新しいエステル型経口Cephem剤であるCefditoren pivoxil (CDTR-PI) の小児用粒剤について, 基礎的, 臨床的検討を行つた。
1. 小児10例 (5~10歳) おいて, 本剤3mg/kg (5例)あるいは6mg/kg (5例) 食後30分服用後の血清中濃度と尿中排泄について検討した。
3mg/kg投与例の平均血清中濃度は, 2時間値の1.23±0.34μg/mlがピークで, その後1.60±0.38時間の半減期をもつて推移し, 8時間値は0.04±0.04μg/mlであつた。また, 6mg/kg投与例では, 1時間値の2.62±0.42μg/mlがピークで, 半減期は1.58±0.31時間, 8時間値は021±0.11μg/mlであつた。さらに, 服用後8時間までの尿中回収率は, 前者では149±0.9%, 後者では17.0±0.7%であった。尚, 3mg/kg投与例と6mg/kg投与例の血清中濃度推移には明らかなDose responseが認められた。
2. 小児期感染症31例 (1~10歳) に本剤を投与し, 臨床効果, 細菌学的効果, 副作用及び服用性について検討した。尚, 1回の投与量は2.9~6.8mg/kg, 1日の投与回数は3回, 投与日数は3~10日であつた。
臨床効果の判定対象となつた猩紅熱2例, 急性咽頭炎1例, 急性化膿性扁桃腺炎12例, 急性気管支炎4例, 急性肺炎5例, 計24例に対する臨床効果は, 著効16例, 有効8例で, 著効と有効を含めた有効率は100%であった。また, 原因菌と推定された
Staphylococcus aureus 4株,
Sreptococcus pyogenes6株,
β-Streptococcus 2株,
Haemophilus influenzae 4株に対する細菌学的効果は,
H.influenzae 1株が減少, 1株が存続であつた以外は消失と判定され, 全株でみた除菌率は87.%であつた。尚, 菌交代については,
S.pyogenes から
Streptococcus pneumoniaeへの交代が1例, H.
influenzaeからS.aureusへの交代が1例,計2例においてみられた。
安全性の面では,副作用のみられた症例は1例もなかつた。また, 臨床検査値異常については, 軽度のGPT上昇が1例に認められただけで, しかも追跡により正常化が確認された。さらに, 服用性については, のみにくい, あるいはのあないと訴えた者は一人もおらず, 全例普通の服用性をもつと一の回答をよせた。
以上の成績より, 本剤は小児期感染症において高い有効性が期待でき, しかも安全に投与できる薬剤であると考えられた。
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