マクロライド系抗生物質Clarithromycinの新剤形であるドライシロップ剤について小児科領域における体内動態および臨床的検討並びにその服用性について観察し, 以下の成績を得た。
1. 吸収・排泄試験成績
10%ドライシロップ剤を用い5mg/kg, 10mg/kg (以下投与量は総て力価表示) の単回経口投与による体内動態を検討した。5mg/kg12例及び10mg/kgl例の投与時のC
maxはそれぞれ 2.26±0.42μg/ml, 3.23μg/ml, T
maxは1.6±0.1時間, 2.0時間, T1/2は3.89±052時間, 2.06時間, AUC (0~∝) は13.48±1.93μg・hr/ml, 13.84μg・hr/mlであった。尿中濃度は5mg/kg投与は2~4時間, 10mg/kg投与は0~2時間で最高濃度を示し, 投与後6時間までの累積尿中排泄率は5mg/kg投与で25.8±3.9%, 10mg/kg投与で20.7%であった。2. 臨床試験成績
総症例数は169例で, 除外・脱落を除いた150例を臨床効果解析対象例とした。投与方法は既承認製剤の承認用量である1日10~15mg/kg, 2~3回に分け経口投与でなされた。臨床効果は原因菌判明例A群90例では有効率98.9%, 原因菌不明例B群60例では96.7%であり, A群とB 群を合わせた有効率は98.0%であった。
細菌学的効果はA群の血清診断によるものを除き検出菌の経過を追跡できた65株中54株 (88.5%) に除菌効果が認められた。
3日間以上続けた先行化学療法剤が無効であった19例のうち有効以上の症例は18例 (94.7%) であり, また先行化学療法で消失しなかった菌の消失率は75.0%であった。
3. 副作用・臨床検査値異常副作用は安全性解析対象例169例のうち, 嘔吐, 下痢, あまいの症状が4例 (2.4%) に認められたが, 特に問題となる所見は認められなかった。臨床検査値の異常変動は, 好酸球増多7例, GPT上昇3例に認められたが, 特に留意すべき異常所見はなく, 異常値と関連すると思われる臨床症状を呈した症例は認められなかった。
4. 服用性
服用性は解析対象例168例のうち, 「非常に飲みやすい」18例 (10.7%), 「飲みやすい」107例 (63.7%) で「飲みやすい」以上が74.4%, 「普通」39例 (23.2%), 「飲みにくい」2例 (1.2%) で甚だ優れた易服用性を示した。
以上の成績から, 本ドライシロップ剤は現在の承認用量である1日体重1kg当たり10~15mgを1日2~3回に分け経口投与により, 小児市中感染症に対して有効でかっ服用性に優れた薬剤であると考えられる。
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