新しいCephem系抗生物質であるCefuzonam (L-105, CZON) について, 小児科領域における基礎的, 臨床的検討を行つた。
1.小児9例 (2~14歳) にCZONを静脈内投与 (20mg/kg One shot静注4例, 40mg/kgOneshot静注2例, 40mg/kg1時間点滴静注3例) した際の血清中濃度と尿中排泄について検討した。
20mg/kgOneshot静注例の平均血清中濃度は投与開始後1/4時間49.0μg/ml, 1/2時間22.7μg/ml, 1時間9.03μg/ml, 2時間2.13μg/ml, 4時間0.37μg/ml, 6時間0.09μg/mlであり・40mg/kg One shot静注例では各々117.5, 68.0, 26.2, 8.80, 0.63, 0.19μg/mlであつた。又, 40mg/kg1時間点滴静注例では1/2時間57.1μg/ml, 1時間78.8μg/ml, 2時間12.9μg/ml, 4時間1.12μg/ml, 6時間0.23μg/mlであつた。なお, 血清中半減期の平均は20mg/kgOneshot静注例では0.69時間, 40mg/kgOneshot静注例では0.44時間, 40mg/kg1時間点滴静注例では0, 58時間であつた。
一方, 投与開始から6時間までの尿中回収率は20mg/kgOneshot静注例では平均70.8%, 40mg/kgOneshot静注の1例では44.1%, 40mg/kg1時間点滴静注例では平均60.0%であつた。
2.小児科領域の感染症26例にCZONを投与し, その際の臨床効果, 細菌学的効果, 副作用について検討した。
細菌の関与がなかつたと判断された2例を除いた残り24例, すなわち急性気管支炎1例, 急性肺炎16例, 急性化膿性中耳炎1例, 急性化膿性リンパ節炎2例, 急性根尖性歯周組織炎1例, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群1例, 急性腎孟腎炎1例, 急性腸炎1例に対する臨床効果は著効19例, 有効5例であり, 全例において有効以上の成績が得られた。
原因菌と断定もしくは推定された
Staphylococcus aureus 1株,
Streptococcus pneumoniae1株, β-
Streptococcus 1株,
Haemophilus influenzae 10株,
Haemophilus parainfluenzae 1株,
Proteus mirabilis 1株,
Campylobacter jejuni 1株に対する細菌学的効果はいずれも消失と判定された。
副作用は臨床的に認められた症例はなかつた。臨床検査値異常としては, GOTの上昇が2例, 好酸球増多が1例に認められたが, 投与終了後の再検査ではいずれも正常化が確認された。
以上から, CZONは小児においても有効性並びに安全性の高い薬剤であると考えられた。
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