The Japanese Journal of Antibiotics
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38 巻, 9 号
選択された号の論文の36件中1~36を表示しています
  • 林 福勝, 小幡 功, 落合 和彦, 小池 清彦, 今川 信行, 森本 紀, 蜂屋 祥一
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2387-2396
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM) は住友化学工業 (株) と山之内製薬 (株) において新たに共同開発されたδ-Dehydrothiazine環を有する半合成のCephem系の注射用抗生物質である。本剤はCephalosporin Cの誘導体であるが, 7-Amino-cephalosporanic acidの7位側鎖にHydroxy基とMethyl基を有するPyridine環を, 3位側鎖にTetrazole環を有しているのが化学構造上の特徴である (Fig. 1)。
    CPMは静脈内投与により従来のCephem系抗生物質に比べて高い血中濃度が得られ, 生物学的半減期も4~5時間と持続的であり, 体内で代謝されず, 大部分が未変化体のまま尿中に排泄される特性を有する1)。一方, 本剤の抗菌域は広範囲でGram陽性菌及びGram陰性菌, 特にPseudomonas属に対して殺菌的に作用し, しかも各種細菌が産生するβ-Lactamaseに対して安定であると報告されている1)。
    今回, 著者らは山之内製薬からCPMの提供を受け, 婦人科感染症症例に投与し, その臨床有効性及び安全性について検討したので, その成績について報告する。
  • 福田 俊子
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2397-2401
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefpiramide (CPM, SM-1652) は, 住友化学工業 (株) と山之内製薬 (株) とで共同開発中のセフェム系に属する新規抗生物質であり, 化学構造上7位側鎖にHydroxymethylpyridine基を有し, 3位側鎖にはTetrazole環を持ち, グラム陽性菌にもグラム陰性菌にも抗菌力を有し, Pseudomonas属には特に優れた抗菌力を持つていると言われている1~5)。今回産婦人科領域に使用し, 若干の知見を得たのでここに報告する。
  • 堀内 篤, 平山 文也, 柴田 弘俊, 川越 裕也, 永井 清保, 安永 幸二郎, 陰山 克, 米沢 毅, 木谷 照夫, 正岡 徹, 岡本 ...
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2402-2412
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aztreonam (以下AZTと略す) はMonobactam系に属する全化学合成抗生物質である1)。グラム陽性菌あるいは嫌気性菌に対する抗菌力は弱いが, Pseudomonas aeruginosaを含む好気性グラム陰性菌に対しては非常に抗菌力が強く, in vitroの成績では従来のいわゆる第3世代Cephem系抗生物質, 広域ペニシリン, アミノ配糖体などと比較しても同等ないしやや優れた抗菌力を示す2~4)。P. aeruginosaに対してMIC90が12.5μg/ml, Serratia marcescensに対してMIC90が6.3μg/mlであるのを始め, 他の多くの腸内菌に対してMIC90は0.20μg/ml以下である5)。
    臨床効果についても各種感染症に対する効果が検討され, 呼吸器系感染症, 尿路系感染症, 肝・胆道系感染症などに対して, それぞれ66.4%, 62.8%, 73.3%の有効率が得られている6)。
    今回, 我々は血液疾患に合併した感染症に対するAZTの効果を検討したが, 本感染症では顆粒球減少例が多く, 又, 原因菌不明の場合が多い7)。従つて抗生物質の性質として顆粒球減少時や原因菌不明例における有効率の高いものが望ましい。本研究の目的はAZTのこのような場合における効果と副作用を明らかにすることにある。
  • 金沢 宏, 岩松 正, 丸山 行夫
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2413-2416
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    体外循環下開心術は人工物を体内に縫着することも多く, 他の外科手術に比べ無菌的操作を要求される。しかし術中では落下細菌, 創部表在菌, 器具を介する細菌混入の可能性や, 各種留置カテーテルを介する細菌侵入の可能性が考えられ, 術中からの予防的抗生物質の投与の必要性は異存のないところである。近年は術後感染症としてグラム陰性桿菌による創感染, 敗血症の割合が増しており1), これらに対しても有効な抗生物質の投与を行う必要があろう。
    今回, 我々は好気性, 嫌気性のグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対し広範な抗菌スベクトルを有するCeftizoxime (以後CZXと略す) の血清中濃度と心筋移行について検討した。
  • 平 明, 渡辺 晃, 田畑 伝次郎, 小長 英二, 田畑 富士男, 飯田 文良, 秋田 八年, 志村 秀彦, 宇田 英典, 倉山 英生, 市 ...
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2417-2443
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aspoxicillin (ASPC, TA-058),(2S, 5R, 6R)-6-[2R-2-(2R-2-Amino-3-Nmethyl carbamoylpropionamido)-2-(4-hydroxyphenyl)acetamido]-3, 3-dimethyl-7-oxo-4-thia-1-azabicyclo[3. 2. 0]heptane-2-carboxylic acid trihydrateは田辺製薬 (株) において新たに開発された注射用半合成ペニシリン剤で, グラム陽性球菌及びグラム陰性菌に対し幅広い抗菌活性を有している。又, in vitro効果に比べ in vitro効果, 特に実験的感染症に対する効果に優れており, その抗菌作用形式は殺菌的作用とされている1, 2)。
    ASPCについてはすでに多くの基礎的及び臨床的研究が行われ, 第30回日本化学療法学会総会の新薬シンポジウムにおいて検討並びに評価を受け, 術後感染を含む外科領域の種々の感染症にも優れた効果を有することが認められている3)。
    今回, 我々は術後創感染に対するASPCの臨床的効果と安全性を検討するため, すでに臨床上広く応用されているSulbenicillin (SBPC) を対照薬として比較試験を行つたので, その結果を報告する。
  • 中村 弘典, 堀 誠, 杉田 守正, 黒須 義宇, 豊永 義清
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2444-2452
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefaclor (以下CCL) は, グラム陽性菌及びグラム陰性菌に幅広い抗菌スペクトラムを有し, 迅速且つ強力な殺菌作用を発現すること1), 又, Staphylococcus aureus Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae,Proteus mirabilis, Haemophilus influenzae等に対する抗菌力もCephalexin (CEX) 等と比較すると6~8倍増強されていることが2) 主な特徴である。
    一方持続性Cefaclor (S6472) は, 従来の胃溶性CCL40%にpH dependentのCoatingをほどこした腸溶性CCL顆粒60%を配合することにより, 血中濃度を持続させることを目的とした持続性CCL製剤である。本剤は成人用製剤として開発されており, 1日2回投与で各種中等症, 軽症感染症にその有用性が報告されつつある3~5)。
    今回我々は小児科領域, 特に学童においても日常診療に大いに有用と思われるので, 本剤の体内動態並びに臨床効果を検討し, いささかの結果を得たので報告する。
  • Talampicillinを対照とする二重盲検比較試験
    金子 明寛, 成田 秀貴, 原 秀之, 大村 光, 貞森 平樹, 秋月 弘道, 高井 宏, 吉田 広, 阿部 裕哉, 河西 一秀, 佐々木 ...
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2453-2480
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Lenampicillin (LAPC, KBT-1585) は, 鐘紡株式会社薬品研究所において創製され, 同社と鳥居薬品株式会社で開発されたAmpicillin (ABPC) のプロドラッグであり, Fig. 1の構造を有する。従来のABPCのプロドラッグであるPivampicillin, Talampicillin (TAPC), Bacampicillin (BAPC) は, ABPCの2位のカルボキシル基の酸素原子に隣接する炭素原子に酸素原子が直接結合した形のダブルエステルであり, 吸収過程でアルデヒド体を形成するのに対して, LAPCは同位置に炭素原子が結合するという新規な構造を有し, 吸収過程で速やかにABPCとアセトイン1) に代謝され, アルデヒド体を形成しない。本剤のアセトイン等の代謝物は生物界及び食品に広く存在するNatural substanceであるという特徴を有している。
    本剤は体内でABPCとなり, 口腔外科領域の歯性の化膿性疾患において多く検出されるグラム陽性球菌に対し強い抗菌力を持つている。
    今回我々は, 口腔外科領域感染症におけるLAPCの有効性, 安全性並びに有用性を客観的に評価するため, Fig. 2の構造を有し, 抗菌力, 体内動態も似ていると予測されるTAPCを対照薬として二重盲検比較試験を実施したのでその成績を報告する。
  • 斎藤 玲, 中山 一朗, 富沢 磨須美
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2481-2488
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ヒト免疫グロブリンは細菌, ウィルス及び原虫に対し, 幅広い抗体を有しており, 低又は無ガンマグロブリン血症の補充療法はもとより, 重症感染症における抗生剤との併用療法に適応され, 臨床使用において, 感染症の予防並びに治療に効果的に作用すると言われている。ヒト免疫グロブリンの作用としては細菌に対する直接作用はないが, 含有される特殊抗体が細菌と結合して, 生体内で細菌抗体によるオプソニン効果が高められること, すなわち食細胞が細菌をとり込みやすくすること, 又, 特にグラム陰性桿菌の一部などでは, 細菌に抗体が結合して補体を活性化し, その補体が細菌の細胞膜を破壊する免疫溶菌現象がみられることなどから, 重症細菌感染症において抗生剤の効果に限界がある時に, 生体に対する抗体の補給, 非特異的な感染抵抗性の強化をねらつてヒト免疫グロブリン製剤の併用を行うことが治療を有利にすると考えられている1~3)。近年Compromised hostにおける感染症は増加し, 重症, 難治の傾向をとり, 抗生剤の治療に限界が有る場合に, ヒト免疫グロブリン製剤の併用効果を期待しての併用療法が増加している。
    ヒト免疫グロブリン製剤としては, 筋注用製剤をはじめ, 酵素処理製剤, スルホ化処理等の化学修飾による製剤, ポリエチレングリコール処理製剤などの静注用製剤が実用化されている。このうち, ポリエチレングリコール処理のものは非修飾の型で, Intactな免疫グロブリンである。このIntact型の製剤が最近種々検討されている。
    今回, われわれは住友化学工業 (株) と日本トラベノール (株) で共同開発された新規乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤SM-43004)を用いる機会を得た。SM-4300は, コーンの低温エタノール分画5) によつて得られたガンマグロブリン分画をイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理することにより, 大分子の凝集体を除去しており, ペプシンやプラスミンで処理した分屑でなく, 又, スルホ化等の化学修飾を受けていない, すなわちIntact型のヒト免疫グロブリン製剤である。90%以上の7S-IgGからなり,抗補体作用も低い。このSM-4300を用いて内科領域における重症感染症に対する抗生剤との併用効果について検討を行つたので報告する。(なお, SM-4300は住友化学工業 (株) から提供されたものを用いた。)
  • 岡本 勝博, 武部 和夫, 米田 政志, 吉田 秀一郎, 近江 忠尚, 入江 達朗, 中村 光男, 熊坂 義裕
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2489-2495
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    最近抗生物質のめざましい進歩により, 細菌性感染症の治療は比較的容易になつてきた。一方, 白血病などの血液疾患, 悪性新生物, 自己免疫疾患, 糖尿病等生体防御能の低下1), 制癌剤, ステロイドホルモン, 免疫抑制剤等投与時の免疫機能低下あるいは高齢者における生体機能低下時, 緑膿菌, セラチア, ブドウ糖非醗酵グラム陰性桿菌などのいわゆる弱毒菌を起炎菌とする難治性感染症が増加しており, 抗生物質だけの投与では治療困難であることがしばしば認められる2, 3)。このような難治性感染症に抗生剤と静注用免疫グロブリン製剤の併用投与が有効であると言われている。
    従来の静注用免疫グロブリン製剤は, 酵素的処理を加えていたり, スルホ化など化学的修飾を加えているため, Fc活性が低かつたり, Fc回復に時間を要したり, 血中半減期が短いなどの欠点を有していた。この点を解消するために, 出来るだけ天然に近いヒト免疫グロブリン製剤を得る方法が考案されている。すなわち, 補体系を異常活性化させる凝集体を除くため, ポリエチレングリコールを用いたり, イオン交換樹脂 (DEAEセファデックス) で処理したりしている。この後者の方法により得られたグロブリン製剤が, 日本トラベノール株式会社と住友化学工業株式会社の共同開発によるSM-4300である。本剤はコーンの低温エタノール分画をイオン交換樹脂で処理し, 大分子の凝集体を除去し, 90%以上が7S-IgGからなり, 抗体活性もよく保持されている高純度のガンマグロブリン製剤で, 血中半減期も正常で, ヒト体内に存在する免疫グロブリンと同等の効果があると考えられている。
    今回, 著者らはこのSM-4300を使用し, 難治性細菌感染症に対する抗生物質との併用効果について検討を行つたので報告する。
  • 藤巻 博, 辛島 仁, 嶋田 甚五郎, 吉田 真弓, 栗山 哲, 相澤 純雄, 宮原 正
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2496-2502
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗体の感染を防御する上での役割として1. オプソニン化, 2. 殺菌, 3. 細菌性毒素の中和, 4. ウイルスの中和, 5. ウイルス感染細胞の破壊, 並びに6. 病原微生物の上皮や内皮細胞への附着を抑えることなどが明らかにされている。
    又, 免疫不全症に対し免疫補充療法を行うと, 反復感染の頻度が減少することや, 更に重症感染症においては健常な免疫能を有するものでも, 病原に対する抗体が多量に消費されて一過性に免疫不全状態になることも予想される。
    このようなことから, 重症感染症に対し静注用ヒト免疫グロブリンを抗生剤と併用する試みが盛んに行われるようになつてきている。
    著者らも, 今回, 新しく開発された非修飾静注用乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤SM-4300 (住友化学工業 (株), 日本トラペノール (株) の共同開発) を抗生剤療法だけでは臨床効果の得られなかつた重症・難治性感染症4例に併用し, その治療効果, 安全性並びに有用性を検討したので報告する。
  • 藤森 一平, 富井 正邦, 小林 芳夫
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2503-2508
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    細菌, ウイルスなどの病原微生物に対し, ヒト免疫グロブリンが有効であることが示されてきた。その作用機序の主体は, 病原微生物抗原と特異抗体とが結合し, この結果, 抗原のオプソニン化により処理能力が増加することにある。そこで, 特異抗体としては, Intact IgGが必要となる。
    SM-4300は米国トラベノール社ハイランド事業部で開発され, 住友化学工業株式会社と日本トラベノール株式会社により提供された静注用ヒト免疫グロブリンである1)。SM-4300は90%以上が7 S-IgGよりなるIntactガンマグロブリン製剤で, 多種類の細菌及びウイルスに対し抗体活性を有する。
    今回, SM-4300を重篤な感染症症例に使用する機会を得, 臨床的検討を行つたので, その成績を報告する。
  • 岸本 明比古, 鈴木 幹三, 山本 俊幸
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2509-2514
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    各種の重症感染症の治療に際し, ヒト免疫グロブリンは抗生物質との併用において有用性が認められ, 最近では感染症患者の免疫増強という積極的な意味で使用されることが多く, 各種静注用ヒト免疫グロブリンが開発され, すでに広く汎用されている1)。
    SM-4300は, 住友化学工業株式会社と日本トラベノール株式会社の両社共同開発による新規乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤で, 米国トラベノール社ハイランド事業部において開発された静注用ヒト免疫グロブリンである。
    今回, このSM-4300を抗生物質療法に抵抗する高齢者における重症細菌感染症に使用し, その臨床効果及び副作用を検討した。
  • 大久保 滉, 間瀬 勘史, 前原 敬悟, 安永 幸二郎, 上田 良弘, 飯田 夕, 岡本 緩子
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2515-2525
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    乾燥イオン交換樹脂処理による非修飾型のヒト免疫グロブリン製剤であるSM-4300を18例に投与し, その有用性及び副作用について検討した。1例を除きすべて重症の基礎疾患を有している。
    うち除外8例で, 効果判定尉象は10例 (敗血症5例, 呼吸器感染症4例, 肝膿瘍及び髄膜炎がそれぞれ1例。うち1例は肺炎と敗血症との併発) である。
    化学療法はSM-4300併用以前のものを継続しながら, SM-4300を2.5~5g1回又は, 2~3回 (1日1回) 静脈内にゆつくり点滴静注した。敗血症5例中2例, 肺炎4例中3例 (うち1例は両者併発) 及び肝膿瘍と髄膜炎のそれぞれ1例に有効以上の成績が得られ, 有効率60%で有用性のある免疫グロブリン製剤であると考えられた。なお, 本剤によると思われる副作用は1例にも認められなかつた。
  • 原 宏紀, 川西 正泰, 副島 林造, 二木 芳人
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2526-2531
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    SM-4300は住友化学工業株式会社と日本トラベノール株式会社で共同開発された新規静注用ヒト免疫グロブリン製剤である。コーンの低温エタノール分画で得られたガンマグロブリンをイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理して大分子の凝集体を除去したものであり, 従来のグロブリン製剤とは異なり, 変形を受けない自然のガンマグロブリンに近い製剤であると考えられている。そのため抗体活性の低下も認めずその総蛋白の90%以上が7S-IgGであるとされている。又, 本剤の抗補体作用も20単位以下と言われており静注時の安全性も動物実験, 第I相臨床試験から十分に高いものと考えられる1, 2)。
    今回, 我々は昭和57年10月から実施された長崎大学第2内科, 原耕平教授を世話人とする本剤の重症感染症に対する臨床試験計画に参加し, 7例の重症呼吸器感染症及び不明熱の1例, 計8例に本剤を使用し, その有効性及び安全性について検討を行つたので報告する。
  • 能美 一政, 定本 謙一郎, 山木戸 道郎, 高見 俊輔
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2532-2534
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    SM-4300は乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤で, 大分子の凝集体を除いており, ペプシンやプラスミンなどで処理したグロブリン製剤と異なり, Fragmentを含まない。又, スルホ化などの化学修飾を受けておらずIntact IgG (7S-IgG) を90%以上含む。CH50も20u以下であり安全且つ有効な薬剤と思われる。著者らはSM-4300の臨床治験の機会を得たので報告する。
  • 永渕 正法, 澤江 義郎
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2535-2541
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発された静注用ヒト免疫グロブリン製剤であるSM-4300の有用性について, 重症ないし難治性細菌感染症を対象として臨床的検討を行つた。
    九州大学第1内科入院患者の急性骨髄性白血病や多発性骨髄腫の血液疾患のほか, 肺癌, 気管支拡張症などの各種基礎疾患のあるものに合併した肺炎10例, 置換弁心内膜炎1例, 胆嚢炎と心外膜炎の併存例1例, 不明熱1例の計13例に, SM-4300の5g, 1回あるいは2.5g, 3回の投与を, 3日間以上継続している化学療法剤に上のせして行い, その臨床効果を判定した。その結果, 有効4例, やや有効4例, 無効2例, 判定不能3例であり, 有効率は40%であつた。細菌学的には菌減少, 菌残存が各1例認められたものの, 大部分は不明であつた。副作用としては何ら認められず, 臨床検査成績にも本剤によると思われる変動はみられなかつた。そこで難治性細菌感染症に対してSM-4300は有用性があると言える。
  • 中富 昌夫, 照喜名 重順, 親川 富憲, 金城 勇徳
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2542-2546
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 新しい抗生物質の発達はめざましく, 広い抗菌スペクトラムと優れた抗菌力を有する製剤の臨床使用が可能となり, 細菌感染症の化学療法は容易となつてきた。しかし一方, 悪性腫瘍, 慢性腎不全, 膠原病などの重症疾患の場合, 抗癌剤, ステロイド製剤など免疫抑制剤の投与時, 近年増加しつつある高齢者などに惹起される感染症は, いわゆるOpportunistic infectionsの形態を取り, 緑膿菌, 大腸菌, クレプシエラ, ブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌, 真菌あるいは結核菌など, 弱毒のOpportunistic pathogensによる感染症で, その治療にはしばしば困難を感じる現況である。
    ヒト免疫グロブリン1, 2)は, 細菌, ウイルス, 原虫に対して抗体を有しており, 低及び無ガンマグロブリン症及び重症感染症において, 適切な抗生物質との併用で, その有用性が認められている。免疫グロブリン製剤の臨床応用の初期には筋注用製剤が使用されていたが, 注射局所の疼痛, 大量投与が不可能で血中濃度が低いこと, 投与量の約半分が組織内の蛋白分解酵素によつて失活されること, 及び投与部位から血中への移行に時間を要することなどの欠点があり, 静注用製剤の出現が待たれた。しかし, ガンマグロブリン製剤の静注の際に大分子の凝集体によるアナフィラキシー様反応が発現することが報告され, 安全且つ有効な静注用ヒト免疫グロブリンの開発がすすめられた。
    ペプシン処理及びプラスミン処理ヒト免疫グロブリン, スルポ化ヒト免疫グロブリンの各種製剤が開発された1, 2)が, 酵素処理された製剤では静注後の半減期が短く, 且つFc部分の破壊のためオプソニン増強作用や補体の活性化という点では短所となり, スルホ化されたものはFc活性回復に時間を要するなどの欠点があつた。
    これらの欠点を補うために酵素処理などで変形を受けない (Intact) ヒト免疫グロブリンとして, ポリエチレングリコール処理による大分子の凝集体を除去した製品が開発された。
    SM-4300は, 住友化学工業 (株) と日本トラベノール (株) の共同開発による新規乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリンで, 米国トラベノール社ハイランド事業部で開発された静注用ヒト免疫グロブリンである3)。コーンの低温エタノール分画によつて得られたガンマグロブリン画分をイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理し, 大分子の凝集体を除去しており, ペプシンやプラスミンで処理した分屑ではなく, 又, スルポ化などの化学修飾を受けていない。変形を受けない自然の (Intact) ガンマグロブリン製剤で, 総蛋白から添加したヒト血清アルブミンを除去した量の90%以上が7S IgGからなる。本剤の抗補体作用は20単位 (CH50) 以下であり, 理想的で安全な静注用製剤と言われている。
    今回, われわれは, 本剤を重症の基礎疾患を有する2例の肺感染症に使用したので, その成績を報告する。
  • 朝長 昭光, 池辺 璋, 斉藤 厚, 大曲 春次, 田中 光, 谷川 博美, 古賀 宏延, 門田 淳一, 奥野 一裕, 平谷 一人, 山口 ...
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2547-2557
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    SM-43001)は, 米国トラベノール社により開発され, 住友化学工業株式会社と日本トラベノール株式会社により共同開発された乾燥イオン交換樹脂処理免疫グロブリン製剤である。コーンの低温エタノール分画によつて得られたガンマグロブリン画分をイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理することにより, 大分子の凝集体を除去したIntactなガンマグロブリン製剤で, 90%以上が7S-IgGからなり, 抗補体作用は少なく, 安全且つ有効な静注用製剤として期待される。今回私達は, 本剤を臨床応用する機会を得たのでその成績について報告する。
  • 市丸 道人, 池田 柊一
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2559-2563
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    血液疾患に合併する感染症は重症化し, 抗生剤の多剤併用に対しても抵抗する場合が多い。このような重症感染症に, 各種の先天性免疫不全症に用いられて効果をあげている静注用免疫グロブリン製剤を併用すると, 一層の治療効果がみられることが報告されている1~4)。
    著者らは, 今回新しく開発されたIntactな静注用免疫グロブリン製剤SM-4300 (住友化学, 日本トラベノール社製) を使用する機会を得たので, その成績を報告する。
  • 宮の下 昭彦, 永松 一明, 阿部 和男, 佐藤 佳子
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2565-2570
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    古くから使用されている筋注用のヒトγ-グロブリン製剤は痛みのために大量投与することは困難であつた。酵素処理による静注用ヒト免疫グロブリンの開発によつて大量投与が可能になつたが, 酵素処理によるγ-グロブリン製剤はFc活性が弱く, 血中半減期が短いという欠点を有していた。その後, スルホ化処理によるグロブリン-S, ポリエチレングリコール処理によるヴェノグロブリン-IがIntactのγ-グロブリンとして広く使用されるようになつている。
    SM-4300はイオン交換樹脂処理のヒト免疫グロブリン製剤で, 安定剤として添加されたヒト血清アルブミンを除いた量の90%以上が免疫グロブリンG (IgG) である。
    免疫グロブリン製剤は, 無又は低ガンマグロブリン血症の置換療法及び重症感染症においては抗生物質と併用して使用されているが, 重症感染症におけるIgGの効果については議論があり, その効果判定には慎重でなければならない。
    われわれはSM-4300の提供を受け, 小児の細菌感染症及びCommon variable immunodeficiency (CVI) の1例に使用した成績と, in vitroにおけるヒト白血球の食菌作用に及ぼす免疫グロブリン製剤の影響を検討したので合せてここに報告する。
  • 渡辺 章, 鈴木 信寛
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2571-2576
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    SM-4300は米国トラベノール社で開発され, 本邦で日本トラベノール株式会社と住友化学工業株式会社の両社で共同検討されることになつたイオン交換樹脂処理静注用ヒト免疫グロブリン凍結乾燥製剤で, 分子構造に変化を受けないIntactガンマグロプリン製剤である。総蛋白から添加したヒト血清アルブミンを除いた量の90%以上が7S IgGからなり, 本剤の抗補体作用は20単位 (CH50) 以下であり, 理想的で安全且つ有効な静注用製剤と考えられている。
    このたび, 小児感染症患者の治療に本剤を投与する機会を得たのでその臨床成績について報告する。
  • 成田 章, 佐藤 肇, 近岡 秀次郎, 鈴木 博之, 田添 克衛, 小井土 玲子, 中澤 進一, 中澤 進
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2577-2586
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    重症各種感染症に対するヒト免疫グロブリンの治療効果は動物試験並びに人体感染症についての広範な検討によつて認められており, 又, 至適抗生剤との併用の有用性が臨床的に利用されているのが現況である1~6)。最近副作用が少なく有効率の高い各種静注用γ-Globulin製剤の応用によつて上述の臨床効果の面が更に高く評価されるようになつてきた。私等も静注用γ-Globulin製剤の小児重症感染症に対する有効な治療成績の一面について報告してきた4)。今回新しく開発された非修飾型静注用乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤SM-4300を小児重症感染症に使用し, その臨床効果と安全性についての2, 3の検討を行つてみたので以下今日までの概況について報告する。
  • 市橋 治雄, 保科 弘毅, 三国 健一
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2587-2593
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    感染症に対抗する人類のToolとして, ペニシリンに始まる抗生物質の開発は治療及び予後に画期的な変革をもたらした。その後耐性菌の出現, 菌交代症, 嫌気性菌や弱毒菌などによる難治性感染症が注目されるようになり, 感染性疾患は常に新しい問題を提示してきた。抗生物質の作用は感受性菌に対し殺菌的, あるいは静菌的に働くが, 最終的治癒機転は生体側の感染防御能力にかかつており, この機能が低下した免疫不全状態の患者には抗生物質療法だけでは治癒し難いことが多い。このような感染防御機能の低下は先天性免疫不全症だけでなく, 白血病や悪性腫瘍においても認められ, 近年発達してきた各種の抗癌剤はそれ自体が免疫抑制的に働くものが多く, これら疾患における生存期間の延長に伴い感染の反復, 遷延, 重症化が問題となり, これまであまり注目されなかつた弱毒細菌感染やウイルス感染が致命的結果をもたらすようになつた。これら免疫不全状態の細菌やウイルス感染に対して, 抗生物質投与と共に免疫グロブリンや顆粒球輸注など血液製剤の併用が有効な治療手段とされており, ガンマグロブリン製剤の臨床効果は, 抗原抗体反応 (細菌毒素やウイルスに対する中和抗体, 菌体に対するオプソニン抗体) だけでなく, 殺菌過程における直接的オプソニン作用や間接的食作用促進のほか, 抗生剤との併用効果も認められている。
    免疫グロブリン療法は, COHNの低温エタノール分画法によるガンマグロブリン製剤が筋注用として広く使われてきたが, 多量の抗体 (IgG) 投与が望まれる場合に抗補体作用を示すため静注用としては不適当であつた。静注用ガンマグロブリン製剤としては, ヒト免疫グロブリンをペプシン処理あるいはプラスミン処理し, 抗補体作用を低減させたものが登場したが, 完全なかたちのガンマグロブリンではなく5.5Sを主とし, 殊にFc部分の活性は期待されなかつた。その後スルホ化ガンマグロブリン製剤とポリエチレングリコール4000処理により7S-ガンマグロブリンを選択的に分画した製剤が出現し, 血中でほぼ完全なFc活性が得られるとされ, 又, 血中半減期も延長した1, 2)。このたび開発されたSM-4300はCOHNの低温エタノール分画によつて得られたガンマグロブリン画分を, イオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理した抗補体作用の極めて低い自然の構造のヒトガンマグロブリン製剤とされる。著者らはこれを12例の症例に使用する機会を得たので, その成績を報告する。
  • 田吹 和雄, 高木 道生, 西村 忠史, 高島 俊夫
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2594-2602
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    最近の重症, 難治性感染症の発症は, その背景に宿主側の感染防御機構に何らかの破綻がみられている場合が多く, いわゆるComPromised hostでの発症が多い。又, 近年病原性を発揮する起炎微生物にも変化がみられ, 細菌でも従来病原性の乏しいと言われた菌種によつて, 重篤な病態がしばしば惹起されている。このような現況を打開するため, 抗菌力の強化, 抗菌域の拡大を目的に昨今新しい抗生物質が数多く開発されている。しかし, 特に多彩な背景因子を持つCompromised hostでの感染症治療は化学療法だけで治療効果を上げることはなかなか困難で感染防御に関与する因子の中で, 欠損ないし低下のものの補充が化学療法に併用して, しばしば行われている。
    さて, 液性免疫強化の面からヒト免疫グロブリンの投与は従来から試みられてきたが, 静脈内投与可能な製剤であるペプシン処理グロブリンが用いられるようになつてから, 筋注用製剤の使用時にみられる制限条件もなく, 容易に大量投与が可能になつた。ヒト免疫グロブリンによる感染症治療においては, ウイルス感染症に対する有用性は明らかにされているが, 細菌感染症に対する効果の面で, その作用機序は明らかでない点も多い。
    今回, 住友化学工業株式会社と日本トラベノール株式会社により共同開発された乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリンSM-4300は, コーンの低温エタノール分画によつて得られたガンマグロブリン分画をイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理することにより, 凝集体を除去したIntact静注用ヒト免疫グロブリンである。そこで, 今回著者らは, 本剤の基礎的検討と, 細菌感染症における臨床的検討を行う機会を得たのでその成績について述べる。
  • 大滝 悦生, 山下 文雄, 松尾 宏, 長 博雪, 富永 薫, 平田 克彦, 大部 敬三, 永山 清高, 田中 耕一, 石本 耕治, 吉本 ...
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2603-2611
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児期の細菌感染症は近年Cephem系抗生剤を中心とする優れた抗菌製剤の出現も加わつて, 新旧抗菌剤を適切に選択し, 早期に投与することによつてよい治療効果があげられている。
    しかし, 低又は無ガンマグロブリン血症では種々の感染症に罹患した時や感染防止のためにヒト免疫グロブリンの投与が必要であり, 又, 重症感染症や正常な免疫反応を保持しない疾患を基礎に有する者が感染症に罹患した時には抗菌剤による単独治療での奏効は困難な場合があり, その際, ヒト免疫グロブリン製剤がしばしば併用1, 2)されている。
    ヒト免疫グロブリン製剤はまず筋注用が開発されたが, 注射局所の痛みや, 投与部位から血管系への移行に時間を要し, 大量投与は筋注製剤であることから治療目的としては限界があり, 又, 静脈内に投与するとアナフィラキシー様症状を起す。そこで, 静注用ヒト免疫グロブリン製剤の開発が進められ, ペプシン, プラスミン, ポリエチレングリコール処理あるいはスルポ化した静注用ヒト免疫グロブリンが製品化され, いずれの製剤も本邦ではすでに市販されている。
    このたび, 米国トラベノール社ハイランド事業部で開発され, 本邦では住友化学工業株式会社と日本トラベノール株式会社の共同開発によるSM-4300はコーンの低温エタノール分画によつて得られたガンマグロブリン画分をイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理することにより, 大分子の凝集体を除去した変形を受けない自然のガンマグロブリン製剤3)である。
  • 有森 正樹, 池内 駿之
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2612-2616
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    重症感染症にみられる低及び無ガンマグロブリン血症に対して, ヒト免疫グロブリンと抗生物質の併用が効果があることはすでに認められている。又, 従来から種々の免疫グロブリン製剤が臨床的に使用されてきたが, 今回, 外科的重症感染症に対してイオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン (SM-4300) を使用する機会を得たので報告する。
    従来から種々の静注用ヒト免疫グロブリン製剤の開発が進められ, ペプシン処理ヒト免疫グロブリン, プラスミン処理ヒト免疫グロブリン, スルホ化ヒト免疫グロブリンなどが現在まで使用されてきた。しかし, 酵素処理した製剤は静注緩の半減期が短く, 且つFc活性の喪失のためグロプリンの機能が不充分になる欠点があつた。
    SM-4300は米国トラベノール社ハイランド事業部の開発による静注用ヒト免疫グロブリンであり, コーンの低, 温エタノール分画によつて得られたガンマグロブリン分画をイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理することにより, 大分子の凝集体を除去しており, 有効且つ安全であると言われている。
    今回, SM-4300研究会 (外科領域) で共通のプロトコールにより, 外科的重症感染症に対して, 抗生剤との併用療法により, 治療効果, 及び安全性と有用性を検討したので, われわれの施設における経験について報告する。
  • 山地 恵美子, 川口 広, 中山 一誠, 糸川 冠治, 秋枝 洋三
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2617-2621
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    免疫グロブリン製剤の適応は本来, 低又は無ガンマグロブリン血症であるが, 正常の免疫反応を有する患者における難治性重症細菌感染症の治療の補助として, 抗生物質と併用し, 各種のガンマグロブリン製剤の使用頻度が増加している。免疫グロブリンは細菌に対する直接作用はないとされているが, 細菌に抗体が結合して生体内で細菌抗体によるオプソニン効果 (食菌能) が高められること, 補体を介しての抗炎症作用, 溶菌並びに含有抗毒素による中和作用などの作用機序が考えられ, 抗生物質療法の限界を感じる場合, あるいは体液性免疫異常のある場合には, High riskの患老に適応があると考えられる1~4)。
    ガンマグロブリン製剤は, 開発当初の筋注製剤のほか, 最近では種々の化学的処理により静注可能な製剤が登場し, 高い血中IgG濃度とヒトのガンマグロブリンと同様の半減期 (日) が得られると共に, 筋注の局所刺激性も解決されたが, 吸収効率が悪く, 投与量の限界, 投与量の約50%が組織中の蛋白分解酵素により失活するなどの欠点がみられる。これらの欠点を克服するために酵素処理やポリエチレングリコールの分画法の改善, 化学修飾法の開発などによつて静注可能な免疫グロブリン製剤の開発が進んだ。酵素処理製剤ではフラグメント化のため半減期の短縮, Fc欠損による補体結合に由来する感染防御能の低下などの短所があり, 化学修飾法による製剤ではFc活性の回復に時間を要するなどの短所がみられるが, 最近, 非特異的補体結合のないヒトのガンマグロブリンに近い製剤の開発が行われている。ただ, これらの製剤はいずれも実際上の臨床効果には, その特徴を明確に反映する差異はみられず, 酵素処理製剤もIntact製剤も広く用いられ, 治療に寄与していることは周知の事実である。
    SM-4300は, 住友化学工業 (株) と日本トラベノール (株) の共同開発による新規乾燥イナン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤で, 米国トラベノール社において開発された静注用ヒト免疫グロブリンであり, COHNの低温エタノール分画法5)で分画し, その分画IIを取り出して得られたガンマグロブリンをイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理することにより, 大分子の凝集体を除去して調製したものである。本剤は7SのIgGが90%以上を占め, 非修飾型のIntactな免疫グロブリンであり, 抗体価は本来の免疫グロブリンと同じであり, Fc活性も正常で, 抗補体作用もほとんど認められず, 半減期も同じであり, 天然のままの組成, 状態に近似したものと言える6, 7)。
    今回, われわれはSM-4300の外科領域研究会における共通のプロトコールにより, 重症細菌感染症を対象として抗生物質との併用効果を検討する機会を得たので, その評価方法について考察を加えると共に自施設における成績について報告する。
  • 抗生物質との併用療法
    中村 明茂, 福本 育郎, 由良 二郎, 品川 長夫, 吉見 治, 石川 周
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2622-2629
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    住友化学工業 (株) と日本トラベノール (株) により共同開発された新規乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤, SM-4300の外科領域における重症細菌感染症12例に対する抗生物質との併用療法における効果を検討した。
    1. SM-4300の臨床効果は, 著効1例, 有効2例, やや有効4例, 無効3例, 判定不能2例と有効率30.0% (3例/10例) で, やや有効を含めると70.0% (7例/10例) であり, 細菌学的効果は, 菌消失例はなかつたが, 菌交代2例, 菌減少1例, 不変5例, 不明4例であつた。
    2. SM-4300の投与された全12例中, 本剤によると思われる自他覚的副作用は臨床検査値異常を含めて1例も認められなかつた。
    3. SM-4300投与前後の免疫学的パラメーターとしてIgG, IgA, IgMなどの推移について検討したが, 一定の傾向は認められなかつた。
  • 谷村 弘, 稲本 俊
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2630-2637
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 多数の著しく抗菌力の優れた抗生物質の開発がなされ, 外科領域における重症感染症の治療に際しても, その効果を発揮し, 又, 制癌剤の進歩も造血臓器を主とする悪性腫瘍において, 優れた治療効果をもたらし, その延命効果の更新が次々と得られている。しかし, 悪性腫瘍や膠原病はそれ自体患者の免疫能の低下をもたらすと共に, これらの治療に用いられる制癌剤や副腎皮質ホルモンはいずれも免疫抑制作用を有しているため, その使用期間中に併発してくる感染症に対する治療法として, 抗生物質の投与だけでは困難なことが多い。そこで, このような感染症を併発した患者に対して抗生物質と併用して免疫グロブリン製剤を投与することは患者の免疫力を補助する意味で大いに効果が期待できる。
    今回, 進行癌に併発した重症感染症例に対して抗生物質に併用して, 乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤SM-4300を使用し, 臨床効果, 副作用について検討したので報告する。
  • 太田 潤, 冨田 和義, 木村 正治, 藤田 昌英, 上田 進久, 奥村 堯, 田口 鐵男, 木本 安彦, 塚原 康生
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2638-2646
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ヒト免疫グロブリン (以下γ-G1. と略す) 中の特にIgGは, 細菌ウィルス及び原虫に対して幅広い抗体活性を有しており, 免疫不全症候群や重症感染症における抗生物質との併用において有用性が認められている。
    γ-G1. 製剤は, 筋注用製剤の開発にはじまり, その後, 安全且つ有効な静注用薬剤の研究がすすめられペプシン処理γ-G1. 1), プラスミン処理γ-G1. 2), スルポ化γ-G1. 3~6)などが開発された。しかし酵素処理した製剤では血中の半減期が短く, 又, Fc活性を期待できず, スルホ化した製剤ではFc活性回復に時間を要するなどの欠点があつた。その後これら変形を受けない (Intact) γ-G1. としてポリエチレングリコール処理γ-G1. が開発され, すでに臨床的に広く使用されている7, 8)。
    今回治験を行つたSM-4300も, 乾燥イオン交換樹脂処理によるIntactγ-G1. であり, 一層安全且つ有効なγ-G1. として期待されている。今回われわれは, このSM-4300を外科領域における重症感染症患者に使用する機会を得たので, その成績を報告する。
  • 光吉 聖, 酒井 克治, 松本 敬之助, 藤本 幹夫, 土居 進, 上田 隆美, 佐々木 武也, 森本 譲
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2647-2659
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    SM4300は住友化学工業(株)と日本トラベノール(株)の両社共同開発による新規乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤でありコーンの低温エタノール分画法1)によつて得られたγ-グロブリン分画をイオン交換樹脂処理によりAggregate分子を除去した天然に近い静注用Intactグロブリン製剤である。これは従来のペプシンやプラスミン等の酵素処理による分屑でなく, スルポ化等の化学修飾を受けておらず, しかも添加のヒト血清アルブミンを除く総蛋白の90%以上が7S-IgGからなるγ-グロブリン製剤である。
    今回我々は, 外科領域における抗生物質療法に難渋する重症感染症を対象として本剤を使用したので, その成績を報告する。
  • 中山 文夫, 豊田 清一
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2660-2664
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    免疫不全状態にあるPoor riskの患者に対して外科的拡大手術を行わなければならない機会があり, その際に生じた重症感染症に対する治療が抗生物質だけでは, 充分な効果が得られず, 難治性となり, 治療の遷延化することがある。免疫応答能力の低下により易感染状態の疾患の抗生物質との併用療法として, ヒト免疫グロブリン製剤の有効性が確認され, 多くの製剤が開発された。
    はじめは筋注用グロブリン製剤であつたがアナフィラキシー等の副作用が報告され,投与量の限界や筋注部位の疼痛などの問題から使用されなくなり, より血中移行率の高い安全で有効な静注用ヒト免疫グロブリン製剤が精製され, 安全性や有効性について検討された1, 2)。
    今回, 新しく開発された静注用のイオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤(以下SM-4300とする)を使用する機会を得た。この製剤は, 低温エタノール分画により得たガンマグロブリン分画をイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理し, アナフィラキシーの原因となる凝集体を除去したものである。
  • 谷口 英樹, 石丸 宏哉, 綾部 公懿, 野口 恭一, 富田 正雄, 母里 政敏, 伊福 真澄, 中尾 烝, 下山 孝俊, 清水 輝久, 三 ...
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2665-2672
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ヒト免疫グロブリンは細菌, ウイルス及び原虫に対し幅広い抗体を有し, 低及び無ガンマグロブリン血症, 又, 重症細菌感染症における抗生物質との併用において有用性が認められている。
    SM-4300は住友化学工業(株)と日本トラベノール(株)両者共同開発による静注用の新規乾燥イオン交換樹脂処理ヒト免疫グロブリン製剤であり, コーンの低温エタノール分画により得られたガンマグロブリン分画をイオン交換樹脂DEAEセファデックスで処理することにより, 大分子凝集体を除去しており, ペプシンやプラスミンで処理した分屑でなく, 又, スルポ化等の化学修飾を受けていない, 自然の(Intact)ガンマグロブリン製剤で, 総蛋白から添加ヒト血清アルブミンを除いた量の90%以上が7S-IgGからなる。又, 本剤の抗補体作用(CH50)は20単位以下であり, 理想的で安全且つ有効な静注用製剤である1)。
    今回, 我々はSM-4300を使用する経験を得, 外科領域における各種細菌感染症のうち抗生物質療法の効果のみられない症例を対象として, 本剤の有効性及び安全性を検討したので報告する。
  • 木下 昭雄, 泉 文治, 村田 悦男, 川口 英敏, 中熊 健一朗, 緒方 賢治, 山崎 謙治, 砥上 幸一郎, 上村 邦紀, 荒瀬 正信, ...
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2673-2682
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    消化器外科の領域では術後栄養管理等の改善により手術成績の向上が認められるが, 患者の高齢化, あるいは食道癌手術等侵襲の大きな手術もあり術後重篤な感染症に難渋する症例も少なくない。高齢者, 悪性腫瘍患者は免疫能が低下していると言われ, 又, 手術も免疫能を低下させるという報告もみられる1)。
    これらの患者の術後感染治療成績向上のためには, 有効な抗生剤の開発と共に免疫グロブリン製剤の開発が望まれるところである。
    今回, 我々は住友化学工業(株)と日本トラベノール(株)で共同開発された静注用ヒト免疫グロブリン製剤SM-4300を術後感染症を有する患者に使用する機会を得たのでその臨床成績について報告する。
  • 酒本 喜与志, 松田 正和, 赤木 正信, 藤野 昇
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2683-2687
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    最近, 術後の重症細菌感染に対して, 抗生剤に加えて, ガンマグロブリン製剤を併用することが多い。ガンマグロブリンは, 細菌やウイルスに対して幅広い抗体活性を有しており, 免疫能の低下している高齢者や担癌患者に, 抗生剤と併用して投与することにより, 有用性が高いことが認められている1~4)。
    免疫グロブリンは, 初期には筋注用製剤が使用されたが, 大量投与が不可能であり, 血中濃度が上昇しないこと等により, 静注用製剤の必要性が生じた。しかし, ガンマグロブリン静注に際して, アナフィラキシー様反応が発現することが知られ, より安全な静注用ヒト免疫グロブリン製剤の開発が進められ, ペプシン処理ヒト免疫グロブリンやプラスミン処理ヒト免疫グロブリンのように, 酵素処理静注用製剤が使用されるにいたつた。しかし, 酵素処理した製剤では, 静注後の半減期が短く, 且つIgGのFc活性の喪失のためグロブリンの機能が不充分となる欠点がある。近年これらの欠点を補うために, ポリエチレングリコール処理により, アナフィラキシー様反応の原因となる大分子の凝集体を除去した, Fcを欠除していないIntactなIgG製剤が開発されるにいたり, その臨床効果が期待されている5~7)。
    今回, 我々はIntactガンマグロブリン製剤(SM-4300)を外科的重症細菌感染症に投与し, その効果について検討を行つたので報告する。
  • ヴェノグロブリン-Iとの比較
    門田 恵一, 加藤 益弘, 奥田 隆夫
    1985 年 38 巻 9 号 p. 2688-2697
    発行日: 1985/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1. 静注用Intactガンマグロブリン製剤であるSM-4300の細菌, 原虫及びウイルスに対する抗体価を同じくIntactガンマグロブリン製剤であるヴェノグロブリン-Iと比較したことろ, 差はほとんど認められなかつた。
    2. SM-4300のロット間で, 細菌, 原虫及びウイルス抗原に対する抗体価に差は認められなかつた。
    3. 顆粒球減少症マウスにおける感染実験では, SM-4300は広くグラム陽性菌, 陰性菌(緑膿菌を含む)による感染症に対して, 強力な防御効果を示した。ヴェノグロブリン-Iとはほとんど効果に差はなかつた。
    4. 感染防御実験において, ヴェノグロブリン-Iは約9%のマウスにショックと思われる死亡例がみられた。SM-4300投与群では死亡例は認められなかつた。
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