The Japanese Journal of Antibiotics
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47 巻, 6 号
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  • 近藤 信一
    1994 年 47 巻 6 号 p. 561-574
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    アミノグリコシド抗生物質(AGs)の酵素学的耐性機構の研究と, それに基づく化学変換の研究によって合成したアルベカシン(ABK)は, ほとんどのAGs修飾酵素に安定で広範囲に優れた抗菌活性を示した。現在, メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による肺炎と敗血症に限って臨床使用されている。僅かに分離されるABKに中等度耐性のMRSAによる不活性化の主体が, 2-OHの酵素的リン酸化であることを解明し, そのABKの2-OHをNH2に化学変換した誘導体と, さらにその5-OHを修飾した誘導体を種々合成し, 評価した。それらのうち, 2-Amino-5, 2-dideoxy-5-epiamino-ABKはABKより弱い腎毒性であったので, 低毒性の2-Amino-2-deoxy-ABKと共に抗MRSA薬として注目される化合物である。
  • 橋本 一
    1994 年 47 巻 6 号 p. 575-584
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    日本におけるMRSAの分離率は1993年までに60%にまで上昇した。現在なお感染症の治療は先ず経験的に抗菌剤が投与され, 検査室の結果をまってそれを修正するのが常である。しかし院内感染をおこすMRSAは現在全国的に高度のβ-ラクラム耐性を示し, マクロライド系や新キノロン, またミノサイクリンにも耐性化が進んでいる。病巣由来MRSAは, 時に数種におよぶ多剤耐性型を示す多種の株が混在していることが多く, また緑膿菌ほか複数菌感染であることが多い。従って検査室のデータに頼りすぎると, 菌交代や耐性化がしばしばおこり治療が無効となる。現在MRSAで耐性菌が3%以下なのはアルベカシンとバンコマイシンのみであり, 他の薬剤は, 各病院, 各患者特有の耐性型を考慮して用いるべきである。MRSA感染者は, Compromised hostが多いので, in vitroの結果が必ずしもin vivoの効果に反映しない。上記2薬剤といえども, 時に他薬剤との併用が必要である。
  • 井田 孝志, 野々山 勝人, 長曽部 紀子, 島内 千恵子, 井上 松久, 岡本 了一
    1994 年 47 巻 6 号 p. 585-594
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1992年(前期)から1993年(後期)にかけて全国延べ56の施設で分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)872株について, その薬剤耐性とコアグラーゼ型を中心に疫学調査を行なった。
    MRSAが検出された検体は, 前後期を通じて喀痰が最も多く, 次いで膿, 血液の順であった。また, 前期調査の60%, 後期調査の40%の患者から, MRSAと同時に他の菌が検出され, その菌種として緑膿菌, カンジダ, 腸内細菌科等が比較的多かった。
    MRSAのコアグラーゼ型は, 全国的にII型が最も多く, 全体の85%を占めており, III型, IV型, VII型はそれぞれ3%と少数であった。この比率は前期, 後期で大きな変化は認められなかったものの, 地域によつて大きく異なり, III型が四国, 九州地方に, IV型が北海道, 中国地方に, VII型が関西, 九州地方に多く認められた。
    各種薬剤に対する耐性菌の分離率を調べたところ, 80%以上がβ-ラクタム剤に高度耐性を示し, マクロライド剤に対してもほぼ同程度の耐性菌分離率を示した。アミノ配糖体に対しては薬剤により耐性菌の分離率がかなり異なり, Streptomycin, Lividomycin耐性が10数%, Gentamicin耐性が60%, Tobramycin耐性が95%であり, 抗MRSA剤であるArbekacin耐性は7%と低かった。また, 前・後期を通してABK耐性菌の増加傾向は認められなかった。Minocycline (MINO), Ofloxacin(OFLX)耐性はそれぞれ50%, 70%の割合で分離され, 半数以上が耐性を示すことが明かとなった。Vancomycin耐性菌は検出されなかった。
    MRSAの各種薬剤に対する耐性パターンはコアグラーゼ型により大きく異なり, III型, IV型菌ではMethicillin高度耐性菌が少なかった。同様に, MRSAが分離された診療科別に耐性パターンをみてみると, 診療各科で大きな相違はないものの, 使用薬剤が制限される小児科から分離されたMRSAでは明かに, MINO, OFLX耐性菌の分離率が低かった。
  • 林 泉, 井上 松久, 橋本 一
    1994 年 47 巻 6 号 p. 595-605
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    我々は, MRSAフォーラムを結成し, 全国18グループ, 115施設が参加してMRSA感染症の実態とArbekacin (ABK) の有効性・有用性について臨床検討した。
    1991年10月から1993年9月までの2年間に348例が集積された。男性237例, 女性111例, 71歳以上56.3%であった。ABK単独投与/併用投与は74/274, 合併症あり70/264, 感染症重症度の軽症24/28, 中等症36/158, 重症14/88, 基礎疾患のうち悪性新生物28/62, 循環器疾患15/ 94, 感染症のうち肺炎38/175, 敗血症6/35, 病型は急性48/139, 慢性の急性増悪16/51, 前投薬あり54/208, MRSA単独菌感染症41/159, 複数菌感染症33/115, 以上の患者背景に対しABK を投与した。投与量は1回100mg58/240, 投与期間は8~14日間44/149が最も多かった。
    細菌学的効果: MRSA除菌率53.6%/56.4%, 細菌学的臨床効果: MRSA単独菌感染症 75.6%/67.9%, 複数菌感染症63.6%/71.3%, 臨床効果: 70.3%/69.3%, 肺炎の有効率605%/72.0%, 前投薬投与期間3日以内にABK投与を開始したものの有効率90.0%/80.8%, 投与時間による有効率30分78.6%/71.4%, 60分63.2%/66.4%, 以上の結果からABKの投与方法は 1. できるだけ早期に, 2.1回100mg1日2回, 3.30分間点滴静注, 4.14日間が良い。
    副作用: 発現率4.76%/5.70%と高くはない。主な副作用は腎機能障害2/11であり, 重篤なものはなかった。臨床検査値異常は382例中59例 (15.4%) に見られた。S-Cr., BUN, S-GOT, S-GPTの上昇が主なものであった。
    ABKはMRSA単独菌感染, MRSAと他菌種との複数菌感染症に有効であり, 難治感染症には他剤との併用療法が有効である。
  • 林 泉, 井上 松久, 橋本 一
    1994 年 47 巻 6 号 p. 606-617
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    MRSA (Methicillin-resistant Staphylococcus aureus) の性質およびMRSA感染症の姿は年々変化しているが, その実態を全国の主な施設の専門家を通して2年間の変化として提えた。また, MRSAにかかわる諸問題に対する意識調査を専門家と臨床の第一線で活躍中の一般臨床医とに行った。
    1. MRSAの実態に関する調査主な機関, 前期/後期それぞれ16/18施設 (平均ベッド数706/748床) から解答が寄せられた。総検体数 (72,704/81, 170) の中から細菌は[7,315 (14%) 7,555 (15%)], MRSAは[2,443 (33.4%)/3,012 (39.996) ], 外来: 入院比は (5:95/9:91) とやや市中への波及がおこなわれている。
    MRSAの複数菌感染は938 (46.3%) 1,431 (52.2%) と増加の傾向で, Pseudomonas aeruginosa, Enterococcus faecalis, Candida albicans, Enterobacter cloacae, Klebsiella pneumoniae等がその相手菌である。
    Arbekacin (ABK) に対する感受性で, 耐性とされたものは (1.2%/1.8%) と不変であり, Vancomycinに耐性は無く, ニューキノロン剤には (71.0%/82.0%), Minocyclineは (22.6%/ 34.0%) とそれぞれ10%耐性化が進んだ。
    MRSAは喀痰, 膿, 尿, 便の順に多く分離され, 血液由来は2%程度である。
    コアグラーゼ型はII型 (78.4%/86.6%) に, エンテロトキシン型はC型 (63.5%/71.3%) に集中しつつある。入院からMRSA出現までの期間が短縮し, 持ち込み感染の様相をうかがわせる。MRSAが発見されるまでに使用された薬剤に特徴はない。院内感染対策委員会はすべての施設に存在し, 消毒マニュアルを持っている。MRSA保菌者はその一部が隔離されている。抗菌剤を全病院的にコントロールしている施設は多くはない。
    2. MRSAの意識調査
    専門家/一般臨床医の比較で述べる。
    MRSAは弱体化したか: Yes (17.5%/10.6%), No (57.5%/47.8%)。MRSA感染症はColonizationに比べ相対的に減少したか: Yes (52.5%/19.6%)。MRSAは市中に拡がりつつあるか: Yes (34.1%/30.8%)。MRSAは増加傾向 (22.0%/49.7%), 減少 (36.6%/15.9%)。
    Colonizationの治療は必ずする: (0%/15.8%), しない (25.0%/8.5%), Colonizationのまま退院させる (87.2%/62.6%)。
    MRSA対策として第III世代セフェム剤の制限は意味がある (63.4%/64.6%), どちらとも言えない (29.3%/29.8%)。
    ABKの耐性化は認められない (64.9%/67.196), 1~2管進んだ (32.4%/31.8%)。
    ABKはMRSAに有効か: Yes (97.5%/98.0%)。
    MRSAは今後更に問題が大きくなる (2.4%/17.2%), 現在程度のことが今後も続く (75.6%/ 68.4%)。
  • 橋本 一, 井上 松久, 林 泉
    1994 年 47 巻 6 号 p. 618-626
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    日本全国より65一般病院を選び, 1992年より1993年に及ぶ間に分離された黄色ブドウ球菌計7,033株について, それぞれの病院で常用される方法で得られたメチシリン耐性また感受性の株の薬剤耐性のデータを集計し, 次の結果を得た。
    MRSAの分離率は全体の60.3%で, MSSAが外来, 入院同じ頻度で分離されるのに対し, MRSAは入院患者由来が86%であった。MRSAの由来は内科(38%)からが最も多く次いで外科(13%)で, 喀痰由来が38%で次が膿由来18%であった。コアグラーゼ型ではMSSA株がVII型(35%), III型(32%)が多いのに, MRSAではII型(69%)が多く次がVII型(24%)であった。β-ラクタマーゼ産生株はMRSA, MSSA間に大差なく, 夫々68%, 59%であった。MRSAの薬剤耐性ではβ-ラクタム系薬剤は殆どが80%以上が耐性で, Imipenem/Cilastatinのみが64%耐性であった。Fosfomycin, Ofloxacin, Minocycline, Gentamicin耐性菌も88%, 72%, 19%, 66%耐性で, Arbekacin, Vancomycinのみ耐性菌は3%以下であった。
  • 野々山 勝人, 井田 孝志, 長曽部 紀子, 島内 千恵子, 井上 松久, 岡本 了一, 大久保 豊司
    1994 年 47 巻 6 号 p. 627-633
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    抗MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)剤であるArbekacin(ABK)に対する耐性菌の現状を1っの指標に, その出現背景を院内感染の立場から検討した。1993年に全国26施設387株から, ABK耐性菌の分離率は6.5%であった。このABK耐性菌が分離された施設は26施設中9施設25株で(うち5施設からは複数株が分離), 残りの17施設からはABK耐性菌は検出されなかった。ABK耐性各菌株の生物学的諸性状, 薬剤耐性型, Pulsed-field gel electrophoresisを用いた染色体DNA制限酵素切断パターンを比較したところ, 4施設では院内感染を疑わせる, 同一パターンを示す株が認められた。以上の結果からABK耐性菌の出現は見かけ上の頻度より更に低いものと考えられた。また, この結果MRSAの増加は同一菌株の汚染がその背景にあるものと推定された。
  • 鈴木 隆男, 藤田 欣一, 長町 幸雄, 大久保 豊司
    1994 年 47 巻 6 号 p. 634-639
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    群馬大学第一外科臨床分離Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)17株のうち4株についてArbekacin(ABK)耐性変異株の出現頻度を検討した。ABK選択濃度が1MICの時の耐性菌出現頻度は10-4~10-5であり, ABK選択濃度を8MICに上げることにより, 耐性菌出現頻度は10-6~10-7まで低下した。またβ-ラクタム剤を中心に他の抗菌剤を併用した場合でもやはり, ABK耐性変異株出現頻度は低下することがわかった。したがって, ABK使用に際してはβ-ラクタム剤の併用とともに, 副作用を考慮したうえで治療初期の血中濃度を高あることも, 耐性菌を抑える点では有意義と考えられた。またアミノ配糖体不活化酵素である6'-アセチル転移酵素+2-リン酸転移酵素(AAC(6)-APH(2))を産生する遺伝子を有する菌株のMS353/pMS91を用いて元株と耐性株の酵素活性を測定したところ, 耐性株が約6倍の増加を認めた。この結果, ABKの耐性値の上昇が不活化酵素活性の増加によることが示唆された。
  • COMPARISON WITH THAT OF VANCOMYCIN
    YASUKO AOKI
    1994 年 47 巻 6 号 p. 640-646
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Bactericidal activity of arbekacin (ABK) against methicillin-resistantStaphylococcusa ureus(MRSA) was compared with that of vancomycin (VCM). MIC80, of VCM against 1,056 clinical isolates was 2μg/ml and not a single strain of those in of which MIC above 4μg/ml was detected. Whereas MIC80, of ABK against the isolates was 1μg/ml, but a few strains of which showed MIC of 8μg/ml or 16μg/mi.
    A killing-curve study indicated that bactericidal activity of ABK was critically dependent on its concentrations. ABK, at higher concentrations, showed excellent killing effects against all the tested isolates, and the effects were superior to those of VCM because of following reasons; great reduction CFU was attained within short time incubation, and the effects were not remarkably influenced by different inoculum sizes of MRSA. At lower concentrations of ABK, between a half and four times MIC, the re-increaseo f CFU of MRSAw ith appearanceo f characteristics mall coloniesw as observed. Considering the concentration of ABK in usual dose, the significance of the re-growth should be carefully assessed. It showed be recommended that the peak concentration of ABK be elevated to higher level if adverse effects do not appear.
  • 石井 孝弘, 高山 吉弘, 高瀬 由美子, 折笠 義則
    1994 年 47 巻 6 号 p. 647-654
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    MRSAに対するArbekacin(ABK)およびVancomycin(VCM)の比較実験を多くの臨床株を用いて行い以下の結果を得た。
    1. MRSA142株を用いてのMIC50の比較ではABKはVCMより2倍低く, MIC90では同程度であった。
    2. MRSA100株を用い, 定量的に殺菌力を比較するとABKは4時間後には2MICでも42株が10-2以下に殺菌されたが, VCMは4MICでも10-2以下に殺菌される株は6株であった。
    3. MRSA1936に対する殺菌力に関し, 菌量が約108CFU/mlの場合, ABKおよびVCMは共に効果を示さなかった。しかし, 105CFU/mlの菌量においてABKは用量依存的に強い殺菌力を示し, VCMは時間依存的な殺菌力を示した。
    4. MRSA1936を用いて作製した実験的大腿部感染症に対して, ABKは短時間内に優れた殺菌効果を示し, 抑制面積においても明らかに良い値を示した。
    5. ABKは実験的MRSA全身感染症に対し, in vitroでの成績および実験的大腿部感染症に対する効果を反映した。また, ABKのED50値は分割よりも1回投与で小さい値を示した。
    以上のことからABKは臨床上, 短時間で治療効果を発揮すると考えられる。
  • 辻 明良, 菅野 利恵, 山口 恵三, 五島 瑳智子, 高田 利彦, 高瀬 由美子, 吉田 隆
    1994 年 47 巻 6 号 p. 655-663
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    各薬剤を20mg/kg皮ド投与時のマウス血中濃度に従って推移させた濃度シミュレーションシステムを用いて殺菌効果を検討した。
    MRSAの単独培養では, Arbekacin(ABK)は優れた短時間殺菌力を示し, 薬剤の消失後においても増殖抑制効果が認められた。GentamicinおよびNetilmicinも同様の傾向であったが, Vancomycin(VCM)の短時間殺菌力は比較的弱いものであった。
    緑膿菌の単独培養では, ABKは優れた短時間殺菌力を示すとともに他剤と比較して強い増殖抑制効果が認められた。VCMでは殺菌効果が認められなかった。
    MRSAと緑膿菌との混合培養においては, ABKは両菌種に対し優れた短時間殺菌力を示し, 他剤と比し強い増殖抑制効果が認められた。
    白血球減少マウスを用いた混合感染において, ABKは最も優れた治療効果を示し, in vitroにおける抗菌効果を反映していた。
  • 新里 鉄太郎, 大西 正敏, 西山 省二, 浅岡 宏康, 斎藤 篤
    1994 年 47 巻 6 号 p. 664-675
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Arbekacin(ABK)とVancomycin(VCM)を単独もしくは併用でラットに単回または1日1回, 10日間にわたり静脈内投与して腎毒性を検討した。その結果, ABKの腎毒性はVCMより弱く, 両剤の腎毒性は併用投与することにより増悪した。また, 両剤の単独および併用投与時にみられる腎毒性はFosfomycinを併用投与することにより軽減された。
  • 基礎的検討及びヒトにおける体内動態
    戸塚 恭一, 清水 喜八郎, 三富 奈由, 新里 鉄太郎, 荒明 美奈子
    1994 年 47 巻 6 号 p. 676-692
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Aminoglycoside系抗生物質であるArbekacin(ABK)の1日1回投与法についてMRSA感染症モデルに対する有効性, 動物における毒性及びヒトにおける体内動態と安全性について検討した。
    1. ABK は in vitroでMRSAに対して濃度依存的な殺菌力と長いPost-antibiotic effects(PAE)を示した。
    2. マウス MRSA感染症に対するABKの1日1回投与及び分割投与はほぼ同等の効果を示した。
    3. モルモットの聴覚器, ラットの腎臓に対する影響は, 1回投与と分割投与で明確な差は認められなかった。
    4. ヒトに成人の通常使用量の2∞mgを1回投与した単回投与では, 自他覚症状及び臨床検査値に異常は認あられなかった。
    5. ヒトでのABK200mg1日1同, 5日間反復投与試験の1例において頭痛及び尿沈渣(白血球)の増多が認あられたが, 本剤との関係は不明であった。
    6. 反復投与試験で, 尿中β2-Microgloblin, γ-GTP及びNAGの上昇が認められたが, 投与終了後回復した。聴力に対する影響は認められなかった。
    7. 単回投与の最高血清中濃度は13.20μg/ml, 半減期(β 相)は2.30時間で, 尿中には48時間迄に86.75%が排泄された。
    反復投与試験においては, 初回投与と5日目投与の血清中濃度推移に変化はなかった。
    これらの結果より, ABK200mg1日1回投与の安全性に, 特に問題はないものと考えられた。更に臨床試験で有効性を検討する必要があろう。
  • 出口 浩一, 横田 のぞみ, 古口 昌美, 鈴木 由美子, 鈴木 香苗, 深山 成美, 石原 理加, 小田 清次
    1994 年 47 巻 6 号 p. 693-700
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    臨床分離Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)に対する各種抗生物質とArbekacin (ABK)の抗菌併用効果を検討した。ABKとの併用薬剤はFosfomycin(FOM), Cephems (CEPs)5薬剤, Penicillin(PCs)2薬剤, 及びImipenem(IPM)の合計9薬剤とし, MRSA多数株に対する上記薬剤の組み合わせによる, 各株の増殖能を微量液体希釈法にて測定し, 50%又は90%発育阻止濃度(MIC50, MIC90)を求め, 併用効果を解析した。
    1. 9薬剤+ABKいずれの併用においても, 拮抗の結果は認められなかった。
    2. いずれの併用においても, 共通してABKの低濃度でABKの容量依存的に発育株数が低下した。
    3.9薬剤に対して大部分の株は耐性であったが, ABKのSub-MIC50濃度存在下において併用効果が認められた。MIC50でFIC-indexを求めると0.5~1の間にあり, 多くの組み合わせにおいては相加効果と考えられた。その効果はAmpicillin(ABPC)が最も高く(0.516), 次いでCefotiam(CTM)とCefuzonam(CZON)であった(0.53)。更に, ABKO. 5μg/mlの存在下でABPCO. 5μg/ml, CTMとCZON2μg/mlが50%以上の供試株の発育を阻止した。
  • 渡辺 忠洋, 蘇武 建一, 高瀬 幸男, 川畑 敏枝, 閑野 麻紀子, 吉田 隆
    1994 年 47 巻 6 号 p. 701-709
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Methicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)に対するアルベカシン(ABK)とβ-ラクタム剤であるイミペネムシラスタチン(IPM/CS), フロモキセブ(FMOX), セフォチアム(CTM)との併用効果を臨床分離株のMRSA1936を用い殺菌作用, Post-antibiotic effect(PAE), ABKを作用後, ABKを除去しβ-ラクタム剤を作用させた場合の殺菌効果について検討し, 以下の成績を得た。
    1. MRSA1936に対し, ABKとIPM/CS, FMOX, またはCTMを併用した場合, 低いFIC indexは示さなかった。
    2. ABKと各β-ラクタム剤の併用に於いて, ABK先行作用後, β-ラクタム剤を作用させた場合, β-ラクタム剤先行作用後ABKを作用させた場合より強い殺菌作用を示した。
    3. A BKと各β-ラクタム剤を併用した場合, ABK単独作用より長いPAEを示した。
    4. ABK作用, 除去後, 各β-ラクタム剤を作用させた場合, 各β-ラクタム剤単独作用より強い殺菌作用, 増殖抑制作用を示した。
    以上の結果よりABKはIPM/CS, FMOX, CTM等のβ-ラクタム剤と併用した場合, FIC indexでは優れた併用効果を示さない株に対しても, 明らかに優れた併用効果のあることが基礎的に認あられた。
  • KENJI KONO, SEIJI TAKEDA, ICHIRO TATARA, KIKUO ARAKAWA
    1994 年 47 巻 6 号 p. 710-719
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    We determined the in vitro activities of arbekacin in combination with other antibiotics against 96 clinical isolates of methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA). Efficacies were evaluated by comparing frequencies of susceptible strains at concentrations of antibiotics present in serum 3 hours after intravenous administration of recommended dosages with those obtained with addition of 1 or2 μg/ml of arbekacin. The addition of arbekacin significantly increased the antibacterial activities of cefotiam, cefuzonam, flomoxef and fosfomycin, but had no effect on the activity of either imipenem or minocycline. Arbekacin in combination with fosfomycin was found to have the greatest activity against MRSA among combinations tested. In addition, arbekacin had excellent antimicrobial activity against Pseudomonas aeruginosa, compared to other anti-pseudomonal agents such as piperacillin, ceftazidime and imipenem.
  • 南須原 浩一, 高塚 慶次, 高塚 紀子, 寺岡 正敏, 時田 捷司, 篠原 正英, 東 英二, 西篠 登, 曾根 久雄, 斉藤 功, 中島 ...
    1994 年 47 巻 6 号 p. 720-730
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    MRSA感染症に対するArbekacin (ABK) の臨床効果と, 各種臨床材料より得られたMRSA について, コアグラーゼ型別, β-ラクタマーゼ産生性, 薬剤感受性などを検討した。1992年4月より1993年9月の間に, 入院したMRSA感染症23症例は, 肺炎13例, 敗血症1例, 敗血症+肺炎1例, その他8例であった。男14例, 女9例で, 年齢は18~91歳で, 平均66.9歳であった。いずれの症例も, 悪性腫瘍, 脳血管障害などの基礎疾患を有していた。ABKは, 1日75~100mg×2回投与で行った。臨床効果は, 著効8例, 有効10例, やや有効1例, 無効1例, 判定不能3 例で, 有効率は90%であった。細菌学的効果はMRSA消失16例, 減少3例, 菌交代2例, 不変1例, 不明1例で, 菌消失率は81.8%であった。副作用はなかったが, S-GPT上昇が1例あった。各施設よりのMRSA123株のコアグラーゼ型別は, II型56株, IV型12株, VII型13株, 不能40株, その他2株であった。β-ラクタマーゼ産生株は84株 (68.3%) であった。ABKの MICは0.5μg/ml43株, 1μg/ml37株で, すべて4μg/ml以下に分布した。ABKはMRSAに良い抗菌力を示し, 臨床的にも有効な成績を得た。
  • 一山 智, 下方 薫
    1994 年 47 巻 6 号 p. 731-735
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    名古屋大学病院において入院中に発症したMRSA感染症に硫酸アルベカシン (ABK) を中心とした化学療法を行い, その臨床的有用性について検討した。対象症例は敗血症5例, 肺炎3例, 創感染6例, 腹腔内膿瘍1例の合計15例である。薬剤投与方法はABK (100mg1日2回静脈内投与) 単独3例, 他剤との併用12例である。臨床効果は有効率が全体として76.9%であり, 細菌学的効果は菌消失率が545%であった。副作用および臨床検査値異常は, 奪麻疹, 肝機能障害および腎機能障害が各1例みられた。腎機能障害例はバンコマイシンとの併用例であった。
  • 荒川 正昭, 和田 光一, 瀬賀 弘行, 吉川 博子, 本間 智子, 宮尾 浩美, 嶋津 芳典, 塚田 弘樹, 星野 重幸, 佐藤 進一, ...
    1994 年 47 巻 6 号 p. 736-740
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) が起炎菌と考えられた肺炎症例を検討としたところ, 高齢者やCompromised hostに多く発症し, 緑膿菌を初めとするブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌との複数菌感染例が半数以上であった。これらに対して, Arbekacinを点滴静注で, 単独あるいはImipenem/Cilastatin, Ceftazidime, 抗真菌薬などと併用し, 治療した。この臨床効果は, 単独使用群11例では有効率は55.6%, 併用使用群40例では83.3%であった。MRSAの消失率は 31.9%であった。この成績は, VancomycinによるMRSA肺炎に対する臨床効果に比べて, 同等あるいはそれ以上良好な結果であった。
    喀痰よりMRSAが分離された肺炎例では, MRSAが起炎菌であるか, Colonizationであるかを判定することは重要であるがξ臨床的には治療前に判定できないことも多い。菌量, 炎症所見などを注意深く検討し, 治療を開始することが必要である。
  • 川島 辰男, 獅子原 孝輔, 中村 晃, 栗山 喬之, 菅野 重治, 渡辺 正治, 菊池 典雄, 国友 史雄, 山岸 文雄, 水谷 文雄, ...
    1994 年 47 巻 6 号 p. 741-750
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    呼吸器領域におけるメチシリン耐性ブドウ球菌 (MRSA) による肺炎症例に対して硫酸アルベカシン (ABK) を点滴静注した症例を集積し, その有効性, 安全性を幹事会において客観的に評価した。一日投与量は原則として, 150~200mg, 分2で30~90分点滴静注としたが, 病状により適宜増減とした。また重症度により主治医判断にて他抗生剤の併用も行った。集積された18例のうち, 有効性評価対象例12例 (ABK単独例4例, 併用例8例), 安全性評価対象例18例であった。臨床効果は著効1例, 有効4例, やや有効5例, 無効2例で有効率は41.7%であった。細菌学的効果は消失2例, 減少2例, 不変8例で消失率16.7%であった。副作用は認あなかったが, 検査値異常では腎機能異常2例 (11.1%), 肝機能異常1例 (5.5%) であった。腎機能異常のうち1例はABK減量にて腎機能改善, 他1例はABK中止後も腎機能悪化持続, 腎不全, 心不全にて死亡。肝機能異常の1例は, ABK中止後肝機能異常改善。臨床効果有効以上の5例の検討にて, 1例を除く4例ではABK平均投与日数7.8日と比較的早期の治癒が可能であった。
  • 小田切 繁樹, 住友 みどり, 高橋 健一, 松本 文夫, 桜井 磐, 今井 健郎, 吉川 晃司, 伊藤 章, 杉山 貢, 鈴木 基好, 染 ...
    1994 年 47 巻 6 号 p. 751-762
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    MRSA感染症の中心を占める肺炎・敗血症を主対象にアルベカシン (ABK) を主軸とする化学療法の有用性を検討した。症例数は24例で, 疾患内訳は肺炎12例, 敗血症6例, その他6例 (慢性気管支炎2例, 肺化膿症・気管支拡張症各1例, 急性腎孟腎炎・限局性腹膜炎各1例) であつた。患者背景は, 基礎疾患に悪性腫瘍・脳血管障害を有するものが多く, 免疫学的にはツ反・免疫グロブリン・補体などで46.7% (7/15) に異常を認めた。本化学療法では, 先行化療はセフェム薬, イミペネム, ミノサイクリン, ホスホマイシンなどの単独・併用で, 本ABKは50~400mg, 分1~3 (200mg・分2が最多) を5~24日 (5~14日が18例・75.0%) 投与され, 14 例 (58.3%) に他剤 (β-ラクタム剤が12例) が併用された。臨床効果は有効13例, やや有効4例, 無効4例, 不明3例で, 有効率は61.9%であつた。MRSAに対する本化学療法の細菌学的効果は消失7株, 減少4株, 不変5株, 不明8株で, 消失率は43.8%であつた。副作用は3例 (乏尿 2例, 薬疹1例) に, 臨床検査値異常は7例 (BUN, Cr., 尿沈渣 (RBC), GPT, GOT, A1-P, 末梢血好酸球の上昇) に発現し, 腎不全1例が問題となつた。本化学療法の有用率は61.9%であつた。以上より, 症例背景の重篤性を考慮すれば, ABKを主軸とする本化学療法は本菌感染症に対し十分使いうる治療の一つといえよう。
  • 濱崎 浩之, 堀内 篤, 長谷川 廣文, 正岡 徹, 木谷 照夫, 金山 良男, 杉山 治夫, 巽 典之, 陰山 克, 内野 治人, 那須 ...
    1994 年 47 巻 6 号 p. 763-770
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1992年1月から12月の間に, 阪神造血器疾患感染症研究グループに所属する施設に入院した造血器疾患に併発したMRSA感染症17症例にArbekacin (ABK) を投与し, その有効性と安全性について検討した。基礎疾患は急性骨髄性白血病8例, 急性リンパ性白血病1例, 骨髄異形成症候群3例, 慢性骨髄性白血病1例, 非Hodgkinリンパ腫2例, Hodgkin病1例, 成人T細胞白血病1例であつた。感染症別では敗血症5例, 肺炎4例, 上気道感染症6例, 尿路感染症2例であつた。投与方法はABK1日150~200mgを2回に分け点滴静注した。著効2例 (敗血症2 例), 有効7例 (敗血症1例, 上気道感染症4例, 尿路感染症2例), やや有効2例 (敗血症1例, 肺炎1例), 無効6例 (敗血症1例, 肺炎3例, 上気道感染症2例) であり, 有効率は53%であつた。有効率を感染症別にみると, 敗血症60%, 肺炎0%, 上気道感染症67%, 尿路感染症100% であつた。聴器障害などの副作用はなく, 17例中4例に可逆性の腎機能障害を認あた。
  • 化学療法終了後のMRSAの追跡を含めて
    桑原 正雄, 小西 太, 横山 隆, 児玉 節, 山東 敬弘, 中井 志郎, 三好 信和, 栗村 統, 宮沢 輝臣, 有田 健一, 碓井 亞
    1994 年 47 巻 6 号 p. 771-780
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    Methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) 深部感染症に対するArbekacin (ABK) の適正な使用方法を知る目的で, 単独投与及び併用投与での有用性を検討した。さらに, 化学療法終了後のMRSAの経過を追跡調査し, 下記の成績が得られた。
    1. MRSAによる肺炎29例及び敗血症3例に対するABKの有効率は, ABK単独群 (9例) 42.9%, ABK+Minocycline (MINO) 併用群 (9例) 62.5%, ABK+Imipenem/Cilastatin (IPM/CS) 併用群 (7例) 100%及びABK+他剤併用群 (7例) 100%であった。
    2. 細菌学的効果はIPM/CS併用群及び他剤併用群が優れていた。いずれの薬剤においても複数菌分離例では, 単独感染に比べて同時分離菌存続例や菌交代例が多かった。
    3. 2例 (単独例及びIPM/CS併用例) に投与後腎機能低下がみられたが, 投与終了後回復した。
    4. ABK投与終了後3カ月までのMRSAの追跡調査では, 投与終了時MRSA消失例で4例再感染, 減少例はすべて再燃した。
    5. MRSA感染症に対するABKの有用性が示された。
    6. MRSA重症感染症ではβ-ラクタム剤との併用療法が他の投与法より, 有用であることが示唆された。
    7. MRSA感染症ではMRSA消失まで可能な限り化学療法を続けるほうが良いことが示唆された。
  • 大塚 盛男, 澤畑 辰男, 中井 利昭, 長谷川 鎭雄, 岩田 敏, 吉澤 靖之, 石田 裕, 色川 正貴, 後藤 厚, 篠原 陽子, 戸川 ...
    1994 年 47 巻 6 号 p. 781-789
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    茨城県内の15施設において, 1991年1月~1993年4月の問に発生したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA) 感染症54症例を対象として, MRSAの薬剤感受性およびFosfomycin (FOM) やArbekacin (ABK) とβ-ラクタム剤の併用療法の臨床的効果を検討した。FOMの投与1時間後にCefmetazole (CMZ)(Group C) あるいはFlomoxef (FMOX)(Group F) を投与する時間差併用療法を行うとともに, この治療法や他の治療に無効な例にABKとCeftazidime (CAZ) あるいはPiperacillin (PIPC) を同時投与した (Group A)。対象は81.5%が呼吸器感染症であり, 平均年令は67.2歳で, 94.4%が基礎疾患を有し, 重症20例, 中等症30例であつた。MRSA単独分離例は23例, 他菌種との複数菌分離例は31例で, 緑膿菌が最も高頻度に分離された。MRSA 25株のCMZ, FMOX単独でのMIC50。はそれぞれ50μg/ml, 50μg/mlで, FOMとの組み合わせでともにMICが1~2管改善した。ABKのMIC5。は1.56μg/ml, MIC80。は6.25 μg/mlであつた。Group C, Fは22例, 25例で, それらの有効率は63.6%, 64%, 細菌学的効果は42.9%, 565%で両治療問に差はなく, 全体の有効率は63.8%, 細菌学的効果は50%であつた。ABK+CAZ, ABK+PIPCの治療例はそれぞれ9例, 6例で, 有効率はともに66-7%, 細菌学的効果は44.4%, 50%で, 両者に差はなかつた。自他覚的な副作用はなく, 検査値異常は Group C, Fに軽度の肝障害が各1例みられたがGroup Aには認められなかつた。FOMとCephem系薬剤の時間差併用療法はMRSA感染症にある程度有効と考えられるが, これらの薬剤に対する耐性化が進んでおり, 中等症以上で多剤耐性菌の場合にはABKとβ-ラクタム剤の同時併用療法を使用すべきと思われる。
  • 田中 輝和, 田中 恭子, 高原 二郎, 藤岡 譲, 田村 敬博, 山ノ井 康弘, 北条 聰子, 高橋 敏也, 三木 茂裕, 中村 之信
    1994 年 47 巻 6 号 p. 790-797
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    MRSAとその複数菌感染症に対し, Arbekacin (ABK), Fosfomycin (FOM) 投与30分後に Ceftazidime (CAZ) を投与する時間差併用療法を設定し, 基礎的, 臨床的検討を行い以下の成績を得た。
    臨床分離のMRSA 1727及びPseudomonas aeruginosa KIに対し, 1/4~1/8MICのABK, FOM, CAZの同時及び時間差処理を行い, 殺菌効果を比較したところ, 時間差処理群により優れた相乗的殺菌効果が認められた。両菌による複数菌感染にマクロファージを用いた系では, 三薬剤の時間差併用により, マクロファージによる著しい殺菌効果の増強が認められた。MRSA感染症を呈した15症例に対する臨床的検討では, 有効率は80.0%であった。MRSAに対する除菌率は60.0%であった。ABK, FOM, CAZを用いた時間差併用療法は, MRSAを含む複数菌感染症に対し, 非常に有効な治療法であると考えられる。
  • KENJI KONO, SEIJI TAKEDA, ICHIRO TATARA, KIKUO ARAKAWA, HIROAKI TANAKA ...
    1994 年 47 巻 6 号 p. 798-803
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    We examined the clinical efficacy of a combination of arbekacin and fosfomycin in the treatment of various methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) infections. The combination ofarbekacin plus fosfomycin displayed 65.4% (17/26) clinical efficacy and 65.4% (17/26) bacteriological efficacy. This combination thus appeared to be an effective regimen for the treatment of MRSA infections. However, its bacteriological efficacy against concomitant Pseudomonas aeruginosa strains was only 16.7% (1/6). In addition, in 4 episodes of superinfection involving P. aeruginosa strains developed during the combination therapy.
  • 橋本 敦郎, 大坪 孝和, 朝野 和典, 賀来 満夫, 古賀 宏延, 河野 茂, 原 耕平, 杉山 秀徳, 平 和茂, 井上 祐一, 増本 ...
    1994 年 47 巻 6 号 p. 804-812
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    MRSA感染症患者を対象として, Arbekacin(ABK) とImipenem/Cilastatin (IPM/CS) の併用療法を行い, 基礎的ならびに臨床的に検討し以下の結果を得た。
    1. 抗菌力
    臨床分離MRSA14株について各種薬剤の抗菌活性を測定した結果, Ampicillin, Cefmetazole, Cefbtiam, Cefuzonam, Flomoxef, Fosfomycin, OfloxacinおよびMinocyclineは弱い抗菌活性を示したが, ABKは4μg/mlで全株の発育を阻止した。ABKとIPM/CS併用時には, それぞれ単独のMICに比較して明らかな抗菌活性の増強が認められた。また, ABKとIPM/CSの併用時のFIC indexはすべて0.75以下で, 相乗あるいは相加作用を示した。
    2. 臨床効果および副作用
    MRSA感染症患者22例(肺炎15例. 慢性気管支炎3例, 敗血症2例, 下肢膿瘍1例, DPB1例)にABKとIPM/CS の併用療法を行い, 有効率は68%で, 副作用は全例に認められなかった。
    3. 細菌学的効果
    MRSAに対する細菌学的効果は22株中4株が消失し, 2株で菌交代があり菌消失率は27%であった。また細菌学的効果と感染症の重症度の関連性, また血清アルブミン値と臨床効果の関連性が示唆された。
  • 藤田 欣一, 鈴木 隆男, 加藤 広行, 長町 幸雄, 大久保 豊司
    1994 年 47 巻 6 号 p. 813-819
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1990年7月から1992年12月までの入院患者35症例より分離されたMethicillin-resistant Staphylococcus aureus(MRSA)36株を対象として検討を行った。36株の薬剤耐性をみると33株(92%)がMethicillin(DMPPC)に対して高度耐性株であり, Arbekacin(ABK)では11株(31%), Minocycline(MINO)では19株(53%)が耐性株であった。Vancomycin(VCM)の耐性株は認められなかった。ファージ型別では32株(89%)が型別不能株であった。
    35症例中MRSA感染症は12例で基礎疾患は1例を除いてすべて悪性腫瘍であった。感染症の種類は腸炎3例, 膿瘍5例, 肺炎1例, 胆管炎1例, 腹膜炎1例, カテーテル感染症1例であった。この期間に2例を敗血症で失ったが, その後の徹底した感染対策と医療従事者への教育によって, 1991年3月より感染症の発症は認あていない。
  • 石川 周, 由良 二郎, 品川 長夫, 水野 章, 真下 啓二, 保里 恵一
    1994 年 47 巻 6 号 p. 820-825
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    外科領域におけるMRSA感染症として肺炎6例, 創感染2例, 腹腔内感染2例に硫酸アルベカシン(ABK)を単独, または併用でイミペネム/シラスタチンあるいはセフォチアムと使用し, その有用性について検討した。その結果, 10例中著効1例, 有効6例, 無効3例で有効以上の有効率70%と優れた成績であった。又, ABK単独では有効以上4/6例, 併用で3/4例の成績であり, いずれも良好な結果であった。又, 本剤によると思われる副作用は全例に認あず, ABKの外科領域MRSA感染に対する有用性が認あられた。
  • 森本 健, 中谷 守一, 加地 政秀, 木下 博明, 藤本 幹夫, 平田 早苗, 上田 隆美, 玉手 信治, 山崎 修
    1994 年 47 巻 6 号 p. 826-836
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    大阪市立大学で分離された59株の耐性黄色ブドウ球菌の各種抗菌剤単剤使用時とArbekacin (ABK) 併用時のMIC, および関連施設を含め経験された12件の耐性黄色ブドウ球菌感染症の治療成績とについて検討した。Staphylococcus aureusに対するVancomycinのMICは0.5μg/mlの単峰性に集積し, ABKでは0.5μg/mlと4.0μg/mlの2峰性であった。MIC測定培地に ABKを添加した場合, もともとMIC値の低いMinocyclineを除いてFosfomycin (FOM), Ampicillin, Clavulanicacid/Ticarcillin, Cefotiam, Cefuzonam, Flomoxef, Imipenem/Cilastatinの MICは低下し, 通常使用時の血中濃度から有効性を判定するとFOMではABK1.0μg/mlで1 株2%以外で有効, 他の7抗菌剤では17~26%に無効と推定された。FOM併用5例を含む12 例にABKを使用し, 評価可能11例 (男9例, 女2例, 24~81歳, 一次感染4例, 術後感染7例) で有効4例, やや有効4例, 無効3例, 有効率36%, 単独菌感染3例, 混合感染8例, 細菌学的効果消失率2/11 (18%), 黄色ブドウ球菌の消失率3/11 (27%), 消失+減少 (2+5)/11 (64%) の成績であった。自他覚的症状の発現は認あなかったが, 72歳の十二指腸穿孔の女性にBUN, Creatinine値の上昇がみられた。抗菌力においてABKは十分で多種抗菌剤との併用により確実性を増したかのようであったが, 耐性黄色ブドウ球菌感染症の治療に当たってはなお満足のいくものではなく, 宿主要因を含めた治療を考慮する余地を残している。
  • 落合 実, 谷村 弘, 野口 浩平, 瀧藤 克也, 小西 隆蔵, 大河内 則仁, 河野 暢之, 大西 博信, 嶋田 浩介, 樫谷 益生, 吹 ...
    1994 年 47 巻 6 号 p. 837-843
    発行日: 1994/06/25
    公開日: 2013/05/17
    ジャーナル フリー
    1991年1月から1993年7月までに和歌山県立医科大学消化器外科教室および関連6施設においてMRSA感染が発症した58例に対し, Arbekacin (ABK) の臨床的および細菌学的効果について検討した。
    1. ABKの臨床効果は, 呼吸器感染で84%, 創感染および肝胆道感染で100%であった。58 例全体では85%と良好であった。細菌学的効果は83%であった。
    2. ABKの投与方法別にみると, 臨床効果は点滴静注および吸入療法では60~79%であった。特に局所投与では全てのMRSAが消失した。
    3. ABK単独治療を行った9例では, 臨床効果は89%であり, 併用療法例の82%と同様に有効であった。
    以上より, 消化器外科領域におけるMRSA感染症に対しABKは有用な治療薬であるといえる。
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