The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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38 巻, 8 号
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  • 真下 啓明
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2011-2025
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, β-ラクタム系抗生物質 (ペニシリン系及びセファロスポリン系) が数多く開発され感染症の治療に貢献している。しかし一方では, 耐性菌も年々増加しており, 感染症治療上の大きな問題となつている。これらの耐性菌の耐性機構としては, 細菌の産生するβ-Lactamase (ペニシリン又はセファロスポリン分解酵素) によってβ-ラクタム剤が不活化されることが主な原因として知られている1)。
  • 垣内 佐十志, 田川 新生, 小坂 義種, 為田 靱彦
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2026-2032
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年の医学の著しい進歩は, 疾病の予後の改善という大きな恩恵をもたらしてきている。その反面, 疾病の予後の延長に伴い, 経過中に種々の合併症を併発するなど, 病態が複雑化することも少なくない。特に, 重篤な基礎疾患を有する症例における感染症の合併は, 基礎疾患の増悪をもたらしたり, 感染症自体が重篤化することもあり, 抗生剤の適切な使用が必要となる。しかも, 抗生剤の主要代謝排泄経路である臓器の障害が存在する場合には, その体内動態に変化が生じるものと予測され, 使用に際し一層の慎重さが要求される。
    DETTLIら1, 2)の報告以来, 腎疾患例での抗生剤の体内動態はよく検討がなされ, 内因性クレアチニン・クリァランス (Ccr.) が投与量, 投与間隔決定上のパラメーターとして使用されている。一方, 重症肝疾患例における感染の合併が肝不全, 消化管出血などを引起すことが知られ, 肝障害時の抗生剤の使用頻度の増加と共に, その使用に際し慎重な配慮がなされるようになってきているが, いまだ不十分な点が多いのが現状である。
    Cefbperazonesodium(CPZ)は, 高度の胆汁中排泄と長い血中半減期を有する抗生剤で, 肝胆道系感染症に極めて有用性が高いとされるが, その特徴ある体内動態は肝機能障害により時には著しく変化すると考えられる。本稿では, 肝障害時におけるCPZの体内動態を検討し, 更に各種肝疾患及び肝機能検査との関連性について言及したい。
  • 沖 彰, 鈴木 文直, 小林 淳晃, 酒井 洋, 三好 和夫, 崎村 恭也, 遠山 信幸, 関根 里江子, 倉根 理一, 平形 征, 佐藤 ...
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2033-2044
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年の抗生剤の目覚しい開発に伴い, 胆道感染症に対する化学療法も様々に検討され, 抗菌力と共に, 抗生剤の胆汁中移行, 胆嚢組織内移行について数多くの報告がみられる。胆道感染症は閉塞性黄疸など, 胆汁うつ滞に起因することがほとんどであり, 又, 何らかの肝障害を伴うことが少なくない。しかし, 抗生剤の胆汁中移行に関する多くの報告は, 術後外胆汁瘻, 又は留置中の経皮経肝的肝内胆管ドレナージ (PTCD) を使用し, 黄疸度や肝機能検査値が正常に復した後に検討されており, 高度な黄疸を呈す症例や肝機能障害例における検討は少ない。
    我々は, 1976年以来PTC針内を通過する直径0. 45mmのガイドワイヤにを考案し, PTCから直接, 連続的に肝内胆管に挿管する方法を工夫し, 経皮経肝的肝内胆管挿管法(Percutaneous transhepatic cholangialcatheterization以下PTCCと略)として施行してきた1)。本法によれば, 拡張胆管はもとより, 拡張軽度な症例にも胆管挿管が行え, 連続的胆汁採取が可能である。
    今回, 我々はグラム陽性菌及びPseudomonas aeruginosaを含むグラム陰性菌に対し強い抗菌力を有し2), 又, 胆汁中移行が極めて優れていると言われる3) いわゆる第III世代セフェム系抗生剤Cefoperazone (以下CPZ) を用い, 我々の方法が正常域から重症までの様々な黄疸, 及び肝機能障害を有する症例に幅広く適応されることを応用して黄疸重症度, 肝機能障害度とCPZの胆汁中移行度, 血中濃度, 尿中排泄の関連, 及びPTCC直後とPTCC留置中の胆汁中移行の変化について検討を加え, 若干の知見を得たので報告する。
  • 陳 威伸, 福永 完吾, 國井 勝昭, 関谷 雅博, 張 南薫, 大東 茂樹
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2045-2056
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Fosfomycin (FOM) はStreptomyces fradiae, Streptomyces viridochromogenes, Streptomyces wedmorensis, Streptomyces odainensisが産生する抗生物質で, 他に類例のない, 極めてユニークな構造を有する。現在は合成により製造され, 静注用製剤としてナトリウム塩が, 又, 経口用製剤としてカルシウム塩が使用されている。
    本剤は広域の抗菌スペクトルを有し, 作用機作が独特で, 殺菌的に作用する。他剤との間に交叉耐性がなく多剤耐性菌にも抗菌力を発揮する。又, 臓器移行性が良く, 抗原性は認められていないなどの特徴を持つている1)。本剤は各科領域において広く使用され, その臨床的有用性は認められている2)。
    今回, 我々はFOMの子宮各部組織への移行性の検討並びに産婦人科的感染症に対する臨床的検討を行い, 以下の結果を得たので報告する。
  • 戸次 英一, 橋本 伊久雄, 三上 二郎, 吉本 正典, 中村 孝, 沢田 康夫, 中西 昌美
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2057-2067
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗菌化学療法剤の進歩発達, 普及により, 感染症の様相も大きく変りつつある。現在主として使用されている抗生剤は, 幅広い抗菌スペクトラムと比較的大量使用が可能な安全性の点からPenicillin, Cephalosporinを主とするβ-Lactam系抗生剤である。特に最近におけるCephem系抗生剤の発達は目ざましく, より幅広い抗菌性と強力な抗菌力及び耐性菌の産生するβ-Lactamaseに対する抵抗性を有する新しい抗生剤が多数開発されてきている。このβ-Lactam系抗生剤は有用性の高い薬剤であるが, 副作用として時に重篤な症状を呈するアレルギー作用があり, 投与前に少量の薬剤にて皮内反応テストを施行することが一般に行われている1虜。しかし救急患者等にてテストを施行する時間的余裕がなく, 緊急に抗生剤投与を必要とする場合もまれではなく, 又, アレルギー体質にてほとんどの薬剤で皮内反応が陽性となり, 有効な薬剤の選択に困難をきたすこともまれではない。 このためには, よりアレルギー反応の少ない安全性の高い薬剤が必要となつてくる。
    Fosfomycin (FOMと略す) は分子量が小さく, 極めて簡単な構造式を有し, グラム陽性菌から陰性菌に及ぶ幅広い抗菌力を有し, 作用は殺菌的で, 化学的に安定であり, IgG, IgE抗体産生がなく抗原性は認められていない特異な抗生剤である。従つてアレルギー体質の患者にも安全に投与可能な薬剤と言える5-9)。
    一方, 抗菌性化学療法を施行する際に, 起炎菌及び薬剤感受性による薬剤の選択, 投与量, 投与経路, 投与間隔の検討は常に留意せねばならない基本的問題点である。これらを検討する要因として, 起炎菌の感受性及び人体の血中濃度, 尿中排泄の動態が検索されてきていた。しかし化学療法において最も必要であるのは血中濃度ではなく, 目的とする炎症病巣内抗生剤濃度, 特にその動態であろう。これを人体内において検索することは非常に困難であり, 特に動態についてはほとんど不可能に近い。一般には動物実験により人体組織内濃度を推定しているのが現状である。
    外科系の各科において, 治療上種々の組織を切除する機会がある. この機会を利用して抗生剤の組織内濃度を測定する試みは, すでに各種の薬剤について行われている。しかし, その例数は必ずしも多くはなく, 経時的に検索することは不可能で, 多数の測定値の集積から動態を類推する他はない。勿論, 薬剤の種類, 投与方法, 投与量によつて差異があり, 臨床的に感染病巣を切除する機会はごく限られており, これらの研究の個々が貴重なものと言える10-38)。
    著者らは静注用Fosfbmycin sodium (FOM-Na) を若干の感染症患者の治療に使用し, その一部の患者の手術時にFOM-Na 2gを静注して, 手術中に採取した組織内及び体液中のFOM濃度を測定して, 若干の興味ある成績を得たので報告する。
  • 木村 昭彦, 川上 晃, 田中 地平, 浦部 大策, 小野 栄一郎, 田中 永一郎, 加藤 栄司, 大滝 悦生, 広瀬 富士子, 山下 文雄 ...
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2068-2086
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aminoglycoside系抗生剤(AGs)の本邦における投与方法は筋注が主で, 薬剤によっては経口か外用薬で用いられている。しかし小児に筋注で投与することは大腿四頭筋拘縮をきたす恐れがあり, 静注での投与が望ましいが, AGsの中で小児での点滴静注が許可されている薬剤はTobramycin(TOB)だけである。
    そこで, 私たちは前述のTOB, Gentamicin(GM), Amikacinなどと共に重症細菌感染症やOpportunistic infectionに使用されているDibekacin(DKB)を小児の24例に30分間又は1時間点滴静注で投与し, 血清中濃度, 尿中濃度及び回収率を測定し, 薬動力学的解析を行うと共に, 慢性気管支炎, 肺炎, 肺化膿症, 尿路感染症に本剤を点滴静注で投与し, その有効性と安全性の検討を行つた。
  • 出口 英一, 下村 洋, 駿河 敬次郎, 木村 紘一郎, 新井 健男, 宮野 武, 小川 富雄, 大谷 俊樹
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2087-2093
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我々は従来から乳児期黄疸疾患の一つである先天性胆道閉鎖症 (以下CBAと略) 児における種々の抗生物質の胆汁中移行に関する測定結果を報告してきた1効。今回, グラム陽性菌, グラム陰性菌及び嫌気性菌に幅広いスペクトラムを有するCePhamycin系抗生物質Cefmetazole (以下CMZと略) を用いて, 先天性閉塞性茂疸児症例におけるCMZの肝組織への移行に関する検討を行い, 興味ある結果を得たので報告する。
  • 梶川 博司, 亀岡 博, 本多 正人, 岩尾 典夫, 水谷 修太郎, 三好 進
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2094-2107
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    第1報1)のあと約1カ年間, Cefaclor (CCL, ケフラール®, 塩野義製薬) の臨床効果と安全性について検討を続け, 第1報と大差のないことを第2報2)として報告したが, CCL投与既往のある症例における効果については, 対象が少数例であるために, 明らかな結論を得ることができなかつた。今回, 第2報と同じ方法で治験した結果を報告し, 再度CCL投与既往の有無による本剤効果の差を検討した。
  • 伊藤 章, 浅田 裕子, 丸田 壱郎, 小川 浩司, 松崎 道男
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2108-2118
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Amikacin (AMK) はKanamycin (KM) Aから化学的に誘導されたAminoglycoside系抗生物質(AGs)でGentamicin (GM) を始めとする他のAGs耐性菌に対しても有効であるとされている。
    従来AGsの投与法は, 筋肉内注射による投与が主として行われていたが, 白血病などの出血傾向を有する症例において筋肉内注射では投与しにくいことが多い。又, 白血病などでは, 白血病自体による宿主免疫能の低下に加えて, 多剤併用寛解導入療法によつてもたらされる造血能の低下, とりわけ好中球の減少は感染必発の条件であり種々の感染症が生じやすい。
    今回, 我々は白血病を基礎疾患とする症例の感染症を中心として, 萬有製薬 (株) から提供を受けたAMKの点滴静注を行い, 臨床的検討及び本剤による安全性について検討した。
  • 術前投与の意義を中心として
    宮川 富三雄, 田中 房子, 渡辺 弘, 月川 賢, 窪田 倭
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2119-2123
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年抗生物質の発達はめざましく, 特にβ-Lactamaseに安定なセフェム系抗生剤の開発には目を見張るものがあり, 今日広く臨床に使用され, 優れた臨床効果を挙げている。
    Cefmenoxime (CMX, Bestcall®) はいわゆる第3世代の注射用セフェム系抗生剤で, グラム陽性菌, 陰性菌に対して広い抗菌スペクトルを有し, 従来の抗生剤では効果の弱かつたIndole陽性のProteus, Serratia, Enterobacter, Citrobacter, Bacteroidesなどにまで抗菌スペクトルが拡大されたことが特徴である1)。
    今回, 我々はこのCMXを胆石症患者に術前投与して, 血中, 胆汁中及び胆嚢組織内の濃度を測定し, その組織移行性について検討すると共に, 抗生剤の術前投与の意義について, 組織内濃度の面から評価を試み, 若干の知見を得たのでここに報告する。
  • 高村 慎一
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2124-2128
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefminox (CMNX, MT-141) は本邦において開発された注射用セファマイシン系の抗生物質であり, 各種好気性及び嫌気性グラム陽性菌, グラム陰性菌 (緑膿菌を除く) に広く抗菌スペクトルを有する。特にグラム陰性菌のうちBacteroides fragilis及びCampylobacter jejuniに優れた抗菌力を示す。本剤はFig. 1のような構造式を持ち, 水に溶けやすく, メタノール及びアルコールには溶けにくい。人の血中半減期は約2時間30分であり, 又, 吸収性は良く, 体内でほとんど代謝されることなく約90%が尿中へ排出される。又, 毒性は低いことが認められている1)。今回, 我々はCMNXの提供を受け, その臨床応用性を検討する目的で, 内性器及び骨盤死腔への移行, 又, 母児間において臍帯血及び羊水中への移行を検討した。
  • 金丸 昭久, 大久保 滉, 堀内 篤, 藤竹 英樹, 長谷川 廣文, 柴田 弘俊, 川越 裕也, 永井 清保, 安永 幸二郎, 平田 充彦, ...
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2129-2138
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 急性白血病や悪性リンパ腫などの造血器疾患に対する化学療法の進歩はめざましく, その寛解率は明らかに向上し, 生存期間の延長も認められるようになつてきた。しかし, 寛解導入期には疾患自体や強力な化学療法により感染防御機能は著明に減弱しているため, 重篤な感染症が合併しやすく, その治療も容易ではない。従つてこの時期に合併する感染症の治療が, 寛解率の向上や生存期間の延長に対して大きな影響を与えている。
    今回, われわれ阪神造血器疾患感染症研究グループでは, 造血器疾患に合併した重症感染症に対し, Aminogly-coside系抗生物質であるMicronomicin (以下MCRと略す) の点滴静注投与を試みたのでその結果を報告する。
  • 水谷 弘, 久保田 勝, 酒井 龍雄
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2139-2144
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    破裂脳動脈瘤急性直達手術の予後を左右する因子として, 脳血管攣縮がある。この攣縮誘発物質がクモ膜下腔の血腫内に存在することは周知のとおりである1, 2)。この血腫内容物を除去する目的で従来から, 脳動脈瘤直達手術と同時に脳槽ドレナージを行つていたが, 1週間以上の長期ドレナージ群に脳血管攣縮の発生頻度の減少をみた。しかし, 1週間以上の長期ドレナージ脳槽留置は, 髄膜炎の発生頻度が高く, この感染予防の目的で抗生物質Cefotiam (CTM) の髄液中移行を検討した。
    正常脳組織における抗生物質の血液髄液関門の移行は, 抗生物質の化学的組成により, 制限されており, 十分な髄液中濃度を得るに至つていない。これまで, 髄液中への抗生物質の移行に関して, 髄膜炎, 頭部外傷, 脳腫瘍, 水頭症など3, 4) の報告があるが, 本症例のように, 同一疾患における比較検討は少ない。特にクモ膜下出血後に発生しやすい, 脳血管攣縮とCTM髄液中への動態について検討したので報告する。
  • 藤田 公生, 杉本 雅幸, 阿部 定則, 佐山 孝, 村山 猛男, 原 徹
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2145-2148
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症患者20例について経尿道的前立腺切除 (TUR-P) 術前にCefotetan 1gを静注し, 血中及び前立腺組織内濃度の薬物動態を追求した。両老とも高い濃度が得られ, 半減期も血中濃度が298分, 前立腺が250分と長かつた。血中濃度の半減期が正常人について報告されている値よりも長いのは, Ccrが平均で46.6ml/minと低下しているためと考えられた。
  • 藤田 公生, 杉本 雅幸, 阿部 定則, 佐山 孝, 村山 猛男, 原 徹
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2149-2154
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    経尿道的前立腺切除 (TUR-P) 後の尿路感染症はいろいろ難しい問題を含んでいる。尿道にカテーテルを長期間留置すると感染は必発とも言われ, 又, TUR-Pを受ける患者のなかには術前から感染を有しているものも多いためである。このため, 化学療法を行うべきかどうか, どんな薬剤をいつまで続けるか, TUR-P術後の化学療法に関して明確な方針は確立されていない。われわれもこの問題についていろいろ検討を行いつつあるが1), 今回はTUR-Pの5日後に抗菌剤を点滴静注から経口投与に切替えたあとで, いつまで抗菌剤を投与したらよいかという問題を検討した。
  • GEORGE H. MCCRACKEN, KOICHIRO SATO, KURT OLSEN, LEAH WEINTRUB, TZOU-YI ...
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2155-2162
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    The pharmacokinetics and bacteriological efficacy of nafcillin (NFPC), vancomycin (VCM), amikacin (AMK) and rifampicin (RFP) alone and in VCM combinations were evaluated in the experimental rabbit meningitis caused by methicillin-susceptible Staphylococcus aureus (MSSA) or methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA). The mean concentrations of NFPC, VCM, AMK and RFP in cerebrospinal fluid (CSF) with MSSA meningitis exceeded the minimal bactericidal concentrations of MSSA during 8 hours therapy period. The mean CSF penetration rates of the 4 drugs during therapy were from 1% to 26% which are comparable to those observed in humans with meningitis. The median CSF bactericidal titers of RFP, VCM plus RFP, AMK, VCM plus AMK regimens were larger than 1: 8 during therapy of MSSA meningitis study. In experimental MRSA meningitis, RFP and VCM plus RFP achieved titers greater than 1: 16 during therapy and at 24 hours. No statistically significant reduction in the CSF bacterial colony count was obtained with any of the antibiotic regimens in MSSA meningitis. By contrast, in 8 hours MRSA meningitis model, significant reductions in the number of MRSA were observed in animals treated for 8 hours with VCM plus RFP (P & lt;0.01), RFP (P & lt;0.05), and NFPC plus RFP (P & lt;0.01).
  • 片山 紀美代, 出口 浩一, 黒坂 公生, 佐藤 久美子, 堀 誠, 杉田 守正, 篠原 紀子, 横田 のぞみ, 池上 亮祐, 保科 定頼, ...
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2163-2170
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    著者らは1981年以降, 臨床材料から分離されるStaphylococcus aureusの多剤耐性, 主としてファージ型, β-Lactamase活性に関する検討を続けてきた1~3)。
    この度, 1984年1月~1984年8月の第3次試験の際に検討したMIC測定結果から3), Penicillins (PCs), Cephemantibiotics (CEPs), Aminoglycosides (AGs), Minocycline (MINO), Fosfomycin (FOM) のいずれか複数の薬剤に耐性を示した多剤耐性株64株を選び, PCs 2剤, CEPs 13剤, AGs 4剤, そしてMINO及びFOMの合計21薬剤のMICを測定した結果, 感受性 (MIC) 分布に差のある成績だつた。
    検討した薬剤のうち, 比較的良好な感受性を示したのはCephalothin (CET), Cefamandole (CMD), Cefmetazole (CMZ), Amikacin (AMK), MINO, FOMであるが, CETは12.5%, FOMは10.9%が>100μg/ml (106CFU/ml又はそれと同等の接種菌量) のMICを示す高度耐性株が存在していた。又, MINOは≤6.25μg/mlで100%の株の発育を阻止したが, 比較的感受性が低下していると考えられる株 (3.13~6.25μg/ml) が3株 (4.7%) にみられた。
    以下に, これらの成績を報告する。
  • 辻 明良, 菅野 治重, 横田 英子, 山口 恵三, 村田 健二郎, 佐藤 喜代美, 竹森 紘一, 尾崎 京子, 富沢 真澄, 屋形 稔, ...
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2171-2184
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 各種の抗生物質の臨床的応用の拡大及び高齢者, その他のいわゆるCompromised hostの増加など宿主側要因の変貌にともなつて, 感染症の起炎菌はOpportunistic pathogenを含めて多様化の傾向が指摘されている。細菌感染症のこのような変化に対して, 多くの有力な抗生物質が開発され, セフェム系薬剤では広い抗菌スペクトルを持ち, 特にグラム陰性菌に対する抗菌力が増強された新しい薬剤が近年続々と臨床の場に登場している。一般に抗生物質は臨床的応用が拡大するに伴い薬剤耐性菌の出現等の問題が生じるため, 一定の間隔で相当数の臨床分離株を採取し, 薬剤感受性の推移を調査することは, 抗菌剤の適切な選択のため有益であると考えられる。
    今回, 我々は新しい7種のセフェム系薬剤の適応菌種のうち, 起炎菌として重要なStreptococcus pyogenes, Haemophilus influenzae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus属, Serratia marcescens, Pseudomonas aeruginosaについて, 各薬剤のin vitro抗菌力を比較し, 各菌種に対する各薬剤の抗菌力の特徴を検討した。
  • その1. 感受性分布
    餅田 親子, 土田 洋美, 古谷 博, 田崎 寛, 内田 博, 入 久巳, 猪狩 淳, 阿部 和夫, 前原 敬悟, 山口 恵三, 横松 守, ...
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2185-2229
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    昭和54年から開始した本研究では, 尿路感染症患者からの検出頻度が比較的高いEscherichia coli, klebsiella spp., Proteus spp. 及びCitrobacter spp. の4菌種に限定して収集し, 感受性を調査してきた1~5)。昭和57年度調査では収集する菌株を限定せず, 尿路感染症患者から分離され, 主治医により起炎菌と判定されたあらゆる菌種に調査対象を拡大した。従つて尿路感染症患者分離菌の正確な検出頻度, 検出率の変動及び感受性推移など, 経年的により一層明確な検討を加えられると考えた。更に, 現在繁用されている経口抗菌剤はあるものは市販されてから10数年を経過し耐性菌も多くなつている。尿路感染症の主起炎菌であるE, coli及びKlebsiella spp.に対する抗菌力がある種の薬剤は, 著しく低下してきている。治療の必要な患者を前にしてどの薬剤を投与するかを決定するために現在の尿路感染症の主起炎菌とその検出頻度, そして薬剤感受性をできるだけ正確に把握することは極めて重要である。
    本報においては, 昭和58年度の尿路感染症における各種の菌種の検出頻度及び感受性分布について若干の知見を得たのでここに報告する。
  • その2. 患者背景
    餅田 親子, 土田 洋美, 古谷 博, 田崎 寛, 内田 博, 入 久巳, 猪狩 淳, 阿部 和夫, 前原 敬悟, 山口 恵三, 横松 守, ...
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2230-2242
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    著者らは, 尿路感染症患者から分離されたEscherichia coli, Klebsiella spp., Proteus spp. 及びCitrobacterspp. の4菌種に限定して, その患者背景との関連を調べ報告してきた1~6)。
    昭和57年から尿路感染症患者分離菌のすべての菌種を調査対象とし患者背景との関連を検討してきた。尿路感染症の起炎菌は現在グラム陰性桿菌が主体であると言われている。これらグラム陰性桿菌類に極めて優れた抗菌力を有するが, グラム陽性菌には比較的弱い抗菌力を示すいわゆる第3世代セフェム剤が昭和55年から臨床で使用されるようになり, 今後はペニシリン系抗生剤に代つてこれらセフェム系抗生剤が主流になつてくると考えられている。尿路感染症患者の起炎菌分布が, 又, 感受性が今後どのように変動していくか注目されるところである。
    著者らは, 全国の共同研究施設から尿路感染症患者分離菌を集め, 一定の調査用紙で患者背景を調べ分析し, 若干の興味ある結果を得たのでここに報告する。
  • その3.感受性の推移
    餅田 親子, 土田 洋美, 古谷 博, 田崎 寛, 内田 博, 入 久巳, 猪狩 淳, 阿部 和夫, 前原 敬悟, 山口 恵三, 横松 守, ...
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2243-2312
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1年のある一定期間に, 一定の研究施設から尿路感染症患者分離菌を収集しその感受性を調べることは極めて興味深く, 又, 意義あるものと考えられる。著者らは, 過去4年間にわたり尿路感染症患老分離菌Escherichia coli, Klebsiella spp., Proteus spp.及びCitrobacter spp. などの各種抗菌・抗生剤に対する感受性推移を調べてきた。尿路感染症も他の外科及び呼吸器感染症と同様に年々複雑な様相を呈してきており, 患者から分離される菌の実態を常に正確に把握しておくことはますます重要になつてきている。病態の相違によつて起炎菌の種類・発現頻度が異なることはもちろんであるが, 性別・年齢別など種々の要因によつても影響される。病態を正確に分類することは困難であるので, ここでは便宜上, 単純性尿路感染症か複雑性尿路感染症かを区分し, それぞれから分離されたE. coli, Klebsiella spp.,Citrobacter spp.,Proteus mirabilis,更に複雑性尿路感染症患者から分離されたPseudomonas aeruginosa及びSerratia marcescernsについて感受性を経年的に調べ, ここに若干の知見を得たので報告する。
  • 朝本 明弘, 池川 明, 中西 彰, 岡田 悦子, 土光 文夫, 綱脇 現, 佐藤 春美, 近藤 英明, 小坂井 秀宣, 岡田 弘二, 白藤 ...
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2313-2337
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は, 住友化学工業 (株) 及び山之内製薬 (株) において, 共同開発された新しいCephalosporin系抗生物質であり, Fig.1に示したとおり化学構造上7位側鎖にHydroxymethylpyridine基を, 3位側鎖にはTetrazole環を有している1~4)。
    本剤はStaphylococcus aureusを始めグラム陽性菌及びグラム陰性菌に幅広く抗菌力を有し, 特にPseudomonas属に対しては, 優れた抗菌力を示すこと, 血中半減期が長いことが特徴とされている。
    本剤の臨床的有用性はすでに, 内科, 泌尿器科領域を始め, 他の各科領域で1,400余例の症例を対象に, 又, 多数の基礎的検討がなされている5)。
    今回, 我々は本剤の産婦人科領域における感染症に対する有用性を評価する目的で全国規模での研究会を組織し, 一定の試験方法に基づいて基礎的, 臨床的検討を行つたのでその成績を報告する。
  • 石川 睦男, 清水 哲也
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2338-2341
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM, SM-1652) は住友化学工業 (株) と山之内製薬 (株) で共同開発された新規のCephalosPorin剤である。cPMは分子量634.62で, Fig.1に示す構造式である。本剤はグラム陽性菌, グラム陰性菌に対し広範な拡菌作用を持ち, グラム陽性菌に対してはCefazolin (CEZ) と同等, グラム陰性菌に対してはCEZの10~100倍の抗菌力を持つ1)。従来のCephalosporin系抗生物質が無効な嫌気性菌のBacteroidesEnterobacterなどに対して, 強い抗菌力を持つている。又, Biologicalに持続的抗菌力を持つ, 半減期の長い特徴を持つている。又, 毒性試験においても, 一般毒性, 腎毒性の低いことが判明している。今回, 本薬剤の産婦人科領域での臨床検討を行つたので, その結果を報告する。
  • 松尾 正城, 後藤 正, 千村 哲朗
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2342-2347
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたセフェム系抗生物質であるCefpiramide (CPM, SM-1652) は化学構造上7位側鎖に Hydroxymethyl-pyridine基を有し, 3位側鎖にTetrazole環を有し, その化学名はSodium (6R, 7R)-7-[(R)-2-(4-hydroxy-6-methylnicotinamido)-2-(p-hydroxyphenyl) acetamido]-3-〔[(1-methyl-1H-tetrazol-5-yl) thio] methyl〕-8-oxo-5-thia-I-azabicyclo [4.2.0] oct-2-ene-2-car-boxylateである(Fig. 1)。
    又, その抗菌スペクトラムは, 広域でグラム陽性菌, グラム陰性菌に対し殺菌的作用を示すが, 特にPseudomonas属に対し優れた抗菌力を呈すると言う1)。
    今回, われわれは本剤の産婦人科領域での感染症に対し使用する機会を得たので, その成績を報告する。
  • 近藤 英明, 野田 克已, 伊藤 邦彦, 早崎 源基, 山田 新尚
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2348-2359
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (SM-1652, CPM)は, 住友化学工業 (株) と山之内製薬 (株) とで共同開発された, セフェム系に属する抗生物質であり, 化学構造上7位側鎖にHydroxymethylpyridine基を有し, 3位側鎖にはTetrazole環を持ち, その構造式はFig. 1に示す。
    本剤はグラム陽性菌にも, グラム陰性菌にも抗菌力を有し, しかもPseudomonas属には優れた抗菌力を持つている。
    又, 本剤はヒトに静脈内投与した場合の血中濃度は既存のセフェム系抗生物質のどれよりも高く生物学的半減期は4~5時間であり, しかも連続投与による蓄積性はみられないという特徴を有する1)。
    われわれは, すでに各種の抗生物質の婦人性器組織内移行について検討を行つてきた2~14)。
    そして, それらの成績が産婦人科領域の各種感染症における薬剤投与量, 投与法を決定するのに重要な指標の1つになると考える。
    今回, われわれはCPMについて検討する機会を得たので婦人性器組織への移行性を検討し, 6例の臨床例に本剤を使用したので, それらの成績について報告する。
  • 大林 太, 二宮 敬宇, 長谷川 幸生
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2360-2366
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (SM-1652, CPM) は住友化学工業 (株) と山之内製薬 (株) により開発された注射用Cephem系抗生物質で, その抗菌スペクトラムは広く, 特にPseudomonas属に対して優れた抗菌力を示す。又, ヒトに静脈内投与した場合の血中濃度は既存のCephem系抗生物質に比べ最も高く, その生物学的半減期は4~5時間と長い。
    本剤の基礎的・臨床的評価は第29回日本化学療法学会西日本支部総会 (昭和56年, 広島) における新薬シンポジウムにおいて検討された1)。その後, 産婦人科領域での研究会が組織され, 本剤についての検討が行われた。著者らは本科領域での基礎的・臨床的検討を行つたので報告する。
  • 舘野 政也, 北川 義彦
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2367-2373
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科骨盤内感染症に関しては, その感染部位の関係から起炎菌の証明が困難な場合が多く, 治療のために有効な抗生物質を選択的に使用することはなかなか困難で, 従つてこれら感染症に対しては, 抗菌スペクトラムの広い抗生物質の使用を余儀なくさせられる。
    今回, 我々は広域スペクトラムを持ち, 血中濃度が4~5時間と持続する胆汁排泄型と言われているCefpiramide (CPMSM-1652) を産婦人科領域で主として骨盤内感染症に使用する機会を得たので, 少数例ではあるが使用成績について検討した結果を報告する。
    CPMはすでに第29回日本化学療法学会西日本支部総会での新薬シンポジウムで各科領域の臨床検討が発表され, グラム陽性菌, グラム陰性菌にも広く抗菌性を持ち, 特にPseudomonas属には有効であり, 又, 臨床的効果も72% (各科領域全例) と有効であつた。このような特徴のあるCPMの構造は図1に示した。
  • 中西 彰, 小坂井 秀宣, 島本 郁子, 新谷 雅史, 一條 元彦, 高山 辰男
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2374-2378
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (SM-1652, CPM) は住友化学工業と山之内製薬とで共同開発中のセフェム系抗生物質でありFig. 1のような構造である。本剤の特徴は, グラム陽性菌にもグラム陰性菌にも抗菌力を有し, しかもPseudomonas属には優れた抗菌力を持つている。又, 本剤はヒトに静脈内投与した場合の血中濃度は既存のセフェム系抗生物質のどれよりも高く, 生物学的半減期は4~5時間であり, しかも連続投与による蓄積性はみられないという特徴を有する。尿中排泄率は20~30%でやや低いが, 胆汁中への移行は優れている。今回我々は本剤について産婦人科領域における体内移行性及び臨床効果につき検討し, いささかの知見を得たのでここに報告する。
  • 岡田 悦子, 平林 光司
    1985 年 38 巻 8 号 p. 2379-2383
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (SM-1652, CPM) は, 住友化業工業 (株) と山之内製薬 (株) で共同開発されたβ-Lactamaseに対し強い抵抗性を有するCephem系抗生物質である。
    本抗生物質は細菌学的試験において, グラム陽性菌及びグラム陰性菌に広い抗菌スペクトラムを有し1), 又, その体内動態においては生物学的半減期が4~5時間と長く, 胆汁中への移行が優れている特色を有している2)。
    今回, 著者らはCPMを試用する機会を得たので産婦人科領域での感染症にこれを投与し, その臨床成績及び血中と組織内濃度に関する知見について報告する。
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