Cefpodoxime proxetil (CPDX-PR, CS-807) はOxime型Cephem系抗生物質であるCPDXの4位カルボン酸をIsopropoxycarbonyloxyethyl基でエステル結合させた新しい経口用Cephem系薬剤で, 主に腸管壁のエステラーゼにより加水分解を受け, 活性体としてのCPDXは体液中に存在する。本邦ではその製剤中錠剤について種々の検討がなされているが, 小児用として新しくドライシロップが製剤化された。
そこで, 本剤のドライシロップを8歳1カ月から10歳10カ月の男児6例中各3例にそれぞれ3mg/kg, 6mg/kgを食後20分に経口投与し, 血清中濃度, 尿中濃度及び回収率を測定, 2カ月から11歳8カ月の咽頭炎13例, 扁桃炎21例, 急性気管支炎4例, 肺炎6例, 胸膜炎1例, 猩紅熱13例, 尿路感染症41例, 包皮炎3例及び細菌性赤痢3例, 計105例に1回平均投与量3.4mg/kgを1日3回か4回 (3回は96例, 4回は9例) で, 平均7日間投与し, その臨床効果, 細菌学的効果をみると共に, 当科保存株の
Streptococcus pyogenes 52株,
Streptococcus agalactiae18株,
Bordetella pertussis 11株とCPDX-PRを投与した症例から分離の
Staphylococcus aureus52株,
S. pyogenes 58株,
Haemophilus influenzae 2株,
Escherichia coli 10株,
Proteus minabilis 1株につき, 当科保存株では接種菌量10
8, 10
6cfu/mlにおけるR-3746 (CPDXのNa塩), Cefaclor (CCL), Cephalexin (CEX), Amoxicillin (AMPC), Methicillin (DMPPC), CPDX-PRを投与した症例から分離の細菌では両接種菌量におけるR-3746, CCL, CEX, Cefadroxil, Ampicillin (ABPC), DMPPC, Cloxacillin (MCIPC) の薬剤感受性試験を実施, 副作用及び臨床検査値への影響を検討したところ, 次のような結果を得た。
1. 3mg/kg, 6mg/kg投与群におけるCPDXの平均血清中濃度はいずれも投与2時間後に最高濃度を示し, 各々2.00μg/ml, 4.27μg/mlで, 両投与量群間にDose responseがみられた。平均半減期はそれぞれ2.03時間, 2.28時間で類似し, 平均AUCは各々10.65μg・hr/ml, 21.80μg・hr/mlで, 両投与量群間にDose responseが認められた。
2. 血清中濃度を測定した同一の症例におけるCPDXの平均尿中濃度は3mg/kg投与群では投与後2~4時間, 6mg/kg投与群では投与後4~6時間が最も高い濃度で, それぞれ171.3μg/ml, 265μg/mlを示し, 投与後8時間までの平均回収率は各々44.7%, 43.5%で類似した。
3. 臨床効果は105例中103例で判定でき, 100例が有効以上で, 有効率は97.1%と優れた成績を示した。
4. 細菌学的効果は46株について判定でき, 42株が消失し, 消失率は91.3%と良好であつた。
5. 当科保存株中
S. pyogenes 52株の 接種菌量10
8, 10
6cfu/mlに対するR-3746のMIC
90はそれぞれ0.05, 0.012μg/mlを示し, AMPCのMICと類似かほぼ同じで, 他の3剤のMICより小で,
S. agalactiae 18株の両接種菌量に対するR-3746のMICgoは各々0.05, 0.024μg/mlで, AMPCのMICに類似の傾向を示し, 他の3剤のMICより小であった。
B. pertussis 11株の両接種菌量に対するR-3746のMIC
90はそれぞれ100, 50μg/mlで, AMPC, DMPPCに次ぐ抗菌力であつた。
CPDX-PRを投与した症例からの分離株中グラム陽性球菌では
S. aureus 52株の接種菌量10
8, 10
6cfu/mlに対するR-3746のMICはいずれも3.13μg/mlで, MCIPCのMICより大であつたが, 他5剤のMICと類似の傾向を示し,
S. pyogenes 8株の両接種菌量に対するR-3746のMICはすべてが0.05μg/ml以下で, ABPC, MCIPCのMICと同値を示し, 他4剤のMICより小であつた。グラム陰性桿菌中
H. influenzae 2株の両接種菌量に対するR-3746のMICは2株共に0.10μg/ml,
E. coli10株の両接種菌量に対するR-3746のMICは0.20μg/mlから6.25μg/ml域,
P. mirabilis 1株の両接種菌量に対するR-3746のMICはいずれも0.10μg/mlで, 3菌種共にR-3746のMICは他6剤のMICより小であつた。
6. 副作用の出現例はなく, 本剤の服薬を嫌つた症例が2例みられた。
7. 臨床検査値では血小板数の異常増加が38例中1例2.6%, GOT, GPTの同時異常上昇が35例中1例2.9%に出現した。
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