1992年7月~12月において, 当所に全国の医療機関から送付されてきた臨床分離株, 及び各種感染症患者採取材料から分離・同定した臨床分離株を対象とし, Cefodizime (CDZM) の抗菌活性を知る目的で, CDZMと対照薬剤の最小発育阻止濃度 (MIC) を測定して, 以下の結果を得た。
1. CDZMを含むセフェム耐性株が皆無もしくはそれにほぼ等しい菌種は
Streptococcus pyogenes, Haemophilus infiuenzae, Citrobacter diversus, 大部分の
Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabiiisであるが,
Klebsiella oxytocaの一部にはセフェム耐性株が存在しており, β-ラクタム耐性
Streptococcus pneumoniae, セフェム耐性
Escherichia coliの増加が示唆された。そして,
Citrobacter freundii, Enterobacrer spp.,
Serratia marcescens, Proteus vulgaris, Morganella morganii, Providencia spp., すなわち, いわゆる弱毒菌の範疇に入るこれらの菌種のCDZMを含むセフェム耐性菌の割合は高く, そこにおけるセフェム耐性菌の多くは, ニューキノロンにも耐性を示す多剤耐性菌だつた。
2. 日常診療における感染症に関与し得る確率の高い
Streptococcus spp.,
H. influenzae, Mornxella subgenus Branhamella catarrhalis, E. coli, Klebsiella spp.,
P. mirabilisに対するCDZMのMIC
90は≤0.025~1.56μg/mlであることから, これらの菌種が関与した感染症には, CDZMは単独投与でも臨床効果が期待し得る十分な抗菌活性を保持していた。しかし, そこにおいてはβ-ラクタム耐性
S. pneumoniae, セフェム耐性
E. coli, セフェム耐性
K. oxytocaに留意すべきである。
3. 上記に示した「弱毒菌」には多剤耐性株の割合が高いことから,「弱毒菌」の多剤耐性株にはCDZMとアミノ配糖体系薬剤の併用を検討すべきである。
4. 今回示した臨床分離株に対するCDZMの抗菌活性からは, CDZMはTime above MICへの適合性が高いことが示唆された。
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