The Japanese Journal of Antibiotics
Online ISSN : 2186-5477
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39 巻, 9 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
  • 中田 弘子, 河村 泰仁, 柴田 哲夫, 能島 康幸, 三善 隆広, 吉田 一晴, 米田 豊昭
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2285-2300
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    T-2588の幼若ラット (生後6日齢) における1ヵ月間経口投与亜急性毒性試験を, 250, 500, 1,000mg/kg/日の投与群を設定して行い以下の結果を得た。
    1. 一般症状に異常はみられず, 尿検査, 血液学的検査, 血液化学検査, 眼科的検査の結果にも異常は認められなかつた。
    2. 1,000mg/kg投与群の肝と腎及び500mg/kg投与群の雌の腎に軽度の相対重量の増加が認められたが, 組織学的には特記すべき異常は認められなかつた。
    3. 本試験における最大無作用量は250mg/kg/日であつた。
    4. 同時に行つた雄育成仔の生殖能力試験の結果には異常は認められなかつた。
  • 肝分画中のAlcohol dehydrogenase及びAldehyde dehydrogenase活性と血中Ethanol及びAcetaldehyde濃度に対する影響
    霜鳥 智也, 柴田 哲夫, 米田 豊昭
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2301-2306
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephem系抗生剤の投与を受けた人の一部に副作用として飲酒により嫌酒薬 (Disulfiram) 服用時と類似した不快な症状を呈するDisulfiram様作用の発現が知られており, それらの薬剤の多くは化学構造上7-Aminocephalos-porinic acid (Cephem骨格) の3位に1-Methyl-1H-tetrazol-5-thiol側鎖を有している1~8)。Disulfiram様作用を有するCephem系抗生剤についてラットを用いての基礎的検討がなされた結果, 肝分画中のAldehyde dehydrogenase, Enzyme I (low-KmALDH) 活性の低下とEthanol (以下EtOHと略) 投与後の血中Acetaldehyde (以下AcHと略) 濃度の上昇が共通してみられることからヒトでのDisulfiram様作用発現の可能性を予想することが可能になつた9~14)。
    新規エステル型経口用Cephem系抗生剤T-2588はCephem骨格の3位に5-Methyl-1H-tetrazoleを有するが, イオウ原子を介さずに直結型であるため, 飲酒後のDisulfiram様作用はないものと予想されるが, ラットを用い肝分画中のAlcohol dehydrogenase活性及びAldehyde dehydrogenase活性とEtOH投与後の血中EtOH及びAcH濃度に対する影響を検討したので報告する。
  • 霜鳥 智也, 柴田 哲夫, 中川 重仁, 佐藤 盛, 永井 章夫, 米田 豊昭
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2307-2323
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    T-2588は新しく開発されたエステル型経口用セフェム系抗生剤である。
    T-2588の肝障害動物に対する影響を知るためにガラクトサミンで作製した肝障害ラットにT-2588を1回又は5回連続投与して肝に対する影響を検討したので結果を報告する。試験は昭和59年3月2日~3月13日に実施した。
  • 永井 章夫, 米田 豊昭
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2324-2343
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    従来アミノ配糖体系抗生物質やポリペプチド系抗生物質には臨床的に副作用として難聴, 耳鳴などのような聴覚障害やめまい, 眼振などのような平衡機能障害のあることが知られており1~3), いくつかの薬剤については, 動物実験においても聴覚障害や平衡覚障害が確認されている1~3)。しかし, ペニシリン系抗生物質やセファロスポリン系抗生物質では, 実験動物に対して聴器障害を及ぼすという報告はなされていない4~8)。
    今回, 新規セフェム系経口抗生物質であるT-2588の毒性試験の一環として, T-2588のラット聴器に及ぼす影響について周波数別耳介反射試験及び立ち直り反射試験, 更に内耳の病理組織学的検査により検討したので報告する。
  • 出口 浩一, 横田 のぞみ, 田中 節子, 深山 成美, 西村 由紀子, 吉原 久子, 小田 清次, 松本 好弘, 池上 亮祐, 佐藤 久美 ...
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2344-2354
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    耳用Fosfomycin (明治製菓, 以下耳用FOMと略) の化膿性中耳炎 (慢性化膿性中耳炎, 慢性化膿性中耳炎急性増悪症) を対象とした臨床的有用性に関する検討が, 1984年8月~1985年8月にかけてTable 1に示した施設で行われた。本検討では用量設定試験, オープン試験, そして二重盲検試験が検討され, 臨床的な有用性が報告されている1~5)。一方, 本剤の主として内耳に対する安全性の検討も行われ, 安全性が確認された6~8)。
    本検討では, 又, 前述した臨床的検討における臨床細菌学的検討, すなわち患者採取材料からの細菌の分離・同定, MIC測定を私たちが担当した。用量設定試験190例, オープン試験126例, 二重盲検試験271例, 合計して587例の臨床試験開始前の患者採取材料から検出された菌種は多種類であるが, Staphylococcus aureus, Pseudomonas aeruginosaが高率に検出された。
    検出菌のFOM及び対照剤のCefmenoxime, Chloramphenicol, Fradiomycin, Cephalexinに対する感受性 (MIC) 成績は, S. aureusのCephem antibiotics (以下Cephem系) 耐性菌が3割にみられた他, 多剤耐性菌が高率に確認された。これらの菌種に対するFOMの抗菌力は, おおむね良好且つバランスのとれた成績で, S. auresのCephem系耐性菌, P. aeruginosaにも良好な抗菌性を示していた。
  • 中村 孝, 橋本 伊久雄, 沢田 康夫, 三上 二郎, 吉本 正典, 西代 博之, 中西 昌美
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2355-2366
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 本邦における老齢人口の増加は著しく, 老齢者の感染症は難治性であり, 予後も若年者に比べて不良である。感染症が難治性となる要因には, 起炎菌の種類, 患者の種々の病態, 治療薬剤, あるいは治療法の不適切など種々のものがある。老齢者, 癌などの悪性腫瘍患者あるいは重症外傷患者が感染症を合併し, 適切な治療が迅速に行われなければ, 難治性あるいは重症に陥るのは当然であると言えよう。
    今日, これらの難治性感染症の起炎菌は, インドール陽性の変形菌, セラチア菌, 緑膿菌などのグラム陰性桿菌群などの複数菌種の感染によるものが多く, 更に嫌気性菌を合併していることがまれではない。抗菌化学療法剤の近年における進歩, 発達は目ざましく, 特にCephem系抗生物質は, 耐性菌の原因となつているβ-Lactamaseに抵抗性を有し, 抗菌スペクトラムを拡大した第2世代に続いて, 抗菌力を飛躍的に増強した第3世代のCephem系抗生物質が開発され, すでに一般に使用されるに至つている8), 9)。
    緑膿菌はこれらの抗生剤にても, 充分な効果が期待できず, 長期間種々の抗生剤の使用後にも残存するか, あるいは菌交代現象の結果として現れることの多い原因菌である。既存の抗緑膿菌剤として, アミノ配糖体及びポリペプチド系抗生物質, 合成Penicillin系の広範囲抗生物質としてCarbenicillin (CBPC), Sulbenicillin (SBPC), Ticarcillin (TIPC), Piperacillin (PIPC) などがある13~16)。
    Cefsulodin (CFS) は武田薬品工業株式会社中央研究所にて開発されたCephalosporin系抗生物質である。本剤はin vitroで緑膿菌に対して, 極めて強い抗菌力と殺菌作用を示し, その強さはCBPC, SBPCよりも一段と強く, アミノ配糖体とほぼ同等で, 且つアミノ配糖体耐性緑膿菌に対しても強い抗菌活性を示し, 緑膿菌の産生する各種のβ-Lactamaseに安定で, 体内にほとんど代謝を受けず, 主として腎から排泄され, in vivoにおける抗菌作用も優れていると共に, 安全性の優れている薬剤である1~6)。
    一方, 化学療法施行時の人体内における吸収, 排泄の動態は, 血中濃度の推移, 尿中からの排泄動態について検索されている。しかし, 化学療法において有意義であるのは, 病巣である炎症組織内の抗生剤濃度であることは論を待たない。しかしこれを人体において測定することは非常に困難であり, 特にその動態については不可能に近い。一般には動物実験で各種組織, 体液中動態を検索して, 人体における動態を推定しているのが現状である。しかし動物に人体におけると同様の病態を作り出すことは非常に困難であり, 動物実験の結果をそのまま臨床に応用することはかなりの無理があろう。
    CFSは抗緑膿菌剤であるために, 緑膿菌が単独又は複数菌感染の一部として検出される難治性の感染症に, CFS単独あるいは他の抗生剤との併用によつて使用されることが多い。急性腹膜炎あるいは胆管炎などにおいて, ドレナージが施行されている症例に使用されることが多いと考えられる。そこで著者らはドレーンを挿入した感染性疾患の滲出液へのCFSの移行を経時的に検索した。これらの滲出液は感染病巣から誘導されており, CFSの移行の検索は感染病巣内濃度を反映するものと考えられる。この結果若干の興味ある成績を認めたので報告する。
  • 千村 哲朗, 森崎 伸之
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2367-2373
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Premature rupture of the membranes (PROM) の発生は, 早産未熟児出生の最大要因であり, 近年Preterm PROM特に妊娠32週前の管理が大きな問題となつてぎている。PROMの発生機構は複雑で, その背景因子も多岐にわたるが, 近年, 下部性器からのBacterial contaminationとの関係が注目されるに至つた。
    Chorioamnionitis (CAM) とPROMの関係は, 早産に至る過程から2つの場合が考えられる。1. CAMが先行しPR-OMに至る症例。2. PROMが先行し上行感染によるCAM発症。いずれにしても, 子宮頸部の細菌叢が問題となつてくる。こうした観点から, 最近, PROM症例における羊水中の細菌学的検討が注目されるに至つた。
    従つて, ここではPROM症例の子宮頸部・子宮下部の細菌学的検討と, PROM (+CAM) 症例の臨床面からの検討を行つたので報告する。
  • 倉田 順弘, 久志 本弘, 星 千冨, 油谷 安孝, 田鳥 考治, 柳井 尚浩, 住田 幹郎, 堀澤 欣弘
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2374-2380
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    整形外科領域において, 術後感染予防の目的で使われる抗生物質の役割は大きい。今までにも種々の広範囲抗菌スペクトラムの抗生物質が開発され, その薬効も著しく向上してきている。Cefmenoxime (略号CMX, Bestcall®) は, 武田薬品工業株式会社で開発されたCephem系抗生物質であり, 図1に示す化学構造を有する。本剤はグラム陽性, グラム陰性の好気性菌及び嫌気性菌に対して広範囲な抗菌スペクトラムを有し, β-Lactamaseに安定で, 他剤耐性のβ-Lactamase産生菌にも良好な抗菌力を示す。
    今までに各種抗生物質の骨髄血及び骨組織への移行については, 多くの報告がある1~4)。CMXについても井上ら5), 熊野ら6) の報告がある。今回我々は, CMXが実際手術中その術野の骨組織及び骨髄血にどの程度の濃度で移行しているかについて検討したので, 若干の考察を加えて報告する。
  • 圓谷 博, 安藤 善郎, 君島 伊造, 渡辺 岩雄, 阿部 力哉, 舟山 尚, 川口 吉洋
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2381-2385
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephalosporin系抗生物質であるCefmenoxime (略号CMX, Bestcall®) は従来のCephalosporin剤に比べグラム陰性菌に対して強い抗菌力を示し, 又, 胆嚢組織, 胆汁中移行のよいことをわれわれは報告してきた1)。確かにCMXは胆嚢組織, 胆汁への移行が良好な抗生物質ではあるが, 病巣の炎症の程度によつてその移行に差異があるか否かについては, 明らかではない。これは胆嚢病変に限らず臨床的に炎症病巣を切除することが少なく, 特に急性炎症病巣内の抗生物質を測定できる機会が極めて少ないことに一因がある。抗生物質の感染炎病巣への到達性が検討された臓器としては, わずかに虫垂炎及び胆嚢について若干の報告がみられるにすぎない2, 3)。このような観点から, 胆汁, 胆嚢壁への移行の良好なCMXが炎症の程度の異なる組織部位で, 到達性が異なるか否かについて検討を加えた。
  • 子宮及び付属器内濃度
    新藤 邦雄, 円谷 隆, 熱海 泰, 佐藤 昌幸
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2386-2393
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    感染症を治療するにあたつては, 起炎菌に対して強い抗菌力を持ち, 病巣部での組織内濃度が起炎菌に対するMICを越えて一定時間維持されており, 且つ副作用のない薬剤を投与することが化学療法の基本である。従来, 産婦人科領域においては, 抗菌力の強い広範囲抗生物質が血中濃度を参考にして経験的に投与されていた。しかし抗生物質の種類によつて血中濃度は異なるし, 又, 血中濃度と組織内濃度が平行しているとは限らない。それ故, 抗生物質の組織内濃度を知ることは, 抗生物質の投与にあたつて重要視されねばならない。最近, 武田薬品工業 (株) から発売されたCefmenoxime (CMX, Bestcall®) はセフェム系抗生物質であり, 多くのグラム陰性菌に対して強い抗菌力を持ち, β-ラクタマーゼに対しては安定で, Serratiaなどの弱毒菌やBacteroidesをはじめとする嫌気性菌にも抗菌スペクトルが拡大されている。今回我々は, 子宮摘出術施行患者を対象とし, 術前にCMXを投与し, 血清中濃度, 子宮及び付属器内濃度を測定したので報告する。
  • 藤田 晃三, 坂田 宏, 田中 充, 帰山 雅人, 吉岡 一, 滝本 昌俊, 高橋 庸二
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2395-2398
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam (CTM) はいわゆる第2世代のCephalosporin系抗生物質であり, 第1世代のCephalosporin系抗生物質に比較し, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilisなどに対して優れた抗菌力を示し, 又, 黄色ブドウ球菌などのグラム陽性球菌にも良い抗菌力を残している1)。本剤は成人領域1)及び小児科領域2)ですでにその有効性と安全性が確認されているが, 私たちは本剤を新生児・幼若乳児に使用する機会を得, 臨床効果と薬物動態について検討を加えたので報告する。
  • 中澤 進, 佐藤 肇, 平間 裕一, 成田 章, 中澤 進一, 鈴木 博之, 近岡 秀次郎, 田添 克衛
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2399-2406
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    武田薬品中央研究所で創製されたCephalosporin系注射剤Cefotiam (CTM) に関してはすでに成人並びに小児科領域において詳細な検討が行われ, その有用性が認められているところである。私等も小児を対象としての本剤の治療成績について報告してきた1)。今回, 新生児, 幼若乳児に使用し二, 三の検討を行つてみたので以下今日までの概況について報告する。
  • 岩田 敏, 佐藤 吉壮, 楠本 裕, 城 裕之, 秋田 博伸, 南里 清一郎, 老川 忠雄, 小佐野 満, 砂川 慶介
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2407-2420
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam (CTM) は1977年に武田薬品工業 (株) で開発された注射用Cephalosporin系抗生剤で, 従来の同系薬剤に比べ, Escherichia coli, Klebsiella, Haemophilus influenzae等のグラム陰性桿菌に対して優れた抗菌力を有している1)。成人及び乳児期以降の小児における本剤の有効性と安全性の検討はすでに行われ2, 3), 現在広く臨床に用いられているが, 新生児・未熟児では, その肝・腎機能の未熟性, 起炎菌の特殊性等の点から, 別個に検討する必要があると思われる。今回我々は, 新生児・未熟児を対象として, 本剤の抗菌力, 血中濃度, 尿中排泄等の基礎的検討, 及び臨床的検討を行う機会を得たので報告する。
  • 豊永 義清, 杉田 守正, 黒須 義宇, 堀 誠
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2421-2435
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新生児・未熟児では, 生理的に感染に対する特異的, 非特異的防御能が減弱しており, 重篤な感染症に遭遇することはまれでない。これらの時期の感染は定型的な症状に乏しく, 未だに死亡率が高いことも諸家により報告されている。又, この時期の起因菌としては, 大腸菌をはじめとするグラム陰性桿菌が優性であることは周知の事実であるが, 現在, β-Lactamase産生菌の増加も問題となつており, 従来新生児期において頻用されていたAmpicillin (ABPC) についてはEscherichia coli1), Klebsiella pneumoniae1), Haemophilus influenzae2-4)などに対しては耐性株が多く, 又, Oxacillin (MPIPC) 等の耐性ブドウ球菌のPenicillin系抗生物質 (PCs) についてもStaphylococcus aureusに対して耐性株の増加5)も報告されており, いずれも第1選択剤として使用するのは一抹の不安がある。これらの背景から, 新生児・未熟児の感染症に対して優れた有効性と安全性を持つ薬剤の検討が必要とされている。さて, Cefotiam (CTM) は7位の側鎖にAminothiazohn環を, 3位側鎖にTetrazole環を持ち, 藤井の分類6)の第4群のCephalosporin系抗生物質 (CEPs) であるが, 従来の第1, 2群のCEPsに比べE. coli, K. pneumoniae, Proteus mirabilisに対してin vitro, in vivo共に優れた抗菌活性を示し7-10), ABPC耐性株を含むH. influenzae2-4), Enterobacter, Citrobacter, Indole陽性Proteus, Serratia sp. などまでに抗菌スペクトラムも拡大された。
    このCTMの乳幼児期以降の小児に対する基礎的及び臨床的検討はすでに行われ, 本剤には優れた評価11)が得られている。
    今回, CTMを周産期研究会の班員として, 検討する機会を得たので, 生理的変動が著明である生後1週間に注目し, 新生児・未熟児とも生後3日以内, 4-7日, 8日以上の3群に分けて, その体内動態を検討し, 更に臨床的検討も行つたので, その成績について報告する。
  • 岩井 直一, 種田 陽一, 柴田 元博, 溝口 文子, 中村 はるひ, 片山 道弘, 田内 宜生, 川村 正彦, 尾崎 隆男, 市川 孝行, ...
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2436-2449
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新生児期は感染防御能に乏しく, 常に細菌感染症の危険にさらされていると言ってよいであろう。この時期の感染症はひとたび発症すると全身感染症に発展しやすく, 早期に適切な治療を行わないと致命的になってしまう場合が少なくない。又, その原因菌はEscherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Proleus sp. をはじめとするグラム陰性菌からStapylococcus aureus, Group B Streptococcusなどのグラム陽性菌に至るまで広範囲にわたるのが特微である。従って, この時期の感染症の治療には, 広範囲な抗菌スペクトラムと強い殺菌力を有し, しかも毒性の少ない抗生剤が要求される。
    今回検討したCefotiam (CTM) は, 武田薬品中央研究所で開発されたCephalosporin系抗生剤であり, 成人並びに乳児以上の小児に対してはすでに有用性と安全性が確認されている1, 2)。グラム陽性菌に対する抗菌力は従来のCephalosporin剤と同程度であるが, グラム陰性菌に対しては数倍-十数倍優れており, しかも近年問題となっているβ-Lactamase産生菌に対してもより強い抗菌作用が認められている1)。一方, 血中半減期はCephalothinとCefazolinの中間に位置し, 排泄は主として腎からであるが, 腎毒性はCETと同様に極めて弱いことが示されている1)。
    以上のような特長から, 本剤の治療効果は新生児領域の感染症においても高いものがあると考えられたので, この領域での若干の検討を行った。
  • 西村 忠史, 田吹 和雄, 高島 俊夫
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2450-2457
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    近年, 周産期医療の進歩・向上, 更に新生児期における抗生物質の体内動態の研究及び細菌感染に対する防御機構に関する知見の集積などにより, 周産期における細菌感染症の診断・治療は大きく発展した。しかし, 一方では最近の周産期細菌感染症においても起炎菌の変化や高度耐性菌の出現などが指摘され, 新たな治療上の問題も生じている。
    さて, Cefotiam (CTM) は7位側鎖にAminothiazole環を, 3位側鎖にTetrazole環を有するセフェム系の抗生物質であり, グラム陽性及びグラム陰性菌に対して抗菌力を示し, 特に小児感染症の起炎菌として頻度の高いStaphylococcus aureus, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae, Escherichia coli, Klebsiella pneumoniaeなどに抗菌力を有し, 更にAmpicillin (ABPC) 耐性のHaemophilus influenzaeにも有効である1-4)。本剤はすでに本邦でも成人領域, 新生児を除く小児科領域で基礎的及び臨床的検討が行われ, 優れた評価結果が得られている5)。
    以上のことから, 昭和57年10月から母子化学療法研究会において, CTMの新生児・未熟児に対する基礎的・臨床的検討が行われることとなり, 著者らも新生児におけるCTMの基礎的及び臨床的検討を行ったので, その成績について述べる。
  • 春田 恒和, 黒木 茂一, 大倉 完悦, 白石 英幸, 小林 裕
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2458-2465
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam (CTM) は発売以来広く使用され, その有効性と安全性は確立されていると言ってよい。われわれも以前に若干の検討を行い, その小児科領域における有用性について報告した1)が, 本剤の均衡のとれた広い抗菌力及び薬動力学的性格から, 新生児期感染症の治療にも必要な抗生剤と判断されたので, 母子化学療法研究会において検討されることになった。われわれもその一員として本剤の臨床的検討を行ったので, その成績を報告する。
  • 本廣 孝, 荒巻 雅史, 川上 晃, 田中 耕一, 古賀 達彦, 島田 康, 冨田 尚文, 阪田 保隆, 藤木 保, 久田 直樹, 富永 薫 ...
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2466-2482
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cephem系注射用抗生剤の中のCefotiam (CTM) は種々のグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して強い抗菌力を有し1-5), すでに成人及び小児期の各種細菌感染症に頻用されている薬剤で, 優れた臨床成績が得られている。
    そこで私たちは本剤を新生児・未熟児に投与し, 血漿中濃度, 尿中濃度, 尿中回収率を測定すると共に肺炎, 尿路感染症例及び感染予防を目的とした症例に使用し, その臨床効果, 細菌学的効果, 感染予防としての効果及び副作用を検討したので, その成績を報告する。
  • 由良 二郎, 鶴賀 信篤, 橋本 俊, 神谷 保廣, 林 周作, 村田 行孝
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2483-2487
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新生児は, 各種臓器の機能や生体防御機構が未熟であり, 感染に対する抵抗性が乏しく, 又, 小児外科領域においては, その対象疾患の特殊性から人工肛門, 腸痩造設される機会が多く, そのために創部が汚染されることも多い。術後の感染予防を目的とした抗生剤投与は, 小児外科術後管理の上で必須なものと考えられる。
    Cefotiam (CTM) は, 武田薬品 (株) により開発されたCephalosporin系抗生物質である。Fig. 1にその構造式を示す。CTMは, 広い抗菌スペクトラムを有し, β-Lactamaseに対して安定であり, 従来のCephalosporin系抗生物質に比べグラム陰性桿菌に対し強い抗菌力が認められている1)。
    今回, 新生児外科症例に対し本剤の吸収, 排泄試験及び臨床的応用について検討を行ったのでその結果を報告する。
  • 張 南薫, 福永 完吾, 國井 勝昭
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2488-2496
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam (以下CTM) は, 武田薬品中央研究所で創製されたCephalosporin系の抗生物質である。化学構造上7位側鎖にAminothiazolin環を, 3位側鎖にTetrazole環を有する。
    本剤の抗菌力上の特徴は, それ以前のCephalosporin系抗生物質に比べ抗菌スペクトルが拡大され, Haemophilus influenzae, Enterobacter, Citrobacter, Indole (陽性) Proteusなどにも抗菌力を有し, 又, その抗菌活性はそれ以前のCephalosporin系抗生物質よりも優れていることである。本剤の体内動態は, 筋注又は静注によつて高い血中濃度が得られ, Cefazolin (CEZ) とCephalothin (CET) の中間に類似した血中推移を示し, 尿中, 胆汁中にも高率に排泄される1)。
    本剤は開発以来, 各科領域で多くの検討がなされその価値が認められている。1978年第26回日本化学療法学会総会新薬シンポジウムにおいては本剤の評価成績が報告され2), その有用性が認められ, われわれもこれを報告した3)。
    近年重要視されている周産期医学では, 胎児, 新生児を中心として妊娠末期の母体, 新生児期の諸問題について広く研究が行われている4)。
    周産期に選択すべき抗生物質としては, 広域スペクトラムで抗菌力が強いこと, 注射可能で吸収が速く, 病巣分布が良いこと, 副作用が少ないことなどの諸条件を満たすことが望ましいと考えられる。以上のことから考察すると, CTMは周産期において選択されるべき抗生物質としての諸条件を備えていると考えられるので, 今回, 母子化学療法研究会ではCTMの組織的共同研究が行われた。われわれも上記の観点から研究会に参加し, 以下の知見を得たので報告する。
  • 早崎 源基, 花林 隆裕, 李 寿昌, 高田 恭宏, 伊藤 邦彦, 野田 克已, 飯田 光雄, 陳 超権, 山田 新尚, 大杉 智, 加藤 ...
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2497-2518
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam (CTM, Pansporin®) は7位側鎖に2-Aminothiazolを, 3位側鎖にDimethylaminoethyltetrazolをつけることにより, 作用点であるペニシリン結合蛋白に対する阻害力が飛躍的に強くなつたうえ, 2-Aminothiazolの陽性荷電が細菌の外膜通過性を向上させたもので, 代表的ないわゆる第2世代Cephem剤である (Fig.1)。
    この薬剤はブドウ球菌を含むグラム陽性菌から, R因子の有無にかかわらず強毒のグラム陰性桿菌には例外なく, 強い抗菌力を示すので, 患者の免疫状態が正常であれば, 病原菌となる菌は上記のものが主となるから, 一次選択薬剤として広く臨床的に使用されている1)。
    本剤の女性性器感染症に対する有効性と安全性についてはすでに確認されているが2), 周産期感染症の治療においては治療効果と共に胎児あるいは新生児に対する安全性に充分な配慮が必要である。
    我々は前期破水 (PROM) 症例及び帝王切開術後症例にCTMを使用し, その臨床的効果及び母児に対する安全性を検討すると共に前期破水時における母児間移行を薬動力学的に解析, 検討を行つたので報告する。
  • 二宮 敬宇, 大林 太, 長谷川 幸生, 金本 太珍
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2519-2524
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam (CTM) の基礎的・臨床的検討については第26回日本化学療法学会総会 (昭和53年, 東京) での新薬シンポジウム以来多くの研究者による報告がある1~4)。これらの成績から, CTMは安全性の高いCephalosporin剤の一つと考えられ, 母子化学療法研究会の検討薬剤としてとりあげられた。私共は産科領域の立場からCTMの有効性, 安全性について検討した。
  • 山元 貴雄, 保田 仁介, 金尾 昌明, 岡田 弘二
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2525-2533
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam (CTM) は1977年に武田薬品 (株) で開発されたいわゆる第2世代セフェム系に属する抗生物質である。
    本剤はグラム陽性菌, グラム陰性菌に対し広範囲な抗菌スペクトラムを有し, 特に従来のCephalosporin剤では効果の期待できなかつたEnterobacter, Citrobacter, Indole陽性Proteusにまで優れた抗菌力を示す1, 2)。
    本剤の基礎的, 臨床的検討成績については第26回日本化学療法学会総会において発表され3), すでに高い評価がなされている。
    更に本剤は産婦人科領域における一般感染症に対する検討もすでに行われ, その有効性並びに安全性が確認されている4)。
    今回, 産婦人科周産期領域におけるCTMの有効性並びに安全性を検討する機会を得たので, 本剤の臍帯血, 羊水移行について薬動力学的解析を加えると共に, 臨床例に対する有用性の検討を行つたのでその成績を報告する。
  • 高瀬 善次郎, 三好 敏裕, 藤原 道久, 中山 雅人, 河本 義之, 白藤 博子
    1986 年 39 巻 9 号 p. 2534-2542
    発行日: 1986/09/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    第2世代CePhem系抗生物質に属するCefotiam (CTM) は, グラム陽性菌からグラム陰性菌まで広範囲スペクトルを有し, 特にグラム陰性菌に対して優れた抗菌力を持つている。成人及び小児に対する検討はすでになされており, その有効性, 安全性は高く評価され, 武田薬品工業株式会社からPansporin®として市販されている。
    今回, 産科領域の感染症として重要な位置を占める周産期妊産婦における本剤の検討を行い, 若干の成績を得たので報告する。
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