新しく開発された注射用Cephem系抗生物質Ceftriaxone (CTRX) について, 全国規模で研究会を組織し, 小児科領域における基礎的, 臨床的検討を行い, 以下の成績を得た。
1. 抗菌力
CTRXの抗菌力はK. pneumniae, H. influenzae,
Salmonella spp. に対しては0.10μg/ml,
S. pneumniae,
E. coliに対しては0.20μg/mlで90%以上の株の発育が阻止され, 優れた抗菌力を示した。
2. 吸収, 排泄血清中濃度は10, 20, 40, 50mg/kg, One shot静注30分後で, それぞれ73, 124, 169, 190μg/mlと明瞭なDoseresponseが認められ, それぞれ5.5, 6.3, 6.0, 4.7時間の半減期で漸減し, 投与12時間後でも10~20μg/mlの濃度が得られた。
尿中排泄率は10, 20, 40mg/kg, One shot静注後12時間で, それぞれ55, 52, 54%であつた。
化膿性髄膜炎児に50mg/kg前後をOne shot静注又は30分点滴静注した際, 1~20.3μg/mlの濃度が髄液中に認められ, その大半は5~10μg/mlの濃度であつた。
3. 臨床成績総症例は322例であり, 除外例, 脱落例を除いた295例を効果判定解析対象とした。
臨床効果は295例中, 起炎菌を確定し得た191例で著効108例, 有効72例, 有効率94%, 起炎菌を確定し得なかつた104例では著効42例, 有効54例, 有効率92%であつた。
複数菌による感染18例につき89%の有効率を得た。
細菌学的効果は, 起炎菌と判定された菌株216株中174株, 93%が消失した。
他剤が無効であつた75例では88%の臨床的有効率を, 又, 除菌効果は53株につき85%に得られた。
4. 副作用, 臨床検査値異常
総症例322例中, 下痢, 軟便, 蓄麻疹等の副作用が28例, 8.7%に認められた。
臨床検査値異常はGOT上昇, 好酸球増多, GPT上昇, 血小板増多等38例 (48件) に認められた。
5. CTRXの小児の標準用法は20mg/kgを1日2回静注又は点滴静注とし, 感染症の種類, 重症度により適宜増減するのが良い。
T1/2が適当に長時間であることは1日2回投与ですむ点, 省力化, Cost-effbctivenessで有利につながり, その抗菌領域の広さ, 髄液移行の良い点, 安全性の高さから, 小児科領域に意義の大きい存在理由を主張できるCephem剤であると考えられるが, 新生児期投与, 1日1回投与の問題については, 副作用の観察ともども将来検討されなければならない。
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