The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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38 巻, 12 号
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  • 藤森 一平
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3437-3448
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide(CPM)は住友製薬(株)及び山之内製薬(株)で共同開発された新規注射用セフェム系抗生物質であり, 化学構造上セフェム骨格の7位側鎖にHydroxyphenyl基とHydroxymethylpyridyl基を, 3位側鎖にはMethylthiotetrazole基を有している(Fig. 1)。
    いわゆる第3世代のセフェム剤と比較しても極めて広域な抗菌スペクトラムを有し, グラム陽性球菌, グラム陰Sodium(6R, 7R)-7-[(R)-2-(4-hydroxy-6-methyl-3-pyridylcarboxamido)-2-(p-hydroxyphenyl)acetamido]-3-[[(1-methyl-1H-tetrazol-5-y1)thio]methyl]-8-oxo-5-thia-l-azabicyclo[4. 2. 0]oct-2-ene-2-carboxylate性桿菌並びに嫌気性菌に対し強い抗菌力を示し, 中でもPseudomonas aeruginosaに対してはCefsulodin(CFS)に匹敵する。又, 本剤を静脈内投与した時の血中濃度は既存のセフェム剤のどれよりも高く, 且つ持続的であり, その生物学的半減期は4~5時間である。
  • 吉見 彰久, 西村 憲一, 北川 優, 北川 明子, 西村 美年子, 掛谷 宣治, 中村 正平, 桶谷 智子, 野崎 善弘
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3449-3457
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Ceftizoxime坐剤 (CZX-S) をマウス, ラット及びイヌに直腸内投与した時の体内動態について, Ceftizoxime (CZX) の静脈内, 筋肉内あるいは皮下投与の場合と比較検討した。CZX-Sの直腸内投与における吸収は, いずれの動物においても皮下又は筋肉内投与と同様に速やかで, CZXとして25mg/kgの投与量で最高血清中濃度はマウスで投与7.5分後に23.1μg/ml, ラットで15分後に23.5μg/ml, イヌで15分後に25.2μg/mlと, それぞれ同一投与量の皮下投与又は筋肉内投与時の値の約76%, 約68%, 約42%と良好な値を示した。尿中排泄率はラットで投与後12時間までに44.2%, イヌでは6時間までに27.7%であり, ラットにおける投与後6時間までの胆汁中排泄率は2.7%であつた。ラットでの臓器内分布は筋肉内投与時の分布のパターンに類似していたが, 各臓器内の濃度は血清中濃度と同様にやや低い値であつた。イヌにCZX-Sを12.5, 25mg/kg及び50mg/kgの投与量で投与した場合の血清中濃度は, 投与量に依存して上昇した。又, イヌに10日間の連続投与を行つたが, 連続投与による血清中濃度は単回投与の場合に比べて明らかな差はなく, 蓄積性も認められなかつた。更に, 1カ月齢から15ヵ月齢までのイヌを用いて, 加齢による直腸吸収性の変化を調べたが一定の変動傾向は認められなかつた。
    謝辞本研究にあたり, 薬動力学的解析を行つていただいた金沢大学薬学部辻彰教授に深く感謝します。
  • 西野 武志, 谷野 輝雄, 尾花 芳樹
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3458-3463
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    化学療法の進歩に伴い, 抗菌物質の使用頻度が高くなり, 感染症は大きく変貌してきた。一般に抗菌剤の投薬方法としては, 経口投与や静注, 筋注が主なものであるが, 小児及び高齢者の感染症において, 抗菌物質の直腸内投与は, 投薬方法の簡便さ, 及び安全性の点などから推奨される剤型1)の1つである。
    抗菌物質坐剤については, 現在までに吸収排泄等に関する基礎的及び臨床的検討が数多く報告されている2~11)。すでに我々はDibekacin12)及びAmpicillin坐剤13)について, マウス実験的感染症に対する効果を検討し, その有効性を認め, 投薬方法の利点なども合わせ, 直腸坐剤の臨床応用への有用性を示唆してきた。
    今回, 広領域の抗菌スペクトラムを有し, 強い抗菌活性を示すCeftizoxime14)の直腸坐剤について, マウス実験的感染症に対する治療効果を皮下投与の場合と比較検討した。
  • 特に術後髄膜炎時の髄液移行について
    新見 仁寿, 鎌田 一郎, 谷川 雅洋, 三宅 新太郎, 真鍋 武聰, 浅野 拓
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3464-3470
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    脳神経外科領域における術後感染は, 他領域特に腹部外科などと比較すると非常に頻度の低いものである。これは脳外科で扱う疾病が脳膿瘍以外は本来感染とは全く関係のないものであり, 副鼻腔を開放するようなことがない限り, 感染源に触れることがなく, 又, 頭皮は血行が非常によく, 感染に強いという解剖学的な特性によるものであろう。しかしながら脳表特に髄液は細菌の格好の培地になると思われ, 従つて小さな開頭術野とはいえ露出された脳表に落下する菌により発症する髄膜炎は, 少ない頻度ながら抗生剤の多い今日でも避けられない術後合併症の1つである。
    従来われわれは術後感染予防の目的には, 2種の抗生剤, 主にいわゆる第I世代か第II世代のセフェム系と, アミノグリコシド系を併用して使用し, 運悪く髄膜炎が発症した場合には, 腰椎穿刺によりクロラムフェニコール, アミノグリコシド系抗生剤を直接髄腔内に投与する方針をとつてきた。腰椎穿刺による直接投与は, 当然薬剤の髄液中濃度を急速に高め, 全例に有効で完治させることができたが, 中に難治性のものがあり, 度重なる腰椎穿刺, 薬剤注入による局所の物理的, 化学的炎症, ひいては癒着を生じ, 直腸膀胱障害, 下肢の運動知覚障害を残すことがあつた。
    このような症例に遭遇する度に, 全身投与で抗菌力が強く, 髄液への移行のよい抗生剤がいずれ出るものと期待していた。この期待に添うと思われるシナマリン® (Latamoxef, 以下LMOXと略) がシオノギ製薬から発売されたので, 術後髄膜炎に限つてその治療目的に使用し, 髄液への移行, 臨床効果について検討を行つた。
  • 山本 浩史, 妹尾 紀具, 松本 伸
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3471-3476
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Latamoxefは塩野義製薬研究所で開発され, 化学構造的にはOxacephem系に属する薬剤で, 7位にMethoxy基を有し, β-Lactamaseに極めて安定である1)。抗菌力はグラム陽性菌にはやや弱いがグラム陰性菌には極めて強く, しかも嫌気性菌及び緑膿菌の1部にも抗菌力を有するとされている2, 3)。今回われわれは肺切除術症例に対しLMOXを投与し, 投与後の肺組織内濃度を同一個体において可能な限り経時的に測定し, 一方において血中, 喀痰, 尿中の濃度推移についても検討し, 更に本剤の呼吸器感染症に対する有効性についても若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 菊池 功次, 酒井 忠昭, 池田 高明, 水渡 哲史
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3477-3480
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Clindamycin, phosphate (CLDM-P, ダラシンP注®) はClindamycin (CLDM) のリン酸エステルで生体内で速やかに加水分解されCLDMとして抗菌作用を示すLincomycin (LCM) 系の抗生剤である (図1)。LCMより抗菌力が優れ, 動物実験では, 肺組織への移行が高いといわれている1)。
    肺切除後の感染予防や, 呼吸器感染症に対して, 種々の抗生物質が投与されているが, それらの抗生物質の人肺組織への移行に関する研究は, いまだ少なく, 又, CLDMの人肺組織内濃度に関する報告はない。今回われわれは, 切除肺を使用して, CLDMの肺組織内濃度を測定し, 組織内移行を検討した。
  • 小林 文子, 坂本 匡一, 暮部 勝, 横田 正幸, 小川 ミチ子
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3481-3486
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fosfomycin (FOM) 2, 3%及び5%液0.1mlを1群4匹の雄性Hartley系モルモットの人工的に作成した鼓膜穿孔から5日間にわたり点耳し聴覚器への影響について検討した. なお, 対照薬群としてKanamycin A (KM) 2%液点耳群も設定した.
    点耳終了後10日目に屠殺して走査電子顕微鏡下で蝸牛外有毛細胞聴毛及び内有毛細胞聴毛の形態変化を検索した.
    その結果, 特に薬物起因と考えられる変化を認めなかつた.
    FOM3%及び5%液及びKM2%液のそれぞれ0.1mlを1群3匹の雄性Hartley系モルモットの人工的に作成した鼓膜穿孔から点耳し, 蝸牛リンパ液中の薬物濃度を測定した.
    その結果, FOM3%はKM2%に比べて低い最高濃度を示したが, AUCでは高い値を示した. 又, T1/2の値はFOMでは約4.8時間であつたが, KMでは約2.3時間であつた. FOMのAUC及び最高濃度の値はほぼFOM濃度に依存して増加した.
    以上の結果から, FOMは中耳腔から正円窓膜を容易に通過し, 蝸牛リンパ液中に移行し, KMに比べて長く分布するが, 聴覚器蝸牛の内, 外有毛細胞に毒性的影響を与えないと示唆される.
  • 久保 真百合, 加藤 喜昭, 稲森 善彦
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3487-3496
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sisomicin (SISO) はMicromonospora inyoensisの培養炉液から単離されたAlninoglycoside系抗生物質である。細菌学的には広領域な抗菌スペクトルを有し, Staphylococcus属やSerratia属以外の各種グラム陰性桿菌に対してGentamicin (GM) とほぼ同等, あるいはそれ以上の抗菌作用を有することが知られている。しかし, 副作用, すなわち, 毒性学的には, GMと同等, あるいはやや軽度の腎毒性, 又, GM並びに他の抗緑膿菌用Aminoglycoside系抗生物質よりも第8脳神経障害が軽度であるとされている。このために, 実際の使用には注意をはらわなければならない。従つて, 今回, 著者らはこれらの副作用の軽減, あるいは相乗効果による抗菌活性の増強を目的として, GMを比較薬に用い, Cephem系抗生物質に属するCefmenoxime (CMX), Ceftizoxime (CZX), Cefoperazone (CPZ) 並びにCefotetan (CTT) を用い, in vitroでの併用効果をSerratia marcescens並びにPseudomonas aeruginosaを試験菌として用い, 検討したので報告する。
  • 高橋 昌巳, 大友 俊允, 一幡 良利, 大島 赴夫, 碓井 之雄
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3497-3504
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 抗生物質の最小発育阻止濃度 (MIC) 以下の濃度を用いた細菌細胞の形態変化1~3), 細菌の細胞吸着阻止4), 白血球の喰作用への影響5) など各方面において検討されているがその多くは1/4MIC以上の高濃度を使用している。
    MIC以下の濃度で細菌細胞が形態的変化をきたすことはGARDNER6), DIENES7), LORIANら2), 高橋ら3) が記載し, 特にLORIANは形態変化を起す抗生物質の最小濃度をMinimum antibiotic concentration (MAC) とし, その結果をMICとMAC比で表した2)。更に高橋らは臨床材料から分離した肺炎桿菌とCephapirinを用いてMIC以下の濃度での抗菌作用と形態的変化について報告した3)。
    今回, 臨床材料から分離したStaphylococcus aureus, Klebsiella pneumonias, Pseudomonas aeruginosaなどに対し, β-Lactam系抗生剤, Aminoglycoside系抗生剤のMIC以下の濃度の作用範囲を求めたので報告する。
  • 相馬 彰, 芳賀 宏光, 溝口 久富, 牟禮 一秀, 千石 一雄, 山下 幸紀, 桜庭 衡, 石川 雅嗣, 川村 光弘, 笠茂 光範, 石川 ...
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3505-3512
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT) は米国スクイブ社で開発されたモノバクタム系抗生物質で単環のN1位がスルホン酸塩に置換された構造式を有している (図1)。本剤はβ-ラクタマーゼ, デヒドロペプチダーゼに対し極めて安定で, Escherichia coli, Klebsiella, Proteus, Serratia, Pseudomonas aeruginosaなどのグラム陰性菌に極めて強い抗菌力を示す1)。今回, 著者らはAZTの産婦人科領域感染症に対する有効性を検討するため婦人性器各組織内への移行並びに感染症症例に対し臨床効果を検討したので報告する。
  • 一戸 喜兵衛, 牧野田 知, 藤本 征一郎, 田中 俊誠
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3513-3519
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (SQ26, 776, AZT) は米国スクイブ社において発見されたモノバクタム系抗生物質で, 化学構造的にはMonocyclic β-lactam骨格を有する (図1)。本剤はβ-ラクタマーゼ, デヒドロペプチダーゼに対し極めて安定で, その抗菌活性はEscherichia coli, Pseudomonas aeruginosa, Protaus, Enterobacter, Citrobacter, Serratia等のグラム陰性菌に極めて強い抗菌力を示す。今回われわれは, AZTの産婦人科領域感染症に対する有効性を検討するため, 産婦人科感染症の臨床例に少数ながら本剤を点滴静注し, その臨床効果と臨床分離菌に対する抗菌活性を検討したのでその成績を報告する。
  • 関 晴夫, 真木 正博
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3520-3526
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT) は米国スクイブ社にて開発された新しいMonobactam系抗生物質である。その構造はFig. 1に示すとおり, β-Lactam環の1位がスルホン酸塩に置換された単環構造を持つている。その抗菌スペクトラムはグラム陰性菌に有効であり, Escherichia coli, Klebsiella, Proteusに優れた抗菌力を示し, Pseudomonas aeruginosaにも有効性が期待できる1~3)。更にもう1つの本剤の際立つた特徴はその安全性の高さと, 副作用の少ないことにある。
    今回私たちは, AZTの有効性を検討する目的で, 本剤の子宮及び付属器での組織内濃度, 又, 骨盤死腔液中濃度を測定すると共に, 臨床効果についても検討を行つたので, その成績を報告する。
  • 井上 公俊, 森崎 伸之, 千村 哲朗
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3527-3530
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (SQ26, 776, AZT) は, L-Threonineから全化学合成されたMonobactam系 (単環系β-ラクタム) 抗生物質 (米国スクイブ社開発) であり, 本剤はグラム陰性桿菌及びグラム陰性球菌に抗菌力を有し, Pseudomonas aeruginosa, Klebisella, Escherichia coli, Proteus,Citrobacter,Serratiaに有効性が高い。しかし, グラム陽性菌及び嫌気性菌への抗菌力は弱い。本剤の血中半減期は1.6~2.0時間で, 大部分は未変化体で尿中に排泄され, 連続投与による蓄積性は認められていない1)。
    本剤の臨床各領域での有用性は, すでに日本化学療法学会東日本支部総会での新薬シンポジウムで報告1) されているが, 産婦人科領域での感染症に対する本剤の有用性を検討する機会を得たので, その成績を報告したい。
  • 山田 和徳, 舟木 憲一, 岡村 州博, 中岫 正明, 阿部 祐也
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3531-3534
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT)は1980年米国スクイブ社で開発された新しい単環系β-ラクタム抗生物質である。今日, いわゆる第3世代のセファロスポリン剤の登場により抗生剤の抗菌スペクトラムは広範囲となつたが, 緑膿菌に対する抗菌力は不充分とされてきた。一方, アミノ配糖体抗生剤も, グラム陰性菌, 特に緑膿菌に対し強い抗菌力を示すが, その腎毒性, 聴覚毒性に問題がある。AZTは, β-ラクタム単環を有し細菌から産生されたことにちなみ命名されたモノバクタム系に属するβ-ラクタマーゼに非常に安定な, 新しいタイプの抗生物質である。この抗生剤のもう1つの特徴は, 緑膿菌, 大腸菌, プロテウス, エンテロパクター, シトロバクター, セラチア等のグラム陰性菌に対しては極めて強い抗菌力を示すが, グラム陽性菌及び嫌気性菌に対して抗菌力が弱い点である1)。
    今回, 我々は骨盤内臓器に炎症性疾患を有する患者にAZTを投与し, その有効性を検討する機会を得たのでその成績を報告する。
  • 川越 厚, 角田 肇, 小笠原 圭子, 斉藤 正博, 飯島 悟, 臼杵 慙, 宮川 創平
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3535-3541
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT) はMonobactam系 (単環β-ラクタム) 抗生物質であり, 図1に示す構造式を持ち, その分子量は約435である。本剤はいわゆるCephem系第3世代の抗生物質と比較しても, 特に広域のSPectrumを有するということはないが, Pseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性桿菌及びグラム陰性球菌に対して強い抗菌力を示す。又, グラム陰性菌が産生する各種β-ラクタマーゼ及びデヒドロペプチダーゼに対して, 極めて安定であるという特徴を持つている。生物学的半減期は1.6~2.0時間であり, 体内ではほとんど代謝されることなく尿中に排泄される。尿中排泄率は24時間までに60~70%と言われ, 連続投与した場合でも蓄積性は認められていない。
    今回, 我々は産婦人科領域での感染症例に対してAZTを使用する機会を得たので,その成績について報告する。
  • 林 福勝, 小幡 功, 落合 和彦, 小池 清彦, 今川 信行, 森本 紀, 蜂屋 祥一
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3542-3560
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT) は, 米国Squibb社のSquibb Institute for Medical Researchで開発され, 1981年R. B. SYKESら1) により初めて報告された新しいMonobactam系の注射用抗生物質である。Monobactam系抗生物質とはPseudomonas aeruginosa, Chromobacterium violaceumなどの細菌から分離され, Monocyclic β-lactamを有することにちなみ命名され, 分類上β-Lactam系抗生物質の新しいCategoryであるMonobactam系に区分された2)。MonobactamのAnalogueの中で最初に臨床応用されたのは, Desmethoxymonobactamの3位側鎖にAminothiazole-oximeを有し, L-Threonmeから全合成されたAZTである(Fig. 1)3)。
    AZTは静脈内投与により投与量に比例した高い血中濃度が得られ, 生物学的半減期も比較的長く, 大部分が体内で代謝されず, 未変化体のまま尿中に排泄される特性を有する4)。しかし, 本剤の抗菌Spectrumや抗菌力は特徴的で, Gram陽性菌や偏性嫌気性菌にはほとんど抗菌力を有ぜず, P.aeruginosa, Escherichia coli, Proteus属, Serratia属などGram陰性菌に対し強い抗菌活性を示し, 更にβ-LactamaseやDehydropeptidaseに極めて安定であると報告されている5, 6)。
    今回, 著者らはAZTについて基礎的には末稍血清, 子宮動脈血清, 子宮組織及び子宮附属器組織への経時的濃度移行性について検索すると共に, 臨床的には産婦人科領域感染症例に投与し, 有効性並びに安全性について検討したので, その成績について報告する。
  • 福永 完吾, 國井 勝昭, 張 南薫
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3561-3572
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT)は, 米国スクイブ社で開発されたMonobactam系抗生物質である。本剤はL-Threonineから全化学合成されたβ-Lactam単環を有する新しいタイプの構造を持つ抗生物質である1)。
    本剤の抗菌力の特徴としてはグラム陰性の桿菌及び球菌に対して強い抗菌力を示し, グラム陰性菌産生の各種β-Lactamase及びDehydropeptidaseに対し極めて安定であることである。しかし, グラム陽性菌嫌気性菌に対しては抗菌力が弱い1)。
    本剤は注射により投与量に比例した血中濃度が得られ, その半減期は1.6~2.0時間とされている。体内では代謝されず未変化のまま尿中に高率に排泄され, 蓄積性はない1)。
    本剤については, 昭和58年11月, 第30回日本化学療法学会東日本支部総会新薬シンポジウムで, 基礎的, 臨床的共同研究の成果が報告され, その有用性が評価された2)。われわれもこのシンポジウムの一環として本剤を産婦人科領域で検討し, その結果を報告した3)。
    今回, 更に臨床的検討を追加して行い, 結果を得たので, 以下に報告する。
  • 野田 正和, 平井 愼一, 飯田 晋也, 小原 達也, 松井 幸雄
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3573-3577
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (SQ26, 776, AZT) は米国スクイブ社で開発されたMonobactam系 (単環β-ラクタム) 抗生物質である. 本剤は全化学合成品であり1), その化学構造式は図1のとおりである。特にPseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性の桿菌及び球菌に対し強い抗菌力を示すと共に, グラム陰性菌が産生する各種β-ラクタマーゼ及びデヒドロペプチダーゼに対して極めて安定であるという特徴を有する2)。
    今回われわれはAZTを用いて産婦人科領域における組織移行性 (子宮各部, 卵管, 卵巣) について検討し, 同時に性器感染症に対し本剤を使用する機会を得たので報告する。
  • 荒井 清, 穂垣 正暢, 吉田 裕
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3579-3584
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (E-0734, SQ26, 776, AZT) は米国スクイブ社で開発されたMonobactam系抗生物質である. 本剤は全化学合成品であり, その化学構造は図1のとおりである1)。
    本剤は特にPseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性桿菌及びグラム陰性球菌に対し強い抗菌力を示すと共に, グラム陰性菌が産生する各種β-ラクタマにゼ及びデヒドロペプチダーゼに対して, 極めて安定であるという特徴を有すると言われている2)。
    今回, 産婦人科領域における本剤の有用性を検討するために, 女性性器感染症13例に対する臨床検討と, 骨盤死腔液及び血液中への移行を検討したので, 以下その成績を報告する.
  • 中村 英世, 関 賢一, 林 茂, 岩田 嘉行
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3585-3590
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1955年セファロスポリンが発見されて以来, 種々のセファロスポリン系抗生物質が登場してきたが, グラム陰性菌, 特にPseudomonas aeruginosaに対する抗菌力は不十分とされ, β-ラクタマーゼによる加水分解に対する安定性にも未だ問題が残されている。
    一方, アミノ配糖体系抗生物質もグラム陰性菌, 特にP. aeruginosaに対し高度の抗菌力を示すが, 聴覚及び腎毒性に未解決の問題がある。
    1980年, 米国スクイブ社で開発されたAztreonam (SQ26, 776, 以下AZTと略す) は, Fig. 1に示す構造を有したMonobactam系 (単環β-ラクタム) 抗生物質で, 特にP. aeruginosaを含むグラム陰性桿菌及びグラム陰性球菌に対し強い抗菌力を示すと共に, グラム陰性菌が産生する各種β-ラクタマーゼ及びデヒドロペプチダーゼに対し, 極めて安定であるという特長を有する。
    今回, われわれは種々の婦人科領域感染症に対して本剤を使用し, その臨床効果並びに有用性を検討したのでその成績を報告する。
  • 上石 光, 水口 弘司, 揚箸 岳人, 植村 次雄, 松崎 祐治
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3591-3598
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (SQ26, 776, AZT) は, 1980年米国スクイブ社で開発されたMonobactam系の全く新しい全合成抗生物質であり, その構造式は図1に示すとおりである。
    本剤の抗菌スペクトルは特異的であり, 緑膿菌をはじめとするグラム陰性桿菌に対し強い抗菌力を示すが, グラム陽性菌及び嫌気性菌に対しては抗菌力は弱いとされている。又, 本剤は, 各種細菌の産生するβ-Lactamase及びDehydropeptidaseに対して極めて安定である。
    今回我々は産婦人科領域において本剤についての基礎的・臨床的検討を行つたのでその成績を報告する。
  • 丸山 千鶴, 舘野 政也
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3599-3605
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科領域における骨盤内感染症に関しては特別な場合を除き, その臓器の位置的な関係から起炎菌の証明が困難な場合が多く, 従つて抗菌力のある抗生物質の選択にあたつてしばしば迷う場合がある。これら感染症の治療にあたつては広範囲抗菌スペクトラムの抗生物質の使用を余儀なくさせられる。今回, 我々は新抗生物質Aztreonam (E-0734, SQ26, 776, AZT) をエーザイから提供を受け, 産婦入科領域における感染症に対して臨床応用する機会を得たので, 少数例ではあるが, その臨床成績について報告したいと思う。
  • 高林 晴夫, 桑原 惣隆
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3606-3608
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1980年米国スクイブ社で開発された新しい単環系β-ラクタム抗生物質1) Aztreonam (AZT) を, 子宮全摘術施行患者を対象に感染防止目的に静脈内投与し, その血清中濃度及び組織内濃度を測定し成績を得たので報告する。
  • 花田 征治, 今西 春彦, 坂井田 宏, 池内 政弘, 中根 茂雄, 石丸 忠敬, 北村 隆, 高木 孝, 中谷 剛彬, 大嶋 勉, 八神 ...
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3609-3618
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT) は1980年米国スクイブ社で開発されたβ-ラクタム単環を有する新しいタイプの抗生物質 (図1) で, 各種β-ラクタマーゼに対して極めて安定なこと, グラム陰性桿菌に強い抗菌力を有すること, 更にL-Threonineからの全化学合成品であるため, アレルギー反応の発現がほとんど認められないことなど優れた特徴を有する上に, 動物実験における毒性試験で高い安全性が証明されている1, 2)。
    今回我々は, 婦人科領域における臨床応用を目的として, AZTの基礎的検討を行うと共に, 臨床的有効性と安全性についても検討したので報告する。
  • 野田 克已, 松波 和寿, 伊藤 邦彦, 早崎 源基
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3619-3628
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT) は米国スクィブ社で開発されたMonobactam系抗生物質でその化学構造はFig. 1に示すとおりである。
    本剤は特にPseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性の桿菌及び球菌に対し強い抗菌力を示すと共に, 各種β-ラクタマーゼ及びデヒドロペプチダーゼに対し極めて安定であるという特長を有する1)。
    我々は, すでに各種の抗生物質の婦人性器内移行について検討を行つてきた2~8)。そして, それらの成績が産婦人科領域の各種感染症における薬剤投与量を決定するのに重要な指標の一つになると考えている。
    今回我々は, AZTについて検討する機会を得たので骨盤死腔浸出液への移行, 及び5例の臨床例に本剤を使用した成績について報告する。
  • 大林 太, 二宮 敬宇, 長谷川 幸生
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3629-3633
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam(AZT)は米国のSquibb社で開発された新しい単環系のβ-Lactam抗生物質で1), Escherichia coli, Klebsiella, Salmonella, Enterobacter, erratia, Pseudomonmas aeruginosaに強い抗菌力を示すがグラム陽性球菌, 嫌気性菌には弱い抗菌力を示すと報告されている2, 3)。又, 各種の細菌が産生するβ-Lactamaseにも安定で4), アレルギー反応の発現もほとんどみられず, 他のβ-Lactam系抗生物質との交叉反応も非常に少ないと報告されている5)。本抗生物質に対する基礎的, 臨床的検討の機会が与えられたので報告する.
  • 岡田 弘二, 保田 仁介, 金尾 昌明, 冨岡 恵, 山元 貴雄
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3634-3644
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT) は米国スクイブ社で開発された新しい注射用Monobactam系抗生剤である. 本剤はFig. 1に示すとおり, β-Lactam系抗生剤の活性中心であるβ-Lactam環を主構造とする全合成物質である1)。
    本剤は, Pseudomonas aeruginosaを含む多くのグラム陰性菌に強力な抗菌力を示し, 各種細菌由来のβ-Lactamaseにも極めて安定である。一方, グラム陽性菌及び嫌気性菌にはほとんど抗菌活性を有していない2, 3)。
    本剤をヒトに投与した場合, 投与量に比例した血中濃度が得られ, 生物学的半減期は1. 6-2. 0時間である。 又, 本剤は体内ではほとんど代謝を受けることなく未変化体のまま尿中に排泄され, 尿中回収率は24時間までに約60~70%である3)。今回, われわれは産婦人科領域における本剤の基礎的・臨床的検討を行う機会を得たので報告する。
  • 潮田 悦男, 飯岡 秀晃, 島本 郁子, 一條 元彦
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3645-3650
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT, E-0734) は米国スクイブ社で開発された新しい注射用抗生剤で, 図1に示す構造を持つている。構造上は単環系β-ラクタム剤に属する. 本剤の特長は1. グラム陰性菌に強い抗菌力を持つ, 2. 各種β-ラクタマーゼ及びデヒドロペプチダーゼに対して極めて安定である, 3. 静脈内投与でDose-dependentな高い血中濃度が得られ, 体内でほとんど代謝を受けず, 大部分が未変化のまま尿中に排泄される, 4. 一般毒性試験, 特殊毒性試験, 一般薬理試験などの検討結果から高い安全性を有する, などである1)。今回著者らは, AZTの産婦人科領域における体内移行性, 特に子宮内移行及び産婦人科感染症に対する臨床効果について検討し, 若干の知見を得たのでここに報告する。
  • 宮崎 晶夫, 山本 彰, 田中 文平, 恩田 博, 辰田 一郎, 河原 巖, 西村 淳一, 中出 潤子, 浜田 和孝, 山本 啓司, 中 敬 ...
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3651-3659
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年β-Lactamase産生菌が増加傾向を示し, 産婦人科領域における感染症も難治化の傾向がある1)。Aztreonam (SQ 26,776, AZT) は米国スクイブ社で開発されたMonobactam系 (単環β-Lactam) 抗生物質で, 構造式はFig. 1のとおりで (-)-2-[(Z)-[[1-(2-Amino-4-thiazolyl)-2-[((2S, 3S)-2-methyl-4-oxo-1-sulfo-3-azetidinyl) amino]-2-oxoethylidene]amino]oxy]-2-methylpropionic acidの化学名を有する。
    本剤は特に, Pseudomnas aeruginosaを含むグラム陰性の桿菌及び球菌に対し強い抗菌力を示すと共に, グラム陰性菌が産生する各種β-Lactamase及びDehydropeptidaseに対して, 極めて安定であるという特徴を有する2)。
    本剤は静注, 点滴静注, 筋注により投与量にほぼ比例した高い血中濃度が得られ, その半減期は1.6~2.0時間である。体内ではほとんど代謝を受けず未変化体のまま尿中に排泄され, 尿中排泄率は24時間までに約60~70%である3, 4) 今回我々はAZTの産婦人科領域での感染症に対する有用性を検討する機会を得たので, その成績を報告する。
  • 野田 起一郎, 池田 正典, 塩田 充, 堀井 高久, 渡部 洋
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3660-3665
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT) は米国スクイブ社で開発された新しい単環系β-ラクタム抗生物質で, 従来みられなかつた新しい構造式を特徴とする。すなわちAZTは従来の2環系抗生物質とは異なり, 単一のβ-ラクタム環からなる全く新しい概念の抗生物質で, グラム陽性菌及び嫌気性菌には抗菌力は弱いが, 緑膿菌, 大腸菌, プロテウス, セラチア等グラム陰性菌に対しては強力な抗菌力を示し, 各種β-ラクタマーゼ及びデヒドロペプチダーゼに対しては極めて安定である1)。
    本剤の構造式を図1に示す。
    今回われわれはAZTの女性性器組織内濃度, 骨盤死腔液中濃度及び静脈血清中濃度を測定し基礎的検討を行うと共に, 産婦人科領域感染症患者6例に本剤を投与し,その臨床効果及び副作用, 検査値異常の有無について検討を行つたのでその結果を報告する。
  • 多田 克彦, 栄 勝美, 安藤 正明, 本郷 基弘, 清水 礼子, 高知 利勝
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3666-3673
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年のβ-Lactam系抗生物質の開発は目ざましいものがあり, 広く臨床で使用されているが, Pseudomonas aeruginosaを初めとするブドウ糖非発酵菌に対する抗菌力は, いまだ不十分で, β-Lactamaseに対する安定性にも問題が残されている1)。
    Aztreonam (AZT) はL-Threonineから全合成された新しいMonobactam系抗生物質で, Fig. 1に示す構造式を有し, 2環系β-Lactam抗生物質に共通して存在する5員環あるいは6員環の代りに, 単環のN1位にスルホン酸基が置換されたもので, これがβ-Lactam環を活性化する。従つてSerratia marcescens, Enterobacter, P. aeruginosaを含むグラム陰性桿菌及びグラム陰性球菌に対し, 強い抗菌力を示すと共に, グラム陰性菌が産生する各種β-Lactamaseに対して極めて安定である2)。
    産婦人科領域での感染症に抗生剤を使用する場合, その選択の指標として, in vitro抗菌力の有用性もさることながら, 抗生剤の体内動態, 特に性器組織内への移行性の検討も極めて有用である。
    今回,著者は本剤の子宮及び子宮付属器への移行性について検討したので, その成績について報告する。
  • 岡田 悦子, 平林 光司
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3674-3682
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT) は, 新しく開発された単環系β-Lactam抗生物質である。本剤はMonobactam系に属し, Fig. 1に示すような構造式を有している。
    Monobactam系はβ-Lactam環のN1位がスルホン酸塩に置換されたもので, 従来の2環系のPenicillin骨格あるいはCephalosporin骨格とは異なり, 別のカテゴリーに分類されるものである。
    本剤は,Pseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性桿菌及びグラム陰性球菌に対し強い抗菌力を示すと共に, グラム陰性菌が産生する各種β-Lactamaseに対して極めて安定であるという特長を有する。特に, Serratia marcescens, Enterobacter, P. aeruginosaに対しては従来のPenicillin系, Cephalosporin系抗生物質に比べより強い抗菌力を有し, in vivoでもin vitroに優る生体内効果が認められている1, 2)。
    今回, 我々は婦人性器各組織内及び骨盤死腔滲出液へのAZTの移行を検討すると共に, 産婦人科領域における感染症19例に本剤を投与し, その臨床的効果を検討したので, ここにその結果を報告する。
  • 渡辺 秀明, 片淵 秀樹, 梅津 純也, 薬師寺 道明, 畑瀬 哲郎, 加藤 俊
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3683-3686
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌を代表とする産婦人科悪性腫瘍治療中に発症する重要な合併症として尿路感染症, 子宮溜膿腫等があげられる。特に高年齢者及びその進行症例, 再発症例等に対しては, 放射線療法を中心として種々の制癌剤化学療法が行われており, 強力な化学療法剤の開発につれ今までほとんど効果が認められなかつた子宮頸癌進行症例に対しても効果が認められつつある。これら放射線療法や化学療法を受けている免疫能の低下した宿主に感染症が発症した場合, 早期発見と強力な抗生物質の投与を行わねばならない。
    今回我々は日本スクイブ社から提供を受けたAztreonam (AZT, SQ26, 776) を子宮溜膿腫, 尿路感染症の症例に対し使う機会を得たのでその有効性及び安全性につき報告する。
    本薬剤は1980年米国スクイブ社において開発された分子量435.44で図1に示すような化学構造を持つ新しいタイプの単環系β-ラクタム抗生物質である。本薬剤はβ-ラクタマーゼに非常に安定なβ-ラクタム単環を持ちグラム陰性菌である緑膿菌, 大腸菌, プロテウス, エンテロバクター, セラチア, シトロバクター等に対し強い抗菌力がある。しかしながらグラム陽性菌及び嫌気性菌に対しては抗菌力が弱いと言われている。
  • 山尾 裕道, 宮川 勇生, 谷山 圭一, 永井 公洋, 河野 恭悟, 仙台 美智枝, 森 憲正
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3687-3693
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    この十数年間に多くの優れた抗生物質が開発された。なかでもCephalosporin系抗生物質の開発はめざましい進歩を遂げたが, グラム陰性菌, 殊に緑膿菌に対する抗菌力は不十分とされ, 又, β-Lactamaseによる加水分解に対する安定性にも問題が残されている。一方, Aminoglycoside系抗生物質は, グラム陰性菌に対して高度の抗菌力を示すが, 腎や聴覚への副作用のため, First choiceとしての臨床応用に躊躇せざるを得なかつた。
    1980年, 米国スクイブ社で開発されたAztreonam (SQ26, 776, AZT) はFig. 1に示すとおり, Monobactam (単環β-Lactam) 系に属する新しいタイプの抗生物質でLactam環のN1位がスルホン酸基に置換されたもので他のβ-Lactam剤とは別のカテゴリーに分類される1~4)。AZTはグラム陰性菌が産生する各種のβ-Lactamase及びDehydropeptidaseに対して極めて安定で, Pseudomonas aeruginosaをはじめとするグラム陰性桿菌及び球菌に対し強い抗菌力を有していることが報告されている1, 5~9)。又, 各種グラム陰性桿菌によるマウス実験感染症に対してin vitroにおける抗菌力に優る生体効果が認められること, L-Threonineからの全化学合成品のためアレルギー反応の発現がほとんどなく安全性の高いことが知られている1)。
    今度, 産婦人科領域の感染症へのAZTの治療効率の良い臨床応用を目的として, その血中動態や女性骨盤内臓器への移行などの基礎的検討を行つたので報告する。
  • 森 明人, 山田 栄一郎, 原口 裕之, 上田 哲平, 永田 行博
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3695-3699
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (SQ26,776, AZT) は米国スクイブ社が開発した新しい単環系β-ラクタム抗生物質である。β-ラクタム系抗生物質は現在Penam, Oxapename, Cephem, Oxacephem, Carbacephem, Penem, Carbapenem及びMonobactamの8系統のものが知られている。Monobactam系抗生物質は単一β-ラクタム環を母核とするもので, 自然界では植物寄生の好気性グラム陰性桿菌が産生するが1, 2), 1981年, SYKESらはL-Threonineから合成した3-Aminomonobactamic acidを母核としたこの系統の物質の合成に成功した3)。同年, BREUERらは3-Aminomonobactamic acidにCeftazidimeの側鎖をっけたAZTが安定で, β-ラクタマーゼに分解されず, 優れた抗菌活性を持つことを示し4), 1982年SYKESらは, AZTの抗菌活性について, 好気性グラム陰性菌に対する強い抗菌力を示すことを報告した5)。
    今回, 我々は日本スクイブ社からAZTの提供を受け, 少数例ではあるが産婦人科領域における感染症に使用する機会を得たのでその成績を報告する。
  • 伊集院 秀明
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3700-3703
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科感染症の起炎菌は, グラム陰性桿菌が優位を占めるようになり, 嫌気性菌の増加が特徴的である。
    今回, 単環系β-ラクタム抗生物質であるAztreonam (AZT) を用いて, 産婦人科領域における感染症への有用性を検討した。
    なお, 起炎菌の分離・固定, MICの測定は東京総合臨床検査センター研究部に依頼した。
  • 高村 慎一
    1985 年 38 巻 12 号 p. 3704-3710
    発行日: 1985/12/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (AZT) は1980年, 米国スクイブ社で開発された新しい単環系β-ラクタム抗生物質であり, 各種β-ラクタマーゼ及びデヒドロペプチダーゼに対して極めて安定である。In vitro試験においては各種グラム陰性菌 (大腸菌, プロテウス, エンテロバクター, シトロバクター, セラチア及び緑膿菌など) に対して強い抗菌力を示すが, グラム陽性菌及び嫌気性菌に対しては抗菌力が弱いという特徴がある。又, 各種グラム陰性桿菌によるマウスの実験的感染においてはin vitroの抗菌力を上回る効果が認められている。本剤は全化学合成品であり, 水, メタノールに溶け難く, アセトニトリル, ヘキサン及びエーテルにはほとんど溶けない。その化学構造は図1に示すとおりである。又, 本剤を静脈内に投与した場合の半減期は1.63~1.85時間であり, ほとんど代謝を受けず未変化のまま尿中に排泄され, 尿中回収率は24時間で60~70%である。又, 一般毒性, 生殖, 動物実験などの結果からは高い安全性を有することが認められている。更に全化学合成品のためかアレルギー反応の発現はほとんど認められていない。今回, 我々は日本スクイブ株式会社からAZTの提供を受け, その臨床応用性を検討する目的で骨盤死腔液への薬剤の移行及び母児間において臍帯血, 羊水中への移行を検討した。又, 臨床症例に対する投与を行つたので, その成績を報告する。
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