The Japanese Journal of Antibiotics
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38 巻, 6 号
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  • 久木田 淳, 野波 英一郎, 占部 治邦, 高橋 久, 荒田 次郎, 山口 淳子, 緒方 克己, 藤田 恵一, 三田 圭子, 加賀美 潔, ...
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1423-1467
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発された経口AmpicillinのProdrugであるLenampicmin (LAPC, KBT-1585) の浅在性化膿性疾患に対する有効性, 安全性並びに有用性を検討するため, 本剤1日量750~1,500mg力価の経口投与による臨床試験を行い, 併せて基礎的検討として, 本剤の人皮膚組織への移行性をしらべた。
    1. 人皮膚組織への移行性は, 手術予定の皮膚疾患患者11例について, 病巣部摘出の2~3時間前にLAPC250mg力価又は500mg力価を単回投与し皮膚組織内濃度と血清中濃度と比較した。結果は250mg投与の場合, 血清中では1.28~3.32μg/ml, 皮膚組織内では0.13~0.82μg/g, 500mg投与の場合血清中では2.23~10.05μg/ml, 皮膚組織内では0.45~1.34μg/gであった。
    2. 浅在性化膿性疾患の発症機序と治療効果が近縁と考えられる6群に分類し検討した。解析対象183例に対する臨床効果は有効率79.2%で, 中でも2群で85.7%, 3群で88.9%, 4群で96.4%と高い有効率を示した。又, 臨床効果, 安全性などを勘案した有用性評価では, 全体の有用率は77.6%で, 特に3群が88.9%, 4群96.4%と高い有用率を示した。
    3. LAPCの菌種別有効率は単独感染の場合Staphylococcus aureusが74.6%, Stahylococcus epidermidisが76.3%, その他のグラム陽性球菌が100%, 嫌気性菌が87.5%であつた。混合感染では84.6%の有効率を示した。なお全菌種での有効率は76.0%であつた。
    4. 副作用は193例中13例 (14件) にみられ, 副作用発生頻度は7.3%であつた。内訳はアレルギー症状が5件, 消化器症状が8件, 口臭感が1件であつた。臨床検査値の異常変動は5例 (6件) あつたが, いずれも軽度で薬剤との関係は不明であつた。
  • 大村 光, 秋月 弘道, 高井 宏, 吉田 広, 阿部 裕哉, 佐々木 次郎, 後藤 潤, 西山 和彦, 椎木 一雄, 池嶋 一兆, 道 健 ...
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1468-1508
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. 新しく開発された経口用AmpicillinのプロドラッグLenampicillin (LAPC) について口腔外科領域感染症109例に対し, その臨床効果につき検討を行つたところ, 脱落症例7例を除き, 点数判定では著効20例, 有効63例, 無効13例, 有効率87.3%, 主治医の主観的判定では著効21例, 有効67例, やや有効10例, 無効4例,有効率86.3%といずれも良好な成績が得られた。
    2. 本研究において効果判定をなし得た102例中73例につき非解放膿瘍から穿刺にて膿を採取し, そのうち65例から1ol株の菌を分離同定した。感染の傾向はほとんどが好気性グラム陽性球菌と嫌気性菌による複数菌感染であり, 特にα-Streptococcusの関与する症例が複数菌感染55例中48例にみられた。
    3. LAPCの検出菌に対するMICは, グラム陽性球菌に対して0.39μg/ml以下, 又, 一部低感受性菌を除いたグラム陰性菌に対して3.13μg/ml以下と強い抗菌力を示し, Cephalexinに比べ2~7管, Amoxiclllinに比べ1管優れていた。
    4. 副作用は109例中, 6例 (55%) に下痢3件を含む消化器系症状計8件が認められたが, 投薬中止に至つたものも含め重篤なものはなかつた。
    5. 臨床検査値の異常は, 投与前後に測定のなされた76例中3例 (3.9%) に認められたが, それぞれの変動値については特記するほどのものではなかつた。
  • 圓谷 博, 渡辺 岩雄, 高橋 正泰, 遠藤 辰一郎
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1509-1515
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aspoxicillin (ASPC) は新しく開発された半合成ペニシリン剤で, グラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して広い抗菌スペクトラムを有し, 優れた抗菌作用を示すと言われている。教室では外科的感染症に対する化学療法に関する検討を行つてきたが, その一環として今回著者らは乳癌術後の予防的化学療法の意義について検討を加えた。乳癌症例に対して定型的乳房切断術を施行した11例を対象に, ASPCを術前投与することにより乳腺, 皮膚, 癌組織及びリンパ腺への本剤の移行性について検討し, 更に術後創部皮下に挿入したドレーンから分別採取した創内浸出液中への薬剤移行に関し経時的に観察し検討したので報告する。
  • HIROTSUGU YOSHIDA, ISAO MAEZAWA, KAZUE UENO, KUNIMOTO WATANABE, MAKOTO ...
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1516-1528
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aspoxicillin (ASPC), a semisynthetic penicillin has a broad spectrum of antibacterial activities against Gram-positive and Gram-negative anaerobic bacteria. Its in vitro antibacterial activity was less than those of cefoxitin against Peptostreptococcus and Veilonella, but was significantly high against Bacteroides fragilis, one of the most clinically important anaerobe. The therapeutic and/or protective effect of ASPC in experimental subcutaneous abscess or experimental intraabdominal mixed infection due to β-lactamase producing B. fragilis and non-producing Escherichia coli were much stronger than those of ticarcillin.
    In order to account the superiority of ASPC in vivo, the effects of ASPC and other β-lactams on B. fragilis were compared and the results were analyzed in relation to their in vitro bactericidal activities, stability against the β-lactamase, binding properties with penicillin-binding proteins and pharmacokinetic properties. Interestingly, administration of ASPC did not increase the bacterial counts of Clostridium difficile in caecal contents, but piperacillin, ticalcillin, carbenicillin, ampicillin and cefotaxime increased the counts.
  • 宍戸 春美, 松本 慶蔵, 持永 俊一
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1529-1532
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ペニシリン系抗生剤とアミノ配糖体系抗生剤との併用効果についての研究は, 緑膿菌に対するCarbenicillinとGentamicin (GM) との相乗作用が証明されて以来, 多くの報告があり, この2種類の系統の抗生剤間には, 程度の差はあつても, 相乗効果が認められるとする報告が大部分である。Mezlocillin (MZPC) とSisomicin (SISO) との組合せでは, SCHEER1) による肺炎桿菌感染マウスにおけるin vivo相乗作用の証明以外には, 明確な報告はなかつた。そこで, 今回私共は, 臨床的に病原性の明らかな緑膿菌と大腸菌の各1菌株について, チェッカーボード希釈法と薬剤作用後の経時的生菌数測定 (殺菌曲線) を用いて, 両薬剤のin vitro相乗効果を検討したので報告する。
  • 山本 朝子, 長濱 文雄, 磯部 宏, 高木 浩, 中野 郁夫, 下村 寿太郎, 木村 清延, 菊地 弘毅, 与沢 宏一, 佐々木 信博, ...
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1533-1551
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    アミノ配糖体系抗生剤は緑膿菌他グラム陰性菌, ブドウ球菌他グラム陽性球菌に対して優れた抗菌力を示し, 各種の感染症治療に対する有用性は高く評価されてきた。しかして本剤の使用法は筋注法だけが許されているのではあるが, 血液疾患や悪性腫瘍等の重症な基礎疾患のある感染症患者の治療時や, 疼痛その他の理由で筋注が至難と考えられる場合には点滴静注法が使用されているのが実態で, 欧米ではすでに本剤の静脈内注射はより普遍的である12~15)。
    Sisomicin (SISO) はM. J. WEINSTEINらが発見したMicromonospora inyoensisから産生されるFig. 1の構造式を持つたアミノ配糖体系抗生剤1, 2) で, Gentamicin (GM) 同様, グラム陰性菌から陽性菌まで幅広い抗菌スペクトラムを持ち3), 従来のアミノ配糖体系抗生剤に比べて, より短時間で殺菌的に作用し4), 特にin vivoで優れた抗菌力を示し3, 5), その聴器並びに腎毒性についてはGMとほぼ同等もしくはやや弱いと評価されている6, 7)。本剤のヒトへの筋注時の血中濃度は注射後30~60分でピークに達し, 以後速やかに低下し, 6~8時間後にはほとんど血中から消失する。排泄は腎排泄型であつて投与後6~8時間までに投与量の60%以上が排泄される8~10)。
    又, 健康成人を対象とし, 30~120分間をかけての本剤点滴静注時の血中濃度及び尿中排泄を, 同量筋注時と比較検討した成績では, 点滴静注時の血中濃度ピーク値は点滴時間に依存し, そのパターン及び薬動力学の主な係数には大差はないと報告されている11)。
    今回, 我々は昭和58年5月~昭和59年2月の間に, 呼吸器感染症患者を対象に道内12施設協同で本剤の点滴静注法による臨床的有効性, 安全性及び有用性, 更にはその経時的血中濃度推移について検討したのでここに報告し大方の御批判を仰ぎたい。
  • KAZUO TAMURA, MASASHI SEITA, RYUICHI IWAKIRI, TOSHIAKI AMAMOTO
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1552-1556
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    SISO in doses of 1.0 to 1.8mg/kg was administered by a 30-minute intravenous infusion every 12 hours to 10 patients with infections, 9 of whom had underlying diseases including malignant diseases, diabetes mellitus, and diabetes insipidus with indwelling FOLLEY catheter. The serum concentration of SISO was around 6.75 & mu;g/ml in the end of infusion, and less than 1.0 & mu;g/ml at 8 to 12 hours after infusion. SISO was given to the patients as a single agent for at least 3 to 5 days and all patients experienced an excellent to good response clinically, and causative organisms which showed a minimal inhibitory concentration of less than 1.56 & mu;g/ml disappeared after the treatment associated with clinical improvement. There were no untoward effects noted in this study.
  • 高橋 淳, 宍戸 春美, 松本 慶蔵
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1557-1565
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Micronomicin (以下MCRと略記する) は, 臨床上広く使用されている抗緑膿菌性アミノ配糖体剤の一つであり1-3), Gentamicin (GM) と同様な抗菌スペクトラムを有すると共に動物実験における毒性がGM, Dibekacin (DKB) より低いと報告されている4)。従来からアミノ配糖体剤は筋注投与にて用いられているが, 重篤な基礎疾患を有する症例, 特に出血傾向や羸痩を有する患者の場合の多くは筋注が不能又は危険 (皮下出血, 硬結など) であり, 静脈内投与が必要とされる。この際には, 副作用を考慮し血中濃度の急激な上昇を回避するため, 点滴静注法が適している。又, 呼吸器感染症に対してアミノ配糖体剤を投与する場合には, 点滴静注法による喀疾のドレナージ効果が期待できるため, 筋注法よりも点滴静注法が望ましい5)。
    そこで今回, 私共は, 最初に, 健康成人男子志願者にMCRを点滴静注した場合の安全性と体内動態について検討を加え, 次いで, 数例の臨床例にMCRの点滴静注法を施行し, その血中濃度, 安全性, 有効性を検討し, MCRの点滴静注法が臨床的に有用であると認められたので報告する。
  • 八板 朗, 金森 弘明, 谷浦 博之, 増尾 光樹, 中村 輝久
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1566-1570
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胆道感染症に対しては, 想定される起炎菌に抗菌力があり, しかも胆汁移行の良好な抗生物質を選択すべきであることは言うまでもない。他方, 胆道感染症では肝・腎機能障害を伴っていることが少なくないため, 肝, 腎に対し毒性の低い合成ペニシリン剤やセフェム剤が使用されることが多い。
    われわれはセフェム系抗生物質のうちで胆汁移行が比較的良好と言われているCefotiam 1) を用いて, 本剤の胆汁及び胆嚢組織への移行性について臨床的検討を行い, 若干の知見を得たので報告する。
  • 西代 博之, 橋本 伊久雄, 三上 二郎, 前田 憲一, 吉本 正典, 中村 孝, 畚野 剛, 沢田 康夫, 中西 昌美
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1571-1586
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    外科領域の感染症のうち, 術後感染症は特に重要な問題であり, 各種の抗生剤が自由に選択使用できる今日, 各種抗生剤が予防的に投与されているが, その使用基準は未だ確立されてはいない現状である。特に腹部外科領域においては, 消化管内の常在菌の汚染が加わり, 術後感染症起炎菌は多種多様にわたっている。近年, 高齢者の手術, 悪性腫瘍の拡大根治手術などが多く行われ, 患者の条件により, 重篤な術後感染症の発生も少なくない状態である1-6)。
    十二指腸潰瘍穿孔, 穿孔性虫垂炎, 腸管嵌頓による腸管壊死などの腸閉塞症においては, 腸管内容の腹腔内漏出があり, 種々の程度の腹膜炎を合併しているが, これらの細菌感染症を有する汚染手術においては, 術後排膿及び病巣からの滲出液を排除するために腹腔内にドレーンを挿入する。胃切除術, 胆石症手術等の準無菌手術においても, 全例ではないが, ドレーンを挿入することが多い。このドレーンから排出される膿汁あるいは滲出液中の抗生剤濃度を経時的に測定し, 抗生剤の排出動態を検索し得れば, 感染予防あるいは術後感染症の治療に対して極めて有意義であろう。更に炎症の悪化ないし軽快に伴っての抗生剤動態を比較検討し, 合せて無菌手術後の滲出液中抗生剤動態との比較ができ得れば一層意義あるものと言えよう。
    しかし, かかる際のドレーンからの排出膿汁ないし滲出液の量は必ずしも多くはなく, 通常のCup法又はAgar well法によっては, 検体の量が少なく測定不能のことが多い。そこで著者らは微量な検体でも測定可能な方法として, 滅菌Paper disc使用の試料採取によるPaper disc bioassay法を試みた7)。本研究では汚染及び準無菌手術の術後ドレーンからの排出膿汁又は滲出液中の抗生剤濃度の検索結果について報告し, 乳癌手術等の無菌手術後の滲出液中濃度との比較資料とする。
  • 経年的推移に関する検討第2報
    西家 綾子, 出口 浩一, 横田 のぞみ, 池上 亮祐, 小田 清次, 田中 節子, 深山 成美, 佐藤 慎一, 福本 寅雄, 松本 好弘, ...
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1587-1602
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    著者らは1981年に, 1978-1980年に検討した各種臨床分離株の薬剤感受性に関する経年的推移に関する成績を本誌において, 第1報として報告をし1), Staphylococcus aureusのCephem antibiotics (CEPs) 耐性菌, Citrobacter freundii, Enterobacter spp., Serratia marcescens, Proteus spp.(Indole positive), そしてPseudomonas aeruginosaのAminoglycosides (AGs) 耐性菌の増加傾向を指摘した。
    私たちは, 1981年以降も引き続き臨床分離株の薬剤感受性に関する経年的推移に関する検討を続け, この度, 1981-1983年の3力年間に検討した成績をまとめた。
    今回の検討を開始した1981年は, いわゆるNew CEPsが登場した年である。1981年にはCefotaxime (CTX), Ceftizoxime (CZX), Cefoperazone (CPZ), Latamoxef (LMOX) が, 1982年にはCefmenoxime (CMX) が薬価収載された。そして, これらに, 経口のCephalosporin剤であるCefaclor, Cefadroxil, Cefroxadineが加わり, Penicillins (PCs) もMezlocillinが登場してきた時期である。従って, MICを測定した薬剤は, β-Lactam系, 特にNew CEPsを重点に選定した。
    今回の成績では, S. aureusのCEPs耐性株の顕在化と増加傾向, いわゆる染色体支配のβ-Lactamaseを産生する腸内細菌科のGram-negative rods (GNR) であるC. freundii, Enterobacter spp., S. marcescens, Proteus spp.(Indole positive) のNew CEPs耐性株の増加傾向, そしてAGs耐性株の著しい増加を認めた。
    以下に, 今回の成績を報告するが, 検討菌種, 薬剤が多いために, 今回は第2報として, S. aureus, Streptococcus pyogenes, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, そしてProteus mirabilisについて報告し, 残りのC. freundii, Enterobacter spp., S. marcescens, Proteus vulgaris, そしてP. aeruginosaについては, 第3報として, 次回に報告したい。
  • 経年的推移に関する検討第3報
    西家 綾子, 出口 浩一, 横田 のぞみ, 池上 亮祐, 田中 節子, 小田 清次, 深山 成美, 佐藤 慎一, 福本 寅雄, 松本 好弘, ...
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1603-1618
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    著者らは, 本テーマの第2報を本誌 (38 (6): 1587-1602) において報告し, そこで採り上げた菌種は, Staphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, そしてProteus mirabilisの5菌種だった。今回は, 残りの菌種, すなわち, Citrobacter freundii, Enterobacter spp., Serratia marcescens, Proteus vugaris, そしてPseudomonas aeruginosaに関する成績を報告する。
    第2報の巻頭でも述べたように, 今回報告する菌種のうち, C. freundii, Enterobacter spp., S. marcescensそしてP. vulgarisのいわゆるNew cephems耐性株の増加傾向, Aminoglycosides (AGs)耐性株の著しい増加を認めた。しかしP. aeruginosaは, Penicillins (PCs), Cephem antibiotics (CEPs), AGs共に, 一定の耐性率を保持していたが, 一部の薬剤(Cefoperazone (CPZ), Gentamicin (GM)) を除く大部分の薬剤の経年的変化がみられず, 耐性株の出現率に停滞傾向がみられた。 以下にこれらを報告する。
  • 山田 一正, 小林 政英, 平野 正美, 奥村 雅男, 大野 竜三, 吉川 敏, 白川 茂, 御供 泰治
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1619-1624
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 急性白血病の治療は, 多剤併用療法の導入と共に著しい進歩をとげ, その治療成績も次第に向上してきているが, 中でも成人急性非リンパ性白血病(ANLL) においては, Enocitabine, Daunorubicin, 6-Mercaptopurine, Prednisolone併用療法の確立と共に, 初回寛解率も80%近くに達している1)。しかしながら, Total cell killの理念に基づく強力な化学療法の結果, 著しい骨髄抑制がもたらされ, 多くの症例で易感染状態や, 出血傾向が出現する傾向にある。強力な抗生物質療法をはじめとする感染症対策2)や, 血小板輸注等の補助療法が白血病の治療を成功させるための重要なFactorともなっているのが現状である。
    白血病をはじめとして, 造血器疾患患者における感染症は, その多くが基礎疾患のために好中球の高度減少状態にあったり, 免疫能や宿主抵抗力が低下した症例が多く, 日和見感染症をはじめとする弱毒菌感染症や, 重症難治性感染症がよくみられる。
    今回, 我々は造血器疾患患者における種々の重症感染症に対し, Cephamycin系の新しい抗生物質であるCefminox (CMNX, MT-141) の臨床効果, 細菌学的効果, 安全性並びに有用性について検討する機会を得たので報告する。
  • 増田 彰夫, 竹村 潔, 森本 哲也, 榊 寿右, 堀 浩
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1625-1637
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    脳神経外科領域において, 感染が生じると言うことは, とりもなおさず死をも含めた重篤な合併症へ発展, 進行することを意味している。特に, 術後脳での感染症が生じ, 思わしくない結果になるようなことがあれば, われわれ脳神経外科医にとって, いかなることにも変え難い苦痛である。従って, 手術器具の完全な滅菌や術中の無菌操作は勿論のことであるが, 術後にも感染予防の目的で適切な抗生剤の使用は当然許されるべきことであろう.
    又, 脳神経外科的疾患の特性から, 例えば重症頭部外傷や脳出血などのように, 術前術後を問わず, 半身麻痺や意識障害, 嚥下障害などが継続的に存在し, 脳以外の領域 (例えば肺や尿路系において) で容易に感染を起すことがある。 これらの感染症に対する適切な治療も又, 脳神経外科領域における重要な術後管理の1つであろう。
    今回, われわれは脳神経外科領域における術後感染予防にCefoxitin (CFX, 商品名: マーキシン注射用) を使用し, 良好な成績を得た。更に術後慢性期の患者で, 肺・尿路系に感染を起した症例に対しても, 本剤を使用し, 非常に良好な成績を得たので報告する。
  • 石川 重二郎, 中谷 葆, 二ノ丸 真也, 佐々木 孝夫, 小勝負 知明, 松本 行雄
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1638-1642
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    呼吸器感染症, 特に気道内細菌性感染症を扱う場合, 抗生物質の気道内動態を知ることは重要である。今回我々は, 呼吸器感染症 (慢性細気管支炎, 慢性気管支炎, 肺気腫, 気管支拡張症, 気管支肺炎) に, 新しいセファロスポリン系抗生物質であり, β-Lactamaseに強い抵抗性を示すとされているCefmenoxime (CMX) を投与し, 血中濃度, 喀痰中濃度を測定し, CMXの体内動態を検討し, 又, 臨床的効果を検討し, 若干の文献的考察を加えて報告する。
  • 高橋 長一郎, 飯澤 肇, 亀山 仁一, 塚本 長, 瀬尾 伸夫, 八木 聡, 片桐 茂, 石山 秀一, 星川 匡, 原 隆宏
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1643-1647
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    消化器外科領域では, 特に消化管を扱う性質上, 常に術後膿瘍や腹膜炎などの術後感染症の危険性を有している。特に吻合部における微小膿瘍などは縫合不全の直接的な原因にもなり得る。又, 術後は腹腔や胸腔に滲出液が貯留し術後感染を起しやすくなる。従つて, 切除断端, すなわち, 吻合部あるいは縫合部への抗生剤の移行性の良否は手術成績を左右する重要な問題である。そこで我々は, 代表的なセフェム系いわゆる第3世代の抗生剤であるCefmenoxime (CMX) の組織及び滲出液への移行を検討した。
  • 阪上 洋, 和志田 裕人, 津ケ谷 正行, 平尾 憲昭, 岩瀬 豊
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1648-1653
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefmenoxime (CMX) は武田薬品中央研究所で開発されたいわゆる第3世代のセフェム系抗生物質である。本剤は既存のセフェム系抗生物質が抗菌力を示さない菌種, あるいは耐性菌に対しても抗菌力を有し, 特にSerratia marcescens, インドール陽性Proteus, Citrobacter freundii, Enterobacter cloacaeなどの菌にも強い抗菌力を有している1)。
    われわれは先にCMXの基礎的検討として腎機能と血中濃度, 尿中排泄の関係について, 更に臨床的検討成績をも加えて報告した2)。
    今回, 更に基礎的検討として腎臓, 膀胱壁, 前立腺組織などの組織内移行について薬動力学的に検討を行つたので, その成績について報告する。
  • 術後感染予防と胸水中移行について
    冨木 経三, 堤 正夫, 石原 重樹, 石川 創二
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1654-1660
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    胸部外科領域の手術は, 術後いつたん感染を生ずると膿胸, 気管支瘻等となり, 極めて重篤でしかも難治性であることが多い。従つて, これらの術後感染症を防ぐために抗生剤の予防的投与が行われている。
    近年, セフェム系抗生物質は病原菌に対する抗菌力, 抗菌スペクトルの拡大をめざして開発が進められており, 臨床的にも有用性が広く検討されている。
    今回, 検討を加えたセフォペラゾン (CPZ) は, グラム陽性菌からグラム陰性菌にわたる広い抗菌スペクトルと強い抗菌力を有しており, 特に消毒剤に抵抗性のあるブドウ糖非発酵菌Pseudomonas aeruginosa, Pseudomonas cepaciaなどにも強い抗菌力を有している1, 2)。
    これら病原菌に対する術後感染予防対策として薬物の胸水中移行について知ることは, 非常に有効であると考えられる。しかし, セフェム系抗生物質の胸水中移行についてはあまり検討されていないため3~7), 今回, 我々はCPZの開胸手術後の血清中濃度及び胸水中濃度について検討を加えると共に, 術後感染予防の有用性についても臨床的検討を加えたので報告する。
  • 市村 格, 藤田 興一, 平井 好三, 今泉 宗久, 秋山 清次, 高橋 隆, 近藤 達平, 内田 達男, 阿部 稔雄
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1661-1670
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 数多くのセフェム系抗生剤が次々と開発されてきている。Ceftizoxime (CZX) は本邦で開発された新しいセフェム系抗生剤で, 分子式はC13H12N5O5S2Naで, 7位の側鎖にメトキシイミノ基を持ち, 3位に側鎖のない構造の物質である。又, CZXは従来のセフェム系抗生剤に比較してグラム陰性菌, 特に大腸菌, 肺炎桿菌, インフルエンザ菌などに強い抗菌力を持つており1, 2), 呼吸器感染症の治療にも期待されている。
    一方, 臨床の場では感染症に対する薬剤の効果を予測する指標として, 従来から起炎菌に対する感受性に加えて血清中の濃度が重視されてきたが, 最近ではより正確に薬剤の効果を予測しようとして, 薬剤の体内動態, 特に標的臓器における組織内濃度が注目されるようになつてきている。とりわけ, 胸部外科領域においては呼吸器感染症の治療が重要な問題であり, 抗生剤の肺組織内移行に興味がもたれている。しかし, CZXに関する肺組織内移行の詳細な報告は数少ない。そこで, 今回, われわれはCZXの体内動態, 特に肺の正常及び病巣部組織内移行を測定し, 開胸手術患老の術後感染予防に対する有用性を検討したので報告する。
  • 遠藤 博志, 大塚 薫, 宮城 武篤, 山城 豊
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1671-1679
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗生剤の腎組織内への移行に関する報告は少なく, 易感染性である罹患腎への薬剤移行性を検討することは, 感染症発生時に化学療法剤を使用する上で, 重要且つ有意義なことと考えられる。
    今回, 我々はいわゆる第3世代セフェム系抗生剤Ceftizoxime (以下CZXと略す) の腎組織内への移行性を検討し, 若干の知見を得たのでその成績を報告する。
  • 加川 瑞夫, 朝日 茂樹
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1680-1684
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    開頭手術後にみられる感染症の多くは, 術中の注意深い管理によつて避けられるものである。しかしながら, 無菌的な環境を人為的につくることは, 無菌室を除けば不可能に近い。従つて, 現時点では, 開頭手術は何らかの理由で, 有菌状態で手術操作が行われると仮定して進められる。この意味合いから術直後から, 抗生物質が中枢神経系感染症の予防のために投与されることが常識となつている。この場合, 選択される抗生物質の条件としては, Broad spectrumであること, 殺菌力が強いこと, 毒性が少ないこと, 更に髄液移行が良好であることなどが必要とされる。
    抗生物質の髄液移行性に関しては, Cefotiam (CTM) やCephacetrile1), Fosfomycin2), Cefoperazone (CPZ) 3), Cefotaxime (CTX) 4)などについての報告がみられる。これらの報告のうち特に注目されるものは, クモ膜下出血後に髄液移行性が高いこと1, 3), 第3世代と言われるセフェム系の抗生物質なかでもCTXは髄膜炎時には, 極めて優れた髄液移行性を示すこと4)があげられている。
    そこで, 今回, 著者らは脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血の症例を中心に, 術後1~2gのCTXを投与し, 持続脳室ドレナージから経時的に髄液を採取し, CTXの髄液移行性について調べ, その有効性を検索したので報告する。
  • 松尾 清光, 植手 鉄男
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1685-1692
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児の各種感染症においてインフルエンザ菌は重要な役割を演じる1, 2)。約95%の小児が5才までに一度はインフルエンザ菌の感染を受けると言われている3)。1963年にインフルエンザ菌性髄膜炎治療にアンピシリンの有用性が認められ, 第1選択剤として使用されてきた4-7)。しかし1973年にアンピシリンによるインフルエンザ菌性髄膜炎治療の失敗が報じられた8-16)。その後世界各地においてアンピシリン耐性を示すインフルエンザ菌株が現れ問題となつている17-64)。
    本研究において, わが国における1983年のアンピシリン, ピペラシリンへのインフルエンザ菌の耐性の度合を吟味すると共に, 他の抗生物質, 特にいわゆる第3世代セフェム系抗生剤, テトラサイクリン系抗生剤, クロラムフェニコール, エリスロマイシンへの感受性を検討した。
  • 高井 明
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1693-1702
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    T-2588はFig. 1に示す構造式を有する新しく開発された経口用のエステル型セフェム系抗生物質で, 経口投与によつて腸管から速やかに吸収され, エステラーゼにより加水分解されてT-2525となり薬効を示す。T-2525はグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対し広範囲な抗菌スペクトルを有し, 強い抗菌力を示す1-4)。
    今回, 本剤の免疫学的特性, すなわち, 免疫原性, 他のβ-ラクタム抗生物質及びT-2588関連化合物との免疫学的交差性並びにヒト血液を用いた試験管内直接クームス陽性化能について検討したので, その結果を報告する。
  • Febrile Morbidity Fever Indexを中心として
    田部井 徹, 石浦 哲, 松田 静治, 柏倉 高, 坂元 正一, 木下 勝之, 高見澤 裕吉, 内藤 正文, 名古 良輔, 大内 広子, 黒 ...
    1985 年 38 巻 6 号 p. 1703-1711
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    手術後に発生する感染を防止することは, 術後患者の管理にとつて臨床上, 極めて重要である。現在, 各種の抗生物質が術後感染防止を目的として使用されているが, 抗生物質の有効性あるいは適切な投与方法に関する検討は余りなされていない。以上の事実は, 術後感染の存在や程度を客観的に立証することが困難であり, 投与した抗生物質の感染防止効果をいかに評価すべきかの指標が確立されていないためと思われる。
    産婦人科領域における腹式あるいは腟式単純子宮全摘出術は, 腟内常在菌が術後の腟断端部から骨盤死腔に侵入して感染を起す危険を有するために準無菌手術に属する。従つて本手術は抗生物質投与による術後感染防止の適応となる。本手術の適応は, 子宮筋腫のことが多く, 更に, 患者の年令は45才前後であり, 手術術式, 時間あるいは出血量などの術後感染に影響すると思われる諸因子が比較的均一であるために, 本手術は抗生物質の感染防止効果を比較検討しやすい利点を有する。
    今回, 我々は首都圏13施設の協力を得て, 術後感染防止に関する研究会を組織して, 本手術を施行した患者に対する抗生物質の感染防止効果を評価する指標について検討を加え若干の知見を得たので報告する。
  • 1985 年 38 巻 6 号 p. 1712-1715
    発行日: 1985/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
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