Aminoglycoside系抗生物質 (AGs) の中のAmikacinを小児6例中各3例に2.0mg/kgを30分間, 4.0mg/kgを60分間点滴静注, 新生児・未熟児15例の中で各3例に3.0, 4.0, 6.0mg/kgを筋注, 3例に3.0mg/kg, 1例に6.0mg/kgを30分間, 2例に6.0mg/kgを60分間かけて点滴静注し, 血漿中, 尿中濃度及び尿中回収率を測定, 薬動力学的検討を行つたところ, 次のような結果を得た。
1.小児に2.0mg/kgか4.0mg/kgを30分間か60分間点滴静注しての平均血漿中濃度はいずれも点滴静注終了時が最高濃度で各々9.23, 13.67μg/mlを示し, 両投与量群間にDoseresponseがあり, 半減期及び濃度曲線下面積 (AUC) は成人に類似, Vdは成人に比較し小を示した。
平均尿中濃度は2.0mg/kg投与量群は投与開始0~2時間, 4.0mg/kg投与量群は投与開始2~4時間が最高濃度で各々149.3,223.3μg/ml, 点滴静注開始後6時間までの平均回収率は各々95.4, 85.7%で成人と同等か高い回収率を示した。
2.新生児・未熟児に3.0, 4.0, 6.0mg/kgを筋注した場合の平均血漿中濃度は, いずれの投与量群も投与30分後が最高濃度で各々6.26, 8.61, 12.60μg/mlを示し, 3投与量群間にDose responseがあり, 半減期はいずれの投与量群も日齢が若い例ほど延長し, AUCも半減期に類似して大の傾向にあり, Vdは小児の点滴静注例に比べ大ではあつたが一定の傾向を示さなかつた。平均尿中濃度では3.0, 4.0, 6.0mg/kg投与量群は投与開始後各々4~6, 2~4, 0~2時間が最高濃度で, それぞれ78.83, 99.17, 139.20μg/mlと投与量にみあつた濃度を示し, 投与6時間後までの平均回収率は各々36.57, 34.67, 43.77%と腎機能が未熟であることも原因して成人及び小児の点滴静注例に比べ著しく低率であつた。
3.新生児・未熟児に30分間点滴静注した時の血漿中濃度は投与量3.0mg/kgの場合, 平均での最高濃度は点滴静注終了時で7.61μg/mlを示し, 新生児・未熟児に同量筋注時の投与30分後の平均最高濃度に類似し, 半減期は日齢の若い例そして低体重例は延長, AUCも半減期に類似して大を示し, Vdは小児の点滴静注例に比べ大ではあつたが一定の傾向を示さず, 6.0mg/kg投与の1例も点滴静注終了時に最高濃度に達し, 14.1μg/mlで, 3.0mg/kg投与量群との間にDose responseがあり, 新生児・未熟児に6.0mg/kgを筋注で投与した場合の平均最高濃度よりやや高く, 27生日のこともあつて半減期は1.84時間で小児の点滴静注例よりやや延長, AUCは投与量が異なり比較できなかつたが, Vdは大であつた。6.0mg/kg, 60分間点滴静注例でも点滴静注終了時が最高濃度で平均17.6μg/mlを示し, 新生児・未熟児に対し同量を筋注か30分間点滴静注した際の最高濃度より高かつたが, その原因は不明であつた。半減期は27, 28生日例のこともあつて小児の点滴静注例よりやや延長するにとどまり, AUCも半減期に類似して大の傾向を示し, Vdでも小児の点滴静注例に比べ大であつた。
3.0, 6.0mg/kg, 30分間点滴静注, 6.0mg/kg, 60分間点滴静注例の平均尿中最高濃度 (6.0mg/kg, 30分間点滴静注は1例) はいずれも投与開始後2~4時間で各々54.6, 462.0, 115.5μg/ml, 投与6時間後までの平均回収率 (6.0mg/kg, 30分間点滴静注は1例) は各々37.2, 36.7, 19.7%で, 日齢が若いと低い傾向にあり, 小児の点滴静注例に比べいずれの群も著しく低率であつた。
Aminoglycoside系抗生物質 (AGs) のAmikacin (AMK) は
Streptococcussp., Enterococcussp.を除くグラム陽性菌やグラム陰性桿菌に幅広く抗菌力を有し, Gentamicin耐性菌にも良好な活性があり, 聴器毒性及び腎毒性はKanamycinと同等かやや弱い1, 2) と述べられている。本剤は成人と同様に小児でも重症感染症やOpportunistic infectionに対しPenicillin系抗生物質あるいはCephem系抗生物質と併用される場合が多く, その際筋注か点滴静注で投与されているが, 小児の中でも新生児や未熟児では腎機能は未熟であり, 日齢に応じ投与量, 投与方法を変える必要がある。
そこで私たちは本剤を小児及び新生児・未熟児に点滴静注か筋注で投与し, 血漿中濃度, 尿中濃度, 尿中回収率を測定すると共に薬動力学的検討を行つたので, その成績を報告する。
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