The Japanese Journal of Antibiotics
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44 巻, 5 号
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  • 原 耕平, 熊澤 浄一
    1991 年 44 巻 5 号 p. 481-493
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Cefotiam hexetill (CTM-HE) は武田薬品工業 (株) において新しく開発された経口用セファロスポリン系抗生物質である。その化学構造式はFig.1のとおりで, すでに市販されている注射用セファロスポリン系抗生物質Cefotiam (CTM) を1-(Cyclohexyloxycarbonyloxy) ethyl ester誘導体とし, 経口投与を可能にしたものである。
    本剤にはそれ自体には抗菌作用はないが, 経口投与後腸管粘膜で速やかに加水分解を受けてCTMとして吸収され, 抗菌作用を発揮する1)。
    抗菌活性の本体であるCTMは, すでに知られているように, 従来の経ロセフェム系抗生物質に比べてグラム陽性菌からゲラム陰性菌にわたつてバランスのとれた抗菌力を示し, 又, β-ラクタマーゼ, 特にペニシリナーゼ型のβ-ラクタマーゼに安定であるため, ペニシリン耐性菌及び一部の経ロセファロスポリン系抗生物質耐性菌にも抗菌力を示す2~4)。CTM-HEの有効性と安全性については第35回日本化学療法学会総会において, それまでに得られた基礎研究成績と一般臨床試験成績が発表され, 日本化学療法学会雑誌 (Chemotherapy) にもその成績が報告されているが5), ここではそれ以外の成績も含めCTM-HEの概要についてまとあてみた。
  • 原 耕平, 松本 文夫
    1991 年 44 巻 5 号 p. 494-505
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Roxithromycin (RXM RU28965) はフランス, ルセル・ユクラフ社において開発された新14員環マクロライド系抗生物をであり, Fig.1に示すように, エリスロマイシンAの10位のカルボニル基を2-メトキシ-エトキシ-メチルオキシムに置換した半合成品である。
    エリスロマイシン (EM) は胃酸に不安定であり, 又, 経口投与により十分な吸収を得られない欠点を有していたが, 本剤は10位のカルボニル基を2-メトキシ-エトキシ-メチルオキシムに置換することにより, 経口投与による吸収が良く組織移行性が良好となり, in vivo抗菌力に優れる特長を持つた薬剤である1, 2)。
    RXM錠の臨床治験は, 全国規模の研究会が組織され, 本剤の特長を生かし, 既存のマクロライド系抗生物をの半量, 又は4分の1の量の300mg/日 (150mg1日2回投与) で評価がなされ, その有用性が高く評価されている。
  • 吉田 稔, 渡辺 憲太朗, 田丸 紀子, 石橋 凡雄, 高本 正祇, 山田 穂積, 加藤 収, 山口 常子, 安藤 正幸, 松本 充博, 中 ...
    1991 年 44 巻 5 号 p. 506-514
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    ピリドンカルボン酸系合成抗菌剤Ciprofloxacin (CPFX) を慢性呼吸器感染症83例 (有効性評価対象68例) に1回200mg, 1日3回, 14日間以上経口投与した。急性増悪例に対する臨床効果は投与2週目判定で52.5% (21例/40例), 4週目判定で75.0% (24例/32例) であった。慢性炎症例に対する改善効果は2週間目判定で23.1% (6例/26例), 4週間目で26.9% (7例/26例) であったが, 悪化した例はなかった。急性増悪の予防の目的で本剤を60日以上投与した6例において, 2例に各々投与2カ月後, 3ヵ月後に急性増悪を認めたが, 60日以内に急性増悪をきたした症例はなく, 他の4例は最長200日間急性増悪を認あなかった。細菌学的にはPseudomonas aeruginosaを除く菌種に対しては比較的良好な除菌率が得られたが, P. aeruginosaに対しては約20%であつた。安全性に関しては, 3例に副作用が, 5例に臨床検査値異常が認められたが特に問題となるものはなかった。
    以上の結果から, CPFXは慢性呼吸器感染症の急性増悪の治療及び急性増悪の予防に有用な経口抗菌剤と評価できる。
  • 堀田 知光, 森島 泰雄, 齋藤 英彦, 小寺 良尚, 平林 憲之, 田中 正夫, 水野 晴光, 鈴木 久三, 加藤 幸男, 森下 剛久, ...
    1991 年 44 巻 5 号 p. 515-528
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    名古屋大学第1内科及びその関連の多施設による臨床試験において, 血液疾患に合併した感染症患者111例に対しカルバペネム系抗生物質であるImipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) とAmikacin sulfate (AMK) の併用療法の臨床的検討を試みた。又, 基礎的にもChecker board法による検討を加えた。
    1. 併用投与パターンはIPM/CS 2g/日+AMK 400mg/日が60例で全体の64.5%を占め, その有効率は66.7%であつた。
    2. 有効性評価可能症例93例の臨床効果は, 著効20例, 有効37例, やや有効8例, 無効28例であり, 有効率61.3%であつた。
    3. 併用投与開始直前の好中球数をみると, 100/μl未満の症例は38例 (41.8%), 100~500/μl未満の症例は21例 (23.1%), 500/μl未満の症例は32例 (35.2%) であり, 500/μl以下の強い好中球減少時の投与開始症例が64.8%を占めた。又, その臨床効果は, 順に68.4% (26例/38例), 42.9% (9例/21例), 68.8% (22例/32例) であつた。
    4. 分離された菌は血液由来11株, 喀痰由来13株, 膿由来6株の計30株で, 血液由来の11株のうち消長が追えた5株中4株が消失した。
    5. 血液由来の6株について, IPMとAMKのin vitroでの併用効果をChecker board法により検討した結果, 4株 (66.7%) に相乗効果, 2株 (33.3%) に相加効果を認めた。
    6. 安全性評価対象108例において, 副作用は9例に, 臨床検査値異常は2例に認められたが, いずれも軽度で一過性であり, 併用による増強は認められなかつた。
    以上の結果から, IPM/CSとAMKの併用療法は, 特に高度の顆粒球減少時における感染症に対し基礎的及び臨床的に優れた有用性を認めた。
  • 出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 鈴木 由美子, 深山 成美, 石原 理加, 小田 清次
    1991 年 44 巻 5 号 p. 529-537
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    難治性感染症を対象にしたAztreonamとClindamycin (CLDM) の併用療法が, 臨床効果を高めているという報告があるため, 多数の新鮮臨床分離株を対象にして, 両剤の試験管内における抗菌併用効果を検討した。
    1. 両剤の併用効果はStaphylococcns anreus, Staphylbcoccus epidermidis, Streptococcus pneumoniae, そしてHaemophilus influenzae, すなわちCLDMに感受性もしくは低感受性の菌種に対しては, CLDMの1MICもしくはsub MIC濃度存在下で相乗効果が認あられた。
    2. Escherichia coli, Klebsiella pneumoniae, Citrobacter freundii, Enterobacrer cloacae, Seoratiamareescens, そしてPseudomonas aeruginosa, すなわちCLDMに感受性を示さないこれらの菌種に対しては, CLDMの血中持続濃度程度存在下において, 一部には相乗, 大部分の菌種に相加もしくは弱い相加効果が認められた。
    3. 両剤の併用による拮抗は認められなかつた。
  • 千村 哲朗
    1991 年 44 巻 5 号 p. 538-542
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Asymptomatic bacteriospemiaの治療に対するCefteram pivoxil (CFTM) 投与の臨床的有効性を明らかにするために, 以下の基礎的検討を行つた。
    1. 健常成人 (n=5) にCFTM200mg経口投与後の精液中への移行濃度の検討では, 投与5時間後に0.66±0.04μg/mlの最高値を示し, 以後急減し, 7時間後0.15±0.03μg/mlを示した。
    2. 精液 (n=65) から検出された菌種 (好気性菌11株, 嫌気性菌48株) に対するCFTM, Cefaclor (CCL), Lomefioxacin (LFLX) の感受性を比較検討した。3剤の嫌気性菌に対する抗菌活性相関では, CFTMがCCL, LFLXより優れた傾向を示し, Peptostreptococcus sp.についてもLFLX, CCLに比ベ同様の傾向を示した。しかし, CFTMの精液中への移行濃度からみて, 好気性菌, 嫌気性菌共に感受性を認めない菌種もあり, 抗生物質投与による除去対象となる菌種と, 抗生物質の選択, 投与法については今後の検討が必要である。
  • 永野 清昭, 中山 紀男, 辻 芳郎, 宮副 初司
    1991 年 44 巻 5 号 p. 543-551
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新しいセフェム系抗生物質Cefpirome (CPR) について基礎的, 臨床的検討を行ったので報告する。
    1. 体内動態
    CPRを20mg/kg静注, 20mg/kg点滴静注, 40mg/kg点滴静注投与し, 血漿中濃度の推移と尿中排泄を検討した。Cmaxは20mg/kg静注で233±7.6μg/ml, 20mg/kg点滴静注で88.5 ±14.5μg/ml, 40mg/kg点滴静注では116±15μg/mlであつた。T1/2 (β) は1.18~2.68時間であつた。投与後6時間までの尿中回収率は, 40.2~69.8%であつた。
    2. 臨床成績
    対象疾患は呼吸器感染症14例, 尿路感染症2例, リンパ節炎1例, 蜂窩織炎2例, 急性中耳炎1例の20例であつた。投与日数不足の中耳炎を除く19例の臨床効果は, 著効12例, 有効6例, 無効1例で, 有効率は94.7%であった。臨床症状としての副作用は特に認められなかつたが, 臨床検査値異常として1例にGOT, GPTの上昇が認められた。
  • 川崎 賢二, 松村 好章, 小川 正俊, 辻 明良, 松永 敏幸, 五島 瑳智子
    1991 年 44 巻 5 号 p. 552-561
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規トリアゾール系抗真菌剤Fluconazoleのin vivo及びin vitro抗真菌活性について検討を行い, 以下の成績を得た。
    1. 経口投与した時のFluconazoleのマウス血清中濃度の推移は, 最高濃度及び持続性においてKetcconazoleに優つていた。腸管からの良好な吸収を反映して, マウスCandida全身感染モデルにおけるFluconazoleの経口投与による治療効果は, 腹腔内投与による治療効果にほぼ等しい成績が得られた。
    2. マウスを用いたCandida全身感染, Crvptococcus全身感染及びAspergillus全身感染モデルにおいて, Fluconazoleの治療効果は, 経口投与での対照薬Ketoconazole, 腹腔内投与での対照薬Miconazoleに比べ明らかに優つていた。
    3. マウスでのCandida全身感染モデルにおいて, Fluconazoleを1日2回経口投与し, 血中Fluconazole濃度を感染菌のIC99を越えるレベルに保った場合, マウス腎内菌数は治療の経過と共に減少していき, 薬剤投与期間に死亡例を認めなかつた。このように, Fluconazoleのin vitro抗菌力の指標であるIC99とin vivo効果とは極めて良く相関したが, Ketoconazole及びMiconazoleの卓越したin vitro抗菌活性はin vivo効果に反映し得なかつた。
    4. Candida albicans No.32を試験菌とし, 試験管内耐性獲得を調べた結果, Fluconazoleを1μg/mlに含有するSynthetic amino acid medium, fungalでの15代, 30日間の継代中に耐性獲得を示唆する試験菌の増殖度の変化はみられなかつた。
  • 内田 勝久, 松坂 厚子, 青木 興治, 山口 英世
    1991 年 44 巻 5 号 p. 562-570
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    深在性真菌症患者からの新鮮分離株に対する新トリアゾール系抗真菌剤Itraconazole (ITZ) のin vitro活性を, 既存の全身的抗真菌剤Ketoconazole (KCZ), Miconazole及びAmphotericinBと比較検討した。酵母状真菌8菌種65株及びAspergillus属4菌種13株を対象に, Casitone agar上での寒天希釈法を用いて試験を行った。ITZは一部のCandida属菌種 (Candidapara psilosis, Candida krusei, Candida guiUiermondii), Cryptococcus neoformans, Trichosporon cutaneum並びにAspergillus fumigatusをはじめとするAspergillus nigerを除くすべてのAspergillus属菌種の各分離株に対して最も強力な活性を示し, 酵母状真菌では≤0.08μg/ml, Aspergillus属菌種では≤5μg/mlで全分離株を完全に阻止した。
    一方, Candida albicans及びCandida glabrata分離株に対するITZの活性はKCZをはじめいずれの対照薬剤よりも弱く, C. albicans及びC. tropicalis分離株のなかには>10μg/mlの濃度でも完全阻止に至らない菌株がみられた。しかし, Synthetic amino acid medium, fungalを用いた微量液体希釈法によって測定した場合には≤0.20μg/mlの濃度で上記3菌種の全分離株が完全に阻止された。
  • 内田 勝久, 保坂 純子, 青木 興治, 山口 英世
    1991 年 44 巻 5 号 p. 571-579
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Casitone寒天培地での寒天平板希釈法を用い, 皮膚科領域における真菌性疾患である表在性皮膚真菌症及びスポロトリコーシスの患者から新鮮分離した起因菌7菌種263株 (Trichophyton mentagrophytes 104株, Trichophyton ruboum 103株, Microspooum canis 3株, Eiideomophyton floccosum 2株, Candida albicans 32株, Malassezia furfur 7株, Sporothrix schenckii 12株) に対するトリアゾール系抗真菌剤Itraconazole (ITZ) のin vitro抗真菌活性を検討し, 以下の結果を得た。
    1. これらの臨床分離株のうち表在性真菌症起因菌菌株に対するITZのMIC値は, Calbicansを除いて, <0.0012~5μg/mlの範囲内に分布し, 対照薬剤のClotrimazole, Bifonazoleよりも強い抗菌活性を示した。
    2.C. albicans分離株はITZに対して, 0.02~0.08μg/mlでほぼ完全な発育阻止を受ける高感受性株と>10μg/mlでも阻止されない低感受性株とに分けられた。
    3.S. schenckiiに対するITZの抗菌活性は, 対照薬剤のKetoconazole, Miconazole, Amphotericin Bのどれよりも強く, 幾何平均MIC値は0.119μg/mlであつた。
    以上の結果から, ITZは皮膚真菌症起因菌の臨床分離株に対して優れたin vitro抗菌活性を示すことが明らかとなつた。
  • 平谷 民雄, 山口 英世
    1991 年 44 巻 5 号 p. 580-587
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    新規トリアゾール系経口抗真菌剤Itraconazole (ITZ) のin vitro抗真菌活性について, 既存のイミダゾール系経口抗真菌剤Ketoconazole (KCZ) を対照薬剤として使用し, 主要な病原性真菌を含む16属37菌種51株を対象に検討を行った。試験はSabouraudデキストロース寒天培地上での寒天希釈法を用いて実施した。ITZは病原性酵母, 二形性真菌, 非着色性糸状菌, 皮膚糸状菌, 黒色真菌に属する大部分の菌株に対してKCZと同等か又はそれを上回る活性を示した。一方, Candida albicans, Candida tropicalisなどの一部の真菌においては, ITZ80μg/mlの高濃度でも完全発育阻止はみられなかったが, 部分的発育阻止効果は0.04μg/mlの低濃度でも観察された。又, C.albicansに対するITZの活性は, 培地組成とpH, 接種菌量及び培養時間によって明らかな影響を受けることが認められた。
  • 内田 勝久, 山口 英世, 渋谷 和俊
    1991 年 44 巻 5 号 p. 588-599
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    動物による実験的種々の深在性及び表在性真菌症モデルを用い, トリアゾール系経口抗真菌剤Itraconazole (ITZ) の治療効果をKetoconazole (KCZ) と比較検討し, 下記の成績を得た。
    1. Candida albicansのマウス静脈内接種による全身感染に対してITZ及びKCZは延命効果を示し, 感染2週間後におけるED50値はそれぞれ32.9mg/kgと224mg/kgであった。マウス消化管カンジダ症モデルにおいてはITZは, 腸管内Candidaの増殖を抑制し, プレドニゾロンにより誘発される全身感染を阻止した。
    2. マウスの実験的肺クリプトコッカス症に対しITZ40mg/kg/日の経口投与は, 肺における菌の増殖を抑制し, 脳への播種を阻止した。
    3. マウスのAspergillus fumigatus静脈内感染に対しITZ及びKCZは明らかな延命効果を示し.感染2週間後のED50値はそれぞれ103.6mg/kg, 882mg/kgであつた。
    4. モルモットの実験的白癬に対しITZは, 症状の増悪を防ぎ, 感染19日後に行った局所皮膚培養試験における陽性率がKCZの場合より有意に低かった。
    5. 生物学的検定法により測定したマウスにおけるITZの血中濃度は100mg/kgl回投与の場合最高値11μg/ml, 半減期は約24時間であつた。
    6. 以上の実験成績から, 種々の真菌症に対してITZ内服はKCZを凌ぐ優れた臨床効果を示す可能性が示唆される。
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