1988年, 1990年, そして1992年において, 当所に全国の医療機関から送付されてきた臨床分離株, 及び各種感染症患者採取材料から分離・同定した主な臨床分離株に対するAspoxicillin (ASPC) の抗菌活性を知ることを目的に, 他のペニシリン系薬剤 (PCs) などを加えて最小発育阻止濃度 (MIC) を測定して, 以下の結果を得た。
1.
Staphylococcus aureus, Enterococcus spp., Escherichia coli, Bacteroides fragilis group に対するASPCのMIC
80は, 1985年~1986年分離株に対する値とほぼ同等である。
2.
S. aureus, Haemophilus influenzae のASPCを含むPCsに対する感受性の回復傾向が認められた。これらは, 前者においては Methicillin-resistant
S. aureus (MRSA) の経年的な減少傾向に加えて, 検出されるMRSAのMethicillinやセフェム系薬剤 (CEPs) に対する高度耐性化に伴うβ-ラクタマーゼ非産生株の出現, 後者はがラクタマーゼ産生株の減少によるものである。
3.
E. coli, B. fragilis group のASPC を含むPCs高度耐性株は増加していた。
4. いわゆるβ-Streptococciの PCs耐性は皆無であったが, α-Streptococci,
Streptococcus pneumoniae のPCs低感受性又は耐性株の増加傾向が認あられた。そして, これらの株はCEPs にも耐性を示すPenicillin-binding proteins (PBPs) の変異株であることが示唆された。
一方,
Enterococcus faecium のPCs高度耐性株が高い割合だったが,
E. faecium のPCs耐性もPBPsの変異であることが知られていることから, 近年に分離される臨床分離株のβ-Lactams に対する感受性パターンは多様である。
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