The Japanese Journal of Antibiotics
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36 巻, 2 号
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  • 江口 恒良, 真柳 佳昭, 花村 哲, 井合 茂夫, 浅井 昭雄
    1983 年 36 巻 2 号 p. 213-220
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    脳神経外科領域においてMicrosurgical techniqueの発達に伴い, 緻密な手術が可能となつたが, 我々が考慮しなければならないものの1つに術後の感染予防がある。このため術前, 術中及び術後早期から種々の抗生剤が使われているのが現状である。しかしながら, 頭蓋内には血液脳関門あるいは血液髄液関門が存在するため, 抗生剤の選択及び投与に際してはこの点に留意しなければならない1)。
    Cefbtiam (CTM) はグラム陽性及び陰性菌に対して広い抗菌スペクトラムを有するセフェム系抗生剤である2)。
    今回・主に開頭術施行患者を対象にCTMを単回静注し, 本剤の髄液内移行について検討する機会を得たので, 以下にその成績を報告する。
  • 木藤 光彦, 小坂 進
    1983 年 36 巻 2 号 p. 221-226
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    消化器外科領域においては, 消化管の穿孔による腹膜炎がなお跡をたたず, 又消化管の切除手術あるいは吻合術は, 滅菌の完全な手術器材を用いて手術をはじめてもひとたび消化管を開けば, 細心の注意にもかかわらず術野の汚染をまぬがれえない宿命にある。
    従つて, 腹膜炎の治療及び消化管手術後の腹腔内感染予防の目的に, 抗菌剤が選択される場合, 抗菌スペクトラム及び副作用の他に, 腹腔への移行度合が考慮されるべきであろう。
    しかし, 人体において, 薬剤の腹腔への移行状態を調べること自体, かなり制約の大きいものであり, これまで詳細な報告は少ない。
    そこで最近開発されたβ-Lactamase抵抗性抗菌剤のうち, 塩酸セフォチアム (CTM) について人体投与後の血中, 腹水中濃度及びそれらの経時的変化について検索した。
  • 河村 信夫, 長田 恵弘, 川嶋 敏文, 宮北 英司, 秦野 直, 原 三信
    1983 年 36 巻 2 号 p. 227-232
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    男子副性器の炎症は,急性であるとその症状が重篤で中には菌血症,敗血症に至るものもあることで知られている。抗生物質は一般にこの部位には及びにくく,そのため効果も現れにくい。
    この両疾患は発熱, それに伴う脱水, 嘔気, 嘔吐, 食欲不振などが認められることが多いので, 原則として入院加療される。脱水のあるため点滴が行われるから, それにまぜるか側管からOneshot注入できる薬剤の方が便利で患者に余分の苦痛を与えないと言えるし, 経口剤は重篤な症状の間は嘔気, 嘔吐などのため, 実際上服用不能のことも多い。
    今回我々は急性前立腺炎14例,急性副睾丸炎9例に対してCephem系であるCefmetazole (CMZ) を投与し, 前立腺炎12例, 副睾丸炎3例について, その結果を客観的に判定し得るデータが得られたので, ここに記す。
  • 南谷 幹夫, 八森 啓, 中沢 進, 佐藤 肇, 成田 章, 平間 裕一, 中沢 進一, 近岡 秀次郎, 本廣 孝, 西山 亨, 藤本 保, ...
    1983 年 36 巻 2 号 p. 233-240
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児期の代表的急性感染症の1つとして知られた百日咳は, 昭和20年代には毎年10万人前後の患者と数千~1万人の死亡例を出し, ことに乳児にとつて致命的な疾患として恐れられていたが, 1相菌ワクチンの実用化により患者発生は毎年減少をつづけ, 昭和46年~昭和47年には毎年200~300人の患者届出にすぎず, 死亡例も2~4人となつて, 日常診療からも忘れられようとした。たまたま昭和49年, 昭和50年と相次いだDPT (ジフテリア・百日咳・破傷風) ワクチンの死亡事故を契機として百日咳ワクチン接種率が著しく低下したが, この時期に一致して百日咳患者は増加をたどり, 昭和54年には13,000人以上の届出患者が知られ, 死亡例も41例に達するようになつた1)。百日咳は5才未満のワクチン未接種の乳幼児に好発し, 特に2才未満児に多く, 乳児では重症に経過することが少なくないのは今日においても変りがない。
    従来, 百日咳の治療として, Macrolide系薬剤の有効性が認められており, なかでもErythromycin (EM) が広く投与され, ときにはTetracycline (TC) 系抗生物質やAmpicillin (ABPC) が使用されて, 特有咳漱の軽減化や経過の短縮から有効とされてきた。しかし, 新生児, 乳児あるいは重感染を伴う百日咳患児の場合, 嘔吐や食欲不振などにより, これら薬剤の継続内服が必ずしも容易でなく, より適合する抗生物質の注射薬の出現が期待されていた。
    Cephem系抗生物質のなかで, 従来広く用いられているCephalexinやCefazolinなどは百日咳菌 (Bor4etella pemssis) に対し感受性が低く2), 臨床的にも無効であることは衆知の事実である。しかし最近わが国で開発されたOxacephem系抗生物質Latamoxef (LMOX) はFig.1の構造式を持ち, グラム陰性菌及び嫌気性菌に広い抗菌スペクトラムと強い抗菌力を示す特性がある殺菌性薬剤であつて, 且pertussisに対しても0.05~0.1mcg/mlのMICを示し, Cefoperazone (CPZ) よりやや劣るとしても, 従来多用されたEMやJosamycin (JM) あるいはTC, Chloramphenicol (CP) に比べて, はるかに優れた抗菌力を持つことが明らかにされた2)。
    そして喀疾中への移行濃度が本剤に対する百日咳菌のMICよりも高値3~5) を示すことが知られており, 又私たちが少数例の百日咳患者に用いて有効な成績6)を得たところから, 更に乳幼児の百日咳症例を加え, 臨床効果並び副作用を検討したので, その成績を報告する。
  • 千村 哲朗
    1983 年 36 巻 2 号 p. 241-248
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科領域の感染症は, 臨床各科におけると同様に病原菌の変遷は多くの報告でも指摘されているが, グラム陽性菌に代つてグラム陰性桿菌や嫌気性菌の検出率が高まつている。又最近では, 多剤耐性を獲得した弱毒菌との混合感染も増加の傾向にあり, こうした現実のもとでの抗生物質の選択, 変更が必要と言えよう。
    近年, 新しい抗生物質の開発と臨床導入は, 起因菌の確認とそれに適合した抗生物質の選択をせまられるが, 産婦人科領域の感染症が比較的その起因菌を検出しやすい臓器とは言えるが, 骨盤内感染又は付属器感染では容易でない場合も多い。
    われわれは過去3年間において, 産婦人科領域での各種抗生物質の薬効拡大及び新しい抗生物質の研究会に参加し, その効果を検討してきたが, ここでは10種類の抗生物質の成績を報告したい。
  • 尾花 芳樹, 西野 武志, 谷野 輝雄
    1983 年 36 巻 2 号 p. 249-259
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    感染症の変貌と共に, より抗菌力が強く, かつ選択毒性の高い薬物の開発が要求され, 世界各国でβ-ラクタム系抗生物質の研究開発が精力的に行われている昨今である。
    Cefoperazone (CPZ)1) 及びPiperacillin2)(PIPC) はいずれも我が国で開発された半合成セファロスポリンあるいは半合成ペニシリンである。これらは, いずれも7-Aminocephalosporanic acidの7位のAmino基, 6-Aminopenicillanic acidの6位のAmino基をα-(4-Ethyl-2, 3-dioxo-1-piperazinecarboxamido)-α-(4-hydroxyphenyl) aceticacidでAcyl化したものであり, 更にCPZについては, 3位にMethylthiotetrazol基を導入したものである (Fig.1)。これらはグラム陽性菌並びにグラム陰性菌に対して広範囲な抗菌スペクトラムを有し, インドール陽性変形菌や緑膿菌にも強い抗菌力を有する。
    そこで今回, 構造類似の両薬物を用い, 大腸菌にFig. 1. Chemical structures of CPZ and PIPC対する抗菌作用を比較することにより, それぞれの母核の抗菌作用に及ぼす影響を検討し, 2, 3の知見を得たので報告する。
  • Cefotaximeを中心にした薬剤間の比較検討
    三輪谷 俊夫, 竹田 美文, 小寺 健一, 西村 忠史, 高島 俊夫, 広松 憲二, 田吹 和雄, 藤本 修造, 神木 照雄, 吉崎 悦郎, ...
    1983 年 36 巻 2 号 p. 260-276
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    β-Lactam系抗生剤, なかんずくCephem系抗生剤は, 近年華々しい発展を遂げた。特に, グラム陰性桿菌感染症の増加を特徴とする感染症の変貌に対処しうる新Cephem系抗生物質の最近の進歩は, いわゆる第3世代のCephem系抗生剤の開発にみられるように, 真にめざましいものがある。Cefotaxime (CTX)は, ルセル・ユクラフ (フランス) 及びヘキスト (ドイツ) によって共同開発された新しいCephem系抗生物質であり, β-Lactamaseに対する安定性, グラム陽性菌, グラム陰性菌, 嫌気性菌に対する幅広い抗菌スペクトラムと強い抗菌活性を持っている。特にグラム陰性菌に対しては,Escherichia coli, Klebsiellasp.,Proteus mirablilisはもとより, 既存のCephem系抗生剤に対して感受性の低かつたHaemophilusi influenzae, Indole陽性Proteus,Enterobactersp.,Citrobactersp.,Serratia sp.に対しても高い抗菌活性を示す。又Pseudomonas aeruginosaに対してもTicarcillin とDibekacinの中間程度の抗菌力を持ち, 嫌気性菌に対しては従来のCephem系抗生剤と同等の抗菌活性を示す1, 2)。
    今回われわれは, 新しいCephem系注射用抗生剤CTXの抗菌力を, 新鮮臨床分離株を用い, いわゆる第2世代のCephem系抗生剤Cefotiam (CTM), Cefmetazole (CMZ) 及びCTXとほとんど同時に開発されたいわゆる第3世代のCephem系抗生剤Ceftizoxime (CZX), Cefoperazone (CPZ) とOxacephem系抗生剤Latamoxef (LMOX) を対照とし, 又一部の菌種についてはいわゆる第1世代のCephem系抗生剤Cefazolin (CEZ)比較検討したのでその成績について述べる。
  • 浅利 誠志, 堀川 晶行, 塚本 寿子, 林 長蔵, 宮井 潔
    1983 年 36 巻 2 号 p. 277-289
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotaxime(クラフォラン®,CTX)は, ドイツヘキスト社とフランスルセル社により共同開発された新しい半合成Cephalosporin系抗生剤で, Fig. 1の構造を有している。
    本剤の特徴は, 広範な抗菌スペクトルを有し, 特にグラム陰性菌に対しては, 従来のCephalosporin系抗生剤には感受性のなかつたIndole (+)Proleus, Serratia, Enterobacterなどにも抗菌性を示し,Pseudmonasに対しても抗菌力を有する。又, β-Lactamaseに対して安定性が高く, 抗菌作用は殺菌的である1~3)。
    今回, 我々は新鮮臨床分離株を用い, CTXに対する感受性傾向を検討し, 若干の知見を得たので報告する。
  • 清水 正之, 西井 正美, 志田 祐子, 服部 智子
    1983 年 36 巻 2 号 p. 290-292
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    皮膚科領域の急性化膿性細菌感染疾患の起因菌の多くは黄色ブドウ球菌が占めるが, これらの細菌を含む感染症に多くの抗生物質が登場し, 使用されてきた。しかし一方多種類の抗生物質の使用は薬剤耐性株の出現を生むに至つたことはよく知られている。今回われわれは急性膿皮症, 特に小児の伝染性膿痂疹を中心として検出された黄色ブドウ球菌の薬剤耐性の変動を10数年の間にわたり追つてみたので報告する。
  • 白松 幸爾, 石田 君子, 高橋 克宗, 国本 正雄, 伝野 隆一, 秋山 守文, 平田 公一, 早坂 滉
    1983 年 36 巻 2 号 p. 293-298
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, グラム陰性菌感染症の増加に伴い, ペニシリン系抗生物質やセフェム系抗生物質と共にアミノグリコシド系抗生物質 (以下AG剤と略す) の使用頻度も増加している。
    周知のようにAG剤は重症又は難治感染症に対して使用される主要な抗生物質の1つであるが, 筋注の際に局所の疹痛, 硬結, 筋萎縮などの問題のほか, 重篤な患者で出血傾向のある場合や, るいそうが著しく適当な筋注部位が選べない症例, 又すでに補液のため静脈路が確保されているときなど経静脈投与が容易な場合も多い。実際わが国でもAG剤の点滴静注が少なからず行われており1~7), 欧米諸国においては筋注はもちろん点滴静注による投与が認められ, 臨床的に広く行われているのが現状である8)。
    Gentamicin (以下GMと略す)は, 米国シェリング社で開発されたAG剤であり, わが国では昭和43年以来, 緑膿菌, 変形菌, セラチアを含む主にグラム陰性菌感染症に使用されてきた9~10)。現在までGM点滴静注時における血清中濃度に関する検討も種々行われてきているが11~13), 今回, われわれは本剤の筋注時と点滴静注時との血清中濃度の推移について薬動力学的に検討したので報告する。
  • 細川 尚三, 梶川 次郎, 西本 直光, 三好 進, 岩尾 典夫, 水谷 修太郎
    1983 年 36 巻 2 号 p. 299-310
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発された,経口セフェム系薬剤のCefaclor (ケフラール®, 塩野義製薬, CCL) は, Fig.1の化学構造式を持ち, 抗菌スペクトラム上, Cephalexin (CEX) ないしはAmoxicillin (AMPC) の両方の長所を持つ1)。本邦泌尿器科による, 尿路感染症に対する治験の結果, UTI薬効評価基準 (第2版) 上, 単純感染症で98.7%, 並びに複雑感染症で57.3%の総合有効率を得ており2), 副作用は2.0%にみられた3)。
    通常の投与量は1日0.75gないし1.5gである。
    我々は最近, 当科外来を受診した尿路感染症に対し, Firstchoiceとして本剤を使用したのでその結果を報告する。
  • 植田 高彰, 正岡 徹, 柴田 弘俊, 永井 清保, 金丸 昭久, 堀内 篤, 長谷川 廣文, 木谷 照夫, 谷口 信博, 米沢 毅, 椿尾 ...
    1983 年 36 巻 2 号 p. 311-315
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fosfomycin (FOM) は, 1969年HENDLINら1)により開発された広範囲スペクトラムを有する抗生物質である。極めて簡単な構造式2)で, Phosphoenolpyruvateと似ていることから, 細菌壁合成の初期に作用する代謝拮抗剤と考えられている3)。半減期も長く, 1日2~3回の投与で効果が期待できる4, 5)。
    一方, 造血器悪性腫瘍は, 強力な化学療法により著明な骨髄抑制がみられ, ことに好中球減少が著しいときには種々の重症感染症を合併しやすい。
    これらの疾患の治療時に合併した種々の感染症に対してFOMを大量投与し, その効果を検討したので報告する。
  • 中川 圭一, 渡辺 健太郎, 矢口 慧, 孫 泳洙, 小野寺 壮吉, 坂井 英一, 村尾 誠, 本間 行彦, 小泉 真, 斎藤 玲, 加藤 ...
    1983 年 36 巻 2 号 p. 316-368
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    全国52施設の共同研究として, 肺炎及び慢性呼吸器感染症に対するCefotetan29/日とCofmetazole4g/日の二重盲検比較試験を行い, 以下の成績を得た。
    1. 小委員会判定を重症度別に層別した場合, 中等症の肺炎例に対する臨床効果においては, Cefotetan群がCefmetazole群に比べ有意に優れていた。肺炎例と慢性呼吸器感染例を合せた場合も, Cefotetan群の方が中等症に対する臨床効果において優れる傾向であつた。小委員会判定によるその他の臨床効果, 及び主治医判定による臨床効果においては両薬剤群間に有意差は認められなかつた。
    2. 小委員会採用例の全例における症状別解析の場合, 体温の改善ではCefotetan群が, 咳嗽の改善ではCefmetazole群がそれぞれ有意に優れていた。
    3. 細菌学的効果においては, 両薬剤群間に有意差は認められなかつた。
    4. 副作用及び臨床検査値異常の種類及び発現率において, 両薬剤群間に有意差は認められなかつた。
    5. 臨床的有用性において, 両薬剤群間に有意差は認められなかつた。
    以上より, Cefotetan29/日はCefmetazole49/日に勝るとも劣らない臨床的有用性を有すると考えられる。
  • 谷村 弘, 日笠 頼則, 小林 展章, 加藤 仁司, 関谷 司, 佐藤 友信, 斎藤 徹, 吉田 圭介, 黄 丈芳, 端野 博康, 中村 正 ...
    1983 年 36 巻 2 号 p. 369-390
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    急性化膿性腹膜炎は, 腹膜からのエンドトキシンの吸収, 体液の大量移動, 循環動態の変化, 消化管の機能低下などが加わり, Penicillinの臨床使用以来化学療法が急速に進歩し, 死亡率が著しく低下したとはいえ, いまなお生命の危険度が高い疾患である1)。
    腹膜炎の主たる死因は, 消化管由来の好気性グラム陰性桿菌並びに嫌気性菌による敗血症とそれに伴うエンドトキシン・ショックであり, その治療の原則は適切な抗生物質の併用による徹底的な手術的腹腔内清掃 (Debridement) であると言える。その際の抗生物質の選択基準として上述の消化管由来の各種細菌に対して強い抗菌力を発揮することのほかに, 腹膜炎が重症であればあるほど腎障害を伴うことが多いことから, 腎毒性の少ない薬剤であることが望ましい2)。好気性グラム陰性菌に対する抗菌力が強く, 又Bactmidesを含む嫌気性菌にも有効で, しかも毒性の少ないCephem系抗生物質が最近次々と開発されてきたことは, 腹膜炎の治療にとつて非常に喜ばしい状況であるが3, 4), 一方では臨床家にとつて薬剤の選択に困惑させられる因にもなっている。それ故, 外科領域における感染症においても新しい抗生物質の開発に伴い, その臨床評価が同系薬剤間での比較試験成績にて論じられるようになつてきた5~7)。腹膜炎の化学療法においても比較試験による臨床評価法を実施することが望ましいと考えられるが, 腹膜炎の治療に際しては必ず外科的処置を伴うので, 比較試験の重要項目である対象疾患の均一性を得ることが極めて困難であり8), 比較試験はほとんど実施されていないのが現状であり, わが国では寡聞にして著者らの行つたCeftizoxime (CZX)とCefazolin (CEZ) の二重盲検法による比較試験の報告9)以外にはない。
    最近, 山之内製薬中央研究所において開発されたCefbtetan (CTT) はFig.1に示す化学構造を持つ新しいCephamycin系抗生物質であり, β-Lactamaseに極めて安定で, 従来のCephamycin系抗生物質に比べ, グラム陰性桿菌に対する抗菌力が強く,Bacteroidesを含む嫌気性菌にも有効で, ヒトでの血中半減期が比較的長いことを特徴とする薬剤である10)。
    われわれは, CTTの急性化膿性腹膜炎に対する臨床評価を行うに当り京都大学第2外科で研讃した医師を中心に活動している施設だけを協力施設とし, 手術術式の統一性, 手術操作法, 腹腔ドレーンの挿入法などできるだけ均一性を得るための配慮を施し, 対照薬剤としては, 現在繁用され, 腹膜炎に対する薬効が確立されている同じCephamycin系抗生物質の1つであるCefmetazole (CMZ) 11)を選び, 二重盲検法による臨床比較試験を実施した。
  • 篠原 慶希, 松渕 登代子, 川越 裕也, 永井 清保, 金丸 昭久, 堀内 篤, 長谷川 廣交, 木谷 照夫, 椿尾 忠博, 米沢 毅, ...
    1983 年 36 巻 2 号 p. 391-397
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    急性白血病等の造血器悪性腫瘍, 再生不良性貧血等の血液疾患においては, 白血球特に成熟穎粒球の著明な減少を生じ, 更に使用する副腎皮質ホルモン, 抗白血病剤により, 体液性, 細胞性免疫能の低下が助長され, 感染症は往々にして重篤になり易く, 致命的になることが多い。起炎菌は急性白血病治療時には検出困難なことが多く, 発見されても同定に日時を要し, 感染症が疑われれぽ可及的早期に広域スペクトラム抗生物質の大量使用が必要となるが, 近年多剤耐性グラム陰性桿菌によるものが多く報告されており, これらに有効な新種抗生物質の開発が望まれている。又血液疾患症例では薬剤の静脈内投与による血管損傷の頻度が高く, 筋肉内投与では合併する血小板減少のため止血困難となることも多く, 抗生物質投与回数は少ない方が望ましい。最近新しく開発されたCefotetan (CTT, YMO 9330)は図1に示す化学構造を有するCephamycin系抗生物質であり,Pseudolnonasを除く主要グラム陰性桿菌に強い抗菌力を示し1), 点滴静注時の血中半減時間が約3時間と長いことが特長である2)。我々は上記特長を有するCTTを血液疾患合併重症感染症に使用し, 若干の知見が得られた。そこで血液疾患合併感染症の特色と併せ, CTTの点滴静注の有用性, 安全性についての検討結果について報告する。
  • 西野 英男, 長松 正章, 石井 伸一, 高松 茂明, 斎藤 淳子, 山中 喜代治
    1983 年 36 巻 2 号 p. 398-407
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科領域の感染症はそのほとんどが骨盤内臓器の感染であるが, それ以外にも外陰, 腔, あるいは術後の骨盤内死腔の感染, 又尿路感染などがある。これらの治療には種々の抗生剤が使用されているが, 本来感染症の治療は発症が疑われた時点で, 腔分泌物, 尿, 時には動脈血等から起炎菌の検出同定を行うのが原則である。しかし現実には起炎菌の同定以前に抗生剤を投与し治療にあたる場合が少なくない。そのため広範囲スペクトルを有する抗生剤が必要以上に多量に投与されたり, 又, 効なき時には数種の抗生剤の併用療法が行われ易い。その結果, 菌の様相もしだいに変り, 緑膿菌, インドール陽性変形菌, セラチア, ブドウ糖非発酵菌などによる感染症も出現し, 更にこれら薬剤に耐性のあるバクテロイデスによる感染症が産婦人科領域にも出現するようになつた。更に起炎菌も複数菌種による場合が多く, 従来の抗生剤にては簡単に治癒し難い状態が多くなつた。このような起炎菌の変遷に伴い, 薬剤においてもこれらに対処すべく, 新しい抗生剤の開発もみられるようになつた。すなわち従来の抗生剤では奏効し難い緑膿菌, セラチア, インドール陽性変形菌などに抗菌力を持つ新しい抗生剤がそれである。
    今回, 山之内製薬によつて開発されたCefotetan (CTT) はCephamycin系抗生剤であり, 従来のβ-Lactam系抗生剤に比べ最も作用持続時間が長いという特徴を有している1)。
    そこで, われわれはCTTの投与後比較的長時間後の血中濃度と骨盤内臓器の組織移行度を検討した。
  • 水戸部 勝幸, 西尾 彰, 高見澤 昭彦, 熊本 悦明
    1983 年 36 巻 2 号 p. 408-414
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Amoxicillin (AMPC) は我が国でもすでに広汎に使用されている経口用ペニシリンで, 広範囲抗菌スペクトルと強力な殺菌作用を有する。今回開発された持続性Amoxicillin製剤 (L-AMPC)は, AMPCをpHにより溶出の異なる2種の穎粒とし, 速効性成分である胃溶性穎粒と遅効性成分である腸溶性穎粒を力価比で3対7の比率で配合したものである。このため有効血清中濃度は1回の投与により従来のAMPC製剤に比べて約2倍長く保持できるとされ1), より良好な治療効果が期待される。更に投薬回数が1日2回で済むことや, コーティングによつてペニシリン独特の苦みや臭いを押えた穎粒剤であるところから, 簡便かつ内服しやすいということも考えられる。
    今回, 著者らは本剤を尿路感染症に使用する機会を得たので, 臨床効果, 安全性は勿論であるが, 簡便さ, 内服しやすさという点についても検討したので以下に報告する。
  • 青木 清一, 長久保 一朗, 星長 清隆, 玉井 秀亀, 柳岡 正範, 名出 頼男
    1983 年 36 巻 2 号 p. 415-422
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    持続性Amoxicillin製剤 (Long acting amoxicillin granules, 以下L-AMPCと略す) はAmoxicillin (以下AMPCと略す) の血中濃度を持続化させることを目的として作られた製剤であり, 胃溶性穎粒と腸溶性穎粒 (溶出pH6.0) を3: 7の力価比で混合したものである。
    今回われわれは, LAMPCを尿路感染症40例に対し試用する機会を得たので, その結果について報告する。
  • 植松 正孝, 伊藤 知博, 森島 丘, 木川 礼子, 佐々木 次郎, 近内 寿勝
    1983 年 36 巻 2 号 p. 423-427
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Amoxicillin (AMPC) はAmpicillinと比べて血清中移行並びに組織移行の良いこと, 又, 食後投与でも空腹時投与に近いPeak濃度と, AUCが得られることから口腔領域化膿性炎症の第1選択剤として使用されている1)。
    今回, 新しく開発された持続性Amoxicillin製剤 (L-AMPC) は, 胃溶性穎粒と腸溶性穎粒が力価比で3対7の比率で配合されており, 有効血清中濃度の持続時間が従来のAmoxicillin製剤より長くなると期待されている2)。
    我々は小動物 (New Zealand White種家兎) を用い, LAMPCの口腔組織への移行性に関し検討を加えた。
  • 二木 芳人, 川西 正泰, 吉田 直之, 副島 林造
    1983 年 36 巻 2 号 p. 428-432
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新持続性アモキシシリン製剤 (以下LAMPC) はAmoxicillin (以下AMPC) の持続型製剤で, 胃溶性穎粒と腸溶性穎粒を3: 7の割合に配合することにより有効血中濃度をAMPCの2倍以上持続させるようにした複合製剤である1)。これにより, 投与回数が1日2回と少なくてすむことが大きな特長である。
    今回我々は, 本剤を12例の呼吸器感染症患者に使用する機会を得たので, その臨床成績を報告する。
  • 椎木 一雄, 村瀬 桂三, 佐々木 次郎, 植松 正孝, 岩本 昌平, 後藤 潤
    1983 年 36 巻 2 号 p. 433-451
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    口腔領域の化膿性炎症に対し, 経口の第1選択剤として多用されているAmoxicillin (AMPC) はAmpicillin (ABPC) に類似の化学構造を持つ半合成PenicillinでABPCと同等の抗菌力を有し1~3)しかも消化管からの吸収が良好なため同量投与でABPCの2~3倍の血中濃度が得られ, 又食後投与でも空腹時投与の80%程度のピーク濃度とAUCが得られることが知られている4~6)。しかしAMPCは体内からの消失が速やかで6時間後には血中からはほとんど消失する6)。しかも抗菌効果の検討においてはMIC以上に濃度を上げても抗菌効果はあまり変化しないが, 菌と抗生物質の接触時間が長いほど, 抗菌効果が増強されるという報告がなされている7)。すなわちAMPCで良好な治療効果を期待するには, 頻回の投与がなされなければならない。しかし実際には患者の都合で塒間厳守は難しく, 不規則な投与がなされる場合が少なくない。これらの点を考慮して, 持続性製剤が開発された8)。
    我々は経口投与時のAMPCの血中濃度を持続化させる目的で胃溶性穎粒と腸溶性穎粒を3: 7の力価比で混合した持続性Amoxicillin (L-AMPC) 8, 9) を口腔領域の化膿性炎症に使用し, 臨床効果, 細菌学的効果及び安全性について検討を試みた。
  • 鈴木 規子, 斉藤 健一, 塩田 猛, 秋月 弘道, 道脇 幸博, 大野 康亮, 道 健一, 上野 正
    1983 年 36 巻 2 号 p. 452-463
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Amoxicillin (AMPC) は1968年, 英国Beecham Research Laboratoriesにおいて開発された経口用ペニシリン剤であり, 我が国でも臨床上高い評価が得られ, 顎口腔領域においても優れた基礎的, 臨床的効果の報告が行われている1~4)。しかしAMPC製剤の血清中濃度持続時間は6時間位が限度であり, 用法としては1日4回 (6時間間隔) 投与が必要で, 患者が正確な間隔で服用することはかなり繁雑である。この欠点を解決し, より高い血清中濃度を維持させるために, 今回新たに持続性Amoxicillin製剤 (L-AMPC) が開発された。L-AMPCは, pHにより溶出の異なる2種の穎粒を配合することにより有効血清中濃度持続時間をAMPCの約2倍に延長させ, 1日2回の投与で十分な血清中濃度を維持できるようにしたものである。投与回数が通常のAMPCに比べ半減できることにより, むしろ患者の規則的な服用が容易となり, 良好な治療効果が期待される。
    今回, われわれは成人5名について本剤投与後の血清中濃度及び歯肉組織内濃度を測定し, 更に口腔領域感染症25例に本剤を使用しその臨床的治療効果の検討を行つたので報告する。
  • 小林 とよ子
    1983 年 36 巻 2 号 p. 464-476
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 抗菌剤による下痢症や腸炎の1つの発生要因にClostridium difficileの毒素が注目されているが1, 2), このC.difficile毒素説だけで抗菌剤による下痢症や腸炎を説明することは不可能である。Staphylococcus aureusのエンテロトキシン3), Clostridium perfringens type Cの細胞毒素4),Clostridim sordelliiの細胞毒素も抗菌剤による下痢症や腸炎を起すことが報告されている5)。一方, 広域合成ペニシリン内服時に激症の下痢や血便がみられ, 下痢便からKlebsiella oxytocaが純培養状に検出されることも多く,K. oxytoca説についても考慮する必要がある6~8)。著者は, これらの下痢症原因細菌のうちC.difficileを主体にして検討したので報告する。
  • 1983 年 36 巻 2 号 p. 477-479
    発行日: 1983/02/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
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