小児におけるBiapenem (L-627) の基礎的・臨床的検討を行った。臨床検討の対象は, 保護者の同意の得られた2ヵ月から10歳までの10例であった。投与方法は1回6mg/kg, 1日3回 (化膿性髄膜炎では1回40mg/kg, 1日4回), 30分点滴静注を5~17日間行った。
細菌感染症10例 (化膿性髄膜炎1例, 敗血症1例, 肺炎5例, 尿路感染症2例, 化膿性扁桃炎1例) では, 著効8例, 有効2例, 有効率は100%であった。起炎菌が判明した症例では8例中7例が著効, 有効が1例と著効率が極めて高かった。
臨床的副作用は10例全例に認められなかった。Imipenem/Cilastatin sodiumで報告された痙攣, 頭痛, 嘔気, 嘔吐等の中枢神経に対する副作用も認められていない。
細菌学的効果を判定し得た5例からは, 7株 (
Streptococcus pneumoniae 2株,
Moraxella (
Branhamella)
catarrhalis 2株,
Haemophilus influenzae2株,
Pseudomonas aeruginosa 1株)が分離されたが, すべて菌の消失が得られた。
2例についてL-627を6mg/kg, 30分点滴静注で投与し, 血中濃度を測定した。L-627の最高血中濃度は点滴静注終了直後にあり, 12.5~13.7μg/mlであった。化膿性髄膜炎例においてL-62740mg/kg, 30分点滴静注で投与し, L-627の最高血中濃度は点滴静注終了直後にあり, 56.2μg/mlであった。髄液中濃度を測定した。髄液中濃度/血中濃度はそれぞれ30分点滴静注で投与し, 1.12/8.16μg/ml (Day 2, 投与終了後1.17時間, 20mg/kg/dose投与中), 0.88/3.44μg/ml (Day 3, 投与終了後4.0時間, 30mg/kg/dose投与中), 0.68/5.12μg/ml (Day 13, 投与終了後3.0時間, 40mg/kg/dose投与中) であった。
以上の成績並びにL-627の極めて広い抗菌スペクトルと強い抗菌力から, 本剤は小児および免疫抑制状態にある患者の重症感染症の初期治療に単剤で使用し得る有望な抗生物質と考えられた。
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