新しい経口用Penem系抗生物質SY5555の製剤中主にドライシロップ剤を小児の細菌感染症に投与し, 臨床分離株と保存株である
Bordetella pertussis, Campylobacter jejuniに対する抗菌力, 体内動態, 有効性及び安全性について検討したところ, 次のような成績が得られた。
1. 薬剤感受性試験ではSY5555投与症例から分離された, 5菌種20株に対しSY5555とCla-vulanicacid/Amoxicillin (CVA/AMPC), Cefaclor (CCL), Cefotiam (CTM), Cefpodoxime (CPDX), Cefdinir (CFDN) の6薬剤, 保存株の
B.pertussis 10株に対しては前述の6薬剤中CVA/AMPCとCFDNを除く4薬剤とAmpicillin (ABPC), Piperacillin (PIPC), Imipenem (IPM), Erythromycin (EM) の4薬剤,
C.Jejuniに対しては
B.pertussisに用いた8薬剤からPIPCを除きCFDNを加えた計8薬剤を用いて, 接種菌量10
6CFU/mlにおけるMICを測定した。SY5555のMICはグラム陽性球菌で
Staphylococcus aureus (10株) 0.05~0.10μg/ml,
Strepto-coccus pyogenes (1株) ≤0.025μg/ml,
Streptococcus pneumoniae (4株) ≤0.025~0.39μg/mlを示し, 他の5薬剤のMICと同等以上であった。グラム陰性桿菌で
Haemophilus influenzae (3株) は0.39μg/mlか6.25μg/mlを呈し, CPDXを除く4薬剤のMICと同等で,
Escherichia coli (2株) はいずれも0.39μg/mlで, CVA/AMPC, CCLのMICと同等以上, CPDX, CFDNのMICと同じか類似あるいは大, CTMのMICより大であった。保存株の
B.pertussis 10株に対するSY5555のMICは全株が0.78μg/mlで, CCL, CTM, CPDXのMICより小, IPMのMICと類似か大, PIPC, EMのMICより大であった。
C.jejuniに対するSY5555のMICは≤0.025μg/mlか0.05μg/mlで, 他の7薬剤のMICと同等以上であった。
2.SY5555ドライシロップ剤を5例中各2例に5.0mg/kgか10.0mg/kg, 1例に15.0mg/kg, 食後30分に経口投与してのSY5555の血漿中濃度は, いずれのCaseも投与1~3時間後の間に最高濃度を示し, 5.0mg/kg投与例では0.93, 1.21μg/ml, 10.0mg/kg投与例では2.85, 5.49μg/ml, 15.0mg/kg投与例は5.79μg/mlで, 10mg/kg投与例で高い血漿中濃度を呈した1例を除くと3投与量群間に用量依存性があり, 半減期は0.76~1.05時間であった。AUCでも血漿中濃度と同じく1例を除くと3投与量群間に用量依存性が認められた。
3. 血漿中濃度を測定した同一症例における尿中濃度は1例が投与後0~2時間, 4例が投与後2~4時間に最も高い濃度で, 投与後6時間までの回収率は6.0~13.8%であった
。4. 臨床効果は14疾患76症例中著効20例26.3%, 有効43例56.6%, やや有効9例11.8%, 無効4例5.3%で, 有効以上の有効率は82.9%であった。
5. 細菌学的効果は6菌種33株中30株90.9%が消失し, 優れた成績であった。6. 副作用は臨床効果の判定できた76例と脱落6例, 計82症例について検討でき, 4例4.9%に下痢が出現した。
7. 臨床検査値では末梢血の検査で, 好酸球増多が31例中1例3.2%に出現した。
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