Carbapenem系抗生物質として, Imipenem/Cilastatinsodiumに次いで, 本邦にて検討を行つた。Panipenem/Betamipron (PAPM/BP, CS-533/CS-443) について, 吸収・排泄, 並びに臨床成績について以下の成績を得た。
1. 吸収・排泄
PAPM/BPを10mg/10mg/kg, 20mg/20mg/kg, 30mg/30mg/kgの30分点滴静注時の血漿中濃度は, PAPM, BPともその点滴静注終了時 (投与開始30分) にピークを示し, PAPMはそれぞれ27.37, 59.3, 91.7μg/ml, BPは, それぞれ21.77, 35.29, 50.08μg/mlであり, 半減期はPAPM, BPそれぞれ0.90~0.96時間, 0.55~0.63時間であった。尿中回収率はPAPMが10mg/10mg/kg投与後15.9~31.1%, 20mg/20mg/kg投与後15.3~36.9%, 30mg/30mg/kg投与後11.0~40.5%が8時間までに示され, BPは順に33.1~79.1%, 41.3~93.4%, 12.9~94.4%であった。
2. 臨床成績
本剤を化膿性髄膜炎2例, 敗血症 (疑) 1例, 肺炎18例, 気管支炎5例, 化膿性扁桃炎 (経口薬投与不能例) 2例, 化膿性リンパ節炎3例, 細菌性腸炎2例, 尿路感染症6例の計39例に使用し, 尿路感染症1例を除きすべて有効以上の成績を得た。投与量は30.0~100mg/kg/日であり, 髄膜炎例でも, 他剤の検討時よりも少なく, 1回投与量では20mg/kg, 33mg/kgにすぎなかつた。いわゆる呼吸器, 尿路感染症などの中等症感染症では30~60mg/kg/日, すなわち1回10mg/kgあるいは20mg/kg, 3回投与が大部分を占めていた。臨床的に特記すべき重篤な副作用は認めず, 1例にて下痢便頻回となつたが, 投与中止せずに軽快した。投与経過中に検討した検査値の異常は9例に認められ, その内訳は, 単球数増多, GOT上昇, 好酸球数増多, 好酸球数増多・血小板減少, 好酸球数増多・GOT上昇が各1例に, 血小板増加, GOT・GPT上昇が各2例であつたが, いずれも投与中止する症例はなかつた。
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