The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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36 巻, 3 号
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  • 張 南薫, 福永 完吾, 国井 勝昭
    1983 年 36 巻 3 号 p. 481-486
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    BRL 25000は, 英国ビーチャム研究所で開発されたβ-Lactamase阻害剤であるPotassium clavulanate (以下CVA)と, Amoxicillin trihydrate (以下AMPC)との1:2の配合剤である。
    CVAはStreptomyces clavuligerus ATCC 27064により産生される抗生物質で, それ自体は抗菌力が弱いため単独では臨床使用することはできない。しかし, β-Lactamaseと不可逆的に結合してその働きを阻害するためCVAとβ-Lactam抗生剤を併用使用するとβ-Lactamase産生菌に対してもβ-Lactamaseを不活化することにより, β-Lactam抗生剤に本来の抗菌力を発揮させることができる1-5)。
    今回, われわれは産婦人科領域における本剤について基礎・臨床両面の検討を行つたので, その成績を報告する
  • 岸田 秀夫, 木阪 義憲, 松林 滋, 平岡 仁司, 内藤 博之, 田中 慎一郎, 占部 武, 藤原 篤
    1983 年 36 巻 3 号 p. 487-499
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    最近のβ-Lactam系抗生物質(Penicillin, Cephem系抗生物質) は広範囲な抗菌スペクトルを有し吸収性に優れ, 且つ毒性の少ない薬剤として, 臨床各領域の感染症に対して広く使用されてきた。しかしながら近年感染症の起炎菌としてβ-Lactam系抗生物質耐性菌が出現してきており, これらの薬剤に抵抗性を示す難治性感染症が注目されてきているのが現状である。
    BRL25000は英国ビーチャム社で開発されたClavulanic acid (以下CVA) とAmoxicillin (以下AMPC)の1:2の配合剤である。CVAはβ-Lactamase阻害剤で図1に示す化学構造式を持ち, 従来のAMPCとの併用によりβ-Lactamase産生菌に対して強い抗菌力が期待される薬剤である1)。
    今回我々はBRL 25000を産婦人科領域の感染症のうち, 子宮付属器炎, 子宮内感染症, 子宮労結合織炎, 骨盤死腔炎等に対して使用する機会を得たので, 臨床的検討を加えて報告する。
  • 河村 正三, 杉田 麟也, 藤巻 豊, 出口 浩一
    1983 年 36 巻 3 号 p. 500-508
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    BRL 25000は, Amoxicillin(以下AMPC)とClavulanic acid(以下CVA)が2:1の比率で配合された経口用の抗生物質製剤である。CVAは英国ビーチャム研究所で開発され, それ自身の抗菌力は弱いが, 細菌が産生するβ-Lactamaseに不可逆的に結合しその働きを阻害するため, β-Lactam系抗生剤耐性菌に対し抗菌力を発揮させることができると言われている1-3)。
    今回, われわれは本剤の耳鼻咽喉科領域における基礎的・臨床的検討を行う機会を得たので, その結果を報告する。
  • 可世木 成明, 真野 紀雄, 友田 豊, 風戸 貞之, 浅井 保正, 佐原 金吾, 萬羽 進, 丸山 孝夫, 春日井 正秀, 東出 香二, ...
    1983 年 36 巻 3 号 p. 509-521
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    過去40年間の抗生物質の進歩は医学の発展に多大の貢献をしてきた。とりわけ近年のPenicillin系及びCephalosporin系抗生物質の開発はおびただしい数に昇り, 抗生物質の中心的役割は当分の間変らないと考えられる。現在繁用されているCephalosporin系抗生物質の1つの問題点はβ-Lactamaseに不安定なことであつたが, 最近この弱点を克服するためにβ-ラクタム環の7α位にメトキシ基を導入したCephamycin系抗生物質が開発され広く使用されるようになつた。
    産婦人科領域における細菌感染について最近注目されていることは嫌気性菌の問題である。嫌気性菌はヒトの正常細菌叢を構成する常在菌として口中, 腸管等に存在するが, 腔に存在するものも多く, 産婦人科領域の感染症では外陰部膿瘍の75%, 卵管炎・骨盤腹膜炎の55%, 卵管・卵巣・骨盤内膿瘍の90%, 有熱流産・子宮内膜炎の75%に検出したと報告されている1, 2)。
    産婦人科領域で使用される抗生物質としては上記のβ-Lactamaseに対して安定であること, 嫌気性菌に対して有効であることの2条件を満たすものが有用であろうことは改めて述べるまでもない。
    Cefoxitin(マーキシン注射用, 以下CFX) はStreptomyces lactamduransが産生するCephamycin Cの誘導体として最初に開発されたCephamycin系抗生物質である。CFXはβ-ラクタム環の7α 位にメトキシ基を有するため, 各種細菌が産生するβ-Lactamaseに対して極めて安定である。本剤はグラム陰性菌, 特に. Escherichia coli, Klebsiella sp., Proteus sp. に対し強い殺菌作用を有し, 更にCephalosporin系, Penicillin系, Aminoglycoside 系等多くの抗生物質に対し耐性を示すといわれるBacteroides fragilisに対しても有効である3-7)。
    今回我々は名古屋大学医学部産科婦人科学教室及び関連病院において産婦人科領域の感染症に対し本剤を投与し治療効果の判定を行うと共に細菌学的検索により原因菌の分離, 感受性試験を行つたのでその成績を報告する。
  • 山嶋 哲盛, 正印 克夫, 染矢 滋, 小暮 裕三郎, 久保田 紀彦, 山本 信二郎
    1983 年 36 巻 3 号 p. 522-528
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    脳外科の手術は長時間に及ぶことが多く感染の危険が高いため, 本邦においては, 閉頭に際し抗生物質入りの生食水で術野を洗浄したり, 術後に抗生物質を予防的に全身投与することが一般化している。従つて, いつたん術後髄膜炎を併発すると, 起炎菌の培養や同定は必ずしも容易ではなく, かえつて治療上の困難をきたす場合が多い。長時間の手術で体力を消耗した患者が髄膜炎を併発すると, 意識レベルや全身状態は極度に悪化する。この時ほど我々脳外科医が窮地に立たされ, 抗生物質の選択や投与法について考えさせられることはない。
    術後髄膜炎の起炎菌としてはグラム陰性桿菌が多いとされるが, 最近ではGentamicin(GM)に耐性のものが漸増の傾向にある1)。今回, 我々はGM耐性菌による術後の難治性髄膜炎の3症例を経験し, 1日量で最大100mgのAmikacin (AMK) を髄腔内に投与することにより好成績を得た。AMKの髄腔内投与量については, 1日量でHAMORY2)は4 mg, SKLAVER3) は10 mg, BLOCK4) は20 mgとした。一方, 高木ら1) は20 mgから漸増し最大80 mgまで使用しその安全性を確認した。この様に, 髄腔内への至適投与量については必ずしも諸家の見解が一致している訳ではなく, 又, 予想外に報告が少ない。本論文では我々の経験をもとに, 術後の難治性髄膜炎の治療について, AMKの髄腔内投与法を中心に述べたい。
  • 小松 良彦, 柿崎 良輔, 対馬 健一, 坂田 優
    1983 年 36 巻 3 号 p. 529-536
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Micronomicin(MCR)(サガミシン®, KW-1062)は, Micromonospora sagamiensis var. nonreducansが産生する新しいアミノ配糖体系抗生物質である1)。
    本剤はGentamicin(GM), Dibokacin(DKB)などと同様の抗菌スペクトルを有し, グラム陽性菌及び緑膿菌, 変形菌, セラチア, 肺炎桿菌などの各種グラム陰性桿菌に対して優れた抗菌力を有している2)。
    又, 本剤は腸管からの吸収に乏しく, 高率に尿へ排泄されるが, 腎障害や第8脳神経障害の程度は, 動物実験によればGMやDKBに比べて弱いと報告されている3, 4)。
    われわれはこれまで急性白血病における感染症や末期癌患者の難治性の感染合併例に対して, 各種抗生剤の併用療法を試みてきた。
    今回, MCRを新たに入手する機会を得たので一般感染症患者も含め本剤を使用して良好な結果を得たのでその臨床成績を報告する。
  • 松浦 雄一郎, 田村 陸奥夫, 山科 秀機, 肥後 正徳, 藤井 隆典
    1983 年 36 巻 3 号 p. 537-546
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胸部外科領域における術後の感染予防を目的とした抗生物質の使用は, 重要な術後処置の1つとして欠かせないものである。
    私共はこの度Cephem系注射剤であるCefotiam (CTM, Pansporin(R)) を用いて, 開胸術術後患者における本剤の胸水中移行性の薬動力学的検討及び胸膜内濃度の検討を行つた。
    又同時に20症例の開胸術症例に対してCTMの術後感染予防的投与を行い, いささかの知見を得たのでここに報告する。
  • 白血球貪食殺菌能に及ぼす影響について
    岩崎 由紀夫, 山下 直哉, 城崎 慶治, 東條 雅宏, 佐藤 吉壮, 岩田 敏, 秋田 博伸, 砂川 慶介, 老川 忠雄, 小佐野 満
    1983 年 36 巻 3 号 p. 547-551
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我々は多核白血球の貧食殺菌能に影響を及ぼす種々の要因について, 生体内に近い環境で観察するために, Diffusion chamberを用いた家兎実験系を考按し検討1-3)してきた。今回は, この実験系を用いて, 筋注, One shot静注, 45分間点滴静注の3種類の方法で投与したGentamicin sulfate (GM)の緑膿菌 (Pseudomonas aeruginosa) に対する殺菌効果を比較し, 又多核白血球貧食殺菌能に及ぼす影響について若干の考察を加えた。
  • 林 滋生, 加茂 甫
    1983 年 36 巻 3 号 p. 552-565
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    硫酸Paromomycin (Aminosidine) は1959年, イタリアのMassa Marittimaの土壌から分離された放線菌Streptomyces chrestomyceticusから生産されるアミノ配糖体系抗生物質で, 広域スペクトラムの抗菌作用の他, 赤痢アメーバなど一部の原虫にも有効に作用することが知られ, すでに広く用いられている。一方, Paromomycin (PRM) は, 1959年Parke Davis社において南米コロンビアの土壌から分離された放線菌Streptomyces rimosus forma paromomycinusから, 生産され, 同様の抗菌, 抗原虫作用があり, 又ULIVELLI1, 2) によりテニア症の治療に用いられて以来, WAITZ, MCCLAY & THOMPSON, 3) SALEM & EL-ALLAF 4, 5), Parke Davis Co. 6, 7) BOTERO8) などテニア症に有効であるとの多数の報告があらわれた。又広節裂頭条虫症にも有効なことがTANOWITZ & WITTNER9) により報告された。広節裂頭条虫に対する効果は, 我が国でも金沢裕10), 石田和人ら11), 大鶴正満ら12), により報告されている。頭記のAminosidineはPRMと完全に同一ではないにしても, その化学, 物理及び生物学的活性において本質的には区別できず, 前者は後者に含まれるべきであるとされている13)。
    硫酸Paromomycinの抗条虫効果については, GARINら14-6) の無鉤条虫, 金沢裕17) の広節裂頭条虫, 吉田幸雄ら18) の広節裂頭条虫, 無鉤条虫に対する有効性の報告がある。
    我が国における人の腸管寄生の条虫症として, 古くから無鉤条虫, 広節裂頭条虫が主要なるものを占め, この他に大複殖門条虫, 小形条虫, 縮小条虫, 有鉤条虫, 有線条虫, 瓜実条虫などがあるが, 近年特に広節裂頭条虫が急増の傾向を示している19-22) 実情に鑑み, 有望な抗条虫剤としての硫酸Paromomycinにつき, その効果, 副作用並びに適正な薬量, 投与法の検討を行い, 併せて作用機構を明らかにすることを意図して, 昭和54年に条虫症研究会を結成し, でに3年を経過した。
    構成組織はTable 1に示すとおりであるが, 筆者らはその世話役を務めて来たので, ここに現在まで得られた知見をまとめて概略を報告する。
  • 主としてサクラマスの感染を中心に
    大島 智夫, 若井 良子
    1983 年 36 巻 3 号 p. 566-572
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我が国の広節裂頭条虫症の感染源の魚類は, 主としてサクラマスOncorhynchus masou (BREVOORT)であり, ヵラフトマスOncorhynchus gorbuscha (WAKEAUM)はプレロセルコイドの寄生の報告はあつても実際の感染源となることは稀であり, びわ湖に棲息するビワマスOncorhynchus rhodurus (JORDAN & MCGREGOR)はびわ湖周辺の本症の感染源と目されるがまだ実証されていない。養殖のニジマスSalmo gairdneri irideus (GIBBONS) は一時疑われ, 長野県1), 静岡県で調査されたが, 感染魚は発見されず, まず問題ないとされる。
    サクラマスの漁獲は, 日ソ漁業委員会のサケマス漁業に関する規制外であるが, 小型流し網漁業としては水産庁と北海道, 青森, 秋田, 山形, 新潟, 富山, 石川の各県と協議の上, 26隻の大臣許可船に対し, 3月15日から6月1日まで北緯45°以南の37°以北の日本海で許可され, 延縄漁業としては北海道から福井県まで, 340隻の許可船に3月15日から6月15日まで同じく北緯45°以南37°以北の日本海で許可が与えられ, いずれも陸揚げ港が指定されている。大平洋岸でも北海道, 津軽海峡, 三陸沖から福島県以北の沿岸で大平洋小型流し網漁業として同様に規制されているが, 日本海漁業に較べ小規模である。(水産年鑑による)。
    サクラマスの漁獲統計は整備が遅れ, 日本の統計ではサクラマスとカラフトマスが区別されていないので過去の真の漁獲量は明確でない。近年の統計では海面漁業として4,000トン前後, 河川で100トン以下の漁獲量が続いている。その大部分(7割)は日本海でとられ, オホーツク海がこれについでいる。
    諸外国の広節裂頭条虫は第1中間宿主, 第2中間宿主共に淡水産であり, Pike, Burbot, Perchとよばれるような淡水魚にプレロセルコイドが寄生し, 湖水周辺住民がそれを生に近い塩蔵品として食して感染しているが, 日本のように淡水河川から出て海洋を廻遊し最後に生まれた河川に戻るOncorhynchus属のような魚類が第2中間宿主となり, 特にプレロセルコイドが筋肉内だけに分布する例は他にない。
    感染者数は戦中, 戦後激減していたが, 1960年代から, 再び増加し, 近年は, 毎年数百例の報告が北海道, 青森県から島根県にいたる日本海沿岸, 関東地方で見られる。この傾向が今後も継続するかどうかは今後の広節裂頭条虫症の対策に検討を要する問題である。それには次の3つの問題がある。
    1.日本人のサクラマスの消費の傾向一特に, 寿司, 刺身として生食する食習慣-は徐々に強まつている。
    2.サクラマスの広節裂頭条虫幼虫の寄生率に変動があるが, それを人為的にコントロールできない。
    3.サクラマスが広節裂頭条虫の感染を受ける状況は全く未知で, それを人為的に防げない。
    広節裂頭条虫駆除に関しては幸いなことに現今国内で駆虫効果の高いBithionol(INN), 硫酸Paromomycin(INN)の入手が可能であるが, 今後毎年相当数の患者が長期間にわたり発生することが予測される場合には, そのために一般臨床医が容易にこれらの薬剤を使用できるよう手続きを整えねばならない。その点からも今後の本邦における本症流行の予測が必要となる。
    そこで主として横浜市魚市場に入荷するサクラマスについて1977年から5年間調査した成績に基づき, 水産庁のサクラマスの生態調査の研究結果を参照に上記の問題について以下のように考察してみた。サクラマス消費の実態, サクラマスへの感染に関してはデータに不足し推論の域を脱しないので, 最小限に触れることとする。
  • 影井 昇, 林 滋生, 加藤 桂子, 梅木 富士郎
    1983 年 36 巻 3 号 p. 573-584
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, アミノ配糖体系抗生物質である硫酸Paromomycin (Humatin あるいは Aminosidine) が条虫類に対して高い駆虫効果を示すことが報告され, 新しい形の抗寄生虫剤として注目をあびてきている。
    この様な今までは抗蠕虫剤として全く顧みられなかつた抗生剤が蠕虫類に対して駆虫効果を示すことは学問的にも極めて興味があり, その作用機序を知ることによつて今後更に多くの, しかも種々の寄生虫に対して著効のある抗生剤の出現をみる可能性をも示唆するものである。
    そこで本実験では本剤の投薬量に対する検討とその作用機序について実験感染を行つた動物条虫症について検討を加え, 更に人体条虫症例についても検討を加えた。
  • 特にin vitro実験での微細形態学的検討安治, 敏樹
    安治 敏樹, 頓宮 廉正, 板野 一男, 稲臣 成一, 原田 正和, 村主 節雄
    1983 年 36 巻 3 号 p. 585-593
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 寄生虫学の分野においても, 次々と新しい駆虫剤が開発されてきている。硫酸Paromomycin (Aminosidine) は広範囲の抗菌スペクトラムを持つと共に, 抗原虫, 抗条虫作用をも有する極めてユニークなAminoglycoside系抗生物質である。本剤による条虫症の駆虫成績についての報告は数多くあり1~4), 好成績を得ている。条虫に対する作用は, 虫体頸部に特異的作用点を持つており5, 6), その結果, 駆出虫体はしばしば頸部で切断され頭節を有しないことがあると言われている。しかし, その損傷過程は推定の域を出ておらず, 不明の事が多い。そこで, 今回, 硫酸Paromomycinのマンソン裂頭条虫, 小形条虫に与える損傷の過程を明らかにするため, in vitroで実験を行い, 電顕的にその検討を行つた。
  • 新村 宗敏, 横川 宗雄, 畑 英一, 小林 仁, 時田 賢, 蓮沼 洋子
    1983 年 36 巻 3 号 p. 594-601
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    最近の食生活の多様化, 複雑な社会環境の変化のためか, 各種の寄生虫感染者の増加が目立つが, なかでも広節裂頭条虫症患者の増加は著しい。条虫症の治療剤としては, 綿馬, 石榴根皮, コソ, Kamala, Niclosamide, Quinacrine及びBithionolなどが知られているが, 著者らはこれまで広節裂頭条虫症及び無鉤条虫症の治療には主としてBithionolを用い極めて良好な駆虫成績をあげてきた(横川ら1, 2))。近年, Aminoglycoside系抗生物質である硫酸Paromomycin (Aminosidine) が条虫症に対しかなりの駆虫効果を示す知見が次々と報告され, 新しい形の抗寄生虫剤として注目をあびてきている(ULIVELLI3), BOTERO4), WITTNERら5), 金沢6, 7), 吉村ら8), 谷ら9), 石田ら10), 大島11), 山口ら12), 吉田ら13), 織間ら14), 影井ら16))。著者らも, 教室に紹介されてきた広節裂頭条虫症患者及び無鉤条虫症患者の硫酸Paromomycinによる治療を試みると共に, in vitroにおける条虫の自動運動と解糖系及び寄生虫のエネルギー生成系として知られているPhosphoenolpyruvate (PEP)-succinate系(SAZ16)) に対する影響などについて検討してみたのでこれらの成績を併せて報告する。
  • 宮本 健司, 久津見 晴彦, 中尾 稔
    1983 年 36 巻 3 号 p. 602-609
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    硫酸Paromomycin (Aminosidine) が抗細菌, 抗原虫作用を持つばかりでなく, 条虫駆虫効果を示すことは最近知られてきた。SALEM & EL-ALLAF 1, 2) は無鉤条虫, 小形条虫の駆虫に成功し, のちにBOTERO3), 金沢4, 5), 大鶴ら6), 影井ら7), 吉田ら8), 今井ら9), 石田ら10) の報告があいついだ。これによつて, アミノグリコシド系の抗生物質が小形条虫をはじめ, 無鉤条虫, 広節裂頭条虫, 大複殖門条虫などの大型で駆虫困難であつた条虫に対して, 駆虫作用を示すことが確実となつた。今回は実験感染させたDiphyllobothrium ditremumに対する駆虫効果を検討すると共に, 広節裂頭条虫症例について駆虫効果を確認したので報告する。
  • 矢崎 康幸, 並木 正義
    1983 年 36 巻 3 号 p. 610-614
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    硫酸Paromomycin (Aminosidine) は, 近年大型条虫症治療薬としての有効性が注目されつつあり副作用の少ないことから特に本邦においてその臨床使用例が増加している1, 2)。これらの症例の多くは広節裂頭条虫症であり, 他には大複殖門条虫症3), 無鉤条虫症1), 有線条虫症4) が散見される。しかし, 一体どのような機序で酸Paromomycinがこれらの条虫に対して駆虫効果を示すのかは今だ不明な点が多い。われわれは広節裂頭条虫症患者からDAMASODERIVAS変法5) にて駆虫した広節裂頭条虫を用いてこの虫体に対する硫酸Paromomycinの影響について検討したので報告する。今回は広節裂頭条虫の運動に対する硫酸Paromomycinの影響とそのときの虫体表面構造の変化, 虫体の病理組織学的変化につき検討した。
  • 長瀬 清, 斉藤 雅雄, 宮崎 保, 横田 慎一, 小林 正伸, 佐々木 千尋, 上畠 泰, 浅香 正博
    1983 年 36 巻 3 号 p. 615-618
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    サケ, マスの生食の機会の多い北海道において, 条虫症はわれわれ臨床医により稀ならず遭遇する疾患である。駆虫法としては, DAMASODERIVASの方法の様な硫酸マグネシウム, 生理食塩水, グリセリンを十二指腸ゾンデを通し小腸に注入, 機械的に排出を計る方法に対し, 古くからQuinacrine, Kamala, Bithionol (Bitin) などの薬物が使用されていた。
    ULIVELLI1) やSALEM2, 3) などが硫酸Paromomycin (Aminosidine) の条虫症に対する駆虫効果の報告の後, 本邦では金沢4) によりはじめて条虫症の駆虫報告がなされ, その駆虫効果が注目されるに至つた。
    今回, われわれは広節裂頭条虫症に対し, 硫酸Paromomycinを用い駆虫を試み, 良好な結果を得たので報告する。
    硫酸Paromomycinは放線菌の一種であるStreptomyces chmtomyceticusが産生する図1のような構造を有するアミノ配糖体系抗生物質である。
    本剤は経口投与によりほとんど腸管から吸収されず5), 又副作用も下痢, 腹痛, 悪心, 嘔吐などが時にみられるが, いずれも一過性で安全性も高いといわれる6の。マウスに対する急性毒性LD50は静注で90±3mg/kg, 皮下注で423±24mg/kgであり, 経口では2,275mg/kgである。
  • 1974~1981年間の感染症例と硫酸Paromomycinによる駆虫成績
    神谷 晴夫, 石田 和人, 谷 重和, 石郷岡 清基, 山下 恵子, 鈴木 俊夫
    1983 年 36 巻 3 号 p. 619-624
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1974~1981年間の私田県下の2~68才の広節裂頭条虫症患者41例に硫酸Paromomycinを投与し, 全例駆虫することが出来た。投与用量は20~50mg/kgで, それによる副作用は認められなかつた。又, 本剤め条虫駆除作用機序に関して若干の考察を試みた。
    なお, 本成績は, 秋田県下の症例に限定したが, その一部は石田ら (1975), 鈴木・大鶴 (1980) に報告された。
    硫酸Paromomycinを供与していただいたパーク, デービス三共株式会社, 協和醸酵工業株式会社に感謝します。また, Avermectinに関する文献をお送りいただいた日本MSD株式会社多田融右氏に感謝します。
  • 吉村 裕之, 赤尾 信明, 近藤 力王至, 大西 義博
    1983 年 36 巻 3 号 p. 625-631
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    広節裂頭条虫症の治療には, 古くは綿馬エキス, ザクロ根皮, カマラ, アテブリン(キナクリン)等の駆虫剤が用いられてきたが, 駆虫効果が不安定であつたり, 悪心・嘔吐などの副作用を伴うことが多かつた。近年, Niclosamide, Bithionol, Paromomycinの抗条虫作用を持つ化学合成剤や抗生物質が広節裂頭条虫だけでなく, 各種条虫の駆虫剤として広く用いられるようになつた。しかし, Niclosamideは国内では入手が困難で且つ副作用の点から我が国では現在用いられておらず, もつぼら後2者を用いて治療がなされている。著者らも北陸地方における広節裂頭条虫症の実態を調査, 集計し, 上記薬剤にカマラを加えた4種薬剤の駆虫効果を比較検討し報告した14~16)。
    今回は1980年以降に硫酸Paromomycin(Aminosidine)を用いて駆虫を行つた24症例について, その臨床所見並びに駆虫成績を報告すると共に, in vitroにおける硫酸Paromomycin (Aminosidine) の虫体に対する作用機序, なかんずく薬剤の虫体組織に及ぼす影響の検討も行つたので併せて報告する。
  • 大友 弘士, 日置 敦巳, 伊藤 亮, 梶田 和男, 石塚 達夫, 奥山 牧夫, 三浦 清, 影井 昇, 林 滋生
    1983 年 36 巻 3 号 p. 632-637
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    常態宿主であるイヌ, ネコの腸管に寄生するMesocestoides属条虫は稀に人体寄生を行うことがあり, 1942年にCHANDLER1) によるMesocestoides variabilisと小坂2) によるMesocestoides liueatusの人体症例が初めて紹介されてから, これまでに20例の報告がある。
    今回, 著者らはわが国におけるM. lineatusの第13例, 世界におけるMesocestoides属条虫の第21例と思われる症例を経験し, 硫酸Paromomycinによる駆虫に成功したが, これはMesocestoi4es属条虫に対する硫酸Paromomycinの治験例としては, HUTCHISON and MARTIN (1980) 16) によつて報告されたMmiabilis症例に次ぐものであるのでその概要を報告し, 併せて最近その抗条虫作用が注目されている本剤の駆虫効果に関しても若干の文献を渉猟してみることにした。
  • 矢崎 誠一, 竹内 俊介, 前島 条士, 福本 宗嗣, 加茂 甫, 坂口 祐二
    1983 年 36 巻 3 号 p. 638-643
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    条虫の多くは人の食生活に欠かせない牛・豚肉あるいは魚肉の摂取によつて感染する寄生虫である。日本においては特に魚肉の生食を好む食生活上の特徴から広節裂頭条虫を主とした裂頭条虫類の寄生が古くから知られている。日本の広節裂頭条虫については, 木曾川流域の疫学, 生物学調査について江口1)の詳細な調査研究が行われている。本条虫はその後減少傾向にあることが指摘されていた2)が1960年以降, 他属裂頭条虫も含めて, 再び増加傾向にあることが各地区の疫学調査の結果明らかにされている3~6)。その増加の背景はサケマス類(特にサクラマス)の一般家庭への普及6) にあると考えられている。
    広節裂頭条虫症は魚肉に寄生するプレロセルコイド(感染幼虫)が経口的に摂取されることで感染し, 3週間前後で成熟, 糞便内に虫卵が認められるようになる。患者の多くは自然排出された成熟体節末端を見つけて驚き, 医療機関を訪れる。放置しても虫によつては自然排出してしまう場合もあるが, そのほとんどは体節の一部の自然排出を繰り返しながら頭節は絶えず腸管内に残し, 再び成熟虫体となり, 宿主に対しては通常腹痛, 下痢など軽い消化器症状を呈するが, 場合によつては腸閉塞などをきたす可能性もある。
    条虫の駆虫剤としては古くから綿馬エキス, 石榴根皮, カマラ, コソ花, クマリン, 雷丸など使用されてきたが, これら生薬は駆虫効果も完全とはいえず, 毒性も強いものが多い。戦後になつてNiclosamide (Yomesan), Paromomycin (Humatin) などが用いられ駆虫効果も報告されているが, 国内においては一般には古くからのKamala と共に吸虫剤として開発されたBithionol(Bitin)が広く使用されてきた。この他駆虫の方法としては駆虫薬を使用せず十二指腸ゾンデによるDAMASODERIVAS変法7) なども試みられている。しかしこの方法も専門的技術を要し, 一般的ではない。従つて条虫治療においては寄生虫駆虫一般に言えることであるが, 駆虫効果が優れており, 副作用の少ないものが求められる。そんな中でアミノ配糖体系抗生物質の硫酸Paromomycinは本来細菌, アメーバ赤痢に効果の知られたものであるが, 経口的に投与した場合, 宿主腸管からの吸収が少なく条虫にも特異的に作用することが明らかにされた8) 抗条虫剤である。これまで使用された硫酸ParomomyCin (Humatin)が薬効再評価の影響で製造が中止された。
    Aminosidineは, 硫酸Paromomycin同様抗条虫作用が明らかにされている。今回著者らは本剤の駆虫効果を追試する目的で1980年~1981年の2年間に教室に紹介のあつた条虫症のうち7例について硫酸Paromomycin (Aminosidine) による駆虫を試みたのでその結果について報告する。
  • 1983 年 36 巻 3 号 p. 644-649
    発行日: 1983/03/25
    公開日: 2013/05/17
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