤に比べ優れた抗菌力を有し, 緑膿菌に対しても優れた抗菌力を有している1)。また, 抗菌スペクトルの面でもその効果は, Haemnophilus influenzae, Indole陽性Proteus, Serratia, Enterobacter, Citrcbacterなどにまで拡大され2), β-Lactamase産生菌に対しても強い抗菌力を有し3), 作用機序的にも, Penicillin binding Proteinh, Ib, IIIに強く結合し, 強い殺菌作用を有している2)。すでに本剤の成人, 及び小児における有効性と安全性に関しては, 検討が行われているが4), 今後, 変貌してゆく起炎菌を考慮すると, 新生児・未熟児に対して本剤の使用を余儀なくされる状況は眼前にあると思われる。しかし, 新生児・未熟児においては, その肝・腎, 及び循環器系機能の未熟さにより, 乳児期以降とは全く異なつた考えに立つて検討する必要があると思われる。
    今回, 我々は, 新生児期における血中濃度の推移, 半減期, 尿中排泄率の基礎的検討を行い, それに基づき臨床的検討を行つたので, 併せ報告する。
  • 中沢 進, 佐藤 肇, 平間 裕一, 近岡 秀次郎
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1761-1766
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotaxime (CTX) はβ-Lactam系抗生剤耐性菌を含む各種グラム陰性桿菌類ならびにグラム陽性球菌類に対して抗菌性で, 生体内抗菌力がCefazolin, Cefotiam等より優れているなどの特徴を有する所謂第3世代の抗生剤である。
    本邦における基礎的・臨床的検討の成績は各科領域から既に詳細に報告されている1)。
    我々も小児科領域における一連の観察を行い, A群溶連菌 (179株) に対する本剤のMICは大半が0.025μg/ml以下でありCephalexinより抗菌性であつた。また下気道感染症ならびに急性尿路感染症に対する本剤静注時の有用性については既に報告したところである2)。現在新生児期においても本剤の必要性が認められているので, この年令層における本剤に関する2, 3の検討を行つてみた。
  • 豊永 義清, 黒須 義宇, 杉田 守正, 堀 誠
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1767-1782
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    児における化学療法の特殊性は年令が幼若な程きわだつており・ことに新生児・未熟児・その中でも生後1週間未満のものにあつては, 諸種の問題を考慮せねばならない。すなわち, 肝機能の未熟性により抗生物質が不活化されないまま体内を循環する場合もあり得るし, また腎機能の未熟性により代謝が異なる。さらに抗生物質の蛋白結合の問題, ビリルビンとの競合による黄疸の増悪の発生等についても考えねばならない。上記の諸条件を考慮し・新生児, 未熟児に多い起因菌について検討し, Initial therapyとしての適当な薬剤を選択した上で, その投与方法, 投与回数, 投与量の決定をなさねばならない。
    現在, β-Lactamase産生菌の存在が知られるようになり・臨床上, 無視し得ないものとなつてきた。その結果・従来のCephems (CEPS) の利点を有しながら近年増加しているSerratia, Enterobacter,Citrobacter, およびIndole陽性のProteus等にも優れた抗菌力を示す薬剤の開発が進み, 第5群のCEPSが登場したわけである。Cefotaxime (CTX) の乳幼児期以降の小児に対する検討は既に我々も報告1) しているが, その有用性は, 従来のCEPSと比較すれば, 問題にならない程優れており, 特にグラム陰性桿菌による感染症についての臨床効果には目をみはるものがある。新生児, 未熟児における細菌感染症は, 化膿性髄膜炎, 敗血症というような重篤なものが多く, しかもこれらの発病初期の症状は乏しく, 進行が急速で, いまだに死亡率の高い現在, その時期に有用な薬剤を選択しなければならない。
    今回, CTXを周産期研究会の班員として検討する機i会を得たので, 生理的変動が著明である生後1週間に注目し, 新生児, 未熟児とも, 生後3日以内, 4~7日, 8日以上の3群に分けて, その体内動態を検討し, さらに臨床的にも検討を加えたので, それらの成績について報告する
  • 岩井 直一, 佐々木 明, 種田 陽一, 溝口 文子, 中村 はるひ
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1783-1792
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 従来の合成ペニシリン剤やセファロスポリン剤の使用が増加するにつれて, β-Lactamase産生菌やそれらの薬剤に自然耐性であつた細菌による感染症が, 各科領域で増加傾向にある。こういつた傾向は小児科領域でも現実のことであり, グラム陰性桿菌との接触の機会が多く, しかも感染防御能の乏しい未熟児や新生児, また年長児であつても抵抗性の減弱をきたすような治療を受けているものでは, 今後一層増加してくるものと考えられる。したがつて, グラム陰性桿菌に幅広いスペクトラムを有し, しかも強い抗菌力を示すβ-Lactamaseに安定な薬剤が新生児領域においても有用であり, かつ安全に使用できることを確認しておくことが急務であると考えられる。
    今回, 我々は本剤の新生児領域における基礎的, 臨床的検討をおこなつたので, その成績を報告する。
  • 西村 忠史, 高島 俊夫, 広松 憲二, 田吹 和雄
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1793-1800
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新生児に対する看護の向上と感染防止に関する知識の集積は, 周産期細菌感染症の発病は勿論, 致命率を著しく低下させた。さて従来周産期細菌感染症におけるグラム陰性桿菌の優位に加えて, 近年B群溶連菌の重要性がとくに指摘され, 新たな病態が登場するようになつた。
    感染症治療において, グラム陰性桿菌の高度薬剤耐性とその伝播は大きな問題となり, 新生児, 未熟児における細菌感染症に対してもその対応が迫られるようになつた。さて, β-Lactam系抗生剤はすでに, その効果と安全性の面からもこれら感染症に広く用いられていたが, 今日の感染症における細菌学的, 臨床的問題を考えた場合, 新たな薬剤の適応を考慮せねばならぬ状況に到つている。最近とくに抗菌力の強化と抗菌域の拡大を目標に数多くのβ-Lactam系抗生剤が開発され, 中にはすでに, 成人, 小児における評価の終つたものも多い。
    さて, Cefotaxime (CTX) は, ドイツヘキスト社とフランスルセル・ユクラフ社の協同開発によつて, 第3世代の新しい半合成セファロスポリン系抗生剤として登場した。このCTXはグラム陰性桿菌に対し, 既存のセファロスポリン系抗生剤に比べ抗菌力は極めてすぐれており, さらに緑膿菌に対してもCarbenicillin (CBPC), Sulbenicillin (SBPC) よりもすぐれた抗菌力を有することが明らかにされた。したがつて, 抗菌域もインフルエソザ菌, インドール陽性変形菌, Serratia, Enterobacter, Citrobacterそして緑膿菌までと広く, 本剤はこのような抗菌性をもつ特徴を有している1, 2, 3)。
    すでに本邦でも成人領域また新生児を除く小児領域でも基礎的, 臨床的評価が行われ, すぐれた有効性と安全性が確認された1, 2)。以上のことから昭和55年6月, Cefotaxime周産期研究会が設立され, 基礎的, 臨床的検討が行われるようになつた。著者らは, 基礎的研究としてCTXの吸収, 排泄に関する検討を行つたので, その成績について述べる。
  • 小林 裕, 春田 恒和, 大倉 完悦, 黒木 茂一, 藤原 徹, 後藤 加寿美
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1801-1815
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotaxime (CTX) は広域で, 殺菌力が強く, β-Lactamaseに対して安定な第5群Cephalosporin剤である。本剤の成人, 一般小児における有用性, 安全性は既に認められ1, 2), 市販されるに至つたが, 本剤が化膿性髄膜炎の小児期全体を通じての主要菌であるEscherichia coli, B群溶連菌, Haemophilus influenzae, Streptococcuspneumoniaeにすばらしい抗菌力を示し1, 3), 家兎髄膜炎における髄液中移行も, Ampicillin (ABPC) にはおよばないが, Benzylpenicillin (PCG) よりははるかにすぐれている4, 5) ことから, 小児化膿性髄膜炎に対する臨床検討が行われ, 高い有効性が認められた6)。同様な成績は海外においても発表され7, 8), 本症に対する有用性はほぼ承認されたといえる。以上の本剤の性格は, 起炎菌にB群溶連菌および腸内細菌を中心とするグラム陰性桿菌が多く, 進展が急激で, 敗血症, 髄膜炎に移行しやすく, しかも症状所見が乏しいために, 早期診断が困難な新生児期感染症に対する有用性を示唆する。従来新生児期の第1選択剤としてはABPCとGentamicin (GM) の併用が常用されてきたが, GMは髄液中移行が不十分で, 髄膜炎をおこしている場合には全身投与だけでは効果を期待し難い上に, 毒性が強く, しかも近年両剤に対する耐性菌が増加して, この併用はもはや危険にさえなつてきた。われわれはその対策としてCefmetazole (CMZ) を取り上げた9) が, CMZのβ-Lactamase安定性は優秀であるけれども, 抗菌域, 抗菌力には今一歩のうらみがあり, 十分とはいえなかつた。そこでCefotaxime周産期研究会が組織され, 有用性, 安全性が検討された。われわれもその一員として研究を行い, 若干の知見を得たので報告する。
  • 滝本 昌俊, 岡 敏明, 吉岡 一, 早苗 信隆, 丸山 静夫
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1816-1818
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefbtaximeは成人領域および小児科領域ですでにその有効性と安全性が確認されている新しいCophalosporin剤である。抗菌作用の上では, 特にグラム陰性桿菌に強い抗菌力を示し, またHamophilusinfluenzae, Neisseriagonorrhoeaeなどにも極めて秀れた抗菌力を発揮する1)。
    また各種菌株の産生するβ-Lactamaseに対しても強い抵抗性を示すが, ある種のβ-Lactamaseによつては加水分解される1)。さらに体内においてDesacety1化されることは, 他の新しいCephalosporin剤にはない点であろう。
    この抗生物質は, その抗菌スペクトルおよび小児科領域における検討結果からみて, 新生児期の細菌感染症に秀れた効果を発揮することが期待される。
    そこで我々は, 4名の新生児, 未熟児に本剤を使用し, 臨床的効果の検討および薬物動態上の性質を検討する機会を得たので報告する。
  • 本廣 孝, 田中 耕一, 古賀 達彦, 島田 康, 冨田 尚文, 阪田 保隆, 藤本 保, 西山 亨, 中島 哲也, 石本 耕治, 富永 薫 ...
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1819-1845
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    本邦でのCephem系注射剤は近年発売されたCefuroxime, Cefoperazone, Cefotaxime (CTX), Ceftizoxime, Latamoxefを加え21剤と多くあるが, この中で新生児・未熟児に対し適正投与方法の検討がなされたものはCephalothin (CET) 1, 2), Cephaloridine (CER) 1), Cefazolin (CEZ) 3), Cefmetazole (CMZ) 4) の4剤にすぎない。
    CTXは7-Aminocephalosporanic acid (7-ACA) の7位の置換基がアミノチアゾリル核とsyn-メトキシイミノ基を有し, β-Lactamaseに対し安定で, Haemophilus influenzaeをはじめとする種々のグラム陰性桿菌や, グラム陽性球菌のStreptocoms pyogemes, Streptococcus pneumomiae等に対し優れた抗菌力を有する薬剤で, 一般小児の種々の細菌感菌症における検討は既に了し, 高い有効率と安全性が報告5~9) されている。
    そこで私たちは本剤を新生児・未熟児に投与し, 血漿中, 尿中濃度および回収率, 髄液中濃度を測定, B群溶連菌に対する薬剤感受性試験を実施, 新生児・未熟児の各種細菌感染症に投与し, 臨床効果および副作用を検討したので, その成績を報告する。
  • 石川 睦男, 桜庭 衡, 清水 哲也
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1846-1848
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotaxime (CTX) はフランスRoussel・Uclaf社, ドイツHoechst社で共同開発されたCephalosporin剤で, グラム陽性・陰性菌に広範な抗菌力を持つ薬剤である。グラム陽性菌に対しては, Cefazolin (CEZ) と同等, グラム陰性菌に対してはCEZの10~100倍の抗菌力を持ち, 従来のCephalosporin系抗生物質の無効なインドール陽性Proteus, SerratiaおよびEntembacterなどに対しても, 強い抗菌力を持つている。また, 緑膿菌に対しても, Carbenicillin (CBPC), Sulbenicillin (SBPC) より優れた抗菌力をもつている1)。β-Lactamaseに対しても安定で, 耐性Escherichia coliを含むβ-Lactamase産生菌に対しても強い抗菌力を持つている2)。また, 毒性試験においても, 一般毒性, 腎毒性の低いことが報告されている1)。
    今回, 本薬の周産期領域での臨床検討を行つたので, その結果を報告する。
  • 藤本 征一郎, 金川 有一
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1849-1854
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    れまでに種々の抗生物質の経胎盤移行に関する研究が報告されてきたが, Cefbtaxime (CTX) についての検討は少ない。抗生物質の経胎盤移行量に関するPharmacokineticsは周産期感染症の治療のために, また薬剤の胎児・新生児における副作用の防止のために臨床上極めて重要である。
    抗生物質の経胎盤移行に関しては, Cephaloridine (CER) 1, 2), Cephalothin (CET) 3, 4), Ampicillin (ABPC) 5~7), Kanamycin (KM) 8), Gentamicin (GM) 9) などについて報告されてきた。しかし, いわゆる第5群のセファロスポリン類であるCTXについての妊娠後期における胎児ならびに羊水中への移行に関する研究は少ない。周産期における感染症の治療ないしは予防に卓越した臨床効果の期待されるCTXの経胎盤移行について検索したのでここに報告する。
  • 張 南薫, 福永 完吾, 国井 勝昭
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1855-1876
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotaxime (以下, CTX) は, ドイツ, ヘキスト社とフランス, ルセル・ユクラフ社で共同開発された新しい注射用セファロスポリン剤である。
    本剤は広域の抗菌スペクトラムを有し, 特に, 抗菌力において著しい特徴を有する。すなわち, 緑膿菌を含むグラム陰性桿菌に対し, 従来のCephem系抗生物質の数十倍から数百倍の抗菌力を有し, MIC値が甚だ低い。また, β-Lactamaseに対しても安定で, 他剤耐性菌に対して強い抗菌力を有するなどの点である。
    本剤は開発以来, ドイツ, フランスおよびアメリカをはじめ多くの国々で検討がなされその価値が認められている。本邦では, 1979年, 第27回日本化学療法学会総会新薬シンポジウムにおいて本剤の評価成績が報告され1), その有用性が認められた。産婦人科領域においても全国31施設において有効性と安全性を基礎, 臨床の面から検討され, 有用性が認められ, われわれもこれを報告した2)。
    近年, 産科領域では周産期医学が重要視され, 胎児, 新生児を中心として, 妊娠末期の母体, 新生児期の諸問題についてひろく研究が行われているが, この時期の感染症, 化学療法についても重要視され, 研究が盛んに行われている3, 5)。
    周産期において選択すべき抗生物質としては, 広域スペクトラムで抗菌力が強いこと, 注射可能で吸収が速く, 臓器集中性がよいこと, 副作用が少ないことなどの諸条件を満すことが望.しいと考えられる。また, 問題点としては, 原因菌の変遷, 薬剤感受性の変化, 薬剤の胎児移行, 新生児における吸収, 排泄, 適正投与量, 新生児におよぼす影響などの点があげられる。
    以上のことから考察すると, CTXは上記の条件に合致するものと考えられ, 周産期化学療法研究会において取り上げられ, Cefotaxime周産期感染症研究会が組織され, 研究が行われた。われわれも上記の観点から, 研究会に参加し以下の知見を得たので報告する。
  • 保田 仁介, 山元 貴雄, 伊藤 将史, 本庄 英雄, 岡田 弘二, 金尾 昌明
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1877-1881
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ドイツヘキスト社, フランスルセー・ユクラフ社法おいて開発された・半合成セフェム系抗生物質であるCefotaxime (CTX, HR。756) は, その抗菌スペクトーカグラム陽性菌, 陰性菌と広範囲法わたりβ-Lactamase産生菌法対しても強い抗菌力響持つている。その産婦人科領域感染症法対する有用性は既法検討, 報告されている1~4)。
    今回, Cefotaxime法関して, 産婦人科周産期領域での有用性を検討する目的で, 本剤の母児間移行性法ついて調べるととも法, 臨床例法つき検討を行つたので, その成績を報告する
  • 二宮 敬宇, 長谷川 幸生, 金本 太珍, 吉元 淑子, 浜谷 恵子, 増田 薫子, 西尾 武人
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1882-1892
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotaxime (CTX, HR-756) はHoechst社とRoussel・Uclaf社法より共同開発された新しい注射用Cepharosporin剤で, この薬剤がもつ強い抗菌力と広い抗菌スペクトラム法ついては既法高い評価がなされている1, 2~6)。また, 本剤使用法関する産婦人科および小児科領域での安全性の確認も多くなされている1, 8~11)。これら法基づき, 藤井良知教授ら法よりCTX周産期感染症研究会が組織され, その要旨が第29回日本化学療法学会西日本支部総会 (広島, 1981) 法おいて報告された。著者らは本研究会法おいてCTXの母子間移行および周産期感染症法ついて検討したので報告する。
  • 高瀬 善次郎, 藤原 道久, 河本 義之, 瀬戸 真理子, 白藤 博子
    1982 年 35 巻 7 号 p. 1893-1897
    発行日: 1982/07/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 抗生物質の開発は目覚ましいものがあり, いわゆる第3世代の抗生物質といわれる製剤も上市された。その中で, Cefotaximeは, 小児科ならびに婦人科領域法おいて, 有効性, 安全性が確認されており1, 2), 本剤は広く産婦人科領域法おいても, 汎用される抗生物質と考えられる。
    そこで, Cefotaximeの周産期妊産婦法対する安全性法ついて検討を行い, いささかの知見を得たので報告する。
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