新しく開発されたβ-Lactamase inhibitorのSulbactam (SBT) とAmpicillin (ABPC) が1: 2の配合比からなる注射剤SBT/ABPCを小児6例中各3例に30mg/kgか60mg/kgをOne shot静注で投与し, 血漿中, 尿中のSBTとABPC濃度及び尿中回収率を測定, 扁桃炎2例, 気管支炎3例, 肺炎45例, 胸膜肺炎2例, 膿胸1例, 尿路感染症3例, ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群3例, 蜂窩織炎2例, 化膿性リンパ節炎3例, 顎下腺炎1例, 計65症例に本剤を1日量平均101.2mg/kg, 分3か分4 (分3は24例, 分4は41例), いずれもOne shot静注で, 平均7同間投与し, その臨床効果, 細菌学的効果, 副作用及び臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
1. 小児6例中各3例に本剤を30mg/kgか60mg/kgをOne shot静注で投与してのSBTとABPCの平均血漿中濃度はすべての症例が投与5分後に最高濃度を示し, SBTでは各々49.8, 90.3μg/ml, ABPCではそれぞれ99.8, 189.7μg/mlで, 両投与群共にABPCはSBTより約2倍高い濃度を示し, 両投与群でSBT, ABPC共にDose responseが認められた。30mg/kg投与群の平均半滅期はSBT, ABPCで各々0, 889時間, 0.857時問, 60mg/kg投与群ではそれぞれ0.882時間, 0.834時間で, 両投与群のSBT, ABPCの平均半減期はほぼ同じで, SBTとABPCの平均半減期を比較しても類似した。
2. 前述の各3例における平均尿中濃度はSBT, ABPC共に投与後0~2時間が最も高い濃度で, 30mg/kg投与群のSBTでは1,677μg/ml, ABPCでは2,730μg/ml, 60mg/kg投与群では各々2.693μg/ml, 3,623μg/mlを示し, 前者の投与後6時間までの平均回収率はSBT72.4%, ABPC56.8%後者ではそれぞれ72.7%, 52.0%を示し, 両投与群のSBTの平均回収率に比較しABPCの平均回収率は低率であった。
3. 種々の細菌感染症例に対する臨床効果は62例95.4%が有効以上で, 高い有効率を示した。
4. 細菌学的効果は10例に判定でき, 9株が消失し, 菌消失率は90.0%と良好であった。
5. 本剤が投与された65例での副作用は発疹が1例1.5%に出現, 臨床検査値では顆粒球減少1例1.7%, 好酸球増多4例6.9%, 血小板数の増多2例4.3%血小板数の減少1例2.1%, GOTの単独異常上昇2例3.7%, GOTとGPTの同時異常上昇2例3.7%, LDHの異常上昇1例2.4%で, Al-P, BUN, Creatinineの異常を示した症例はなかつた。
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