新しく開発されたClarithromycin (TE-031, A-56268) は抗菌域と抗菌力はErythromycin (EM) とほぼ同等であるが, 既存のマクロライド系抗生物質に比べ血中濃度が高く, 尿中回収率も良好で, 各組織へ良い移行を示す等の特徴を有し, 本邦では成人において種々の検討がなされその有用性が確認されている。
今回, 顆粒及び50mg力価含有錠剤を用いて本剤の小児における有用性を検討した。
本剤の顆粒は6ヵ月から13歳10ヵ月の小児132例に投与したが, 臨床効果の判定できなかつた12例を除いた疾患と症例数は咽頭炎1例, 扁桃炎3例, 急性気管支炎9例, 肺炎19例, マイコプラズマ肺炎19例, 猩紅熱2例, カンピロバクター腸炎20例, 膿痂疹11例, 皮下膿瘍2例, 異型肺炎18例, 起炎菌不明の急性腸炎16例, 計120例で, 本剤の1日平均投与量は25.9mg/kg, 分2か分3 (分2は1例, 分3は119例) で, 平均7日間の投与であった。本剤の50mg力価含有錠剤投与例の疾患と症例数は, 3歳1ヵ月から14歳0ヵ月の咽頭炎8例, 扁桃炎1例, 急性気管支炎1例, 肺炎4例, マイコプラズマ肺炎14例, 猩紅熱4例, カンピロバクター腸炎5例, 膿痂疹7例, 異型肺炎1例, サルモネラ胃腸炎1例, 起炎菌不明の急性腸炎3例, 計49例で, 本剤の1日平均投与量は13.5mg/kg, 分2~4 (分2は12例, 分3は32例, 分4は5例) で, 平均7日間投与し, 両製剤投与例の臨床効果, 細菌学的効果をみると共に, 本剤投与の症例から分離され, 起炎病原体あるいは起炎病原体と推定された71株中
Stapylococcus aureus 12株,
Streptococcus pyogenes 7株,
Streptococcus pneumoniae 2株,
Haemophilus influenzae 2株,
Campylobacter jejuni 6株, 計29株の接種菌量10
6cfu/mlにおけるMLsではTE-031とEM, Josamycin (JM), Midecamycin acetate (MDM acetate), Rokitamycin (RKM) の5剤, ペニシリン系抗生物質ではAmpicillin (ABPC), Methicillin, Cloxacillinの3剤, セフェム系抗生物質では, Cefaclor (CCL) の1剤, 計9剤,
C. jejuniに対してはKanamycin, Fosfomycin, Ofloxacinの3剤も加えてMICの測定を実施し, 又, 副作用及び臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
1. TE-031顆粒投与例の臨床効果は120例中109例が有効以上で, 有効率は90.8%を示し, 本剤の対象外疾患とすべき異型肺炎, 起炎菌不明の急性腸炎例を除いた場合には86例中79例が有効以上で, 有効率は91.9%と良好であった。
2. TE-031 50mg力価含有錠剤投与例の臨床効果は49例中48例が有効以上で, 有効以上の有効率は98.0%を示し, TE-031顆粒投与例と同様に本剤の対象外疾患, すなわち異型肺炎, サルモネラ胃腸炎, 起炎菌不明の急性腸炎例を除いた場合には44例中43例が有効以上で, 有効率は97.7%と良好であったTE-031顆粒投与例の有効率に類似した。
3. TE-031の顆粒と50mg力価含有錠剤投与例をまとめてすべての症例で臨床効果をみると, 169例中157例が有効以上で, 有効率は92.9%を示したが, 本剤の対象外疾患とすべき症例を除いた場合には130例中122例が有効以上で, 有効率は93.8%と良好であった。
4. 全例について, 1日投与量別の臨床効果をみると, 10.0mg/kg以下, 10.1~15.0, 15.1~20.0, 20.1~30.0, 30.1mg/kg以上の各々11, 36, 30, 68, 24例における有効以上の有効率はそれぞれ100, 97.2, 93.3, 91.2, 87.5%で, 本剤の対象外疾患とすべき症例を除いた場合の有効率は各々100, 96.7, 91.3, 925, 92.9%で, 各投与量群の有効率は類似した。
5. TE-031顆粒投与例の細菌学的効果はグラム陽性球菌では12株中11株91.7%, グラム陰性桿菌では22株中21株95.5%,
Mycoplasma pneumoniae 6株はすべて消失し, 40株の全株では38株が消失し, 消失率は95.0%と良好であつた。
6. TE-031 50mg力価含有錠剤投与例の細菌学的効果はグラム陽性球菌では8株の全株, グラム陰性桿菌では6株中4株,
M. pneumoniae 8株はすべて消失し, 22株の全株では20株が消失し, 消失率は90.9%であったが, 本剤の有効菌種ではない
Salmonella choleraesuis 1株を除いた場合の消失率は95.2%と良好で, TE-031顆粒投与例の消失率と同等であった。
7. TE-031の顆粒と50mg力価含有錠剤投与例をまとめて細菌学的効果をみると, グラム陽性球菌では20株中19株95.0%, グラム陰性桿菌では28株中25株89.3%,
M. pneumoniae 14株はすべて消失し, 62株の全株では58株が消失し, 消失率は93.5%であつたが, 本剤の有効菌種ではない
S. choleraesuis 1株を除いた場合の消失率は95.1%と良好であった。
8. TE-031の抗菌力は
S. aureus 12株ではMIC0.10~100μg/mlで, MIC
90は100μg/mlを示し, EMのMICに類似し,
S. pyogenes 7株では全株がMIC0.025μg/ml以下で, EM及びABPCのMICと同等,
S. pneumoniae 2株ではMIC0.05μg/mlか0.025μg/ml以下で, EMのMICと同等で, ABPCのMICと同等か類似した。
H. influenzae 2株では両株共にMIC3.13μg/mlで, CCLのMICに類似した。
C. jejuni 6株でのMICは0.78μg/mlが5株, 3.13μg/mlが1株で, MDM acetateのMICとほぼ同等で, EM, JM, RKMのMICにほぼ類似した。
9. 副作用はTE-031顆粒投与例ではなく, 50mg力価含有錠剤投与例で発疹が1例, 下痢が2例に出現し, そのうち1例は発疹出現例と同一の症例であった。
なお, 服薬状況ではTE-031顆粒投与例で服薬を嫌い自主休薬した症例が12例あった。
10. 臨床検査値では好酸球増多がTE-031顆粒投与例で55例中2例3.6%, TE-031 50mg力価含有錠剤投与例で33例中1例3.0%に出現した。
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