The Japanese Journal of Antibiotics
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42 巻, 3 号
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  • 勝 正孝, 斎藤 篤
    1989 年 42 巻 3 号 p. 543-566
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aminoglycoside系抗生物質 (AGs) は広範な抗菌スペクトルと強い殺菌作用を有し, 多くの感染症の治療に汎用されている。反面, AGsは腎毒性, 聴器毒性, 神経-筋伝達抑制作用を有しており, 又, AGs使用に伴い出現する耐性菌も問題となつている。Isepamicin (以下ISP, 治験コード: HAPA-B,(+)-O-6-Amino-6-deoxy-α-D-glucopyranosyl-(1→4)-O-[3-deoxy-4-C-methyl-3-(methylamino)-β-L-arabinopyranosyl-(1→6) ]-2-deoxy-N1-[(S)-isoseryl]-D-streptamine) は, これら有効性及び安全性両面からの問題点の改良を目標に昭和52年に米国シェリング社において創製され, 東洋醸造株式会社における種々の検討の結果, その有用性が示唆されたため東洋醸造株式会社とエッセクス日本株式会社により開発された新しいAGsである (Fig. 1)。
    ISPはMicromonospora purpureaの培養によつて得られるGentamicin (GM) 群の一成分である Gentamicin B (GM-B) の1位のアミノ基にIsoserine (HAPA: Hydroxyaminopropionic acid) を導入して得られる新しいタイプのAGsであり, 化学構造的にはKanamycin (KM=KM-A) から得られるAmikacin (AMK) に類似している (Table 1)。
    AMKは有効性, 安全性からみてAGsの中でも優れた特徴を有し, 現在汎用されているが, ISPは AMKに比べて抗菌力が強く, 更に腎毒性, 聴器毒性等の安全性にも優れ, 耐性菌も少なく, GM耐性 Fig. 1. ISPの化学構造菌だけでなくAMK耐性菌に対しても抗菌力が認められている。又, AMKを対照薬として実施された二重盲検比較試験で, ISPは呼吸器感染症並びに複雑性尿路感染症において, 臨床的にもその有用性が認められている。
  • 新関 昌宏, 丹野 慶紀
    1989 年 42 巻 3 号 p. 567-572
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    用時溶解して用いる市販の小容量抗生物質注射剤17品目について, 光しやへい式自動微粒子計測器 (HIAC) による微粒子数測定を行い, 各製剤の品質に関して検討した。その結果, 微粒子直径が小さい程その数が増加した。注射剤1容器中の微粒子数は, 直径2.5~10μmでは Cephalothin, Ceftizoxime, Ticarcillin, Cefoxitinの4品目が他よりも多量に含有していた。又, 直径10μm以上では, すべての製剤品が米国薬局方21版 (USP XXI) 基準より極めて小さい値を示した。更に, 直径50μm以上のものは, すべての製剤品で検出されなかつた。以上のことから, 微粒子に関して17品目すべての注射剤が高品質であることがわかつた。
  • 藤井 新也, 藤井 康彦, 井上 康, 大久保 正士, 松谷 朗, 加来 浩平, 矢賀 健, 兼子 俊男
    1989 年 42 巻 3 号 p. 573-578
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    血液悪性疾患の治療に伴い発症した顆粒球減少の時期に, 重篤な感染症の起つた25症例に対し, セフメタゾール (CMZ) を使用し治療を試みた。
    1. 細菌学的効果の検討 15症例において合計20株が分離同定されたが, 9症例においては, 有意な菌は検出されなかつた。分離菌はEnterococcus faecalis5株, Haemophilus influenzae3株, Staphylococcus epidermidis 2株, Klebsiella oxytoca 2株, Staphylococcus aureus 2株, Neisseria, Pseudomonas maltophilia, Enterobactor, α-Streptococcus, β-Streptococcus, Gram-positive cocci各1株で, 合計20株であつた。分離菌の得られた15例中7例に, 菌の消失あるいは著明な減少を認めた。又, 細菌学的に無効であつたもので, 他の発熱を含む臨床所見上有効であつた症例はみられなかつた。細菌学的に無効であつた6例中4例での分離菌はE. faecalisであつた。
    2. 25例中, 臨床効果判定可能であつた23例では著効8例 (34.8%), 有効4例 (17.4%), やや有効4例 (17.4%), 無効7例 (30.4%) で, 著効, 有効, やや有効を合せた臨床的有効率は69.6%であつた。
    3. 末稍好中球数による治療効果の比較では, CMZ投与開始前の好中球数が, 500/mm3未満であつた3症例での有効率は100%, 500/mm3以上の15症例での有効率は66.7%であつた。
    4. CMZ単独で治療したもので判定可能であつた13例では著効6例, 有効3例, やや有効1例, 無効3例で, 著効, 有効, やや有効を合せた有効率は76.9%であつた。一方, アミノ配糖体系抗生物質やペニシリン系抗生物質あるいはホスホマイシン等の併用薬剤を使用した 10例での有効率は60%であつた。
    5. CMZ使用中, 同剤による副作用は認めなかつた。
    血液疾患に伴う重症感染症においては, 一部の特殊な起炎菌による感染症を除き, CMZによる化学療法は有効な治療法であると考えられる。
  • 佐藤 吉壮, 石川 和夫, 岩田 敏, 秋田 博伸, 老川 忠雄, 砂川 慶介
    1989 年 42 巻 3 号 p. 579-593
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) の小児科領域における基礎的検討を行い以下の結果を得た.
    1. 臨床分離株248株に対するMICを測定したところ, 本剤の抗菌力はグラム陰性桿菌よりもグラム陽性球菌に対してより強く認められた.
    2. 血中濃度では, ピーク値のABPC濃度はSBT濃度の約2倍であり, その後時間と共に減少し, 両薬剤ともほとんど同様の濃度推移を示した. 半減期は両薬剤とも約1時間であつた.
    3. 尿中回収率はABPCが投与後6時間までで52-80%, SBTが70-73%であつた.
    4. 止血機構に及ぼす影響については, SBT/ABPC投与前後でProthrombin time (PT), Activated partial thromboplastin time (APTT), Thrombo test (TT), Hepaplastin test (HPT) が変動した症例は1例も認めなかつた. 又, 本剤投与前に比べ投与中の血小板凝集能はやや改善しており, SBT/ABPCは血小板凝集能に対して影響を与えないと思われる.
    全体的に見て出血傾向に関しては安全性の高い薬剤と思われた.
    5. 腸内細菌叢に与える影響については, 動物実験においてはEscherichia coli, Enterococcus faecalis, Bacteroides fragilis, Bifidobacterium breveの4菌種共に減少し, ABPC単独投与に比べ腸内細菌叢に与える影響は大きいと思われる. 臨床例においても, 好気性菌, 嫌気性菌とも大きな変動を認めた. 投与量を増加した場合に糞便中濃度が増加し, その結果腸内細菌叢の変動が大きく, 好気性菌, 嫌気性菌共に総菌数が減少した. 下痢は認めなかつた.
    以上の結果から, 本剤は小児の細菌感染症に対して安全性, 有効性の高い薬剤であると考えられる.
  • 春田 恒和, 大倉 完悦, 黒木 茂一, 山本 初実, 小林 裕
    1989 年 42 巻 3 号 p. 594-597
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    黄色ブドウ球菌性髄膜炎家兎12羽にSulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) 150mg/kg (SBT/ABPC=1: 2) を静注後, 15分ごとに6回, 以後30分ごとに3回, 計9回のそれぞれの薬剤の血中, 髄液中濃度を測定し, ABPC100mg/kg単独投与群9羽の成績と比較した。
    1. SBTは最高髄液中濃度, 最高濃度及び濃度曲線下面積 (AUC) の髄液血清比百分率共に ABPCより高く, 髄液中濃度半減期も長く, いずれにも有意差が認められた。ABPC単独投与群のABPCの値との間には, 半減期がはるかに長かった点を除けば, 大きな開きはみられなかつた。
    2. SBT/ABPC投与群のABPCの値は, ABPC単独投与群に比べて, 最高濃度及びAUC の髄液血清比百分率で有意に低く, 髄液中濃度半減期は長かった。
    3. 以上の成績はSBTとABPCを同時に投与すると, ABPCの髄液中移行が抑制されることを示唆するものと考えられた。
  • 岩田 敏, 山田 健一朗, 佐藤 吉壮, 石川 和夫, 秋田 博伸, 砂川 慶介
    1989 年 42 巻 3 号 p. 598-611
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    昭和61年10月から昭和62年5月までの8カ月間に, 小児入院患者63例に対してSulbactam/ Ampicillin (SBT/ABPC) を投与し臨床的検討を行つた。このうち臨床効果の判定ができたのは58例 (敗血症2例, 扁桃炎3例, 気管支炎12例, 気管支肺炎6例, 肺炎24例, 蜂窩識炎1例, リンパ節炎2例, 膿痂疹1例, 尿路感染症7例) だったが, 著効40例, 有効17例で, 有効率98.3%という成績であった。細菌学的効果は25例, 27株 (Staphylococcus aureus 3株, Streptococcus pneumoniae 2株, Streptococcus pyogenes 1株, β-Streptococcus 2株, Gram-positive cocci 1株, Escherichia coli 5株, Enterobacter aerogenes 1株, Haemophilus influenzae 7株, Haemophilus parainfluenzae 2株, Branhamella catarrhalis 1株, Proteus mirabilis 1株, Salmonella subgenus I 1株) について検討したが, グラム陽性菌で88.9%, グラム陰性菌で66.7%, 全体として74.1%の消失率であった。菌交代を生じた例は認められなかつた。
    副作用及び臨床検査値異常は63例中7例 (11.1%) に下痢, 61例中2例 (3.3%) に好酸球増多, 55例中3例 (5.5%) に血小板増多, 30例中1例 (3.3%) に直接ビリルビン値の上昇, 32例中1例 (3.1%) に総ピリルビン値の上昇, 59例中4例 (6.8%) にGOT値の上昇, 59例中1 例 (1.7%) にGPT値の上昇がそれぞれ認められた。本剤の止血機構に及ぼす影響については, 24例中1例 (4.2%) で異常プロトロンビン (PIVKA II) が検出されたが, 他の血液凝固系検査はいずれも正常で, 出血傾向を認めた症例はなく, 血小板凝集能の抑制も認められなかった。
    以上から, SBT/ABPCは小児の細菌感染症の治療に対して有効性, 安全性の高い薬剤と考えられる。
  • 目黒 英典, 有益 修, 白石 裕昭, 菅又 久美子, 比留間 藤昭, 阿部 敏明, 藤井 良知, 益子 仁, 長尾 芳朗, 岡本 義明
    1989 年 42 巻 3 号 p. 612-622
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    33例の入院小児の各種感染症34症例にSulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) による治療を試み, 33症例が有効以上の成績で, 有効率は97.1%であった。β-Lactamase産生株が起炎菌として関与していた例は14例あり, 1例を除く13例が有効であった。
    下痢, 軟便以外に特記すべき副作用はなく, 本剤は小児の各種感染症の第1選択剤として使用し得る薬剤であると思われた。血中半減期はABPCが0.79時間, SBTが1.02時間であったので1日4回投与が適当と考えられた。
  • 佐藤 肇, 成田 章, 鈴木 博之, 中澤 進一, 松本 貴美子, 中西 好子, 新納 憲司, 中澤 進
    1989 年 42 巻 3 号 p. 623-638
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) の小児科領域における基礎的, 臨床的検討を行い, 次の結果を得た。
    1.SBT/ABPC20~35mg/kg, 静注並びに60分点滴静注した場合のABPC, SBTの血清中濃度半減期 (T1/2) は1時間前後であり, 投与後6時間までにABPC 30~50%, SBT 30~70%が排泄された。又, 化膿性髄膜炎の患児に58mg/kg点滴静注後1時間目におけるABPC, SBTの髄液中濃度は各々0.76, 0.68μg/mlであり髄液/血清比は各々6.39, 5.71%であった。2.治療対象は34例で, 上, 下気道炎が最も多く, 化膿症, 尿路感染症も含まれていた。臨床効果は有効率93.5%, 細菌学的効果は92.3%の除菌率であり, β-Lactamase高度産生菌4株のうち3株が消失し, SBTとの併用がABPCの抗菌活性を増強し, 有効である成績を認めることができた。
    3.副作用は34例中, 下痢5例, 嘔吐・下痢1例がみられ, 各種臨床検査成績においては好酸球増多が2例, GOT, GPT・LDHの軽度上昇各1例が認められたが, いずれも軽度であり継続投与が可能であった。
  • 中尾 吉邦, 木村 宏, 三浦 清邦, 宮島 雄二, 石川 秀樹, 早川 文雄, 久野 邦義
    1989 年 42 巻 3 号 p. 639-650
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) の小児科領域における臨床的検討を行った。
    1.SBT/ABPC静注時のSBT及びABPCの血中濃度半減期はそれぞれ平均1.05時間及び0.90時間であった。
    2.SBT/ABPC診注時の投与後6時間までのSBT及びABPCの尿中排泄率はそれぞれ平均71.2%及び62.2%であった。
    3.SBT/ABPCの臨床的効果を肺炎17例, 扁桃腺炎3例, 頚部リンパ節炎1例及び尿路感染症2例の計23例について検討した。有効率は95.7%であった。特にβ-Lactamase高度産生Escherichia coliによる尿路感染症2例ではSBT/ABPC投与により改善した。
    4.副作用は軽度の下痢2例であった。臨床検査値異常も軽度であった。
  • 伊藤 正寛, 庵原 俊昭, 神谷 齊, 櫻井 實, 清水 信, 西 英明, 川口 寛, 吉住 完, 井上 正和, 小島 當三
    1989 年 42 巻 3 号 p. 651-661
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC)を小児25例に投与して以下のような結果を得た。
    1.SBT/ABPC 30mg/kgを30分で点滴静注した時のT1/2はSBTが0.94時間, ABPCは0.86時間で投与終了後6時間の尿中排泄率の平均はSBT 64.2%, ABPC 42.9%であった。又, 髄膜炎発症時には良好な髄液移行を示した。
    2.気管支肺炎, 肺炎10例, 気管支炎2例, 腎盂腎炎, 腎孟炎4例, 細菌性髄膜炎3例, 頸部リンパ節炎, 急性扁桃炎, 溶連菌感染症,療疽,急性虫垂周囲膿瘍,敗血症をそれぞれ1例の計25例にSBT/ABPCを投与したところ,著効17例, 有効7例, やや有効1例, 無効0例で全体の有効率は96%であった。特に気管支肺炎, 気管支炎, 尿路感染症に対しては100%の有効率で, 極めて優れた臨床効果を示した。
    3.副作用に関しては発疹, 血小板増加, GOT, GPTの軽度上昇,好 酸球増加, 白血球減少を認めた。臨床的に重篤な副作用は認められず, 小児科領域における使用についても安全性の高い抗生剤と思われた。
  • 中村 はるひ, 宮津 光伸, 笠井 啓子, 岩井 直一, 種田 陽一
    1989 年 42 巻 3 号 p. 662-674
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児科領域における Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC)の基礎的, 臨床的検討を行った。
    1.吸収, 排泄
    6~8歳の小児4例における血清中濃度と尿中排泄について検討した。
    30mg/kg One shot静注した際の血清中濃度は静注開始後1/4時間ではSBT, ABPCそれぞれ平均27.4±2.2μg/ml, 42.8±3.9μg/mlであり, その後は平均1.06±0.15時間, 0.84±0.05時間の半滅期をもって推移し, 6時間では平均0.3±0.2μg/ml, 0.2±0,1μg/mlであった。又, 静注開始後6時間までの尿中回収率はSBT, ABPC各々平均59.0±22.4%, 58.4±25.3%であった。
    2.臨床
    2カ月から11歳までの小児36例に本剤を投与し, 臨床効果, 細菌学的効果, 副作用について検討した。
    臨床効果の判定対象となった急性化膿性扁桃炎5例, 急性肺炎26例, 急性腎孟腎炎1例, 計32例に対する臨床効果は著効27例, 有効5例であり, 有効率は100.0%であった。なお, β-Lactamase産生菌による6例に対しては,すべて著効の成績が得られた。
    又, 原因菌と推定されたStaphylococcus aureus 1株 (β-Lactamase産生株), Streptococcus pneumoniae 2株, Haemophilus influenzae 16株 (β-Lactamase産生株5株, 非産生株11株),Haemophilus parainfluenzae 1株 (β-Lactamase非産生株), Escherichia coli 2株 (β-Lactamase非産生株) に対する細菌学的効果はβ-Lactamase産生 H.influenzae 1株が減少であった以外はすべて消失であり, 全株でみた除菌率は95.5%であった。
    更に, 副作用は臨床上では下痢が1例, 臨床検査値異常としてはGOT並びにGPTの上昇が1例に認められただけであった。
    以上の成績から, 小児期の一般感染症において, 本剤がβ-Lactamase産生菌に対しても非産生菌の場合と同様に優れた有効性が得られること, 又, 安全性においても問題のない薬剤であることが確認された。
  • 伊藤 節子, 真弓 光文, 伊藤 正利, 三河 春樹
    1989 年 42 巻 3 号 p. 675-685
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    SulbactamとAmpicillin の配合剤である注射用Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC)の有効性と安全性について, 生後5カ月から12歳の男児9例, 女児15例の計24例を対象として検討し, 次のような結論を得た。
    1.本剤30mg/kg, 30分かけての点滴静注, 又はOne shot静注による吸収排泄試験では, 点滴静注における血中濃度のPeak値はABPCが48.8μg/ml, SBTが35.3μg/mlであり, 血中半減期はABPCが45.6分, SBTが52.8分であった。又, 尿中回収率は6時間でABPCが45.9%, SBTが64.4%であった。
    One shot静注における最高血中濃度はABPCが48.5μg/ml, SBTが25.7μg/mlであり, 血中半減期はABPCが34.8分, SBTが45.0分であった。尿中回収率は6時間でABPCが50.6%, SBTが69.8%であった。
    2.気管支肺炎14例, 扁桃炎4例, 急性上気道炎1例, 顎下リンパ節炎1例, 蜂窩織炎1例, 腸炎1例, 腎孟腎炎1例, 膀胱炎1例に対し, 本剤を1日投与量として, 88.2~133.3mg/kg静注又は点滴静注により投与したところ, 臨床効果は著効17例, 有効7例で, 有効率は100%であつた。
    3.臨床的副作用は認められず, 1例に軽度の好酸球増多, 1例にGOT, GPTの上昇を認めただけであった。
    4.本剤のβ-actamase高度産生株に対する接種菌量106CFU/mlにおけるMIC分布は, Staphylococcus aureus 1株に対して3.13μg/ml, Brahamella catarralis 5株に対しては, 0.10μg/mI 2株, 0.20μg/ml 3株, Haemophilus parainfluenzaeの1株に対しては, 3.13μg/mlであった。
    5.本剤は小児科領域の細菌感染症に対して, 広い適用範囲を持つABPCの特性にSBTのβ-Lactamase阻害作用を合せ持つことにより優れた抗菌力を示し, 安全性も高く, 有用な薬剤であると考える。
  • 西村 忠史, 田吹 和雄, 青木 繁幸, 杉田 久美子, 高木 道生
    1989 年 42 巻 3 号 p. 687-700
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC)の小児科領域における基礎的並びに臨床的検討を行い, 下記の成績を得た。
    基礎的検討として, SBT/ABPCの血清中濃度及び尿中排泄率を測定した。30分間点滴静注時の血清中濃度推移はSBT/ABPC 15mg/kg1例, 30mg/kg2例, 60mg/kg 1例で検討した。いずれの投与量においても, 濃度ピークは点滴静注終了時にあり, ABPC (SBT) の濃度は各々18.0μg/ml (12.4μg/ml), 81.0μg/ml (53.7μg/ml) と300μg/ml (200μg/ml), 82.3μg/ml (45.9μg/ml)であり, 半減期は各々0.84時間 (0.82時間), 0.96時間 (1.44時間) と0.93時間 (1.19時間), 1.20時間 (1.36時間) であった。又, 投与後6時間までの尿中排泄率は, SBT/ABPC 15mg/kg投与時ABPC 51.3%, SBT 49.5%, 30mg/kg 投与時ABPC 45.4%, 66.2%, SBT 56.2%, 74.4%, 60mg/kg投与時ABPC 74.0%, SBT 76.1%であった。なお, 化膿性髄膜炎症例の急性期におけるSBT/ABPC 36.4mg/kg 30分間点滴静注後1時間での髄液濃度 (血清中濃度) はABPC 1.22μg/ml (11.2μg/ml), SBT 0.82μg/ml (9.42μg/ml) で, 髄液/血清濃度比はABPC 10.9%, SBT 8.7%であった。
    臨床的検討は化膿性扁桃炎8例, 咽頭炎, 扁桃周囲膿瘍各々1例, 気管支炎4例, 肺炎3例, 化膿性リンパ節炎, 伝染性膿痂疹, 右大腿部膿瘍, 尿路感染症各々1例の計21例について行い, 臨床効果は著効14例, 有効7例で全例が有効以上の成績であった。細菌学的効果はStaphyloccus aureusによる4例,Staphyloccus simulans,Staphyloccus epidermidis各々1例, Streptococcs pneumonuae 2例,Streptococc pyogenes 3例, Haemophilus influenzae 2例,Haemophilus parainfluenzae 1例, Escherichia coliによる2例について検討されたが H.influenzaeの1例を除き, 他は全例本剤使用中に消失し有効であった。副作用は臨床効果判定からは除外した4症例を加えた計25例で検討し, 1例に発熱及び発疹を認め, 本剤の投与を中止したが, 他には治療に支障となる副作用は認めなかった。
  • 服部 和裕, 東野 博彦, 小林 立美, 山城 千尋, 登 美, 中村 縁, 佐藤 勇, 黒川 浩美, 野木 俊二, 小林 陽之助
    1989 年 42 巻 3 号 p. 701-717
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) について, 基礎的及び臨床的検討を行い, 次の結果を得た。
    1. 抗菌力
    ABPCの感受性株ではSBT/ABPCのMICはABPCに比べ, 1段階程度劣るか, ほぼ同等であったが, ABPC耐性株では108cells/ml接種でSBT/ABPCのMICはABPCに比べ数段優れていたものが多かった。
    β-Lactamase産生菌のなかで, 高度産生菌に対するSBT/ABPCとABPCのMICの相関では, ABPCの耐性株でSBT/ABPCに感受性を示したものが多くみられた。
    2. 吸収・排泄
    SBT/ABPC体重kg当り50mg, 20mgを30分間点滴静注した2例で, その血清中濃度ピークは点滴静注終了時にみられ, SBTがそれぞれ45.5μg/ml, 12.5μg/ml, ABPCはそれぞれ83.0μg/ml, 22.9μg/mlであり, 半減期はSBTが0.94時間, ABPCは0.98時間であった。尿中排泄率は6時間目までの平均がSBT84.4%, ABPC63.1%であった。
    3.臨床成績
    肺炎9例, 気管支肺炎1例, 膿胸1例, 扁桃炎1例, 上気道炎2例, 溶連菌感染症1例, 尿路感染症7例, 蜂窩織炎1例, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群1例の計24例について検討し, 臨床効果は19例有効以上, 有効率86.41%であった。なお, 副作用として悪心・嘔吐1例, 好酸球増多2例, GOT・GPT軽度上昇2例, LDH上昇2例を認めた。
  • 春田 恒和, 黒木 茂一, 大倉 完悦, 吉岡 伸子, 山岡 幸司, 橋本 尚子, 小林 裕
    1989 年 42 巻 3 号 p. 719-724
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    小児科領域におけるSulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) の有用性について検討した。
    1.20例の小児感染症を本剤1回27.8~47.4mg/kg, 1日3~4回静注で治療した。マイコプラズマ肺炎2例を除く18例 (肺炎9例, 尿路感染症6例, 扁桃炎, 上顎洞炎, 上顎骨骨髄炎各1例) における臨床効果は著効13例, 有効5例で, 無効例はなかった。
    2.18例中13例から検出された16株 (Staphylococcus aureus1株, Enterococcus faecalis3株, Haemophilus influenzae4株, Haemophilus parainfluenzae2株, Escherichia coli5株, Serratia1株) に対する細菌学的効果は消失13株, 減少1株, 不変2株で, 消失率は81.3%であった。消失した13株中には, 3株のβ-Lacamase高度産生株が含まれていた。
    3. 副作用として発疹が1例, 検査値異常として好酸球増加, GOT, GPT上昇が7例に認められたが, 重大なものはなかった。
    4.2例の小児に本剤30mg/kgを静注し, 血中濃度を検討した。静注後30分の血中濃度はSBT19.0, 21.0μg/ml, ABPC29.2, 31.6μg/mlで, 4時間後にはそれぞれ0.48, 0.59μg/ml, 0.62, 0.89μg/mlとなり, 半減期はSBT0.67, 0.70時間, ABPC0.64, 0.69時間であった。
    5. 以上の成績から, 本剤は小児細菌感染症の治療に有用であり, 1回30mg/kg1日3~4回の静注で所期の効果をあげ得ると考えられた。
  • 武田 英二, 細田 禎三, 市岡 隆男, 宮尾 益英
    1989 年 42 巻 3 号 p. 725-731
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたSulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) について, 小児科領域における臨床的検討を行い, 以下の結果を得た。扁桃炎1例, 肺炎14例, 亜急性細菌性心内膜炎1例, 膿胸1例及び敗血症疑い1例の計18例に投与し, 著効14例, 有効4例で有効率100%であつた。細菌学的除菌効果も優れており, 8株中7株が消失し, 1株は減少した。副作用と考えられる臨床症状を認めたものはなく, 好酸球増多を2例, 血小板数増加を2例, GOT上昇を1例及びGOT・GPT上昇を1例認めたが, いずれも軽度であった。SBT/ABPCは小児細菌感染症に対して有用な抗生剤と考えられた。
  • 関口 隆憲, 岡本 喬, 大原 克明, 幸山 洋子, 西森 緑, 宮崎 雅仁
    1989 年 42 巻 3 号 p. 733-742
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) を20例の小児急性細菌感染症に静注投与した。
    症例の内訳は肺炎14例, 頸部化膿性リンパ節炎2例, 急性気管支炎, 膿胸, 蜂窩織炎, 化膿性髄膜炎各1例であった。
    臨床効果は20例中18例が著効又は有効で, 有効率は90%であった。細菌学的効果は14株で検討でき, 14株すべてが消失し, 消失率は100%であった。β-Lactamaseの高度産生株に対するSBT/ABPCのMICはABPCより同等ないし数管優れた。
    1例で髄液中濃度を測定したが, 髄液中への移行は良好であった。軟便が1例, 好酸球増多が2例, 血小板増多が1例みられた。
  • 林 正俊, 貴田 嘉一, 松田 博, 村瀬 光春
    1989 年 42 巻 3 号 p. 743-753
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    注射用合剤Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) の小児科領域における基礎的, 臨床的検討を行う目的で, 21名の小児でその体内動態, 有効性及び安全性について検討し, 以下の結果を得た。
    1. SBT/ABPC投与時の血中濃度変化を検討した結果, SBTのT1/2は1.03時間, ABPCのT1/2は0.83時間であった。
    2. SBTとABPCを1: 2の割合で配合した時の臨床材料分離菌株に対するin vitroでの抗菌力 (MIC) はStaphylococcus aureus, Haemnophilus influenzaeに対して併用効果が認められたが, Escherichia coliに対する抗菌活性は比較的低値を示した。S. aureusに対するSBT/ABPCの抗菌活性はPiperacillin (PIPC), Cefazolin (CEZ), Cefmetazole (CMZ) のそれとほぼ同等であるが, H. influenzaeに対しては, CEZ, CMZ, より高かった。又, E. coliに対しては, PIPC, CEZ, CMZよりも低い抗菌活性を示した。
    3. 咽頭炎3例, 気管支炎10例, 肺炎5例, 急性腸炎, 腎盂腎炎, 敗血症疑各1例の合計21例に対するSBT/ABPCの臨床的有効率は95.2% (20例/21例) で細菌消失率は80% (8株/10株) であった。
    4. SBT/ABPC投与によると思われる副作用は発疹, 下痢, 血小板増多, 好酸球増多が各1例であったが, 全例一過性であった。
  • 柳島 正博, 楊井 正紀, 柳 忠道, 辻 芳郎, 中山 紀男, 今村 甲
    1989 年 42 巻 3 号 p. 754-765
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) の小児科領域における基礎的, 臨床的検討を行った。
    1. 吸収及び排泄
    SBT/AEPC30mg/kg, 60mg/kg30分点滴静注を行った。血清中濃度のピークは両投与群とも点滴静注終了直後にあり, 30mg/kg投与群ではSBT22.4±0.8μg/ml, ABPC32.8±1.0μg/ml, 60mg/kg投与群ではSBT54.2μg/ml, ABPC93.8μg/mlであった。濃度は投与量に依存していた。半減期の平均は30mg/kg投与群ではSBT0.91±0.04時間, ABPC0.90±0.05時間で, 60mg/kg投与群ではSBT1.08時間, ABPC0.84時間であった。尿中濃度のピークは30分点滴静注後0~2時間であり, 6時間までの累積排泄率は30mg/kg投与群でSBT71.4±2.5%, ABPC54.6±3.3%, 60mg/kg投与群でSBT80.0%, ABPC63.7%であった。
    2. 臨床効果
    対象疾患は呼吸器感染症15例, 尿路感染症3例, リンパ節炎2例, その他4例の計24例であった。臨床効果は著効14例, 有効9例, やや有効1例で, 有効率は95.8%であった。細菌学的効果では分離菌11株に対し, 消失9株, 不変1株, 不明1株で, 消失率は90.0%であった。臨床症状としての副作用は特に認められなかつたが, 臨床検査値異常として1例にGOTの軽度上昇が認められた。
  • 小倉 英郎, 久川 浩章, 川久保 敬一, 久保田 晴郎, 島内 泰宏, 松本 健治, 友田 隆士, 利根 洋一, 倉繁 隆信
    1989 年 42 巻 3 号 p. 766-772
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Sulbactam/Ampicillin (SBT/ABPC) の小児科領域における臨床効果並びに安全性について検討した。
    対象は12日から13歳2カ月までの小児であり, 急性扁桃炎2例, 急性気管支炎2例, 敗血症2例, 急性腎盂腎炎, 急性腸炎及び骨髄炎各1例の計9例であった。
    SBT/ABPCを100~300mg/kg/日, 4~17日間投与した場合のSBT/ABPCの臨床効果は著効6例, 有効2例, やや有効1例であり, 有効以上の有効率は88.9%であった。
    副作用並びに臨床検査値異常は明らかにSBT/ABPC投与によると思われるものはなかつた。
  • 本廣 孝, 阪田 保隆, 織田 慶子, 荒巻 雅史, 田中 耕一, 古賀 達彦, 島田 康, 藤本 保, 山下 文雄, 坂本 博文, 石井 ...
    1989 年 42 巻 3 号 p. 773-790
    発行日: 1989/03/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しく開発されたβ-Lactamase inhibitorのSulbactam (SBT) とAmpicillin (ABPC) が1: 2の配合比からなる注射剤SBT/ABPCを小児6例中各3例に30mg/kgか60mg/kgをOne shot静注で投与し, 血漿中, 尿中のSBTとABPC濃度及び尿中回収率を測定, 扁桃炎2例, 気管支炎3例, 肺炎45例, 胸膜肺炎2例, 膿胸1例, 尿路感染症3例, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群3例, 蜂窩織炎2例, 化膿性リンパ節炎3例, 顎下腺炎1例, 計65症例に本剤を1日量平均101.2mg/kg, 分3か分4 (分3は24例, 分4は41例), いずれもOne shot静注で, 平均7同間投与し, その臨床効果, 細菌学的効果, 副作用及び臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
    1. 小児6例中各3例に本剤を30mg/kgか60mg/kgをOne shot静注で投与してのSBTとABPCの平均血漿中濃度はすべての症例が投与5分後に最高濃度を示し, SBTでは各々49.8, 90.3μg/ml, ABPCではそれぞれ99.8, 189.7μg/mlで, 両投与群共にABPCはSBTより約2倍高い濃度を示し, 両投与群でSBT, ABPC共にDose responseが認められた。30mg/kg投与群の平均半滅期はSBT, ABPCで各々0, 889時間, 0.857時問, 60mg/kg投与群ではそれぞれ0.882時間, 0.834時間で, 両投与群のSBT, ABPCの平均半減期はほぼ同じで, SBTとABPCの平均半減期を比較しても類似した。
    2. 前述の各3例における平均尿中濃度はSBT, ABPC共に投与後0~2時間が最も高い濃度で, 30mg/kg投与群のSBTでは1,677μg/ml, ABPCでは2,730μg/ml, 60mg/kg投与群では各々2.693μg/ml, 3,623μg/mlを示し, 前者の投与後6時間までの平均回収率はSBT72.4%, ABPC56.8%後者ではそれぞれ72.7%, 52.0%を示し, 両投与群のSBTの平均回収率に比較しABPCの平均回収率は低率であった。
    3. 種々の細菌感染症例に対する臨床効果は62例95.4%が有効以上で, 高い有効率を示した。
    4. 細菌学的効果は10例に判定でき, 9株が消失し, 菌消失率は90.0%と良好であった。
    5. 本剤が投与された65例での副作用は発疹が1例1.5%に出現, 臨床検査値では顆粒球減少1例1.7%, 好酸球増多4例6.9%, 血小板数の増多2例4.3%血小板数の減少1例2.1%, GOTの単独異常上昇2例3.7%, GOTとGPTの同時異常上昇2例3.7%, LDHの異常上昇1例2.4%で, Al-P, BUN, Creatinineの異常を示した症例はなかつた。
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