The Japanese Journal of Antibiotics
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44 巻, 8 号
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  • 出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 鈴木 由美子, 深山 成美, 石原 理加, 小田 清次
    1991 年 44 巻 8 号 p. 813-819
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    副鼻腔炎を対象とした鼻科用Fosfomycin (FOM) の局所使用における基礎的, 臨床的検討が1988年1月~1990年5月に全国の多施設の参加で実施された。
    本検討においては, 細菌学的検討すなわち患者採取材料からの細菌の分離・同定, 薬剤感受性に関する項目も実施されたが, これらの試験については当センター研究部が一括して担当した。
    臨床第II相試験, 用量比較試験及びオープン試験を合せた396症例のFOM局所使用前の患者採取材料からは, 多菌種・多数株が分離されたが, それらに対するFOMの抗菌活性に関する成績のまとめから, 以下の結論を得た。
    1.全検出株447株の内訳はStreptococcus spp.25.7%, Staphylococcus spp.21.7%, AnaerobicGram-positive cocci 13.6%と好気性, 嫌気性のグラム陽性球菌の割合が高く, 次いでHaemophilus influenzae, Pseudomonas aeruginosa, Klebsiella spp., Branhamella catarrhalisが比較的多数検出された。
    2.検出株のうちFOMの最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し得た成績から, 採取時もしくは検索時の混入細菌が否定できない菌種を除いた354株に対するFOMのMIC50, MIC80は125μg/ml, 25μg/mlとなり, 十分に除菌が可能であることが示唆された。
    3.鼻科用FOMは抗菌スペクトルが広く, 副鼻腔炎の起炎菌となり得る大部分の臨床分離株に対して, 十分な除菌可能な抗菌活性を示したことから, 副鼻腔炎に対する局所使用に有用性が期待できる。
  • 出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 中根 豊, 鈴木 由美子, 深山 成美, 石原 理加, 小田 清次, 田中 節子, 佐藤 久美子
    1991 年 44 巻 8 号 p. 820-838
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1990年に全国の医療機関から送付されてきた各種感染症患者採取材料から, 分離・同定した臨床分離株37菌種835株を対象にして, Cefpiramide (CPM) の抗菌活性の検討を目的に, 他のセフェム系薬剤を加えて最小発育阻止濃度 (MIC) を測定し, 以下の結論を得た。
    1.CPM耐性菌が出現していない菌種は, Streptococcus pyogenes, Streptococcus pneumoniae Anaerobic Gram-positive cocciだった。
    2.1980年代前半における諸家の報告に比較して, CPM耐性が増加していることが示唆された菌種はStaphylococus aureus, Proteus vulgaris, Pseudomonas amginosa, Pseudomonas cePacia, Pseudomonas putida, Acinetobacter calcoaceticus, そしてHaemophilus influenzaeであるが, その他の菌種にも高い割合でCPM耐性が認あられた。
    3.供試株にはMethicillin-resistant S.aums, セファマイシン及びオキシム型セファロスポリン耐性の腸内細菌科グラム陰性桿菌, 更にニューキノロン耐性菌が高い割合に認められたことから, 「CPM耐性菌」にはこれらの耐性菌の多くが重なっていて, それらにはCPMが十分な抗菌活性を発揮しえない状況を考察した。
    4.CPMを含むある特定薬剤の耐性菌の経年的推移の評価には, 著者らが1989年に指摘した「β-ラクタム系薬剤全般にわたる耐性機序と, 耐性菌が出現してくる社会的状況を含む次元の検討課題が残る」ことが今日的意義を増していることを論じた。
    5.近年における臨床分離株に対するCPMの抗菌活性には, 多くの不利な状況がある。しかし, CPMは多くの臨床分離株に有効な抗菌活性を維持していることも併せて確認された。加えて, CPMが数少ない血中濃度持続型のセフェム系薬剤であることを加味するなら, CPMは今日においても臨床的に有用なセフェム系薬剤の一つであるとの結論を得た。
  • 菊池 典雄, 川島 辰雄, 山岸 文雄, 鈴木 公典, 安田 順一, 新島 結花, 水谷 文雄, 多部田 弘士
    1991 年 44 巻 8 号 p. 839-845
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    慢性呼吸器疾患患者に併発した呼吸器感染症に対するCiprofloxacin (CPFX) の臨床効果について検討した。収集された58例のなかで54例が本剤の有効性評価可能であり, その内訳は肺炎20例, 慢性気道感染34例であつた。
    本剤の投与法は, 1日量600mg, 分3, 毎食後の経口投与とした。
    肺炎20例については, 平均年齢は62.0歳であり, 基礎疾患は慢性気管支炎9例, 気管支拡張症6例, 陳旧性肺結核4例, びまん性汎細気管支炎1例であり, CPFXの有効率は90.0%であった。
    慢性気道感染34例については, 平均年齢は, 59.8歳であり, 基礎疾患は気管支拡張症10例, 慢性気管支炎8例, 陳旧性肺結核7例, びまん性汎細気管支炎5例, 肺気腫4例であり, CPFXの有効率は70.6%であった。
    全症例における有効率は77.8%と高率であり, 本剤は慢性呼吸器疾患患者に併発した呼吸器感染症の治療に有用な薬剤と考えられた。
  • 能塚 隆之, 古澤 元之助, 河北 和彦
    1991 年 44 巻 8 号 p. 846-853
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    健常成人及び消化器外科手術後の患者を対象とし, Netilmicin (NTL) 100mg を 1回筋注, 30分点滴静注及び60分点滴静注を行い, 血中濃度を比較検討した。
    術後患者では, 健常人に比べていずれの投与法においても血中半減期の延長傾向がみられた。更に, 筋注時においては吸収の遅延が認められた。Cmaxは術後患者と健常人では著差がなく, 投与8時間後にはいずれの投与法においても1.Oμg/ml以下に低下しており, クリアランスは良好であった。
    消化器外科手術患者に NTL を1日 200mg, 3~13日間筋注又は30~60分点滴静注を行い, 腎機能への影響について検討した。
    血清クレアチニン値の軽度上昇例が筋注例に2例みられたが点滴静注例では1例もみられなかった。
    以上のことから, NTLの30~60分点滴静注法は, 消化器外科手術後の投与法として安全で望ましい方法と考えられた。
  • 千村 哲朗
    1991 年 44 巻 8 号 p. 854-859
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    産婦人科領域でのMethicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 感染症の発生は極めて稀であることが報告されてきた。今回, 我々は山形県内産婦人科4施設において, 1990年9月から1991年2月までの間にMRSA感染症5例の発症をみた。
    1.疾患別では子宮内感染4例 (産褥子宮内感染3例, 子宮内感染1例), 術後創感染1例である。
    2.MRSA分離菌判明後の治療には, Imipenem/ Cilastatin (IPM/ CS) 単剤投与2例 (有効), IPM/ CS+キノロン剤 (Ofloxacin (OFLX), Tosufloxacin) 併用投与2例 (有効), Minocycline, OFLX投与1例 (有効) であった。
    産婦人科領域においても, MRSA感染症の発生には常に留意し, 感染予防及び感染症の治療にあたっての抗生物質の選択と投与法の重要性を再考する必要がある。
  • 大西 明弘, 大多和 昌克, 原 健一
    1991 年 44 巻 8 号 p. 860-876
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Imlpenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) 筋注用の安全性及び体内動態を検討する目的で, 健常成人男子30名を対象に, 臨床第1相試験として単回投与試験, 筋注用・点滴用比較試験, 連続投与試験を実施した。
    安全性に関しては, 単回投与試験の18名中1名に注射部位の軽度蚤痒感と, 同被験者を含む5名に注射部位の軽度疹痛を認めたが, その他にはIPM/CSに起因すると考えられる自・他覚症状, 理学的検査並びに臨床検査所見の異常は認められなかった。
    筋注時におけるImipenem (IPM) の吸収は緩徐であり, 点滴静注時と比べ最高血漿中濃度 (Cmax) は低い値を示し, 半減期 (T1/2) は著しく延長した。しかし, 血中濃度曲線下面積 (AUC) は筋注時, 点滴静注時とも同等であった。一方, Cilastatin sodium (CS) の吸収は速やかで, CmaxはIPMよりも高い値を示した。又, T1/2及びAUCは点滴静注時と同等であった。
    IPMとCSの累積尿中回収率は投与経路, 投与量による著しい差はなくそれぞれほぼ一定であったが, 筋注時におけるIPMの尿中濃度が点滴静注時よりも長時間持続した。
    連続投与試験においてIPM, CS共に蓄積性は認められなかった。
  • 普久原 浩, 草野 展周, 中村 浩明, 兼島 洋, 伊良部 勇栄, 下地 克佳, 橘川 桂三, 重野 芳輝, 斎藤 厚, 嘉数 朝一, 仲 ...
    1991 年 44 巻 8 号 p. 877-885
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    内科領域における中等症や重症の感染症患者52例に対してImipenem/ Cilastatin (IPM/ CS) を使用し, その臨床効果を検討した。疾患の内訳は肺炎20例, 慢性気道疾患の急性増悪が10例, 敗血症が9例, 膿胸が2例, 腹腔内感染症が3例, 尿路感染症2例, 肺化膿症1例, 感染性心内膜炎1例, 感染症と思われる不明熱4例であった。判定不能の8例を除く44例で臨床効果を判定した。その結果, 著効12例, 有効26例, やや有効3例, 無効3例であり有効率は86.4%であった。先行抗生剤無効群のIPM/ CS使用の有効率は63.6%, 先行抗生剤がない群は93.9%の有効率であった。細菌学的にはStaphylococcus aureus8株, Streptococcus pneumoniae 5株, Streptococcus pyogenes 1株, Gram-positive coccus 1株, Klebsiella pneumoniae 8株, Haemophilusin fluenzae 4株, Pseudomonas amginosa 3株, Serratia marcescens 3株, Escherichia coli 3株, Branhamella catarrhalis 1株, Citrobacter freundii 1株, Enterobacter sp. 1株, Klebsiella oxytoca1株, Peptostreptococcus sp. 1株が消失し, P. aeruginosa 3株, Acinetobacter sp. 1株が減少した。S. aureus 1株, Staphylococcus epidermidis 1株, P. aeruginosa 5株, Smarcescens 1株は不変や菌交代を示し, 除菌率は83.7%であつた。副作用は全身倦怠感, 心窩部痛, 皮疹が各々1例, 臨床検査値異常は好酸球増多1例とGOTの上昇2例に出現したが, 全例軽症で一過性であった。これらの結果から, IPM/ CSは内科領域における細菌感染症に対して有用で安全な薬剤であることを示した。
  • 津田 昌一郎, 中井 浩之, 村上 剛, 芹生 卓, 高島 輝行, 田中 新司, 中川 均, 西垣 光, 奥田 司, 西田 一弘, 横田 昇 ...
    1991 年 44 巻 8 号 p. 886-898
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    血液疾患に併発した重症感染症53例に対してImipenem/Cilastatin sodium (IPM/CS) をSecond lineの抗生剤として投与し, その有効性と安全性を検討した。
    全体の有効率は62.3% (33例/53例), 敗血症症例では75.0% (3例/4例), 敗血症疑い症例では63.3% (19例/30例), 肺炎で61.5% (8例/13例), 更にIPM/CS投与前後の末梢血好中球数が100/mm3以下の状態で75.0% (6例/8例) の有効率が得られ非常に良好な成績であつた。
    一方, 副作用としては悪心, 悪心・嘔吐の消化器系症状が25.0% (15例/60例) にみられたが, 重篤な臨症検査値異常は認めなかつた。
    以上から, IPM/CSは血液疾患に併発した感染症に対するSecond lineの抗生剤として非常に信頼性の高い薬剤であると言える。
  • 斎藤 博, 古田 精市, 長田 敦夫, 吉沢 晋一, 西沢 啓治, 市川 澄夫, 相澤 孝夫, 依田 弘史, 丸山 大司, 小池 ゆり子, ...
    1991 年 44 巻 8 号 p. 899-911
    発行日: 1991/08/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    造血器腫瘍及び固形腫瘍に合併する重症感染症67症例を対象とし, Imipenem/Cilastatinsodium (IPM/CS) を投与した。その内, 脱落3例を除いた64症例で安全性を, 更に, 除外14例を除いた50例で有効性の検討を行つた。
    1.造血器腫瘍では, 31症例中著効10例, 有効10例で, 有効率は64.5% (20例/31例) であった。固形腫瘍では, 19症例中著効8例, 有効8例で, 有効率は84.2% (16例/19例) であった。
    2.先行抗生剤無効症例に対しても, 造血器腫瘍の群, 固形腫瘍の群において, それぞれ有効率59.3%, 62.5%と優れた成績であった。
    3.造血器腫瘍では, IPM/CS投与前後の好中球数が500/mm3以下の症例においても, 有効率75.0% (6例/8例) と, 好中球減少時の感染症に対し優れた成績であった。
    4.分離菌別臨床効果は, 造血器腫瘍においては, 分離菌が判明した群の有効率は70.0%, 不明群は61.9%, 固形腫瘍においては, 分離菌が判明した群の有効率は90.9%, 不明群は75.0%と, 分離菌の判明の有無にかかわらず, 優れた成績であった。
    5.安全性評価対象症例64例中, 自他覚的副作用は3例, 臨床検査値異常は2例であったが, いずれも軽微で, 本剤投与中により速やかに消失した。
    以上の結果から, IPM/CSは造血器腫瘍及び固形腫瘍に合併した重症感染症に対し有用性の高い薬剤と考えられた。
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